さあ──『喜劇』を始めよう!   作:Sakiru

44 / 91
覚悟

 

 太陽が西空に沈みつつある頃。

 下界の住人達は迫りつつある夜に備えようと動いていた。

 外で遊んでいた子供達が、働いていた労働者達が、ダンジョンに潜っていた冒険者達が、それぞれの(ホーム)に戻っていく。彼等を待っている者達は夕餉(ゆうげ)の準備を既に始めており、表通りは良い匂いで一杯だった。

 ()の女神としては、それが堪らなく嬉しい。今の季節、暖炉に火は(とも)っていないが……それでも、人々の幸福をヘスティアは感じ取る事が出来るのだ。

 家庭生活の守護神(ヘスティア)はその為なら協力を惜しまないし、自分に出来る事ならやるつもりだ。

 とはいえ、だ。

 ヘスティアは、こう思わずにはいられない。

 

(くそぅー!? どうしてボクはまだ働いているんだ!?)

 

 可笑しい、あまりにも可笑しい──ヘスティアは何度目になるか分からない疑問を胸中で叫ぶ。

 ヘスティアは文字通り身を粉にして働いていた。幼女ほどしかない小さな身体を動かし、懸命に働いていた。

 そんな彼女の勤務先は『ジャガ丸くんの屋台』であり、勤務地は北のメインストリートだ。神友(ヘファイストス)に無理を言ってこの職場を斡旋(あっせん)して貰った彼女が、この職に就いてからはや二ヶ月が経とうとしている。最初こそ『新人』という言い訳が出来たが、ついこの前独り立ちした影響で、自分で考えて動く必要が出てきた。

 彼女は神々の中でも屈指の面倒臭がり屋だ。多くの神友(ヘファイストスやミアハなど)が彼女の甘えん坊で他力本願で楽観的な性格を直そうと、天界に居た頃にあの手この手を使って試行錯誤していたが、結局、彼女の精根は矯正されなかった。

 だがそんな彼女も、万能の力である『神の力(アルカナム)』を喪って下界に降臨してからは、そんな甘い事は言えなくなってしまった。

 一日ニート生活? 

 人は決して叶わない夢を『儚い』と言っているのだと──この前眷族(ベル)に言ったら腹を抱えて爆笑された。イラついたのでツインテール・アタックをお見舞いした──ヘスティアは早々に学んだ。というか、学ばざるを得なかった。

 北のメインストリートは服飾関係でとても(にぎ)わっている。市民、冒険者を問わずしてこの表通りは人で満ち溢れており、同時に、この目抜き通りにはほぼ全ての亜人族(デミ・ヒューマン)が集まる。

 

「ヘスティアちゃん、注文が来たよ! チーズ味を三つだ!」

 

「あいあいさー! お客さんには五分掛かると言ってくれ!」

 

「それじゃあ遅すぎる! 四分で用意しな!」

 

「イエス、マム!」

 

 その疑問も、店主から矢継ぎ早に送られてくる指示によって深く考える時間はないのだが。

 夕刻のこの時間帯を逃せば、『ジャガ丸くんの屋台』を利用する客は激減する。ジャガ丸くんの需要は『美味しさ』と『安さ』にあるが、その反面、『量』はあまりないのだ。子供達のオヤツや軽食にはなるが、主菜にはなれない。精々が副食だ。つまり、一日の最後の勝負に、ヘスティア達は臨んでいるのだ。

 ヘスティア含めた全従業員がそれは分かっている。故に声が嗄れるまで、否、声帯を潰すその一歩手前まで、従業員は声を絞り出し、客引きをしているのだ。

 

(本来ならボクのシフトは二時間前で終わっているのに……。うぅ……早くお家に帰りたいよう……)

 

 弱い自分が、そう、嘆く。

 しかし、今の店の状況で上がるのは気が引けた。ここで「すんませーん、ジブン、帰って良いっすかー?」などと言おうものなら、確実に恨みを買うだろう。それを避けたいヘスティアは、ただ無心で業務に徹することにした。

 

「追加注文だ! サラダ味を頼むよ!」

 

「時間は!?」

 

「さっきのチーズ味と同時だ!」

 

「そんな……無理です! 店長、これ以上はとても手が回りませんッ!?」

 

 今日入ったばかりの新人が、そう、悲鳴を上げた。おお……! と、ヘスティア含めて他の従業員は思う。新人だというのに何ていう勇気の持ち主だという感嘆からだった。

 彼が言ったのは事実であった。

 今の人員と設備では絶対に間に合わない。客を待たせて謝罪する未来が、ヘスティアにはありありと浮かぶ。

「せめてあと二分遅らせて欲しい!」と、あろうことかその新人は叫んだ。

 そしてその叫びに、この屋台の店主──おばちゃんは怒鳴(どな)り返す。

 

「手が回らない!? なら、手を増やしなァ!」

 

