音を愛す君へ   作:tanuu

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第ⅩⅩⅤ音 京都府大会

 七月八日土曜日。その日の夕方くらいに戻るという話を聞いて、希美先輩はずっと落ち着かない感じで朝を過ごしていた。部活に行く私を見送る時も、ソワソワしていたのでよっぽど待っていたのだと思う。確かに付き合ってから半年と少しで恋人が海外に行ってしまったとなれば、待ち焦がれるのも無理はない。しかもそれまではずっと毎日顔を合わせることが出来ていた間柄であるという事を加味すれば、なおのこと。

 

 自分より浮かれている人がいるので、逆に冷静でいられるけれど、かく言う私もそれなりに楽しみにしていた。ここ数年はずっと毎日家にいたので、ここ数ヶ月が随分長い時間だったように感じられる。その前の留学中数年間よりもずっと長く感じたのは、私たち兄妹の関係性が変化したからだろうか。

 

「おはようございます」  

 

 朝の音楽室を開けたら、凄い勢いで高坂先輩が近付いてきた。

 

「桜地先生帰って来るの!?」

「え、えぇ、まぁ、はいそうですけど……」

「こら、麗奈ちゃん。涼音ちゃん困ってるでしょ」

 

 後ろからにこやかに迫って来た秋子先輩により、強制的に私から引き剥がされている。普段の印象とは真逆というか、後輩が見れば目を丸くするだろう。何と言うか、忠犬? 犬がしっぽを振っているイメージが脳内に湧いて出てきた。流石に失礼なので考えなかったことにする。

 

「でも嬉しいな。先輩戻って来るんだね。何日に?」

「今日です」

 

 流石にビックリしたのか、秋子先輩も目を丸くしている。後ろの方で予定を作成していたであろう部長も、こっちにやって来た。三年生の先輩方からは人気が高いことを改めて認識する。普通の先輩が戻ってくるだけじゃあここまで大騒ぎにはならないだろう。

 

「今日!? 早いね、練習は参加……してくれるよね?」

「はい。ただし府大会の翌日から、という事でした」

「なるほど、ありがとう。じゃあ、そういう風に予定組んでおくから」

 

 部長も安心したような顔でメモしている。部長と兄さんの関係性はイマイチ分からない部分もあるけれど、尊敬していることは間違いないのだろう。特に先生と直接接するようになり、部の運営を行う中で、必ずしも先生と意見が一致しないことも増えているんだと思う。それを表に出してはいないけれど、そういう事を相談できる相手として兄さんは適切なんじゃないだろうか。だから部長としても帰還は歓迎するべきことなのだろう。

 

「おはようございまーす。って何々、どういう事態?」 

「あ、おはよう。先輩が戻って来るって話だよ」

「え、マジ? いつからいつから?」

「連絡くらいしてくれれば良いのにねぇ。でも戻ってきてくれるんだ。忙しそうだから、無理だと思ってたよ」

 

 勢いよく入って来たパーカスの井上先輩が秋子先輩の答えにビックリしつつすぐさま予定を聞いて来る。秋子先輩がただ「先輩」とだけ言った場合は兄さんを指している、というのは部内ではそこそこ有名な話だった。特に二三年生の間では、その理由と共に。隣で堺先輩も良かった、という顔になっている。

 

 この後何度も何度も同じ質問をされ、その度に答えることとなり、中々疲弊してしまった。パーカス、サックス、トロンボーン、トランペット、クラリネット、ダブルリード、低音……次々とやってくる二三年生に朝の音楽室は大混乱というか、大騒ぎだった。思い思いに話をしたり、兄さんの連絡先を知っている人はLINEしたりしている。まだ飛行機の中にいるとは思うので、空港で開いたら数十件のメッセージがあるのを発見するんだろう。よく分かっていない一年生は置いてけぼりだった。

 

 優子先輩たちや純一さんには個別にしっかり連絡しているようで、そのメッセージがこの前からずっと来ていた。その気遣いを後輩にも向けてくれると、私がこうして質問攻めにされずに済んだんだけどなぁと、内心で苦笑した。結局、この騒ぎは収まることなく、朝のミーティングで先生が入って来るまで続くことになる。「なんですか、これは……?」という困惑した顔の先生は、非常に珍しい表情だった。何とか部長が事態を収めて、ミーティングが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「まだかな」

「まだじゃないですか」

「……まだかな」

「大丈夫ですって」

 

 希美先輩はずっと落ち着かない様子を見せている。練習が終わって家に帰ってからもずっとこんな感じだ。つけっぱなしのテレビから流れる音を誰も聞いてはいなかった。一応ソファに座ってテレビを見ている風の雫さんも玄関の方をしきりに気にしている。冷蔵庫の中には今晩の夕食が鎮座していた。希美先輩が朝から張り切って作っていたのを知っている。兄さんが日本食を希望したらしく、和食中心で献立が作られていた。

