さあ──『喜劇』を始めよう!   作:Sakiru

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妖精の忠告

 

 管理機関(ギルド)が冒険者の支援(サポート)の一つとして提供している面談ボックス。

 この部屋を利用する冒険者は彼等の豪胆な性格と半比例するようにして意外にも多い。いくつも用意された部屋は必ずと言っていいほど何処かが使われており、深夜であっても魔石灯(ませきとう)(あか)りがついているのは珍しくなかった。

 それはやはり、彼等の赴く場所が危険極まる地下迷宮(ダンジョン)だからだろう。

 異常事態(イレギュラー)が日常茶飯事のダンジョンでは、毎日、死者及び行方不明者があとを絶たない。亡骸(なきがら)を地上に持ち帰ることが出来るのは本当に(まれ)であり、時には、人肉(なきがら)を『(おとり)』としてモンスターに差し出し、モンスターが興味を引いている間に逃走するという事もある。

 彼等の抱えている不安は大きい。その不安を少しでも解消出来るよう、また、彼等の生存率が少しでも高まり地上に帰還することが出来るよう、ギルドは惜しみない支援(サポート)をしている。

 そして、幾つも並べられている部屋の最奥。その面談ボックス扉の取っ手には『使用中』の札が掛けられていた。 

 

「話をする前に、これを渡しておくね。忘れちゃうといけないから」

 

 ベルの真正面に座っている妙齢の女性──エイナ・チュールはそう言いながら、一枚の白い封書をベルに手渡した。

 

「これは……?」

 

「その中には重要書類が入っています。『特例措置』について書かれていますので、女神ヘスティアと共に必ず確認して下さい」

 

 ベルの疑問に、ギルド職員は畏まった口調で説明した。

 なるほど、と彼は納得してボディバッグの中に大事に仕舞う。その様子をしかと見届けたエイナは、

 

「それで、ベル君。相談事って何かな?」

 

 そう、ベルに尋ねた。

 ベルは表情を変えると、エイナにこれまでの経緯を話し始めた。

 

「──そっか。そんな事があったんだね……」

 

 全てを聞き終えたエイナはそう呟くと、テーブルに置いていたティーカップに手を伸ばす。唇を湿らせながら、担当冒険者から聞いた話を脳内で纏めているようだった。

 ベルは深紅(ルベライト)の瞳でその様子をじっと見詰めていた。

 

「ごめんね、ベル君。私の聞き間違いがあるかもしれないから、もう一度だけ確認させて欲しい」

 

「ああ、分かった」

 

 こくり、とベルは首を縦に振る。

 ベル自身、先程よりかは落ち着いていたが、完全に頭が追いついている状態でない事は自分自身で分かっていた。エイナの申し出に感謝しながら、自分も紅茶を一口飲む。

 エイナはベルの準備が整った事を認めると、「まずだけど」と、切り出した。

 

「今朝、ベル君は契約しているサポーター──リリルカ・アーデ氏と合流する前に、一人の冒険者に声を掛けられた。その人物は君に、『アーデ氏は賊であり、ベル君は騙されている』と言った。ここまでは合っている?」

 

「ああ、寸分(たが)わず合っている」

 

「そしてその冒険者と別れた後、君はアーデ氏と合流した。そしてアーデ氏はベル君に、長期契約を解約してパーティを解散したいと、そう、言ったんだよね?」

 

「その通りだ。何の前触れもなく告げられてしまった」

 

「彼女はパーティ解散の理由として──【ソーマ・ファミリア】の団員が彼女の元を訪ね、ベル君とのダンジョン探索をやめるよう迫るように言ってきた、って言ったんだよね?」

 

「ああ、そうだ」

 

 そう言うと、エイナは翡翠色(エメラルド)の瞳を閉ざして顎に手を当てた。そのまま長考に入る。

 ベルもまた、時間を無駄にせぬよう必死に頭を回す。

 壁に掛けられている時計の秒針が三周ほど回った、その時。

 

「私としては、ベル君、君はそのままパーティを解散した方が良いと思う」

 

 エイナ・チュールは険しい表情で、そう、自身の考えを告げた。

 彼女の口から放たれた言葉を受け、ベルは思わず、

 

「なっ……!?」

 