 ひぃっ!? と、哀れな青年は先程とは別の意味合いの悲鳴を出した。

 この光景を何度見たことか……と、ヘスティアはじゃが芋を揚げながら思った。これは何も珍しい事ではなかった。新人が受ける『洗礼』だと言えよう。無論、ヘスティアだって受けた。あの時は自分が女神である事を一時忘れ、恐怖で涙目になったものだ。

 

(普段は優しくて良い人なんだけどナァー)

 

 今の店主は、どこぞの酒場のドワーフの女主人だ。

 いつもは従業員の事を大切に扱い、暴言や暴力は決して振るわない素敵な女性なのだが……月末は人が変わったように豹変(ひょうへん)すると、先輩に教えて貰った。

 というのも、月末はその月の売上を上層部に報告しなければならないのだ。ヘスティアには分からないが、この世界で生き残っていくのは生半可な道ではないらしい。事実、先月は一つの屋台が客が来なさ過ぎて潰れたという。ああ、ここは下手したらダンジョンよりも危険地帯なのかもしれないと、その話を聞いた時は思ったものだ。

 とはいえ、ヘスティアが勤めているこの屋台は安泰だ。迷宮都市(オラリオ)に八本通っているメインストリートという立地、さらには幼い女神(ヘスティア)が勤めている事もあり売上はいつも黒字だ。

 しかしそれでも尚、おばちゃんは少しでも売上を上げようと必死なようだった。特に最近は、とある男神(おがみ)が勤めている別店舗が女性の間で人気という情報が流れてきたこともあって、神経をとがらせている。

 ヘスティアはその男神に心当たりが物凄くあったが、誰にもこの事を打ち明けていない。もしこの事を知られれば面倒事に巻き込まれるのは目に見えているし、その男神は神友なので頑張って欲しいと思うのだ。

 

「あと少ししたら【神月祭】が行われるんだ! その時は今の三倍は忙しくなるんだよ! 覚悟を決めな!」

 

 うへえ、とヘスティアは思った。

 その【神月祭】とやらが何か彼女は知らないが、怪物祭(モンスターフィリア)といい、この都市は祭事(さいじ)をやりすぎじゃないだろうか。

 取り敢えずその日は指定休……それが出来なければ有給休暇を取ろう──と、彼女が決心していると、

 

「くそっ、分かりました! やってやりますよ! 俺の本気を今、ここで出します!」

 

 新人が、()えた。

 本気っていったい何だよとか、本気出せるだけの余力があるのなら早く出して欲しかったとかヘスティアや他の従業員達が揃って思う中、唯一、おばちゃんだけは笑っていた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 雄叫びが轟く。

 そして新人は、目にもとまらぬ速度で手を動かし従業員の間を縫って動き始めた。その動きは常人では決して到達出来ないものであり、超越存在(デウスデア)たるヘスティアはいち早くその絡繰(からく)りに気付く。

 

「君、冒険者だったのか!?」

 

 それは『神の恩恵(ファルナ)』を授かっていなければ出来ない動きだった。

 驚愕するヘスティアを見て、その新人は、にやり、と獰猛に笑う。それから彼は自分に出来る事を光の速度でやっていった。

 残像すら見えそうな速度で動き続ける新人に従業員達が呆気にとられ、目を丸くし、作業の手を止める中。

 何がなんだか分からなかったが、ヘスティアは気付けば叫んでいた。

 

「みんなー! このビッグウェーブに乗るしかないぜぇ──ッ!」

 

 

 

 

§

 

 

 

 帰路についたのは日がすっかりと沈み、とうの昔に月が浮かんでいる頃だった。

 結論を言えば、あの後、店は滞りなく回った。それも全て、あの新人のおかげである。なんと末恐ろしいことに、彼はたった一日で殆どの業務を修得したのだ。あと教育するのは細かい所だけで、店主は満面の笑みで独り立ちを許可した。

 自分はその何倍も時間が掛かったんだけどなぁ、とヘスティアは思ったが、自虐はしても嫉妬する事はなかった。寧ろ、すげぇー、という思いで一杯であり、ただただ感心した。自分が素早く動く事は未来永劫出来ないと彼女は自覚しているし、他者と比べても良いことは何もないと分かっていたからだった。

 

(でもあの子……どこの派閥に属しているのかな?)

