〜機動戦士ガンダム00×オルタネイティブ〜   作:ガンダム・刹那・FF・セイエイ

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第5話「オルタネイティブ計画」

刹那「……何者だ」

 

横浜基地の部隊がエクシアを捕まえてから少し経った時、超急ごしらえで調整した無線機の成果により機動兵器のパイロットへと問題なく通信音声が届いたのを刹那からの反応で立証すると一抹の安堵を覚え。

 

夕呼「(反応した!やっぱり天才やっててよかったわ、流石あたし)あたしは国連太平洋方面第11軍所属、横浜基地副司令の香月夕呼よ」

 

内心で自画自賛して拳を握ると直ぐに己の名と役職を告げ。

 

刹那「国連軍…!くっ、狙いはやはりガンダムか!」

 

しかし其れを聞いた刹那は一気に気色を険しくし怒気の混ざる声で反応すると直立状態から臨戦態勢に様変わり、GNソードをライフルモードで粒子ビームの銃口を目の前の機体へ向け。

 

みちる「なっ!」

『!!』

夕呼「ちょっ!待ちなさい!あたし達は別にあんたに敵意も攻撃する意志も持ち合わせてないわよ!?」

 

今まで散々BETAを葬ったビーム兵器の発射口を向けられた部隊長は唐突な攻撃姿勢に見開き、急な敵意を当てられ装甲車内含めた周囲も驚愕しては一早く慌てて釈明したのは夕呼で、咄嗟の出来事にヴァルキリーズの面々も微動だが武装を持とうと思わせる行動が焦燥に拍車をかける。

そんな言葉を聞いた刹那は銃口を向ける腕を緩め。

 

刹那「何?どういうつもりだ。国連軍ならばガンダムは少なからず敵対対象の筈…」

夕呼「……どうにも噛み合わないわね。取り敢えず、あんたが乗るそれはガンダムというのかしら?」

 

根本から食い違い刹那の認識では世界に混乱をもたらす自分達は国連軍と決して相容れぬ関係。

対して夕呼達のいう国連軍の反応は敵対意志が無く今までも危害を加えるような行動は決して無かった。

この事に当然の如く疑問を抱くも刹那の質問に対して答えるでもなく此れもまた根本から覆すような問いに疑念は深まり。

 

刹那「(ガンダムすら知らないだと…?)…答える義務は無い」

 

これ以上の押し問答は無意味だと判断したのか銃口を向けた腕は下げるが問いに答える気は無いと示す。

 

夕呼(……まさかとは思うけど…)

 

素っ気ない返事に他の者は落胆のような諦めた様子で肩を落とすが、そんな中夕呼のみは顎に指を当て思案を巡らせる。

視線を一度武へと向け、向けられた当人は「…?」と不可思議そうに眉を寄せるも直ぐに視線戻し。

 

夕呼(……他の隊員を手伝いに向かわせて正解だったわね。運転席は音を遮断しているから問題なし。白銀はまだし、涼宮遙は――――いっそ"巻き込む"か)

 

ついには双眸も閉ざして考え込む夕呼。現在車内には他に武と管制や諸々任せるCPの遙しか搭乗していなく、現状確認と何かの決意を固めると目を開き直ぐ様回線を車両とエクシア内にのみ繋ぐよう調整し。

 

遙「…え?」

刹那「秘匿回線…?なんのつもりだ」

夕呼「あら、そっちでも判るの?まあ別に問題はないけどね。話しを穏便に進めるためよ」

 

突如として移した行動は同じ車内でシステム調整を補佐する遙にも当然伝わり、謎の秘匿回線化にこれまた当然疑問を抱く。

それは刹那にしても同様で真意を確かめる問いに誤魔化す様子もなく再び問答を始める。

 

夕呼「恐らくこれで全部分かる事だから答えなさい。まずはそうね…日本帝国軍、BETA、戦術機、これらに聞き覚えは?」

刹那「………どれも初めて聞く」

遙「!?」

武「はあ!?」

 

夕呼の問いに暫しの間を明けるも素直に答えた刹那。それを聞いて思わず武が声を上げ、遙も驚愕し。

 

夕呼「白銀、黙りなさい」

武「あ……す、すみません…」

 