 と、声を()らしてしまう。何故ならその言葉は、ベルが奥底で願っていた『言葉』ではなかったからだ。

 ベルはこの時まで、エイナがベルに全面的に協力してくれると思っていた。否、思い込んでいた、と言った方が良いだろう。これまでの彼女との付き合いが、無意識下でベルにそう思わせていたのだ。

 

「……」

 

 深紅(ルベライト)の瞳を極限にまで開き、ベルは暫し、呆然と口を半開きにするという醜態を晒してしまう。

 エイナはその様子を嘲笑うこともなく、蔑むこともなく、笑うこともなく、同じ表情で言った。

 

「君の担当アドバイザーとしても、そして、私個人としても、私の考えは決して覆らない。ベル君、君は早急にアーデ氏──ううん、【ソーマ・ファミリア】と縁を切るべき」

 

 何故だ!? と、ベルは反射的に、そう、言い返す所だった。

 理性がなく本能で生きる獣のように、思考や論理を投げ捨てて、エイナに叫ぶところだった。

 それはともすれば、駄々を()ねる子供のように。

 だがしかし、ベルはそうなる一歩手前で踏みとどまった。(あえ)ぐようにして、声を必死に(しぼ)り出す。

 

「……それは何故だ、エイナ嬢? 何故、貴女はそのような忠告をする?」

 

 これまでにベルはエイナに様々な相談事をしてきた。

 その度に彼女は担当アドバイザーとして、彼の友人として、彼の悩みに真摯に向き合い、相談に乗り、彼を導いてきた。

 そして彼女は寄り添うようにして、ベルの意志を尊重してきた。

 だが今のエイナはこれまでとは違い、ベルに()()をしている。

 その事がベルにとっては不可解であり、『子供の癇癪』を未然に防ぐことに繋がった。

 

「理由はもちろんあるよ。まず一つ目は、アーデ氏が言っていたように──彼女が【ヘスティア・ファミリア】ではなくて、【ソーマ・ファミリア】だから」

 

 またそれか、とベルは渋面を作った。

 思っていることをそのまま顔に出して辟易する彼へ、エイナはさらに言う。

 

「良い機会だから言っておくね。ベル君、君が考えている以上に、【ファミリア】同士が付き合う事は難しいの。対等な関係を築くことはとても困難で、友好的な付き合いを継続する為には余程の善神(ぜんしん)──それこそ、神ヘスティアのような神格者じゃないとまず無理」

 

「……そんな事はない筈だ。確かに、最初はそうかもしれないが……」

 

「たとえ君やヘスティア様がその派閥(ファミリア)と仲良くしたい、親睦を深めたいと思っていたとしても、相手が君達の言動を信じる訳じゃない。寧ろ、君達が笑顔を浮かべるほど、手を伸ばすほど、彼等は警戒心を抱き、強くするかもしれない。『抗争』を画策しているのかもしれないと、思われてしまうかもしれない」

 

「……っ」

 

「その反応だと、自身の身でもって何回か体験しているようだね」

 

 図星を突かれたベルは、押し黙るしかなかった。

 ダンジョン探索中、ベルが他の冒険者を見付けて声を掛けても、彼等は喜ばしい顔を決してしなかった。武器の(グリップ)に手を伸ばされる事こそなかったが、彼等は同業者(ベル)の存在をあまり快く思っていなかったようだった。

 

「……これでは、何も変わっていない。いいや、寧ろ後退している」

 

 前髪を乱暴に掻きながら、ベルはそう言った。

 

「べ、ベル君……?」

 

 戸惑うエイナを尻目に、ベルは溜息を漏らす。

 

「……これでは、何の為に時代が移ったのか分からない。ああ、本当に……【ファミリア】とはなんて面倒な体系なんだ。超越存在(デウスデア)たる神々、それに仕える眷族。神々の代理戦争という側面──これら全てが、()()となってしまっている」

 

 この時エイナは、ベル・クラネルに対して何度目になるか分からない『違和感』を抱いた。

 それは彼女がこれまでベル・クラネルと接する上で感じてきたものであり、未だ、答えの見えないものだ。故に彼女は、その『違和感』に少しでも近付こうと思い、暫しの間、様子を伺うことに決めた。

 

