二つの顔を持つ緑谷出久   作:青二才

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勢いで書いた、後悔はしてない


絶望と希望と伸ばされた手

あるビルの屋上に、1人の少年が居た。

 

「個性がなきゃ、こんな夢は叶わない...夢を見ることすら烏滸がましいって言うの?」

 

彼は誰に向けることもなくそう呟いた。...彼、緑谷出久は憧れた存在であるオールマイトにヒーローは諦めた方が良いという旨の言葉をついさっき聞かされたのだ。

 

『何言ってるの?君には、個性があるよ?』

 

幼馴染みに言われた「来世は個性が宿ると信じてワンチャンダイブ!」という言葉通りに飛び降りようとした瞬間、そんな声が響いてきた。

 

「え?誰?っていうか僕に個性があるってどういうことさ!?」

 

出久はその声の主を探してあたりを見回したが、誰も見当たることは無かった。

 

『...まず最初の質問から答えるとね、僕はまぁ...君らで言う所の死神って奴だよ。訳あって僕は君の生まれた時から君の精神の中に住み着いてたんだ。』

 

『次に、君に個性があるって言うのは、君のお母さんの「ものを引き寄せる」っていう個性に僕の力が少し混ざったことで「死んだ人か渡したいと思われた相手から個性を引き寄せる」っていう個性になったんだ。凄いでしょ?』

 

頭の中に直接響いてきた声の内容に、出久は絶句した。死者か自分の個性が嫌な相手から個性を引き寄せる...つまりは望まれさえすれば誰からも個性が貰えるということなのだから。とても、ヒーローとは思えない個性だ。敵のそれじゃないか...というか、ヒーローと敵の線引きって何が正しいんだろう?さっきのことがあるから全然わからない...

 

「...なんで今まで病院で検査してもわからなかったの?」

 

『ああ、その時にはまだ時間が短くてね、力が個性として発現して無かったんだよ。それに、君はまだ身内に死んだ人は居ないだろう?だからわからなかったのさ』

 

出久の頭に響く声は、淡々とその理由を述べあげて最後にニヤリと笑った。

 

「...この個性は一体どんな原理でこんなことが出来るんだろ...?」

 

『おいおい、君の考察癖は知ってるけどそれは愚問だぜ?世界を全部綴った数式ですら解読不能なものが命なんだからさ』

 

出久は一通り説明を聞かされるとすぐに得意の考察に入ろうとしたが、それは死神によって阻止された。

 

「そっか、そうだよね...いきなりのことでまだよくわからないけど、ありがとうね..えっと...」

 

「僕に...名前なんてないんだが...まぁハロスとでも呼んでくれ」

 

「わかった!よろしくね、ハロス」

 

こうして、緑谷出久と死神『ハロス』の奇妙な共生生活が始まった。

 

 

『お前さ、この個性でもヒーローになりたいと思う?』

 

「え、なんでいきなりそんなことを?」

 

『いや、だってこれ絶対敵向けじゃん、殺した相手の個性が奪えるんだぜ?』

 

「....正直、何がヒーローで何が敵か、何処からがヒーローでどこからが敵なのかがわからなくなったんだ」

 

「相手を思って個性を使っても、許可が無い一般人ならヴィジランテとして犯罪者だ、僕みたいに、ヒーローに憧れても結局は「個性が無いなら諦めろ」って言われる...僕はあの思考も敵だと思ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

『はあ、やっぱり人間て怠惰だよな』

 

『?どうしたのいきなり」

 

『だってさ、粗雑に時間を費やしたくせに“明日は良いことありましょうに”って今日に祈るんだぜ?』

 

『それに、いざ自分が体を悪くして病気になったらその惰眠で捨てた秒針にすら噛りついて生きたいって縋るんだ、滑稽で仕方ないよ』

 

「はは、でもそれは仕方ないことだよ、わがままなのが人間なんだから」

 

『そうなのかね...?お、あんなとこに今にも死にたいって顔してるやつが居る、行ってみようよ』

 

 

 

 

「やあ、なんで君は自殺なんて考えたの?」

 

「...あんたには、関係ないことじゃない!どっか行ってよ!」

 

「別に自殺を止めようとなんて思って無いから良いじゃん、それよりさ!君の個性のことを教えてよ」

 

