東方人妖期   作:黎悠明

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~異文化にご招待~

 

 「お帰りなさいませ、フラン様、咲夜さん」

 屋敷が見えてからほんの少しの木々を越える。すると先ほどと同じ色合いをした門が見え、そこには一人の女性が立っていた。

 「……清人?」

 その女性の着物は昔、神社に参拝に来た清の国の民の着物にどこか似ていた。

 「いえ、彼女も妖怪です」

 十六夜さんは僕の呟きに反応してか答えてくれた。

 「お嬢様の客人です、自己紹介くらいなさい」

 「はい! お初にお目にかかります。紅 美鈴(ほん めいりん)と申します。以後お見知りおきを!」

 元気に挨拶し、お辞儀をする彼女――一瞬、お辞儀をした後頭部に刃物が刺さっていたような――は、海を渡ってある国『清』の着物に良く似ている。独特な形をした帽子、上着。それに切れ込みの入っている、すかーとに似た着物。紅い髪の毛が腰のあたりまで伸びている。

 「お話は伺っております! どうぞお入りください!」

 門をくぐるとそこは異空間だった。花畑や、水がわき出る円形の池。これが異文化というものかと思ってしまうほど。それこそ屋敷の形なぞ見た事無く、僕は全てに圧倒されてしまった。

 「どう? 凄いでしょ」

 背中に乗ったままのフランが感想を聞く。今の僕の顔を見たら一目瞭然なんじゃないかな。

 「お嬢様がお待ちです。屋敷に向かいましょう」

 その言葉にフランは僕の背中から飛び、フヨフヨと浮遊し十六夜さんの後ろにぴったりと付いて行った。

 十六夜さんの後ろに僕ら三人で付いて行く。これまた大きな扉を開けると、またもビックリ。見た事無い内装。これが西洋文化かと思わされる。石造りの階段に、赤い布が敷かれており、そこを皆が皆、草履、履物のまま歩いて行く。僕はそこでまた文化の違いに驚き足が止まってしまった。

 「雪正さん、どうしました? 早く行きましょうよ」

 「え、あぁ。うん」

 早苗さんの声掛けにやっと足が伸びる。一度踏んでしまえば二歩目は早かった。僕はみんなに追いつく様に足早について行った。

 

 「ここでお待ち下さい」

 通されたのは机が並んだ広間。多分食堂みたいなところなのかな。僕らはそれぞれ席に座った。と言っても彼女らが座ったのは僕の両隣。椅子は沢山あるのにどうして近くに座りたがるのだろうか。

 十六夜さんが出ていくと、入れ替わりで、羽が生えた人型の生き物がぞろぞろと入ってきた。服装は十六夜さんのめいど服に酷似している。が、身長は軒並み低く、僕の背丈より頭二個分ほど小さい。

 「妖精という種族です。ここでは給仕等の雑用を任されているらしいです」

 「ほとんど咲夜がやっちゃうから給仕くらいしかしてないけどねー」

 と早苗さん。相槌の様にフランも。

 置かれたのは、白い西洋湯呑み。持ち手の部分もあり、持ちやすそうだ。

 「紅茶です。冷めないうちにどうぞ」

 「ミルクと砂糖です」

 「お茶菓子です。こちらもどうぞ」

 立て続けに色々と机に置いて行く給仕妖精達。初めて見る物に僕は戸惑うばかり。

 「わーい、クッキーだー!」

 フランに『くっきー』と言われた円盤状のお茶菓子は、多分焼き菓子の様なものなのだろうか。フランが美味しそうに頬張る姿を見て、そう言えば朝食を食べていない事に気づく。

 くっきーを一つ摘まんで、一口食べてみる。するとどうだろうか。香ばしい匂いと一緒に、味の深い物が鼻から通り抜ける。そして和菓子では感じた事のない別の甘みも感じる。

 「やっぱり美味しいですねー。クッキーは。このバターの香りも何と言っていいか……」

 この深い香りは『ばたー』というのか。勉強になりつつも、西洋湯呑みに入っている紅茶に手を伸ばす。熱そうなので少し息を掛け冷まし、これも一口飲む。なるほど。焼き菓子には合いそうなお茶の味をしている。

 そう言えば、僕の住んでいた世界では、砂糖は高級なものだったのだが、ここでは、四角の形に固まり、山の様に小瓶に詰められている。これは世界が違うからなのかな。そんな疑問を彼女らに投げかける。

 「いえ、ここでも砂糖は高級品ですよ。ここがお金持ちなんです」

 「お金持ちだもーん」

 確かに、ここを見てたらそう思う。広い花畑に、給仕さんも沢山。お金持ちなはずだ。

 「でも、前に私がここに来てもこんなにおもてなしはされませんでした。どんな風の吹き回しでしょうか」

 