 

「大丈夫かな」

「ちょっと落ち着きましょう」

「でも……」

 

 その時ガチャっと鍵の開く音が玄関の方から響く。この家の合鍵を持っているのは普段から居住している人だけなので、この音の主が兄さんであることは疑いようもない。凄い勢いで飛び出した希美先輩の後ろから私も小走りでついていく。玄関に行けば、スーツケースを引っ張りながら戸を開けて入って来る姿があった。

 

「おかえり~!!」

「ぐえっ!」

 

 サンダルで勢いよく希美先輩が抱き着きに行ったせいで、兄さんがダメージを受けていた。女の子とは言え、人ひとりがあの勢いでダイブしたらそうなるのも無理はないと思う。決して希美先輩が重たいとかそういう意味ではない。まぁ恋愛的に重たくないかと言えば否定も出来ないけれど。

 

「汗かいてるから離れた方が良いと思うけど」

「やだ」

「やだってそんな子供みたいな」

 

 シャツに顔を埋めて動かなくなっている先輩の髪を撫でながら、ちょっと困った顔で笑っている。愛しそうなその表情は、恋人に向ける顔として辞書に載っていてもおかしくないような、そんな顔だった。

 

「お帰り、兄さん」 

「ただいま」

 

 柔らかく優しい笑顔が私に向けられている。色々と言いたいことはあったけれど、ハッキリとは言葉に出来ない。たった数ヶ月でここまでになってしまうなんて、私も弱くなってしまったと思う。やっぱりお兄ちゃん大好きじゃんとケラケラ笑っている脳内の友人には、取り敢えず黙ってもらうことにした。後ろの方では雫さんが私たちの様子を見守っている。

 

 この家にいるべき人が全員揃った。心なしか、お屋敷が華やいでいるような気がする。九十九年経た文物には魂が宿るという。なら、明治期に建てられたこの家にも何かしらの想いがあるのだろうか。家主の帰還で空気が変わったことを、私が何となくそんな風に捉えているだけなのだろうか。どっちにしても慶事であることに変わりはない。

 

 その後希美先輩を何とか引き剥がして、兄さんは荷物を置いて着替えに行った。関西空港からは電車で戻って来たらしい。駅の乗り換えなんかで結構汗をかく。日本とヨーロッパのどちらが暑いのかと言えば、答えは明白だった。熱中症の注意が各種天気予報で連日連夜流されている。食卓に四人が座ったのはいつ以来だろう。優子先輩たちが来る時を除けば、随分と遠い昔に思えた。希美先輩の前、私の隣が兄さんの席になっている。

 

「かんぱーい!」

 

 既にビール缶二本目に突入している雫さんは大分酔っぱらっている。お酒に強くないのに飲むのは好きなので、いつも二本目くらいでこんな感じになっていた。兄さんは大分強いと本人は言っていた。多分、お母さんが九州の人だからだと思う。

 

「あ、美味しい……。日本食万歳!」

「別に向こうだって美味しいご飯はあるんじゃない?」

「あるけども。やっぱり米と味噌と醤油。この辺が無いとやってらんないからね。食べなくても生きては行けるけど、あった方が良い。と言うかマジで美味いなこれ。これもう、私いらないか」

「そんな事無いでしょ、まったく。そんな褒めたって大したもの出てこないよ」

 

 口ではそう言いつつ、希美先輩の顔はニコニコしている。でも確かに兄さんの言う通り、希美先輩の料理の腕前は凄く上手だと思う。元々上手かったけれど、最近はもっと上手になっていた。全く進歩の無い私と比べると雲泥の差だと思う。

 

「あ、出ては来るんですね……」

「そう言えば書類が何枚か来てたよ。部屋に置いてあるから、後で確認してね」

「さっき見た。ありがと」

「それと、明日からの予定も教えてね。何時に起きるとか、何時に出かけて帰って来るとか」

「はい」

「あぁそれから、ちょっと台所の水道が出にくいのと、洗濯機の耐用年数が年単位で過ぎてるからその確認もしてね。室内乾燥機も最近イマイチ乾きが良くないから、出来ればそっちも」

「了解です」

 

 希美先輩から出されてくる要望が凄く所帯じみているというか、この会話はカップルのそれというよりかは夫婦のそれに近いのかもしれない。そう言えば、兄さんはこれでやっと希美先輩と堂々と同棲出来るわけで、今まで私と同居しているという中々謎な状態ではあったけれど、普通に戻れたという感じなのだろう。

 

「夫婦生活の予行演習?」

「いつでも予行演習じゃなくなるの待ってるからね」

「……頑張ります」

 