 

 気になったヘスティアが尋ねても、その新人は曖昧に答えるだけで答えをはぐらかした。まあ、何処に所属していようともヘスティアには直接的には関係ない為、本気で調べようとは思わない。

 

「ベル君、もう帰ってきているかなあ?」

 

 テクテクと歩きながら、自身の唯一の眷族を想う。

 順調過ぎるほどに到達階層及び攻略階層を増やしていっている少年は最近、本拠(ホーム)に帰ってくる時間が遅くなっていた。ダンジョン探索を進めるという事は、その分、より下の階層に潜ることを意味しており、当然ながら往復時間も増えるのだ。さらについ先日からはサポーターを雇い始めているので、深夜の時間帯に帰ってくる事も珍しくなかった。

 今後、【ファミリア】の『遠征』で日帰りが出来なくなり地上に帰還するのは数週間後、という事もあるだろう。

 勿論、ヘスティアはそれが嬉しい。自身の眷族()の成長を喜ばない主神(おや)が居るならヘスティアは見てみたいくらいだ。

 しかし同時に、寂しさも感じてしまう。眷族(こども)の無事を願って本拠(ホーム)に独りで待つのは、寂しがりやなヘスティアにはとても堪えるものになりそうだった。

 

「はぁ……ベル君と夕餉を共に出来るのも、今のうちだけかもしれないなあ……」

 

 いくつもの間道を通りながら、ヘスティアは溜息と共にそう呟いた。

 やがて程なくして、(さび)れた廃教会が姿を現す。此処に人が住んでいるとは……ましてや【ファミリア】の本拠(ホーム)だとは誰も思わないだろう。

 

「最近は地震も多いからなあ……早く建て替えたいぜ……」

 

 管理機関(ギルド)から賠償金で貰ったので、建て替えるだけのヴァリス金貨自体はあるのだが……このお金は緊急事態に使うと眷族と相談して決めてある。【ファミリア】運営の最終決定権は主神であるヘスティアにあるが、彼女は、出来るならそのような事はしたくないと考えていた。

 あまりにも地震が続くようならまたその時に相談しよう、と忘れないように頭のメモに書き込みつつ、彼女はキョロキョロと辺りを見渡した。尾行されていないか確認すると──全知零能(ぜんちれいのう)である彼女が行っても効果はあまり期待出来ない事は承知の上で──、彼女は地下に続く階段に足を向けた。

 ガチャ、と鍵を開け、

 

「うおっ!?」

 

 と、驚愕の声を上げた。

 暗闇に満ちていると思っていた本拠(ホーム)が魔石灯の明るい光で満たされていたからだ。

 眩い光に思わず手を翳し、目が慣れるまで待つ。まさか敵襲かとヘスティアは身構えた。

 しかし、彼女のそれは杞憂(きゆう)で済む事となった。

 

「お帰り、ヘスティア!」

 

 そう言って彼女を笑顔で出迎えたのは、他ならない、彼女の唯一の眷族であるベルだった。

 少年の姿を認めたヘスティアは一日の疲れが何処かに弾け飛ぶのを感じた。その代わりにやって来たのはあたたかい気持ちだった。

 どうしてベルがこんなにも早い時間に? という疑問を忘れ、彼女は、にぱあっ、と笑顔を浮かべた。「ベルくぅーん!」とそのまま彼の腰に抱き着く。

 

「ただいまベル君!」

 

「ああ、お帰りヘスティア。シフト表を見る限りでは随分と遅くなったようだが……大丈夫か?」

 

「大丈夫、大丈夫さ!」

 

 この通り元気さ! と、ヘスティアは自身の豊満な胸を叩く。

 ベルはその元気振りに苦笑すると、ヘスティアを優しく離して彼女の手を握り、そのまま、玄関から居間に連れて行く。

 台所からは良い匂いと共に鍋から白い湯気が立ち昇っていた。俎板(まないた)の上には包丁と切りかけの野菜が置いてあり、きっと、夕食を作っていたのだろう。

 

「晩御飯の準備は私がしておくから、ヘスティアは先に湯浴みして汗を流すと良い。風呂はもう沸かしてあるから」

 

「それは本当かい!? なら、遠慮なくお先に失礼するよ!」

 

 眷族に雑事をさせてしまうことに心の中で詫びつつも、ヘスティアは厚意に甘える事にした。既に用意されていた寝間着とバスタオルを抱え、脱衣所に入る。

 髪を()んでいるリボンを外し、小さな箱の中に大事に仕舞う。これは眷族が初めて贈ってくれた宝物だから、無くすようなことがあってはならない。

 次に、純白のドレス染みた私服や下着類を脱ぎ、洗濯機の中に放り込む。文明の利器であるこの魔石製品のおかげで、主婦は寒い季節、手が(かじか)むことが激減したという。

 浴室に通じる扉を開けると、凄まじい熱気がヘスティアの身体を襲い、視界が湯気で覆われた。

 曇っている窓硝子(まどガラス)を手で拭くと、それは女神の裸体を映した。光沢のある漆黒の髪は際限のない光を放ち、整った顔は見る者全てを惹きつけ、美しい(あお)色の瞳はどんな宝石よりも輝いている。未成熟の幼い身体に反する双丘、その谷間は部屋の暑さに応じてやや桃色に染まっている。すらりと伸びた肢体(したい)はどんな芸術品にだって再現出来ないだろう。

 