「ああ、確かに。今世(いまよ)はとても素晴らしい。人類は簡単に、凶悪なモンスターに対応出来るだけの術を持てるようになった。そして、彼等の死骸から得られる『魔石』を調査、その仕組みを解明することにより利便性が極めて高い魔石製品なんてものも生まれているし、新たな魔道具も日々開発されている。これもひとえに、神々が天界からこの下界に降臨してくれたおかげだ。()()()()()()()()()()()

 

 少年の言葉は、呟きは続く。

 

「『古代(こだい)』から『神時代(しんじだい)』に移ってから、()()。それだけ永久(とわ)に等しい年月が流れてなお、人類は未だ──」

 

 それ以降の独り言を、エイナは聞き取ることが出来なかった。

 ただ、それがエイナには、慟哭(どうこく)のようにも、嘆きのようにも聞こえた。

 ベルが何を視ているのか、その眩い深紅(ルベライト)の瞳は何を映し、ベルはそれをどのように捉えているのか、エイナはそれが気になって気になって仕方がなかった。

 しかし、エイナはどうしても尋ねることが出来なかった。否、決して聞いてはならないと、本能で悟っていた。今の、何かに苦しみ、喘いでいるベルに下手な声掛けをしてはならないと、身体中が訴えていた。

 

「……話の腰を折ってしまってすまない、エイナ嬢」

 

 やがて、ヒューマンの少年はハーフエルフの視線に気付くと、そう言いながら頭を下げた。

 それにエイナは一瞬だけ表情を柔らかいものにして「ううん、気にしないで!」と片手を振って応える。それから彼女は表情と共に話を戻した。

 

「次に、アーデ氏が所属している【ソーマ・ファミリア】が問題」

 

「……彼女の主神、男神ソーマが【ファミリア】の運営方法を変えたことか?」

 

「それもあるけど、私が問題視しているのはもっと別の所かな」

 

「どういう事だ……?」

 

 エイナの言っている意味が分からず、ベルは首を傾げる。ベルからすれば、自身の言った方が問題だと考えていたからだった。

【ファミリア】を運営するのはその【ファミリア】の主神である。面倒事や雑事を嫌い、眷族の団長や副団長、幹部達に仕事をそのまま放り込むという駄目神も中にはいるが、それでも【ファミリア】の方針や規律などの最終決定権はその主神にある。

 そして主神の神意(しんい)に眷族は従う義務がある。どんなに主神と仲良くなろうとも、反対に、どんなに主神の事を嫌ったとしても、『線引き』はしなければならない。

 

「確かにそこもある。でもそれとは別で、【ソーマ・ファミリア】とは関わらない方が良い理由があるんだ」

 

「しかし私が相談した時、エイナ嬢は許可をくれたではないか」

 

「あの時は私も【ソーマ・ファミリア】についてはあまり知識がなかったから、上辺だけの情報を見て、そのように判断してしまった。その点については私に落ち度がある」

 

 エイナは一度謝罪をすると、言葉を続けた。

 

「実は最近、【ソーマ・ファミリア】の構成員が沢山の問題行動を起こしているの。まあ、ベル君も問題行動は起こしているんだけどね」

 

 うぐっ、とベルは言葉に詰まった。ダラダラと大量の汗を顔中に流す。

 顔を青くしている問題児に「注意するように」と、ギルド職員は何度目になるか分からないが釘を刺す。

 

「『冒険者』は荒くれ者が多い。素行が良い『冒険者』は全体の一割にも満たない。多かれ少なかれ、『冒険者』は『市民』から煙たがられている。此処……北西のメインストリートは『冒険者通り』と言われているけれど、これは『冒険者』と『市民』を隔離する意味合いも兼ねているの」

 

「そうだったのか……確かに、可笑しいとは感じていたが……」

 

「それでも尚、管理機関(ギルド)には毎日のように苦情(クレーム)が来ていて、『市民』のフラストレーションは溜まる一方」

 

「……そうか、だから怪物祭(モンスターフィリア)が催されるのか」

 

「正解。管理機関(ギルド)が【ガネーシャ・ファミリア】と協力して開くこの催し物は『冒険者』ではなく『市民』に向けたもの。『市民』の溜まりに溜まったフラストレーションをここで発散させるという目的があるの」