しかし夕呼に一蹴される。

 

夕呼「ごめんなさいね、続けるわ。ではあなたが言う国連軍とは?」

刹那「……アメリカ、南米を主軸とするユニオン、新ヨーロッパ共同体のAEU、ロシアを主に中国やインド等も傘下に加わる人類革新連盟、この三国の軍が俺達ソレスタルビーイングと機動兵器ガンダムを打倒するべく発足された連合部隊、それが"俺の"知る国連軍だ。此方からも質問させて貰う…軌道エレベーター、モビルスーツ、イオリア・シュヘンベルグ、そしてGNドライヴは?」

 

今までの言葉の応酬に何かを察したように懇切丁寧、それも解説するかのような口振りで答える刹那。更には自らも夕呼に準え現状なら世界では知らぬ者は居ないであろう単語、そして疑似太陽炉を保有する国連軍ならば当然知っている筈の機関を問う。

 

夕呼「どうやら大分察してるようだけど"あたしでも"どれも聞き覚えがないわね。アメリカは米軍で統一、ユーラシア方面は壊滅していてご立派な軍組織なんて建てられる状況にあらず…ってところかしら」

刹那「…やはりそうか」

 

それに気付いた夕呼もまるで"こちらの世界"の情勢を説明するかのような言動を投げる。

 

夕呼「ええ。つまりあなたはBETAと同じ外宇宙…いえ、言語や国柄は一致しているようだから別の地球から来た異世界人よ」

武「!?」

遙「い、異世界…?別の……地球ッ!?」

 

辻褄が合ったと、支離滅裂な答えだがそのトンデモない事象を容易に受け入れられるであろう前例者の武を見て意味深い薄笑みを作りながら結論を述べる。

突拍子もない事態に先程武が注意されたにも関わらず声を上げる遙。

 

夕呼「最後にあなたの名前とその機体の名称を聞いていいかしら?」

刹那「…刹那・F・セイエイ。ガンダムエクシア」

夕呼「刹那・F・セイエイにガンダムエクシアね」

 

そんな遙をスルーして何を思ったか刹那の名と機体名を今この場で聞いては復唱し。

 

刹那「随分とあっさりしているな」

夕呼「それはそうよ。こっちには平行世界から来た奴だって居るんだから」

遙「へ、平行世界…?」

武「ッ!?夕呼先生!!」

 

更には"此方"の最重要機密までも躊躇無くバラす。

反応を示した者に合点がいったのか遙は武へと顔を向けて。

 

夕呼「落ち着きなさい。それに状況とこれからの事を考えればその内気付かれるだろうし、あんたの存在をこれ以上涼宮に秘匿にしておくのはどの道無理な話しなのよ」

武「あ…」

 

狼狽える武を低い声で一喝し、本人もこの上苦情を述べる気が無いのか一声漏らしては押し黙る。

 

刹那「平行世界…。……どうするつもりだ?」

夕呼「そうね、あまり此所で長講すると他の娘達にも怪しまれるのは時間の問題になるし…任せなさい」

 

晒された事情に今は根掘り聞かずに流して己の処遇を委ねると、夕呼自身も秘密裏な会話を続ける事に今後疑いを向けられる可能性を考慮して任され。

遙と武に改めて向き合い目線で黙秘を訴えれば二人も一先ず頷きそれを肯定したと捉えれば直ぐに通信を秘匿回線から通常に戻し。

 

茜「…あ、副司令!」

みちる「!どうでしたか…?」

 

漸く通信が繋がり夕呼の画面が復旧したのを見るや部隊の面々は一斉に反応し、交渉は成立したのか気掛かりな問いが真っ先に浮かび代表してみちるが聞くが返ってきたのはそれに関する答えではなく。

 

夕呼「ああごめんなさい。少し方針を決めようと思って彼と暫く談義していたの」

みちる「方針…?ですか?」

 

虚偽の会話内容を要約して伝える夕呼に今一つ話しが見えないみちるが聞き返すとヴァルキリーズのメンバーも疑問符を表情で表し。

 

夕呼「そうよ。けどここまで大々的になったし、前線の衛士達も今回の件でより一層身が引き締まったでしょうからここらで種明かしをしようかとね」

祷子「えっ…種明かし、ですか?」

 