(扉の向こうには男子(おのこ)が居るというこの状況……貞潔の女神(アルテミス)が聞いたらカンカンに怒りそうだなあ……)

 

 皮膚を傷つけないよう細心の注意を払いながら石鹸(せっけん)で身体を擦っていると、ふと、『大の恋愛アンチ』の神友をヘスティアは思い出した。

『彼女』は元気に過ごしているだろうか……最後に会ったのは、もう、数十年も前の事か。天界にあるヘスティアの神殿に『彼女』はよく来てくれた。今思えば、随分と心配を掛けたものだ。同じ処女神、という事もあるだろうが……『彼女』は自身の仕事の合間を縫っては遊びに来てくれた。一緒に本を読んだこともあれば、『彼女』が狩りをしている所を近くで見させて貰った事もあったか。

 迷宮都市(オラリオ)に【ファミリア】の籍があるのは既に確認済みで、会いたいとも思うのだが、未だに再会出来ていないのが実情だ。というのも、『彼女』の【ファミリア】は本籍を都市に置きながら、例外的に、都市外での活動が許されているようで、現在、【ファミリア】の本拠(ホーム)には誰も居ないらしい。何でも、過去の『偉業』──『暗黒期』での活躍と実績が創設紳の許しを得るのに繋がったのだとか。

 創設紳とはヘスティアも面識がある。それこそ最後に会ったのは千年も前のことだが、『彼』は『彼女』と同等、否、それ以上に厳格で真面目だ。その『彼』が特例で許可を出したのだというのだから、我が神友ながら、いったいどれだけの事をやらかしたのか……。

 

「早く会いたいな──いや待てよ。あの子はベル君と気が合うかな……?」

 

『彼女』は三大処女神の一柱だ。いやまあ、斯く言う自分(ヘスティア)もその一柱なのだが……『彼女』は処女神である事を誇りに思っている。

 女子(おなご)が大好きだと公言している眷族(ベル)とは馬が合わない可能性が高い。いや最悪の場合、眷族が粗相をしてしまい、怒り狂った『彼女』によって矢で射抜かれるかも……。

 この前は半ば冗談交じりでベルに警告していたが、これは念の為、彼等を引き合わせるのは時期(じき)を見てからにしよう。

 そんな決意をしつつ、ヘスティアは身体についている石鹸の泡を汚れと共にシャワーで洗い流した。

 そして、

 

「ふぅ~~~~……」

 

 湯船に浸かる。湯温はヘスティアに合わせてあるのか最適で、気持ち良い。

 思わず感嘆の溜息を吐いてしまうのは仕方がない事だと自己弁護する。身体を伸ばし、しっかりと肩まで浸かる。

 使いすぎると魔石の交換が早くなってしまう為に、浴槽いっぱいにお湯が入っている訳でも、充分な広さがある訳でもないが、ヘスティアはこれで満足している。神塔(バベル)にある神聖浴場に興味がない訳ではないが……あそこは女神達で姦しいし、噂で聞くところによると、昔の話だが、とある男神によって覗き見されたこともあるらしい。何よりも神聖浴場を使う為には高い使用料を払う必要があり、常に火の車である【ファミリア】の事を思えばとてもではないが行けない。

 

「いやあ……それにしてもウチのベル君は優秀だぜぃー……」

 

 それは最近、ヘスティアが常々思っている事だった。

 普段の()()からはあまりそう思われないが、一緒に住んでいる彼女はベル・クラネルの優秀さをひしひしと感じていた。

 一般的な料理なら出来るし、家事も問題なく出来る。流石に神々が扱う【神聖文字(ヒエログリフ)】は修得出来なかったようだが、幼少期、様々な種族の英雄譚が読みたいと育ての親に強請った影響で大半の亜人族(デミ・ヒューマン)の言語の読み書きも出来る。ヘスティアが疲れていたら必ず声を掛けてくれて相談に乗ってくれるし、優しいし、何より、一緒にいて楽しい。

 主神の贔屓目から見ても、眷族(ベル)は非常に優秀だ。

 

(これでもう少しマトモで変態じゃなかったら女子(おなご)からモテているだろうに……)

 

 それこそ、彼が時折口にしている『ハーレム』も夢ではないだろう。まあ、処女神(じぶん)の眷族である以上、その夢は絶対に叶えさせないつもりだが。

 

「もっと可愛げがあればなぁ……」

 

 もしそうだったら、ヘスティアはあっさりとハートを射抜かれていたかもしれない。「この出会いは運命だァー!」と、街中で叫び出しそうだ。

 しかし、そんな世界線を想像する事が彼女には出来なかった。仮にも処女神である自分が自身の眷族にゾッコンになる姿は見るに堪えないし、他の処女神から怒られそうだ。

 それにベルに対して失礼だろう。

 自身を(いまし)めたヘスティアはこれ以上はのぼせると考え、浴槽から出ることにした。最後に上がり湯をズバーン、と、いつもよりも思い切り掛け、脱衣所に出る。バスタオルで全身の水気を拭い取り、フェイスタオルで髪を拭く。長い髪をたった一枚で完全に乾かすことは困難で、彼女はもう一枚使用した。タオルで髪を()き、普段着に酷似している純白の寝間着を着る。