 

 ギルド職員の説明に、ベルは「なるほど」と、相槌を打つ。しかし、彼が怪物祭(モンスターフィリア)の当日に感じた『違和感』、その全てを払拭出来た訳ではなかった。

 寧ろ、『違和感』は強くなったと言っても良いだろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──つまるところ、ベルはこの点が気になって仕方がなかった。

『市民のフラストレーションを発散させる』という目的を達成する方法は他にもあるだろう、とベルは考える。都市の安寧を担う管理機関(ギルド)と、『都市の憲兵』たる【ガネーシャ・ファミリア】が、『モンスターの脱走』を想像しなかったのだと、ベルにはとてもではないが思えなかった。

 

(つまり、怪物祭(モンスターフィリア)にはエイナ嬢が教えてくれたものとは別の『目的』があると考えられるか……)

 

 その『目的』が何か、ベルには分からないが、留意しておいた方が良いと彼は判断した。

 

「話を戻すね。さっきも言ったように、管理機関(ギルド)には毎日沢山の苦情(クレーム)が来るの。そして最近は、とりわけ【ソーマ・ファミリア】関連のものが多いんだ」

 

 そう言って、エイナはベルに、【ソーマ・ファミリア】の構成員が起こした数々の問題行動を、具体例を挙げながら聞かせた。

 それは、言ってしまえばよくある事で、色々と彼女に迷惑を掛けているベルは、自身の事を棚に上げて【ソーマ・ファミリア】の事を悪くいう事は出来なかった。

 

「一番多いのは『魔石の換金額が少ない』っていう訴えかな」

 

「魔石の……? 私も何度かそのような光景を目撃した事はあるが……」

 

「【ソーマ・ファミリア】はとても酷いの。こちらの説明を彼等は聞かず、担当の職員に殴りかかろうとしてくる事も何度かあった」

 

「だ、だがそれは……言ってしまえば、よくある事なのではないか?」

 

 少なくとも、ベルはそのようにナァーザ・エリスイスから教わっている。ベルから見てみても、ギルド職員は慣れた様子で凄んでくる冒険者を撃退していた。

 そしてエイナは、ベルの指摘に深く頷く事で『日常茶飯事』だと認めた。

 

「よくある事だからこそ、君達冒険者に負けず劣らず、その異常──その『異常事態(イレギュラー)』に私達は敏感なの。事実、挙がってきた事例では、その職員が『死』を覚悟したという報告もある」

 

「なッ……!?」

 

 ベルは驚愕で深紅(ルベライト)の瞳を見開いた。

 もしエイナの……そのギルド職員が感じたものが本当だとしたら、それは『(すご)み』という言葉で片付けられるものでは断じてない。

 それは、『脅迫』だ。

神の恩恵(ファルナ)』を授かっている『冒険者』と違い、管理機関(ギルド)に勤めている『ギルド職員』は例外なく『神の恩恵(ファルナ)』を授かっていない。これはオラリオの創設紳が、真の『中立の立場』に立てるように願ったからだ。

 つまり『ギルド職員』は、広義的な意味で分類するならば『市民』という扱いになる。もし万が一にでも刃傷事件にでもなれば、その時、管理機関(ギルド)はどのような沙汰を下すのだろうか。

 

「私も何回かその様子を見た事があるけれど、皆、何かに取り憑かれているかのようにお金に執心していた。混乱……ううん、狂乱、とでも言えば良いのかな」

 

「それはまたどうして……?」

 

「欲深い冒険者だから仕方がない……そう言われてしまえばそこまでなんだけど、私はこれを、とても慎重に取り扱わないといけないと思っている」

 

 冒険者に限らず人の欲というものは恐ろしいから、とエイナは呟くようにして言った。

 異常なまでの金銭欲──その理由をベルが考えていると、エイナは確認するように尋ねた。

 

「ベル君、君は『英雄』になりたくてこの都市にやってきた。そうだよね?」

 

 脈絡のない突然の話題転換。

 それに若干戸惑いつつも、ベルは自信を持って即答した。

 

「ああ、その通りだ。『英雄になりたい』──祖父の死後、私はこの想いでこの『英雄の都』に足を踏み入れた。そして、この迷宮都市(オラリオ)で過ごせば過ごすほど、私のこの想いは強くなっている!」