「...変なヤツ...まあ良いわ、どうせあんたも皆と同じなんだから。私の個性は「相手の口から思ったことを言わせる」ってものよ。暗証番号とか秘密だって聞き出せるわ。」

 

「私、ヒーローに憧れたのに、こんな個性だから「お前は敵にしかなれないんだ」って皆から言われたわ。だから死んだ方がマシだと思ったの。どう?満足?」

 

『なあどうだい?やっぱり人間なんて死にたがりばっかりだ。それに、この世界に個性差別があるからこんなとるに足らないことを救われない惨状だと思うような病状になったんだ』

 

「やっぱり、ヒーローは希望だけど絶望もそれ以上に生むんだね」

 

「...あんた、何言ってるの?」

 

「いや....良い個性だねと思ってさ」

 

「え?」

 

「だって、警察の事情聴取でその個性があれば簡単に自白させられるじゃん、自分が思い出せないことだって言わせられるかもしれないからすっごく良い個性だよ!欲しいなぁ」

 

 

『さあ最終宣告だ、その個性で生まれ落ちた故に人生がワンサイドゲームで散々だって思ってその命を投げ捨てるならボクらに頂戴?』

 

『「ねえ、君が死んだら僕がその個性もらって良い?」』

 

「....ふん、あんたがそんなこと言うから死ぬ気なんて無くなっちゃったわよ!」

 

そう言うとその少女はビルの階段から降りて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は、何で死にたいなんて思ってるの?」

 

出久は、いつものように死にたがってる人に近づいてそう相手に問いかけた。

今回の相手は小柄で気弱そうな少年だった。

 

「...僕はね、短時間だけど思考を鈍らせることができる個性があるんだ」

 

彼は、弱々しい口調で理由を話し始めた。

 

「そのおかげで僕の周りには人が誰も寄り付かなくなっちゃったんです。“お前と居ると良い判断が下せなくなって何もかも失敗するんだ”って。」

 

「それに、僕自身もこの個性で考えるのが遅くなって事故に遭いやすくて、安全に居る方法なんて誰かに助けてもらうしか無くて、でも誰も僕の側に居てくれないから、それなら死んでしまった方が楽になれると思ったんだよ!」

 

最後には、自棄になったように泣き叫んでその全てを吐き出した。

 

『ハッ!死んだからって救われるわけでもないのに何で皆死のうとするのかね、』

 

ハロスは理由を聞き終えた後に軽蔑したような口調でそう吐き捨てた。

 

「...ねえ、君ってさ“本心から“死にたいって思ってるの?」

 

「...それは...」

 

「僕はね?その話を聞いて君の個性は良いものだなって思ったな」

 

「え...?何で」

 

「だって、その個性があれば今の君の死のうとする決心だって鈍らせることが出来る、誰かを助けられるなって...そう思ったから」

 

「......」

 

『「まあ、僕は死神だから止める気は無いよ...さあ、聞いてあげるから最期に言い残した言葉を言って?」』

 

「....やっぱり、自殺するのはやめておきます...決心が鈍っちゃいましたから」

 

先ほどとは打って変わり、少年は晴れやかな顔をして笑い、自殺を諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なあ、何でお前っていっつも死のうとしてるやつと話すんだ?決心鈍らせるだけだろ?』

 

ハロスは出久に自殺志願者を更生させるような言葉をかける意味を聞いた。

 

「ただの自殺志願と夢のひとつもないようなやられっぱなしのままでぱっぱらぱなしの人の個性なんて貰ってもそんなのちっとも嬉しく無いよ、だから僕はいつも言ってあげてるんだ、君は本当にそれで終わりでいいのか?ってね」

 

出久は悲しそうに笑いながらそう言い、その場から離れる為に歩き始めた。

 

 

『フッ、やっぱり変なヤツだなお前』

 

 

 

 

 

 

 

『もうこれで十ヶ月だよ?どうだい?人間がどんなに死にたがりか分かった?』

 

ハロスと初めて会話した時から十ヶ月が過ぎ、2人の学校終わりの自殺志願者探しも板について来た頃、ハロスは出久にそう言葉をかけた。

 

「うん、そうだね、でもさ?」

 

 

『ん?なんだ?』

 

 

「僕の見てきた自殺志願者は殆どが自分の個性によって憧れを絶たれた人ばかり....だった。僕と....一緒なんだよ」

 