 居間に出たヘスティアは、まず、テーブルの上に料理が並べられているのを確認した。どれも美味しそうで、彼女のお腹が、くぅ、と鳴る。

 へへへへっ、と涎を垂らしながら、ヘスティアはソファーの上で横になり仰向けで本を読んでいるベルに声を掛けた。

 

「ベルくーん、上がったよ! 君も入りなよ!」

 

「……」

 

「……? おーい、ベル君?」

 

 ヘスティアの呼び掛けに、ベルは反応しなかった。

 余程読書に集中しているのだろうか。同じ趣味を持つヘスティアとしては、対応に困る事となった。強引にでも本を奪い取る事は出来ればしたくない。

 しかし、そうもいってられない。風呂を無意味に沸かし続けるほどの余裕が【ヘスティア・ファミリア】にはないし、何よりも、出来上がっている料理が冷めてしまう。

 どうしたものかと腕を組んで悩んでいると……彼女はふと違和感を抱いた。

 数分が経つというのに、一向に、本の(ページ)が捲られないのだ。何回も読み返したくなる程の場面だとしても、可笑しい。

 数秒の逡巡の後、

 

(えぇい、(まま)よ! とうっ!)

 

 覚悟を決め、ヘスティアはベルの腹の上にダイビングした! 

 

「ぐへぇっ!?」

 

 意識外からの突然の衝撃に、ベルが本を床に落として悲鳴を上げる。

 ベルは痛みで悶え苦しみ、ソファーの上で溺れるようにして両手両足をジタバタと動かす。そして、ヘスティアごと床に落ちた。

 

「へ、ヘスティア……? 急にいったいどうした?」

 

 腹を撫でつつ、ベルがヘスティアに尋ねる。

 ヘスティアは情けなく「ごめんよぅ」と謝りながら理由を話した。

 

「……ベル君の様子が変だったからさ、心配になって」

 

 ヘスティアがそう言うと、ベルはぱちくりと瞬きした。

 

「様子が変だった? 私がか?」

 

「うん、変だったよ。ボクが何度話し掛けても石像のように反応なかったし」

 

「そうか……」

 

 そう呟くと、彼は謝罪の言葉を口にする。

 

「すまないヘスティア。少し考え事をしていた」

 

 考え事? ヘスティアは疑問を抱きつつも、

 

「そうだったのか……。ごめんよ、ベル君。もう少し待つべきだったね」

 

「いや、寧ろ助かる。きっと堂々巡りしていただろう」

 

 ベルはそう言うと、「よっこらしょ」とヘスティアごと身体を起こした。

 

「私も湯浴みをしてこよう。夕餉は見ての通り準備してあるから、先に食べていて構わない」

 

「いや、待つさ。ボクは独りではなく君と一緒に食べたい」

 

「ははっ、そうか。ならすぐに上がるようにするとしよう!」

 

 そう言いながらベルは入浴の準備を始める。必要物品を持って脱衣所に歩みを進める途中で、彼は思い出したように「あっ、そうだ!」と突然叫んだ。

 いったい何事かと驚くヘスティアを他所に、ベルはダンジョン探索時に携行しているボディバッグを漁る。そして彼は一枚の白い封書を取り出し、それをヘスティアに手渡した。

 

「これは何だい?」

 

「今日、エイナ嬢から渡された。『特例措置』について書かれている重要書類だと説明を受けた」

 

「……なるほどね。分かった、君がお風呂に入っている間に読んでおこう」

 

「頼む」

 

 ベルはそう言って、今度こそ脱衣所に姿を消した。

 ヘスティアは笑顔で見送ってから、封書を裏返す。そこには管理機関の捺印(なついん)と、ギルド長ロイマン・マルディールの署名(サイン)がされていた。

 中に入っているだろう羊皮紙を傷つけないよう細心の注意を払いつつ、彼女は(はさみ)で封書の上側を切る。そして綺麗に折りたたまれている羊皮紙を取り出すと、書かれている内容に目を通した。

 ──羊皮紙には以下の事が掛かれていた。

 一つ目は、『特例措置』の執行日。これは一週間後に行われるようで、月末の月末だ。同時にこの日は、管理機関(ギルド)への納税の期日でもある。『特例措置』の『条件』の中には、『【ファミリア】の等級(ランク)よりも多い額の税金を納める』事も含まれている為、この日に税を納めろという指示だろう。