 「それは、貴女には歓迎する様な事が無いからよ」

 

 ドアが開け放たれると、そこに居たのは少女だった。

 後ろには十六夜さんが付いている。多分この子が『お嬢様』なんだろう。

 その子の姿はフランと背丈は変わらない。蒼い髪に桃色の――どれすと言った――着物に帽子。そして目立つのは蝙蝠の様な背中の翼。吸血鬼の意味がようやくわかった気がした。

 「良く来たわね、雪正」

 食堂に入り、丁度僕の目の前の席に座る。すぐさま十六夜さんが彼女に紅茶を入れ、机に置く。

 「ど、どうも」

 僕はなぜか立ち上がり、その子に向かってお辞儀をした。

 「あら、礼儀正しいわね。いいわ、座って頂戴」

 その声に僕は身体が固くなる様な感覚があったが、なんとか腰を下ろす。

 「私の名前はレミリア・スカーレット。この屋敷の主をしている者よ」

 彼女の自己紹介を聞き、続けて僕も自己紹介をする。すると、

 「ちょっと、歓迎する事が無いってどういう事です?」

 早苗さんが隣でちょっとおかんむりだ。

 「そのままの意味よ。霊夢や魔理沙と一緒で、招かなくても勝手に来るじゃない」

 「それもそうでした」

 あっさりと引きさがった早苗さん。多分思い当たる事が多かったんだろう。が、少し引っ掛る事が。それは早苗さんも同じで、

 「ちょっと待って下さい、なら雪正さんにはあるんですか?」

 「当然よ。でないと歓迎なんてしないわ」

 間髪入れずの回答に驚く僕。僕に歓迎される意味ってあるのかな。

 「さて、雪正。貴方の事は新聞で読んだわ」

 「あ、あの新聞ですね」

 新聞と言われて出てくるのは一つ。射命丸さんが書いている「文々。新聞」だろう。

 「貴方、未来が見えるんですって?」

 それは僕の能力。未来が見える事。その能力のお陰で今もこうして生きている事の出来た僕の大切な能力。僕は彼女を見つめて、頷く。

 「じゃあ、今から私がやる事を、五秒で視なさい」

 疑問がありつつも、僕は「はい」と言って未来を見る。

 

 ――目の前には先ほどのレミリアさんが、そのままの姿で堂々と座っている。彼女は、十六夜さんが淹れた紅茶の入った西洋湯呑みを持った瞬間――

 

 「――っ!!」

 「……? 雪正さん、どうなさったん――」

 早苗さんの声にも反応出来ないほどに、無我夢中で机の中に潜った。僕が頭を机よりも下にした途端、

 

 ――ガシャァアアンッ!!

 

 僕が座っていた所に、槍の様なものが壁に突き刺さっていた。禍々しい気が見た目でもわかるほどのデカイ槍だ。

 「――なっ! 大丈夫ですか?!」

 早苗さんが机の下の僕に寄ってくる。「大丈夫」と声かけながら、身体を起こした。

 フランは最初はビックリしていたが、今では「また始まった」の様な少し呆れた顔をしている。

 「……素晴らしいわ雪正、まさか本当に避けられるなんて」

 驚いた様な、だが期待通り言った様な声で彼女が発した。

 「ちょっと、レミリアさん! 流石に非常識すぎやしませんか!」

 「常識に囚われてはいけない。そう言っていたのは誰?」

 うっ、と気圧される早苗さん。その台詞には僕も聞き覚えがあった。

 「でもお姉様、ちょっとやりすぎじゃない?」

 流石のフランも加勢に加わった。それもあってかレミリアさんは、

 「それもそうね。すまなかったわ、謝るわ」

 「誠意が籠ってないのですが……まぁ良いでしょう」

 良いか悪いかを決めるのは僕じゃないのかな……、と思いながらも、背もたれが壊れ、倒れていた椅子を起こし、またそこに座る。

 「では雪正。ここに来てもらった事を単刀直入に伝えるわ」

 僕は、まだ少しビクビクしながらも彼女の紡ぐ言葉をしっかりと聞いた。

 

 「貴方、私の従者にならない?」

 

 




 19話投稿です。早い投稿でしたが、ずっと書いてなかったから、それを埋めるべく……?

 紅魔館に入った雪正達。従者になれと言われてしまいました。さぁどうなる事やら。

 なお、「誤字脱字」「この表現おかしくない?」「○○ってなに?」等がございましたら、感想とともに記載して頂けると大変嬉しゅうございます。
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