 頬杖をつきながら揶揄い半分本気半分といった具合で兄さんを見つめる希美先輩の目に、兄さんは若干気圧されながら答えた。二人ともまだ未成年だし、もう少し時間はかかるんじゃないかとは思うけれど、「予行演習」の文字が取れる日もきっとそう遠くはないのだろう。二人の結婚式で泣かないようにするのは、結構大変だと今から想像してしまう。そんな未来の話を想像できるくらいに、この空間には幸せな時間が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

「今年の北宇治高校の出場順は一番となりました」

 

 兄さんが帰国してから数日後、滝先生の言葉が朝のミーティングで放たれると、音楽室内には悲鳴が上がる。評価基準にされがち、審査員の記憶から薄れがち、当日の練習時間が少なくなるなど、困ることは多くある。一番というのは大体の場合において歓迎されない順番だった。私としてはそれよりも何よりも、起きる時間が早くなるというのが最悪だ。朝は苦手なので、出来れば長く寝ていたい身としては、集合時間の早朝化は絶望である。

 

 しかも集中力の低下や普段と違うタイムスケジュールで行動することから心身に不調をきたす可能性もある。百パーセントの実力、というのは本番で出すのは難しいものであるとしても、より実力を落としてしまうかもしれない要素はなるべく排除したいのが本音。そう考えれば、くじ運というかとにかく運が無かったと言うしかない。

 

「時間が早くなることの対策として、本番一週間前から練習時間を早めます。とにかく本番まで体調管理に気を付けてください。いくら頑張ろうという気持ちがあっても、それが本番で発揮できなければ意味はありません。無理しない、無理させない、無理強いしないの三本柱で行きましょう」

「「「はい!」」」

 

 先生の言葉に大きく返事をする。百パーセントでなくても取り敢えず府大会くらいはどうにかなりそう、というのが私たち去年から大会に出ている組の共通見解だった。この辺りは高坂先輩などとも意見が一致している。油断は禁物とは言え、実力を正しく推し量るというのもまた大事な事だった。変に畏れすぎるのも、却ってよくないのである。

 

「何か伝えておくことはありますか?」

 

 先生のその問いかけに、高坂先輩が一歩前に出た。

 

「演奏順が一番ということは、審査員やお客さんの耳にその日一番最初に入るのは北宇治の演奏だという事です。まっさらな状態で聞いてもらえるというのは、私はメリットだと思っています。最初に聞いた演奏が最高だったと言ってもらう気持ちでいきましょう」

「「「はい!」」」

「副部長からは食事の注意くらいだな。前日ゲン担ぎとか言って普段と違うもの食べると危ないから気を付けて」

 

 前日に何食べても平然と演奏出来ていた兄さんは一体何なのだろう。しかも起き抜け一発目に大音量で吹ける辺り、やっぱり常人とは違う能力があって世界一なのだろう。最近は大阪まで仕事に行くので、私より早く起きて家を出ているけれど全然元気そうだった。朝ごはんも作ってから出かけているので、希美先輩は最近のんびり寝ている。

 

「じゃ、最後に部長から」

 

 副部長にポンと軽く肩を叩かれ、部長が息を吸いこむ。

 

「えっと、本番も近づいてきました。四月に一年生が入部してくれてから、長いようで短い時間だったと思います。北宇治は強豪校みたいな感じの見られ方をするので、どうしても関西大会に行くのが当然みたいな空気になりがちです。でも、きちんと目の前にある本番と向き合わないと、絶対に後悔します。油断だけはしないようにしてください。練習はあくまでも悲観的に、本番だけ楽観的に。次の大会に進むために頑張りましょう!」

「「「はい!」」」

 

 大きく返事に、部長は安心したような顔をした。どんな想いを抱いているかは人それぞれに違う。想いの大きさも、種類も。それでもここまで来てしまえば目の前の本番に全力で行こうというのは変わらないはずだ。

 

 どこが一言だよ、という副部長の突っ込みに柔らかい笑い声があがる。それを誤魔化すように咳払いをしてから、部長はまた話し始めた。

 

「当日の朝に遅刻しそうな子はパート内、もしくは友達同士で電話し合ってください。とにかく寝坊厳禁です。前日は緊張すると思いますが、しっかり寝ましょう」

「会場に一番乗り出来るって思ったら嬉しくなるのは分かるし、興奮して寝られない子もいるかもしれないけどね」

「そんなのでテンション上がるのは麗奈だけだよ」

 

 部長の突っ込みに、全員が頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 パチッと電気の点く音がした。眠い目を擦りながら布団に潜る。潜ったところで思いっきり引っぺがされた。

 

「十秒以内に起きないと、耳元で吹くけど」

 