言いようのない苦しさに堪えるように言葉を詰まらせながら出久はそう答え、泣きそうな顔をして笑った。

 

『自分と重なるから....だから助けたいってか...お前のそういうとこはつくづくよくわからなかったけど、もう良い加減分かるようになってきたよ』

 

「はは、ありがとう。でもごめんね、ハロス」

 

出久はお礼を言ったが、死神にとって魂...この世界で言えば個性か、が捕れないのはもどかしいと思い、そう謝った。

 

『別に良いよ、もう僕は長くお前の中に居るから死神としての力は振るわなくても誰にも咎められないし、お前のこの先が気になっちゃったから』

 

 

「はは、そっか...ならさ、これからも一緒にいてよ、最高の『相棒』として」

 

『...嗚呼、喜んで...緑谷出久』

 

 

「でも、最近はヒーローになりたいって思わなくなっちゃったな」

 

「一部かもしれないけど、僕が見てきた人たちは自分の個性で苦しんで、絶望してた、希望を見せて憧れを抱かれる存在がヒーローなのに、自分が弱い個性だからなっちゃいけないなんて絶望させるなら、僕はヒーローになんてならない

 

「たとえ違法だとしても、自分が正しいと思えれば、ダークヒーローにでも敵にでもなってやる」

 

 

 

 

「っと、あそこ....誰か居るね」

 

話を強引に切るように出久はこの半年で鍛えられた観察眼によって紫髪の少年が非常階段からビルの屋上に向かっていることを報告し、足早にそこへ向かった。

 

『アイツ....今まで見てきたヤツとは明らかに違うな』

 

「.....そうだね、一番自殺願望が強そうだ」

 

ハロスと出久の意見が一致し、今回こそは欲しいものが手に入るかと思いながら彼を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ねえ?君はどうしてこんなところに居るの?」

 

まずはいつも通り、後ろから声をかけた。

 

「いきなりなんだよお前、見てわからないか?これから死ぬためだよ。止めても無駄だぜ?」

 

言葉を返した少年の目はひどい隈があり、瞳には全てを諦めた色しかなかった。

 

「別に止める気は無いから安心してよ。代わりにさ、最期に教えてくれない?君の個性について」

 

少し気圧されたものの、出久は柔らかい笑みを崩さないでそう問いかけた。

 

「....洗脳」

 

短く吐き捨てられるように紡がれた言葉には、自身の個性に対する憎しみが感じられ、到底言い表せないような苦悩があったことが感じ取れる。

 

「それで、死にたいって思うってことは問いかけに応えたら個性が発動しちゃうの?」

 

 

「ああ...だから誰も俺と話したがらないし、敵にうってつけの個性だって皆から言われたよ。でもさ、俺は憧れちまったんだよ、ヒーローに」

 

この際だと思って全てを話すことに決めたのか、紫髪の彼は饒舌になり自分から話してくれた。

 

「.........」

 

「だから足掻いてみたさ、体を鍛えたり、勉強したり、ヒーローに必要だって言われてることは色々やってきた。でも、無理だったんだよこの個性のせいでね」

 

そう言い終わると彼は出久に背を向け、屋上のフェンスに両の手をかけた。

 

「.....ねえ?今ここで前触れもなく死んじゃうのも良いと思うよ?でもさ、これからも足掻いて抗って、夢に向かって歩き続けたほうが今より幾分でもマシな未来になるよね?まあ、ここはこんな『良い個性』至上主義の悴んだ世界なんだよ...でも、夢を諦めたく無いんでしょ?それならさ、どんな苦悩があっても無様に生きてみせろよ」

 

『「そんなにヒーローにうってつけの良い個性なんだから」』

 

『さあ、最終宣告だ。こんな個性で生まれ落ちたから人生が敵一択のワンサイドゲームで散々だって投げ捨てるくらいなら.....』

 

『「これから君が死んだらさ、その個性、僕に頂戴?」』

 

 

「...こんな個性をヒーロー向けだなんて、どういう意味だよ」

 

出久の言葉で少年の右手はフェンスを離れ、体の向きが戻った。

 

「会話さえできれば、誰も傷つけないで事件の犯人を無力化して捕まえられるんでしょ?そんなの、とってもヒーローに向いてる個性じゃないか」

 