 二つ目は、この執行日に行われる内容が書かれていた。上記の『納税』以外にも、もう一つ、『冒険者ベル・クラネルの【ステイタス】報告義務』が【ヘスティア・ファミリア】には課せられている。この【ステイタス】の範囲は『スキル』や『魔法』は含まず『基本アビリティ』──『(ちから)』『耐久(たいきゅう)』『器用(きよう)』『敏捷(びんしょう)』『魔力(まりょく)』といった【ステイタス】の基礎的な部分──だ。

 その他注意事項など、全てを読み終えたヘスティアは思わず、

 

「はあ……──」

 

 と、悩まし気な声を出してしまう。

 遂にこの日が来たか、という心境だった。

 

「あー、どうしようかなぁ……。流石にこれは誤魔化せないしなぁ……」

 

 ヘスティアはブツブツと呟きながら、ファイルから、最新のベル・クラネルの【ステイタス】が書き込まれている羊皮紙を取り出した。

 

 

 

 

§

 

 

 

 ベル・クラネル

 Lv.1

 力:A882

 耐久:C678

 器用:A806

 敏捷:S939

 魔力:F300

 

 

 

 

§

 

 

 

「これを見せたら、どうなる事やら……」

 

 考えるだけでも恐ろしい、とヘスティアは身震いした。

 羊皮紙に書かれている内容全てが『バグ』を疑うレベルで可笑しかった。もし他の神が()()を見たら、一瞬、自分の目が節穴なのではないかと疑うだろう。そして次の瞬間には引き()った表情を浮かべるだろう。

 ヘスティアが『神の恩恵(ファルナ)』をベルに授けてから、まだ二月(ふたつき)も経っていない。それなのにも関わらず、ベルは有り得ない数値を叩き出している。

 

(これもレア・スキル【英雄回帰(アルゴノゥト)】に()るものか……?)

 

 ベル・クラネルが発現させたスキル──【英雄回帰(アルゴノゥト)】。このスキルが発現してから、少年の爆発的な成長、否、昇華は始まった。

 

(とはいえ、このスキルだけとは思えない。そしてボクには心当たりがある。まず間違いなく、ベル君を襲った『謎の冒険者』が原因だ)

 

 それだけ、『謎の冒険者』に襲われてからの上昇率とそれ以前の上昇率は違う。

 忌々しい事この上ないが、皮肉な事にも、『謎の冒険者』との交戦がベルの『英雄』になりたいという想い(いし)の丈をより一層強くしたのだろう。

 

「数値だけなら、『昇格(ランクアップ)』が可能なんだよなぁ……」

 

 ベルにはまだ告げていないが、数値だけを考えるなら『昇格(ランクアップ)』は充分に可能だ。

 しかし、ベルはまだ『昇格(ランクアップ)』を遂げていない。いや、ヘスティアが意図してさせていないのだ。

 その理由は主に二つ。

 一つ目は、ヘスティアがまだ、『昇格(ランクアップ)』の時期ではないと判断しているからだ。

昇格(ランクアップ)』を果たす時、それまであった【ステイタス】は最低評価の【I】になる。しかしながらそれは見かけ上の話であり、その前までの数値は、言わば潜在値として『貯金』される。

 例えば同じLv.2の全く同じ【ステイタス】同士の冒険者が戦った場合、その『貯金』の有無によって勝敗が決することは珍しい話ではない。ヘスティアから見れば、『力』『器用』『敏捷』の評価項目は大変素晴らしく申し分ないが、反対に『耐久』は全然駄目だ。一撃被弾してノックアウトではこれから先のダンジョン探索でベルは確実に死に至る。主神としては最低でも評価【B】、出来れば評価【A】になって欲しい。『魔力』も同様で、彼の特異性を考えて精神疲弊(マインドダウン)が起こらない評価にまでして欲しいと思っている。

 二つ目は、というかこれが最大の理由だが、数値は足りていても別の理由で『昇格』出来ないのだ。より具体的には、上位の【経験値(エクセリア)】が足りない。

 そしてヘスティアには、これが腑に落ちないでいた。

 

銀の野猿(シルバーバック)に『謎の冒険者』との死闘。この二つとも、ベル君にとっては格上だ。銀の野猿(シルバーバック)には勝利をしている。『謎の冒険者』には惨敗してしまったけれど、【経験値(エクセリア)】の質としては今の彼にとっては最高だ。それは【英雄回帰(アルゴノゥト)】の効果上昇からも間違いない」

 

 しかしそれでも尚、上位の【経験値(エクセリア)】が何故か足りないのだ。

 

「どうしてだ……? 普通なら間違いなく『偉業』に数えられる筈だ。それなのにどうして『昇格(ランクアップ)』が出来ない?」

 

 何か根本的な原因があるのは間違いない。しかしヘスティアはいくら考えてもそれが何か分からなかった。

 結局、ヘスティアは考えるのをやめた。どんなに誤魔化そうとしたってバレるものはバレる。ましてや『特例措置』は彼女自身が管理機関(ギルド)に要求したのだ。女神として契約を反故にする事は決して赦されない。