 ぼんやりした頭で言葉の意味を考えて、目を開ければ、私を見下ろしている呆れ顔の兄さんがいた。手元には金色のトランペットが握られている。本気で吹く気なのかな、と思いつつ、「ぬぁ~」みたいなよく分からない言葉を出しながら枕もとの携帯を確認すれば、まだ時刻は二時。しかも午前の二時である。遅い日では寝る時間ですらあるこの時刻に起こされていた。

 

「なに……こんな夜中に……」

「君が起こせって言ったんだけどね」

「……なんで」

「ホント寝起き悪いなぁ、昔っから。本番、今日でしょ」

「……ほんばん?」

「これは本格的に演奏しないと起きないかな……」

 

 マウスピースをはめている兄さんを寝ぼけた眼で見つめる。ほんばん、本番、本番! やっとこの辺で目が覚めて、もう一回携帯を確認した。時刻は午前二時、日付は八月四日の金曜日。カレンダーにはデカデカと京都府大会! と赤字で書かれている。

 

「起きた? それともモーニングコンサートは必要?」

「いらない。ありがと、起こしてくれて」

「はいはい、じゃあ早くご飯食べてくれ」

「希美先輩は?」

「寝た」

「そっか」

 

 兄さんは普段着を着ている。まだお風呂には入っていないのだろう。私のためにわざわざ遅くまで起きてくれているのは確定だった。昨日の夜十時くらいにソファで少し寝ていたけれど、それで満足に寝られたとは到底思えない。申し訳なさと感謝が同居していた。やっと起きたかと、呆れ半分笑い半分で言いながら兄さんは部屋から出ていく。そして私はベッドから起き上がって制服に着替え始めた。

 

 まだ外は真夜中。廊下の窓から見える外の景色は夜の闇が広がっている。石燈籠のぼんやりした灯りだけが庭を照らしていた。こんな時間に起きて顔を洗っていることに違和感を覚えながら支度をする。身体がおかしいよ~と訴えているのが分かった。ダイニングには既にご飯が置いてある。夜ご飯を夕方五時に食べて、七時には寝たので大分生活リズムがおかしくなっていた。

 

「集合時間は三時で合ってる?」

「合ってる」

「真夜中に集合とは大変だ。他の家はどうしてるんだろうね。終電ももうとっくに過ぎてるし」

 

 兄さんは少し眠そうな声でそう言うと、フライパンを洗っている。今日の集合は午前三時。そこからバスを出して、午前七時に会場入りする計算になっていた。兄さんは希美先輩と雫さんと一緒に今日来てくれるそうで、その時間に合わせていくらしい。なので、希美先輩たちはもう寝てしまった。兄さんは多分寝ないでそのまま行くんだろうと思う。純一さんも来てくれるらしいけれど、兄さんたちとはチケットの予約が別だったため、席がバラバラだと言っていた。

 

「兄さんさぁ」

「なに?」

「いい加減希美先輩と進展した?」

 

 私のその言葉に、兄さんは飲んでいたコーヒーをシンクに噴き出している。

 

「ごちそうさま」

「君ねぇ」

「なーんも進展なかったの? この前旅行行ってたのに」

「ノーコメント」

「ってことはなんかあったの?」

「そんな事気にしなくて良いから」

「気になるモノは気になる」

「……歩いていく?」

「それは卑怯じゃないかなぁ」

 

 やっていることは至極くだらない兄妹の会話だけれど、こんな話をするのも数ヶ月ぶりだった。揚羽が兄離れできてないのは私の方だと言っていたけれど、案外それが正しいのかもしれないと、こういう時に思ってしまう。いなくても生活は出来るけれど、いてくれた方が嬉しい。それが家族というモノなのかもしれない。なんだかんだで、私は結局兄さんに甘えているのだろう。それを許してくれる心地よさを、もう少しだけ甘受することにした。

 

「まぁ良いけど、遅れないように準備して」

「はーい」

 

 返事をしてから、お皿を洗って、仏壇の前に座る。大会の前にはいつもこうして報告をしていた。神様は信じていないけれど、死んだ両親がきっと見守ってくれているというのは、何故だか信じていた。どっちも非科学的と言えばそれまでだろうけれど、両親が見てくれているということは、否定したくなかったのだ。行ってきます、と呟いても、遺影の中の二人は何も言わない。それでも、この時間は大事だと思っていた。

 

 鞄を持って、楽器ケースを確認して、財布や携帯をしまい、靴を持ってガレージへ行く。既にエンジンをかけた車がライトを点けていた。排気ガスの音と香りが静かな夜のガレージに響いている。運転席には兄さんが座って、出発の準備をしていた。

 

 青っぽいオデッセイは兄さんが中古で買ってきた車だった。七人乗りが欲しかったらしい。隣では五人乗りのベンツと二人乗りのフェラーリが沈黙したまま停まっていた。どっちもかなりの年数と走行距離なのでそろそろ売りに出したいと言っていたけれど、両親がいた頃の思い出があるので中々手放せないらしい。私もあまり手放すのには気が進まなかった。