出久は「何を驚いてるんだ?」とばかりの顔で当たり前のようにそう答え、ふわりと笑った。

 

「..............」

 

 

『(ノーワンエスケープスデスだよ、それに、コイツはどうしようもないリーパー(生かしたがり)だ、だから、)』

 

 

「...ははは、お前..本当にすげえよ。最初はどうせ死ぬからこんな個性あげても良いって思ってたけど、そんなこと言われたら死ねなくなっちまった」

 

少年は初めて憑物が落ちたような笑顔を見せ、自殺をやめると宣言した。

 

「...そっか、残念だな」

 

晴れやかな顔をした出久はその表情とは裏腹にそう呟いた。

 

「どんな人間だって行く先は終点なんだ...好き勝手やった結果が人生だって言うならさ、俺はお前(死神)に追われ続けてでも...」

 

 

『最終宣告だよ運悪くこんなリーパーに捕まった哀れなスイサイダル....最期に言い残した言葉を言え....』

 

「俺はまだ生きて、足掻きながら夢を追い続けるよ」

 

少年はそう言い切ると出久の横を通り、非常階段のところで立ち止まった。

 

「そっか、死にたくなったらまた僕のところにおいで、その個性を貰うからさ」

 

「考えとくよ、あぁそうそう、俺の名前は心操人使だ。覚えといてくれよ.........ありがとな、『俺のヒーロー』」

 

 

そうして最後に自己紹介を終えると彼は階段降り始めた。

 

「..........また、何処かで会えると良いね。今度は、死に際以外で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もういい加減分かっただろ?君は自殺志願者をどうしたって助けちゃうような根っからのヒーローなんだよ、老人とか余命宣告されたような病人の横に立って、そいつが死んだあと個性をもらう方が合ってると思うよ』

 

ハロスはそう言うとため息を吐きながら精神の奥底に引っ込み、静かになってしまった

 

 

「...うん、そうする。見守っててくれてありがとうね、ハロス」

 

 

「なあ君、ちょっと話があるんだが、良いかい?」

 

「....どうしたんですか?」

 

「君の考えに興味が湧いてね、少し話をしないかい?」

 

「...どうして貴方が僕のことを知ってるんですか?その風貌からすると、貴方は敵ですよね?」

 

「...確かに僕は敵だ、でもね、誓って僕は君をどうにかしたいわけじゃない」

 

「...信じられる根拠がありません、お断りさせてもらい...!?」

 

「あそこであれ以上問答をするのはマズいからね、僕の隠れ家に来てもらった、手荒になったのは謝る、謝罪の意思として君がもしこの話で僕の思う答えを出してくれなかったとしても何もしない。だから話をさせてくれ」

 

「.........わかりました。僕が抵抗したところでどうにかできる相手じゃ無いですし、良いです」

 

「僕が調べたところによると君は、オールマイトに絶望を与えられたそうじゃないか」

 

「平和の象徴が絶望の淵にいた無垢な子供を突き落とした。僕は彼が心底憎いからね、助けてあげたくなったんだよ。君になにか個性をあげよう」

 

「......もしそれが本当だとして、本来貴方が求めた見返りは何ですか?」

 

「僕の後継者、死柄木弔の補佐をやってくれ」

 

「僕は本心から敵になりたいわけじゃ無いです。でも、個性を最重要視する今のヒーローは苦手です...だから、もし本当に貴方が個性をくれると言うなら、協力者にはなりたいです」

 

「十分だよ、ありがとう。」

 

「そうだね....これなら気に入ってくれるかな?『進化』っていう個性なんだけど」

 

「聞く限り、自分が研鑽を行う限り強くなり続けられる個性でしょうか?良いですね...それ、欲しいです」

 

「なら、あげよう...さあ、手を....!!?」

 

「ああ、僕の個性は相手が渡したいと思えば個性が譲渡されるものなんですよ」

 

 

「これは...驚いたね、君をこちら側に引きこめて正解だったよ。これからよろしく、僕の協力者。僕はオールフォーワンと名乗ってるんだが、聞かれると厄介だから先生とでも呼んでくれ」

 

「僕の名前は...貴方のことだから知ってるでしょうけど緑谷出久と言います。これからよろしくお願いしますね、先生」

 

 

 

 

そう、これは、僕と最高の相棒(ハロス)が二人で(ダークヒーロー)となる物語だ

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