尚もすらすらと述べる言葉に部隊はおろか武や刹那さえも訝しみ。

 

夕呼「デモンストレーションはこれにて終了。詳しくは極秘だから言えないけどあの機体…ガンダムエクシアの性能実験だと思ってもらって構わないわ。それも数日に渡る大規模なね。少なくとも光線級に有効である事が判明したのだし結果は上々ね」

 

そう一気に捲し立てる夕呼の言葉を確り聞き受けて内容に息を呑む。

 

みちる「ガンダム…エクシア…」

美冴「それがあの機体の名…」

 

疑いもせず納得した面々に通信画面こそ開いていないお陰で表情は悟られないも内心で申し訳なく思う遙だが副司令からの命令に反す訳にもいかず沈黙。

 

夕呼「セイエイ、皆にも改めて自己紹介を」

 

そんな遙の心情を知らずに更に信憑性を増す為にと刹那に挨拶を促す。

 

刹那「(この土壇場で対策を講じる…本当にあの女は何者なんだ)ガンダムエクシアのパイロットを努める刹那・F・セイエイだ」

 

誘導された刹那も真意に気付くと直ぐ様夕呼に倣い密かに送られてきたコードを入力すると通信回線を粒子影響を受けた今より良好にした状態で身分を証す。

 

みちる「セイエイ…了解した。私は横浜基地所属のA-01ヴァルキリーズ隊隊長を努める伊隅みちるだ」

 

夕呼が紹介し同じ秘匿部隊同士ならば此方も身分を隠す必要は無いだろうと判断したみちるも名乗り。

 

夕呼「細かい紹介なんかは後日にしなさい。データのチェックとか急ぐから早く帰投しないといけないの」

みちる「それは勿論…お前達もそのように!」

『はい!』

 

これは半分嘘では無く事態の把握に急を要する夕呼は一早くこの場を収拾付けて会話漏れの心配がない落ち着いた場所へ移動したいと思い、他のメンバーの自己紹介等は省略させると部隊長の指示にA-01の一同が血気に返事をし。

ここまで来て逃避は無いだろうと睨んだ夕呼の指示でA-01部隊の不知火が全機エクシアへの確固陣形を解くと刹那からしても既に同行するつもりの様子で、その間に到着した輸送車両に不知火が格納されていくと全ての手筈が完了した報告を受け、装甲車の運転手に基地への帰投を電子通信で文字にして命じて。

大型の車両群に続き並走しながら神奈川を目指す。それに倣い刹那もエクシアを浮上させ並走飛行で着いていく。

 

刹那「異なる地球…」

 

 

 

 

 

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基地へ帰る途中で事前にまりもや司令達には鹵獲及び協定に成功、異世界等の概要は省き細かな事は後程書類に纏めて報告するも一先ず武同様に自分が指揮の下直轄で動いてもらう等の旨を伝えそれを基地内の最高責任者に当たるラダビノットには既に一任の了承が得られているため、何の憂いも無しに帰還を果たす夕呼達面々に軍事基地周辺には異形への介入以外では近寄らないようにしていた刹那も初めて訪れる。

A-01の不知火は整備の為に基地の数ある格納庫の内、秘匿部隊という事もあり割と奥地の方へ車両に乗せたまま搬送されるとそこへエクシアも続いていく。当然急に件で噂の機体が現れたのに当然基地隊員はざわめき始めたが、事前通達のお陰で事情を前以て知らされている上官らによって宥められる。

 

「「タケル!」」

武「え?お、お前ら!?」

 

遙同様直ぐに夕呼の私室まで来るよう言われたも緊迫した状況が続いた故に外の空気を吸いたいと願い出て現在、途中下車して一息付いていた武のところへ試験へ合格し後に任官が下るであろう207B分隊の面々が駆け寄ってくる。

 

美琴「神宮司教官に聞いたけど新潟の防衛戦に出向いてたって本当!?」

冥夜「まだ任官前のそなたが前線に出るなどどうなっている!?驚きを通り越して頭の中が真っ白になったぞ!」

 