 羊皮紙を白い封書の中に仕舞ったところで、ベルが脱衣所から出た。フェイスタオルを首に掛け「上がったぞ」とヘスティアに報告する。

 それから二人はテーブルを挟む形で椅子に腰掛けると、合掌した。

 

「「いただきます」」

 

 挨拶をして、ヘスティアとベルは夕食を取った。

 ベルが作った料理は美味であり、ヘスティアは瞬く間に自分の分を食べてしまう。しかしベルの食の進み具合はとても遅かった。

 普段はこの時間、和気藹々とした空気が食卓に流れるものだが、今日はそれがない。その理由は明らかで、ベルが黙々と食べているからだ。

 ヘスティアが声を掛ければすぐに笑みを浮かべて反応するが、それもすぐになくなり、()()()()()表情に戻る。

 

「……」

 

 ヘスティアが食べ終わってから数分後になってようやく、ベルはようやく料理を食べた。

 

「ご馳走様。ヘスティア、皿洗いは私がするからゆっくりして──」

 

「座るんだ、ベル君」

 

 椅子から立ち上がろうとするベルを、ヘスティアは留めた。

 ぱちくりと瞬きする彼に、女神は蒼の瞳を向ける。

 そして彼女は「はあ」と溜息を吐くと、

 

「君、何か悩みがあるね?」

 

 と、そう言った。

 ベルは一瞬だけ深紅(ルベライト)の瞳を大きくすると、視線を逸らし、ヘスティアの顔を見ようとしなかった。

 だがヘスティアはそれを許さない。女神の問いに答えない不届き者を罰する為、彼女は椅子からぴょん、と降り立つと少年の前に回り込み逃げ道を潰す。

 

「あー、ヘスティア? 距離が近いような気がするのだが?」

 

「おいおいベル君、これがいつものボク達の距離だろう? 今更何を言うんだい?」

 

 大量の冷や汗を額から頬に流すベルに、ヘスティアはさらにズズいっと、追い打ちとばかりに顔を近付けた。

 

(やっぱりそうだ……)

 

 至近距離で少年の深紅(ルベライト)の瞳を見詰め、ヘスティアは確信した。

 ぐわあっ、とベルに襲い掛かる。

 

「さあ、吐くんだベル君! 吐かないとボクの最終奥義、ツインテール・ビッグバンアタックスラッシュを喰らわせるぞ!」

 

「そ、そんな奥義があっただなんて初めて聞いたぞ……」

 

「フフン、当然さ! たった今適当に思いついたばかりだからネ!」

 

 ヘスティアはそう言いながら、親指を立ててドヤ顔を浮かべた。

 それを見たベルは脱力し──薄く笑った。それから彼は深く息を吐き「参ったなあ」と言った。

 

「貴女には敵わない。『彼女』もそうだったが……貴女達はいとも簡単に私の心中を察し、そして当ててくれる」

 

「おいおいおい、そんなの当り前じゃないか。ボク達は家族(ファミリア)で、そしてボクは君の母親(おや)だぜ?」

 

「ははっ、ははははははははっ! そうだったな!」

 

 盲点だったというように、暫くの間、ベルは声を立てて笑った。

 それから数分後、ベルは真剣な表情を浮かべるとヘスティアに言った。

 

「ヘスティア、話がある。聞いてくれるか?」

 

「ああ、聞かせてくれ」

 

「実は今朝──」

 

 ヘスティアはベルの話に耳を傾けた。

 今朝、以前に会った冒険者に声を掛けられた事。契約しているサポーターが実は身分を偽った『賊』であり、少年は騙されている事。サポーターと合流したら【ファミリア】の運営方針が変わった事を理由に、契約解除を迫られた事。その後担当アドバイザーに相談に行ったところ、早急に【ソーマ・ファミリア】と縁を切るように言われた事。

 それらの事柄をヘスティアは時折相槌を打ちながら、傾聴に徹する。

 

「なるほど。話はよく分かったよ」

 

 話を聞き終えたヘスティアはそう言うと、それまで伏せていた蒼の瞳をおもむろに開けた。

 

「アドバイザー君が言った、【ソーマ・ファミリア】の問題行動についてはボクにも一つ心当たりがある。派閥の団員が換金額が少ないとギルド職員に詰め寄っている所を、この前目撃したんだ。そして率直な感想を述べるならば、その時の彼等は、『正気』だとはとても思えなかった」

 

「……『正気』ではない、か。エイナ嬢もそのように言っていたな」

 

「うん、そうだ。彼等は換金額が少ない事に憤りを覚え、そして抗議をしていた。それは単なる『金銭欲』なのか……それとも別の何かへの『執着心』から来るものなのか──そこまでは分からないけれど、()()()()()()()()()()()()。これが個人ならまだ良い。でも話を聞く限りだと【ソーマ・ファミリア】の殆どの構成員がそれに魅入られている」

 