 

 助手席を開けて座る。何かの音楽が小さく流れていた。室内灯が消えると、ガレージの中には車のヘッドライトの光とナビの液晶光だけになる。それに照らされながら、兄さんがシフトレバーを動かす。その後持っている鍵のボタンを押すと、ガレージのシャッターが開いた。

 

「じゃ、行きますか」

「お願いします」

「ちょっと寝てても良いから。その間に言われたところ廻っちゃうし」 

「了解……」

 

 エンジンの振動で段々と眠気がやって来る。その睡魔に抵抗しないで私は身を任せることにした。

 

 しばらくしてハッと目を覚ますと、後部座席には何人も同じように寝ている子がいる。チラリとこっちを見た兄さんが、起きたんだという顔をしていた。車の窓から見える赤信号の交差点は人気が無い。時計は二時四十五分を指していた。

 

「回収ありがと」

「別に大したことじゃないから。みんなスヤスヤ寝てるし」

 

 深夜なので保護者に送ってもらうか、それが無理なら集団で来なさいというお達しになっている。私は最初から兄さんが車で送迎してくれる手筈になっていたので、それに合わせて何人か保護者の方の送迎が難しい子を一緒に送ってくれるよう頼んでいた。みんな住んでいる場所もバラバラなので、少し私たちが早めに家を出て間に合うように調整している。

 

 バックミラーには全員の寝顔が映っていた。フルートの後輩二人と香奈さん、屋敷さん、葉加瀬さんの南中出身の同期三人が夢の世界にいる。

 

「もうすぐ着くから」

「はいはい」

 

 住宅地の中を走り抜けて、北宇治高校の長い坂を登っていく。夏は暑くて大変な上り坂も、車ならあっという間だった。学校の外の路肩にはバスが二台停車している。こんな真夜中に動かしてくれるバスを探すのも大変だった。結局、ウチの系列の会社にお願いしている。

 

「皆さん、到着です。起きてください」

 

 大あくびをしながら意識を何とか覚醒させ、皆車を降りていく。

 

「「「ありがとうございました!」」」

「はい、本番頑張ってね。私も行くから」

 

 頭を下げている後輩に窓を開けて軽く手を振ってから、兄さんは家に戻って行った。

 

「涼音先輩のお兄さん、優しい方でしたね。涼音先輩とおんなじです」

「……そうですかね、色々な意味で」

 

 その陽向さんの言葉に、微妙な声で返答してしまった。私が優しいのか、とか兄さんが優しいのかなどなど色々思うところはある。前者は微妙だし、多分優しくないと思う。後者はまぁ、全体で指導している時以外は優しいかもしれないので一概には否定できなかった。個別対応をしている時や、部活外では確かに優しいかもしれない。

 

「桜地先輩マジ感謝」

「ホントにね」

 

 葉加瀬さんは腕を伸ばしながらそう言っている。屋敷さんも相槌を打ちながら首を回していた。

 

「涼音ちゃん、後でもう一回私たちがお礼言ってたって、伝えておいてくれる?」

「はい、分かりました」

 

 香奈さんは何度も兄さんにペコペコと頭を下げていた。この辺の距離感はやはり人によって違いがある。彼女は希美先輩の恋人でもあり尊敬するべき先輩でもある兄さんという感じで尊敬していた。なので恐縮している。葉加瀬さんは割とフランクにというか、距離近めに接していた。イケメン先輩マジ最高と言っていたのを覚えている。私の前で言われても困ってしまうのだが。屋敷さんは一番ほどほどの付き合いかもしれない。とは言え、ホルンは金管なのでかなりお世話になったとは言っていた。

 

「ねぇねぇ、また先輩が指導員に入ってくれるの?」

「えぇ、府大会後、つまりは明日から」

「よっしゃ、やったね」

「そんなに嬉しいですか?」

「多分金管の指導がメインでしょ? 木管は知らないかもだけど、高坂先輩に睨まれながらやるより絶対いいじゃん」

「あー……」

 

 その通りですねとも、そんな事言わないようにとも言えず、私は何とも曖昧な表情で誤魔化した。この前揚羽が偶然聞いてしまったというトイレでの会話を思い出す。私と高坂先輩がこれまでは比較対象だった。けれど、兄さんが戻るという事は兄さんと高坂先輩が比較される。どっちの方が指導者として上なのかと言えば、経験が明らかに違うのでどうしても結果は見えている。そうなった時、高坂先輩の求心力がどこまで仕事をするか。今はまだ分からない。

 