その先頭で早速目の前まで来る御剣冥夜と鎧衣美琴が武に詰め寄るなり肩や胸ぐらを掴まれ尋問される。普段は冷静な冥夜が取り乱すのは珍しいと武も思うが無理もない。

 

武「おおお落ち着けよ!前線っつーても夕呼せ…香月博士とずっと軍用車に居ただけだって!!」

 

揺さぶられた武も息苦しさや唐突な問い詰めになんとか事情を告げ。

更に追い付いてきた他のメンバーもそれぞれ。

 

壬姫「でもぉ!たけるさんに万が一があったら!」

慧「私はあまり心配はしてなかった。白銀はやれば出来る男」

 

今度は対称的に慌てふためく珠瀬壬姫と普段通り淡々と話す彩峰慧。

 

千鶴「それより白銀!今さっき何台か装甲車と一緒に見慣れない戦術機が飛んでいったけど、まさかあれって噂の…!」

まりも「貴様ら何をやっている!」

 

最後に委員長こと榊千鶴が冥夜達を押し退けて何やら興奮気味で武に詰め寄り、恐らく同じ訓練兵で情報に精通している者から聞いたのだろう噂話を鵜呑みに問い質し。

その間に他の者を宥めていたまりもから叱責が飛ぶと武はこの場から退き。

 

武「わ、悪い。今は詳しい事は言えないけどその内説明がある筈だから!」

冥夜「タケル!?」

千鶴「ま、待ちなさいよ!まだ話しは」

まりも「待つのは貴様だ、榊!全くどうしてこうお前達は騒ぎを―――!」

 

駆け出した武を追おうと踏み出すとまりもに遮られ説教をくらう。そんな皆を背に内心謝罪するも急いでいるのは事実なので足取りを緩めずそのまま走り去っていき―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りが繰り広げられる傍らで格納庫へ到着し、基地の戦術機が立ち並ぶ場より少し離れ指定された空いているハンガーにエクシアを置く刹那。

整備士達は異様な風貌の機体を見上げ緊迫の表情を浮かべるもこれも事前通達により騒ぎ立てる様子もなく、しかし気にはなるのかその手は止まり。

 

みちる「いよいよか」

水月「一体どんな屈強な奴が乗ってるのか…」

 

既に機体を整備員に引き渡し集まったA-01の面々も格納庫を訪れ佇むエクシアを注視し、特に先程まで競り合った水月は興味津々といった様子でパイロットが降りるのを待ち詫び。

 

夕呼『お待たせ、案内するから機体から降りてきてくれない?』

刹那「………」

 

暫くして装甲車から格納庫へ出向いた夕呼と傍らに控え電子機器を胸に抱える遙が現れ、無線機を手に音声を届けると聞き受けた刹那がエクシアのコクピットハッチを開き姿を見せる。

 

茜「!ユニットが開いた!」

晴子「とうとうお出ましだね…!」

 

それを見た部隊のメンバーは一気に視線を強め普段から何事にも興味が薄い反応を示す晴子も今回ばかりは他同様顔を引き締め。

 

祷子「変わった強化装備を着ていますわね…」

美冴「寧ろあれは……宇宙服?あれもまた専用のパイロットスーツ、か?」

 

姿を現したエクシアの操手に先ず違和感を覚えたのは格好。衛士は国によりデザインが多少変わるも戦術機を動かす為には全員統一で身体にフィットする強化装備とそれに連なるヘッドセットの着用が必須となる。これが無ければ操縦におけるバックアップも網膜投影によるモニター表示さえ出来ないので管制ユニットから戦況を見るのは不可能なはずだが、或いはあの青いスーツと同色で恐らくセットだろうヘルメットに同様のシステムが組み込まれているのか?と周囲の者は皆等しく疑問を持ち。

 

夕呼「!……へぇ、これは例の信憑性が増すわね」

 

それは夕呼とて同じく彼に此処での常識が通用しないのをより強く認識すると、コクピットブロックでさえ従来の管制ユニットのそれを逸脱して1枚のハッチを開くのみ。更に伸縮自在の人一人余裕で支える強度なワイヤーが備えられ足元を掛けて降下してくる搭降装置以外はやはり常識の範疇になく地面へ降りた刹那へ更に目を見張る。