 

 その宣誓に、エイナは思わず苦笑を浮かべた。

 何度聞いたか分からないその言葉は、今尚、強い輝きを放っている。初めて会った時は『子供の夢』だとあまり本気で対応せず、寧ろ、早々に『現実』を見せるべきだと思っていたものだが、気が付けばエイナは、ベルのことを応援していた。

 そしてだからこそ、彼女は言わなければならない。

 

「『英雄』を目指している君にとって、【ソーマ・ファミリア】は『汚点』となるかもしれない。それでも、君は良いの?」

 

「……『汚点』だと?」

 

「うん、『汚点』。君がどんなに華々しい──それこそ、神々が称えるような『偉業』を成し遂げたとしても、もしそこに『汚点』があれば君への評価は下がると思う。この場合の『汚点』はつまり……柄の悪い、悪い噂があとを経たない冒険者と付き合いがあるっていう事。そうなったら、人々はどう思うかな。人の悪意は恐ろしい。そして、ヒトは『悪』にあっさりと身を委ねてしまう。彼等は──世界は、君の事を『英雄』ではないと言うかもしれない」

 

 そして、エイナは本格的に()()に掛かった。

 

「ベル君、アーデ氏は……君が雇ったサポーターは、本当に信用出来るのかな?」

 

「エイナ嬢、何を言って……?」

 

「ごめんね、ベル君。先に謝らせて欲しい。今から私、君に嫌なことを言うから。でも、それでも敢えて私は言うよ。君の担当アドバイザーとして、君の友人として言わなければならないから」

 

 エイナのその言葉に、その気迫に、何よりも、その翡翠色の瞳に。

 ベルはその覇気に戦き、顔を強張らせ、息を鋭く吸ってしまう。

 

「まず、君とサポーターの出会い。あまりにも唐突過ぎるそれは、()()()()()()()()()()()管理機関(ギルド)は女神ヘスティアの要請のもと、君、ひいては【ヘスティア・ファミリア】の情報を完全に非公開にして秘匿しているけれど、本気で調べ上げようと思えばこれもあまり意味はない。ましてや君と銀の野猿(シルバーバック)の戦いは、多くのダイダロス通りの住人が目撃している。そして迷宮都市(ダンジョンとし)オラリオには腕が立つ『情報屋』が数多くいる。本腰を入れれば、君に辿り着くことは容易に出来る。そのサポーターは偶然を装って、君が新興派閥の【ヘスティア・ファミリア】所属のベル・クラネルだと確信したうえで近付いてきたんじゃないのかな」

 

「……」

 

「君はさっきこう言ったよね。『そのサポーターが悪事を働いているかもしれない』って。勿論、そうだと決め付けるのは良くないよ。もしかしたら君に迫ってきた冒険者こそ、ベル君を騙して窮地に追いやろうとしているのかもしれない」

 

「…………」

 

「あるいは、ベル君を以前襲ってきた『謎の冒険者』の仲間なのかもしれない。そのサポーターは【ファミリア】の会議があると言っていたけれど、実はそれは嘘で、ベル君が独りの状況を意図的に作ったのかもしれない。『謎の冒険者』が君を襲撃しやすいよう、君の攻略階層を教え、夜というダンジョン」

 

「………………」

 

「そのサポーターは、ベル君、何か人に言えないような後ろめたい事をやっているんじゃないのかな?」

 

「……………………」

 

「どうして君はそこまでしてその『サポーター(彼女)』に拘るの?」

 

「……………………それは」

 

「本当はベル君も気が付いているんでしょう? そのサポーターが何か重大な『隠し事』をしているかもしれないって事は。そのサポーターが君に『嘘』を吐いているっていう事は。それでも君は、そのサポーターに拘るの?」

 

 少年の心の内を見透かしているかのように、ハーフエルフの女性は揺れる深紅(ルベライト)の瞳を自身の翡翠色(エメラルド)の瞳で射抜いた。 

 そして、その質問に、その問い詰めに──ベルは。

 重く閉ざしていた口をおもむろに開け、その言葉に応えた。

 

「それでも、『僕』は──」

 

章題とは別に各話にサブタイトルは? (例:『1話』→『始まり』)

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