 その辺りも配慮してくれるのだろうか、それとももう部員ではなく「桜地先生」として来るからその辺りは気にしないのか。願わくば前者であれと祈る。祈る事しかしないのも良くは無いだろうし、どこかでちょっと言ってみるかと思案しながら、本番仕様に髪を結び直した。ポニーテールになった髪が風で揺れる。憧れの存在にせめて見た目だけでも近づいて、あんなふうな演奏を。そういう願いを込めた、ある種の願賭けだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一番の団体は、その特権として本番のステージでリハーサルが行える。立華の青いブレザーも、龍聖の深緑の制服も、今は見ないで済む。他校を気にせず、本番の環境で演奏できるのが基本的にデメリットの多い一番という順番の持っているメリットだ。

 

 ステージリハーサルを終えると次はリハーサル室に移動になる。会場の外は夏真っ盛りとも言うべき灼熱の世界が広がっている。けれどその中で茶色の冬服に袖を通しているのが、私たちの置かれている状況の非日常性を強調していた。

 

「では、出だし部分。何度かやります」

 

 滝先生はそういうと指揮棒を持つ。先生は何度もこうして出だしをやることがいつもの習慣だった。出だしですべてが決まる。音楽家はみんなそう言う。そこだけは兄さんも、中学時代の顧問も同じだった。幾度か繰り返される合奏。私の状態も問題なかった。意識はクリアで、視界も正常。指の動きも問題ないし、息も良く出ている。私の相棒も十分に活躍の用意は整っていると言わんばかりに、その銀色の輝きを放っている。

 

 準備万端を確認した先生は指揮棒を下ろして時計を確認し、全員の顔を見渡した。

 

「いよいよ本番ですね。今日という日のために、皆さんは沢山の努力をしてきました。全国大会金賞と言う目標を掲げてここまでやってきましたが、このステージはその第一歩目です。油断はいけませんが、皆さんならやり遂げられるという事を私は知っています。記念すべきコンクールの、一番目。審査員や観客に、今年は一味違うぞというところを見せつけてやりましょう」

「「「はい!」」」

「では、声掛けがあればお願いします」

 

 先生の言葉に、横にいた高坂先輩が一歩前に出た。こういう時に口火を切るのが、彼女のいつもの役目だった。

 

「私にとっては、これが三度目の府大会です。春からキツイことも言ってきたし、しんどい思いもさせてきたと思います。それでも、きつい練習も辛い思いも、全て今日のためです。絶対後悔しないよう、頑張っていきましょう」

「「「はい!」」」

 

 先生への返事よりも威勢よく、部員の返事がリハーサル室に響く。

 

「部長」

「うん」

 

 副部長に促されて、部長が一歩前に出る。

 

「それでは行きます。北宇治ファイトー!」

「「「オー!」」」

 

 部員全員が突き上げた拳の勢いが、空気を振動させる。少しずつ高まっていく高揚感とそれに混じる僅かな不安感。これが本番。年に数回だけしか味わえない、ひりつく感覚。その緊張の中にある興奮が、私は嫌いじゃなかった。中学時代に味わったモノともまた違う、この感覚はきっと一生涯忘れることはないのだろう。

 

 一番最初の団体という事で、前の演奏者は誰もいない。合図があるまでの暗幕内の僅かな時間は、私たちに与えられた刹那のような瞬間だった。暗闇の中、高坂先輩が胸元をいじっている。その手の中には、光る銀色の十字架があった。あまり褒められた行いではないし、もちろん外からは見えないようになっている。それでも今だけはという事でこうして触っているのだろう。その表情は硬かった。

 

「大丈夫? 麗奈ちゃん」

「大丈夫」

「大丈夫なら、もうちょっと大丈夫らしい顔をして欲しいな。まぁ、気持ちは分かるけど」

「……不安は、どうしても拭えないから」

「そうだね。確かに怖い。ここで終わったりはしないだろうっていう思いのどこかに、ここで終わったらどうしようっていう不安がある。それでも私は思うんだ。きっと大丈夫。私だけだと微妙かもしれないけど、私たち二人なら大丈夫ってね。ずっと二人でやってきた。今日も、おんなじだよ」

 

 その言葉に、高坂先輩は小さく頷いている。決してあの人も無敵で完全無欠の完璧超人じゃない。音楽に関してでも、不安になる事や迷う事だってあるだろう。それでも隣で支えてくれる人はしっかりいる。秋子先輩はにこっと頷いてからこちらに気付いて、ウインクする。仲間でライバルの理想形は、ああいう感じなのかもしれない。

 

 遠くばかり見ていたら、近くの後輩に袖を引かれた。

 

「涼音先輩、頑張ってください」

「応援してます」

「ご期待に沿える演奏をしてみせます。片時も目を離さず、ご覧あれ」

「「はい!」」

「よーし頑張るよ、みんな。絶対全国、絶対金!」

 