 

水月「……へ?は、はあ!?うそ!?」

美冴「!…随分若いね」

 

そしてヘルメットを取った瞬間見せた顔は明らかに少年で此れにはA-01や辺りの隊員は勿論、夕呼や遙にしても驚愕するがその事を悟られれば後々面倒になると判断、互いに顔を見合せ頷いて示し合わすと歩みを進ませついに目の前まで迫り。

 

夕呼「さて、行きましょうか」

遙「………」

刹那「ああ」

 

一度向き合うと周囲には預かり知らぬ事だが視線がお互いを探るように合わされ、その様子に夕呼の隣に立つ遙は毅然を装うも心情的には穏やかでは無く緊張するばかり、一通り面持ちを確認し合うと直ぐ様夕呼に促され歩み始め。

二人に続くよう立ち去る刹那を呆然と眺める隊員達を通り過ぎては待機させている軍用車に乗り、完全に姿が見えなくなる頃には揃ってエクシアを見上げ。

 

 

 

 

 

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車で格納庫から基地本部に移動すると施設内に足を踏み入れ、その間にも僅かだが擦れ違った軍の正装を着込む何名か訝しむ視線を送られるも三者とも気にせずを貫き、早々に地下へと続くエレベーターへ乗り込むとその間も一言も喋らずに。地下の深部へと到着すれば歩み止めずに自身の執務室へと通す夕呼とそれに続いた遙と刹那の入室から間もなく武も訪れる。

 

武「!そ、そいつがまさかあの…」

夕呼「ええ、ガンダムエクシアの衛士…じゃないわね、パイロットの刹那・F・セイエイ。機体から降りてきたのが彼だから間違いないと思うわ」

 

駆け込みで入ってきたため三人の視線は自然と武へ向けられ、当人も日頃鍛えているお陰で息切れは無いが直ぐに視界に移った夕呼や遙とは別の見知らぬ顔と格好をした人物にこの場で自分達以外が夕呼の執務室に居るなら該当するのは一人だけだと繋がり。

問いに夕呼が頷くとそれは確信に到る。

 

武「うわっ、若!?俺らよりも年下にしか見えないぞ…」

夕呼「それはあたしも気になったわね。声からして若年者だとは思ってたけどここまでとは」

 

そんな武の物言いに同感する夕呼。明らかに据わった面影や前のエクシアの戦いぶり以外は少年と扱って差し支えない見た目に興味深そうに視線を這わす夕呼へと睨みを利かし。

 

刹那「…歳の話をするために俺をわざわざ人気の無い此所に連れてきたのか?」

 

入室してからずっと背を見せていた刹那が改めて向き合うと呆れ顔を見せ。

 

夕呼「いいじゃない。些細な事は思わぬところで役に立つかもしれないわよ?」

 

それでも尚も茶化すような言動であちこち眺めだす夕呼に埒があかないと諦めた刹那は溜め息を吐きながらも年齢を明かし。

 

刹那「……17だ」

夕呼「という事は一応徴兵されててもおかしくない歳ってわけね」

武「へぇ〜〜、俺なんかもっと下だと思ったけど一つしか変わんないじゃん」

 

漸く答えた刹那に満足した顔の夕呼と予想が外れて意外そうな武、そんな光景に遙も思わず苦笑する。

 

夕呼「ふむふむ。ま、若くてどうのって話しはこれくらいで切り上げて本題に入りましょう。丁度いいから記録は涼宮に任せるわ」

遙「は、はい。わかりました」

 

一通り楽しんで気が済むと室内の奥にある資料が山積みのデスクを挟んだ自席であるオフィスチェアに座り、更に向かいの中央に位置する客用ソファーへ手を差し伸べ着席を促すと記録を任された遙以外は促される通り武と刹那で互いに反対へ座り、デスク脇に遙が立って手に持つ電子機器を操作し始め。

 

刹那「…改めて問うが、アンタは何者だ?」

夕呼「何者も何も最初に言った通りあたしはこの基地の副司令で、それ以上でも以下でもないわ。最も今はある計画に携わっているから博士とも呼ばれているけれどね」

 