「まるで美の神の『魅了』のように……」と、ヘスティアは言うと、言葉を続けた。

 

「それに派閥の内情も、どうにも()()()()。大手派閥とも張り合える団員数……彼等は本当に主神(ソーマ)に忠義を誓っているのか?」

 

「私もそこは気になっていた。ギルド職員(エイナ嬢)団員(リリ)曰く、男神ソーマは【ファミリア】運営にあまり積極的ではないようだ。なのにも関わらず眷族の数は多い。もしかしたら彼等の『執着』がここに関係しているかもしれないな……」

 

 ヘスティアはベルの深紅(ルベライト)の瞳を真っすぐと見詰めながら、言った。

 

「べル君、ボク達が考えている以上に【ソーマ・ファミリア】の闇は深そうだ。アーデ君とこれからもダンジョン探索をしたいと言うのなら、避けては通れない道だ」

 

 女神はさらに続ける。

 

「下手したら【ソーマ・ファミリア】との抗争に発展するかもしれない。そうでなくとも、今以上に【ヘスティア・ファミリア】は複雑な立ち位置に置かれるだろう。そのサポーターが何か後ろめたい事をしてるのはほぼ確定で、ボク達にメリットは何もない。何よりも、彼女自身が君との縁を切ろうとしている。助けが必要なら、彼女はそんな事を言わないだろう」

 

 女神はさらに問い詰める。

 

「それでも君は、彼女との縁を大事にするのかい? アドバイザー君にも言われたんだろう? もし君が『英雄』になった時、彼女の存在が『汚点』になるかもしれないと。それが分かっていながら君は、自ら愚行を犯すのかい?」

 

 少年はその問い掛けに答えた。

 

 

 

「それでも──それでも『僕』は、あの子を笑顔にしたい」

 

 

 

 ベルはヘスティアの蒼の瞳を真っすぐと見詰めながら、言った。

 

「あの子は……リリはずっと笑っているんだ。誰もが好むような笑みを浮かべて、いつもニコニコと笑っているんだ。でもそれは打算的なもので、本心から来るものじゃない。そしてあの子は、自己評価が途轍もなく低い。自分には何も出来ないのだと、価値が無いのだと思い込み、自虐的な笑みを浮かべている。『僕』達が晴れ渡るような青空の下で日々を過ごす中、あの子は灰色の空の下で『僕』達を遠くから嘲笑い──寂しそうに見ているんだ」

 

「だから、助けるのかい? 助けを求めているのかも定かではない少女(あの子)を? もし君が助けても、あの子が感謝するとは限らないよ?」

 

「別にそれでも良い。『僕』を恨んでくれても構わない。いつかあの子が心から笑い、この世界の美しさに気付いてくれたら、それで」

 

 そのベルの言葉を聞いた、ヘスティアは、

 

「『お節介』……いいや、違うな。君のそれは酷く独善的な『エゴ』だよ」

 

 と、呆れたように指摘する。

 ベルはその批判に、にやり、と笑みをもって応えた。それから彼は真剣な表情で宣誓する。

 

「ああ、これは『僕』の『エゴ』だ」

 

「……開き直っている自覚はあるかい?」

 

「勿論、あるさ。それが『エゴ』だろうと、『偽善』だろうと構わない。『僕』が笑われるのは良い。馬鹿にされるのも、後ろ指を刺されるのもいい。理解される事など最初から求めていないのだから」

 

「……ベル君、きみは」

 

「そして、『僕』にはそれに向き合う覚悟がある」

 

 ヘスティアは「ハア」と深々と溜息を吐いた。

 

(何だ、『答え』は既に出していたんじゃないか。いや、『答え』は元から出していたのだろう)

 

 それこそ、少年が初めて少女に会った時に。

 悩んでいたのは恐らく、自分(ファミリア)への迷惑だ。担当アドバイザーからの忠告が、何よりも、少年の優しさが、一歩踏み出すのを躊躇わせていた。

 ならば、【ファミリア】の主神として、彼の母親(おや)として、やるべき事は決まっている。

 

「『覚悟』という言葉を(ボク)を前にして使ったんだ。撤回する事は今更出来ないよ。それは分かっているね?」

 

「無論だ。言葉は、人と人とが結ぶ尊きもので──覚悟とは、その者の強い意志を表しているのだから。『僕』に二言はない。彼女が本当に『悪事』を働いているというのなら、仲間の『僕』が責任を取る」

 

 少年の深紅(ルベライト)の瞳に揺らぎは見られなかった。寧ろ、彼が言葉を放つ度、その輝きは強くなり、眩い光を放つ。

 そして、炉の女神(ヘスティア)は静かに言った。

 

「それなら、ボクに見せてくれよベル君。君が紡ぐ、新たな物語をさ」

 

章題とは別に各話にサブタイトルは? (例:『1話』→『始まり』)

  • 必要
  • 不必要
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。