 沙里先輩がいつもよりも興奮した口調で告げる。フルートパートが団結しているのは、沙里先輩の努力によるところが大きい。数人だけの集団でも色んな考えや人生を送って来た人がいる。だから、それをまとめるのは簡単ではない。けれど沙里先輩はそれをしっかりこなしていた。何の瑕疵も無く、立派に。それは尊敬に値する姿だと、パート内にいる誰もが学年など関係なく思っている。

 

 蕾実先輩が手を前に出す。それを見た沙里先輩が、そこに手を重ねた。そうして皆で手を重ねていく。

 

「それじゃあここは我がフルートパートのエース、涼音ちゃんにお願いしようかな」

「私ですか?」

「うん、お願いできる?」

 

 沙里先輩のお願いに、私は小さく頷いた。きっと私が遠慮なんか何一つしなくて良いように、思いっきりやれという意味を込めてこういう風にしてくれたのだと思う。パート全員の視線が私に注がれた。出場するメンバーもそうでないメンバーも、上に行きたいという想いは同じ。私たちAメンバーは、そうではない人の想いも乗せて演奏するのだ。そういう気持ちも込めて、口を開く。

 

「分かりました。それではフルートパート、出陣です!」

「「「オー!」」」

 

 案内係に指示されて、皆歩き出す。暗幕の向こうの光の中へ、私たちは歩を進めた。

 

「涼音ちゃん」

 

 ふと後ろからの声に呼び止められる。声の主が真由先輩だということは、すぐに分かった。光と影の境界線に私は立っていて、まだ暗幕の中にいる真由先輩の顔は逆光でよく見えない。

 

「はい」

「頑張ろうね」

「もちろんです。真由先輩は……」

「?」

「いえ、何でもありません。金とって、関西に行き、全国で清良のご学友に再会しましょう」

「……うん」

 

 真由先輩は、北宇治に来たことを後悔していませんか。その問いは口から出てこなかった。多分、それは今聞かない方が良いと思ったから。いつかはこの問いを聞かないといけない日が来るのかもしれない。けれどきっとそれはいまではないし、もっと相応しいタイミング、そうするべきタイミングがあるのだろう。確かな根拠なんて何もないけれど、何となくそんな風に思えてならなかった。

 

『プログラム一番、京都府立北宇治高等学校の皆さんです。課題曲Ⅰ、自由曲は戸川ヒデアキ作曲『一年の詩 ~吹奏楽のための』、指揮は滝昇です』

 

 椅子に座り、譜面台に楽譜を置く。私の小さな字と、パートのメンバーのメッセージ、そして希美先輩や優子先輩たちのメッセージも端に書いてある。視界はスポットライトの光に満ちている。燃えるようなその熱の中で、私の心臓の鼓動は増していく。この景色が兄さんを惹きつけて止まないスポットライトの下の輝きなのだろう。

 

 会場のどこかにいる兄さんたちにしっかり届けたい。そう思って小さく息を吐いた。私のエリザベスはスポットライトの光で一層輝いて見える。

 

 先生が指揮台に上がると、拍手が起きた。さざ波のようなそれは会場に満ちていく。そしてやがて終わり、世界は静寂に満ちた。ここから十二分間の舞台が始まる。華麗な衣装も美しい装飾も無いけれど、私たちには演奏がある。そして何よりも高鳴る鼓動と、燃えるような熱が。その熱に突き動かされるように、指揮棒の一点を目指して私たちは息を吐き出した。








 パチパチと拍手の音が響いている。京都府大会のコンクール会場で、私は手を叩いていた。眼前にはたった今演奏を終えたばかりの後輩たちの姿がある。隣には同じく手を叩いている私の恋人の希美、そのさらに奥には妹の姿を見て涙ぐんでいる雫さんが座っている。彼女も彼女で大分涙脆いと言うか、涼音には甘かった。それはここにいる三人とも同じかもしれない。

「一年の詩ってこういう感じなんだ。通しで聞いたの初めてだから知らなかったけど、難しいね」
「その分演奏し甲斐はありそうだ」
「確かにね。私も吹いてみたいかも。あの最後のソロとか、きっちりやれたらカッコいいだろうなぁって思うし」
「後悔してる? 奏者の道を選ばなかったこと」

 彼女が指導者という進路を選んだのは、私が勧めた部分も大きかった。彼女のお父さんには、彼女が選んだんだと言ったけれど、その選択に私の存在が無いとは思わない。夢を見せた身として、後悔はして欲しくなかった。

「それはそれ、これはこれかな。演奏するのは今でも好きだし、時々やるけど、吹部としての、部員としての私は去年までで全部出し切ったから。今やっても、あの時よりは上手く吹けそうもないし」
「そっか」
「そうそう。だから後悔なんてしてないよ」
「なら、良かった」
「だから凛音も、音楽に関しては今やってる子たちを気にしてあげてね。どうだった? 今の演奏」