ノーマルスーツのヘルメットを脇に置き再度夕呼へと視線を向けると早速先程から見せる手際のよさを怪しみ正体について問い質すも返ってきたのは偽りを感じぬも己が欲する答えでなく、その事に刹那が落胆の意を示しつつもある単語に疑問を持ち。

 

刹那「計画?」

夕呼「それを話す前に先ずはこの世界の事を話しましょうか」

 

疑念を直ぐにぶつけるも当人は涼しい顔で答える前に客人である刹那へと懇切丁寧に説明を始め、同時に予め壁掛けに用意したスクリーンを映し。

夕呼から告げられたのは先ず火星探査機の映像から始まった。生物らしき影を映し調査を始めるもどの探査機も地球へ帰還される事は無く、それが初めて人類がBETAを目にした瞬間だったと。それから暫くして月面調査隊が異種と接触するも攻撃的行動を受けた事により人類側は全滅、これを皮切りに異種を[Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of humanrace]人類に敵対的な地球外起源種と断定して全面交戦へと勃発。人類の持ち得る兵器を屈指するも事態は拮抗するばかりで、3年間の戦争の末ついに地球へ向けた着陸ユニットの侵入を許してしまった事により月基地を放棄せざるをえなくなった。

地球でのBETAの最初の拠点はカシュガルでそこに巨大なモニュメントを象徴とする地下坑の巣を造り、これを航空戦力で対抗するも僅か19日目で光線級が現れ狙撃されるようになり実質無力化されてしまう。これにより人類は人型兵器の戦術歩行戦闘機を開発投入し戦術核なども使うが徐々に効果が薄れ。最終的にはBETA侵攻が止められずユーラシア大陸全土に次々ハイヴの建設を許してしまい、日本もまた九州から上陸したBETAによって首都である京都を落とされ佐渡島にもハイヴを建てられた事までを話す。

 

刹那「人類に敵対的な地球外起源種……あの生物兵器は外宇宙から来た侵略者だという事か?」

夕呼「そう。そして奴等は人類を生命体として認識していないという事が現在判明している」

 

だから構わず攻めてくると付け加える。そこまで黙って解説を聞いていた刹那が再度口を開き。

 

刹那「…計画というのも謎だが、まず異種との会話が成功したのか?」

夕呼「その事を話すにはあの娘を見せた方が早いわね…白銀」

 

問いにまた答える前に武に合図を送り。

 

武「ああ、霞を呼んでくればいいんですね?」

夕呼「お願い」

 

それを確かめるのに夕呼は肯定し頷くとそれを聞き受けた武が立ち上がり執務室から出ていく。

その行動理由に刹那は訝しむも直ぐに戻ってきた武と共に現れた少女を見て直ぐに彼女を連れてくる為だと理解し。

 

夕呼「この社霞こそがBETAへコミュニケーションを取るための存在。ESP発現体にして対象の思考を画、感情を色で読み取る事が可能なリーディングを持つ能力者よ。…正確には彼女の姉妹が前の情報を手に入れたのだけどね」

霞「………」

刹那「…その為に創られた存在、という事か?」

武「ッ!?」

 

霞を一目見て夕呼から先程の件を補完されるとその能力からとある人物、そしてとある機関が頭を過り。

一概に超能力者といっても偶々見付かったというのは都合が良く、更に姉妹もいるという形容から繋がる真実。まして非人類との戦争中なら"そういう"のが開発されていてもおかしくは無い。

その事を殆どノーヒントで当てた刹那に武も、そして夕呼と当人の霞も目を見張り。

 

夕呼「…よく分かったわね、社が人工生命体だって」

刹那「いや……俺のいた組織にも能力を埋め込まれた奴がいたから、もしかしてと思っただけだ」

 

問いに頷き勘の鋭さの理由を尋ねては刹那も霞を見ながら答える。

 

夕呼「……社」

霞「はい…よくは見えませんが……ガン、ダム…?」

 

その言葉に霞へ目でまた合図を送るが返ってきた内容に頭を押さえ「またそれ?」と唸る。

 

夕呼「あんたってもしかしなくても…ただのガンダムバカなの?」

刹那「…最高の誉め言葉だ」

武・遙「えっ…」

 