 次の学校の準備が始まるまでの間、少し時間がある。壇上はスポットライトが消えて、準備が始まっていた。持っていたメモ帳には今の演奏を聴いての諸々がびっしり書いてある。涙を拭っている雫さんを横目に、私は希美の問いに答えた。

「金は取れるし関西も行ける。ただ足りない部分は多い」
「厳しいね」
「甘い事だけなら誰でも言えるから。指導者なら、現実も直視しないとね」
「うーん、その辺は私まだまだだなぁ。高坂さんも吉沢さんも上手くなったなぁとか、沙里ちゃんとか芽衣子ちゃん、蕾美ちゃんも伸びたなぁくらいしか分からなかったし」
「追々鍛えていけば良いんじゃない。言ってることは間違ってないし」

 実際、三年生になった後輩たちは随分と上手くなっていた。私がいない数ヶ月の間に、確実に実力を上げている。このまま高校時代で音楽を終えてしまうのが勿体ないと言える存在も、片手の指では足りないくらいに存在していた。特に吉沢さんは大分腕を上げている。高坂さんもうかうかしていたら危ういだろう。

 そして、希美や涼音から話を聞いていた清良の黒江さんも高校生としては超一流の奏者だと言える。黄前さんと並んで、部内でもトップクラスの腕を持っていた。なるほどこれは火種になりかねない存在だと思ってしまう。涼音は気にかけているようだけれど、対応次第では大きな爆弾になってもおかしくはない。

「高坂さん、プロ基準だと実際どうなの?」
「プロって言ってもピンからキリまでいるから」
「凛音に勝とうって考えると?」
「無理じゃない?」
「うわぁ……それ、本人に言わない方が良いよ」
「と言っても事実だし……私の前に倒さないといけない存在が沢山いるからね。彼女視点だと私と彼女の間には精々彼女の父親がいるくらいだろうけど、実際はもっとたくさんの奏者が間にいる。高坂さんが乗り越えないといけない壁は分厚くて多い」

 そんな簡単に勝てるようなら苦労はしない。確かに彼女は上手いし、日本でも有数の高校生奏者なのは事実だ。どこの音大に行っても一定数の活躍は出来るだろうし、将来を嘱望される奏者と言ってもおかしくはない。ピンからキリまでとは言ったけれど、下手なプロよりは高坂さんの方が間違いなく上手いだろう。

 けれど彼女はまだお金を貰って演奏するという事を理解していないし、経験もしていない。その責任や重圧も知らない。そして何より私に勝つにはまだまだ技量が足りない。そんな簡単に負けてあげられるほど、私のプライドも立場も安くはないのだ。それにそんな事をしても彼女にとって良い事は一つも無いだろうし、望みもしないと思う。

「今のままなら上手い奏者で終わりだろうね。それでも十分食べては行けるだろうし、普通の人生なら問題ないと思う。ただ、それでは彼女の望んでいる頂きには立てない」
「厳しいねぇ、師匠は」
「そうだろうね。でも、彼女が行こうとしているのはそういう世界だ。本当に上に立ちたいなら、これくらいで折れてもらっては困る」

 それでも私は諦めたくありませんと言った彼女を、私は信じている。特別になりたいと言ったその瞳を信じて、彼女の指導を引き受けた。トランペットで特別になるのは簡単だ。私を倒せばいい。そうすれば、彼女は未来永劫語り継がれることになるだろう。それが一度だけの奇跡を起こした存在としてか、天才の最初の伝説としてかは分からないけれど。

 未来のことは分からないし、折れてしまったならそれまでだと思う心もある。一番上の方を走るというのはそういう事だ。それでも、彼女が私を倒す存在であったならば良いと、そう願っているのも事実だった。

「さて……どこまで出来るかな」
「頑張ってね、桜地センセイ」
「それはもちろん頑張りますとも。家に帰ると好きな人がいるだけで大分やる気に差が出る。ここ数ヶ月毎日誰もいない家に帰ってたからなおのことね」
「はいはい」

 私に与えられている時間は決して多くない。一ヶ月も無いこの時間で、どこまで北宇治を鍛えることが出来るのかが腕の見せ所だった。これまで教えてきた秀塔大附属と共にどっちも全国に行ってもらうのが一番良いだろう。そうならなかったとしても、心情的には北宇治をどうしても応援してしまうし肩入れしてしまう。こればっかりはどうしようもない。

 メモ帳を次のページへと捲った。やることは結局、高校生だった頃とそこまで変わりはしない。今するべきなのは、他校の演奏から北宇治へ活かせる何かを見つけることだった。


 彼らを今度こそ、そう今度こそ、金賞の栄誉の下へ送り届けるために。
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