そんなやり取りに更に頭を抱える嵌めになる刹那にとっては禁断とも言える言葉を吐いた夕呼と、唖然と開いた口が塞がらない武に今まで黙って真剣に記録作業をしていた遙までもが声にしてしまう。

 

霞「…ガンダムとは…誉め言葉なのですか…?」

刹那「そうだ。俺はガンダムになりたい…」

霞「ガンダム……私も、なれますか?」

刹那「…何故そうなりたいと思う?」

霞「わかりません…」

 

二人の高度な会話に場の空気が微妙になりつつあり、本人にも自覚は薄く分からない事だが思い出を探し求める霞としてはそれが誉め言葉だと言われれば信じて善とし、ガンダムになればそれが己だけの無二の思い出となると思ったのだろうが、刹那が解釈するガンダムとは異なりその質問に彼の絵と色を見て答えに詰まる。

いずれにしても第三者には決して二人の思考は理解しがたく。

 

夕呼「あのねぇ…流石に悪影響だから止めてもらっていいかしら?」

霞「……?」

 

念の為忠告するも霞は夕呼の言葉の意図が逆に理解できず気の抜けた顔で首まで傾げ。無口な二人には不思議なシンパシーでも生まれるのかと遙や武は苦笑いを浮かべる。

 

刹那「…話しを続けよう」

 

当の刹那は流石に自覚しているのか話題の転換を修正するように、霞も武の隣へと腰を下ろし。

 

夕呼「それで?…キリもいいし、一旦あなたの世界について聞きましょうか」

刹那「ああ…」

 

今度は刹那が己の世界について語る。

BETA由来以外はこの地球と似ていて、しかし此方は技術的には発展している部分もある事。化石熱料の代わりにエネルギー源として出来た半永久的エネルギーを生み出す宇宙太陽光発電システム、それに伴い軌道エレベーターを開発して宇宙への進出も発達しており、更に宇宙にはコロニー等も存在している。

三つの軌道エレベーターの恩恵を受けるべく国々は3ヶ所に集まり三大国家へと発展、軍事施設などもそこに基準してユニオン、AEU、人革連で形成される。そこに大々的な戦争は無いまでも熾烈な競争で新兵器やモビルスーツ開発など軍備開発の強化を進めたり、各国家は己の威信と繁栄のためのゼロサムゲームを続けていた。更に三大国家に属さない小国は枯渇した化石熱料等に悩み紛争や内戦が絶えなくなり。

このまま進化し続ければ直に紛争は国家間にまで発展するのは誰の目から見ても明白で、そんな人類を一つに纏め戦争と紛争幇助の引き金を一切無くすために組織されたのが刹那達ソレスタルビーイングであり、それを成すためのGN粒子と動力にGNドライヴを使うガンダムが存在した事を。

 

刹那「それを造り計画したのがイオリア・シュヘンベルグ…」

夕呼「イオリア…」

武「世界から…一切の争いを無くす…?」

 

半信半疑な武とは対称に大いなる目的の為手段を問わないイオリアに少しだけ共感する夕呼は感慨深くその名を囁き。

 

刹那「その中で人類革新連盟、人革連は秘密裏に超兵を造り出す超人機関という施設で実験を行っていた。人体改造で得た脳量子波はあらゆる能力が飛躍し、完成された超兵同士ならば共鳴して思考を送り合う能力も備わると聞いている」

夕呼「!それでさっき社の出生を見破ったってわけね…」

 

そして肝心の先程霞の出生に気付いた事柄について話すと漸く話しが繋がって確かめる夕呼に刹那も頷いて肯定する。

超兵の脳量子波は空間認識能力や反射神経等を向上させるためパイロットセンスも極めて高まる反面テレパシー能力が無意識に干渉して頭痛を起こす欠点も存在すると伝え。

 

夕呼「0から産み出した人工ESP発現体に、人体改造により擬似的に誕生した超兵…」

刹那「…それで、計画というのは?」

 

一通り説明したと証すように再三に渡り問い。

 

夕呼「あら、まだ話しの続きはありそうだけれど?…ま、いいわ」

 

しかし刹那の世界観説明には肝心な処がほぼ抜けているのを見抜くも彼の組織の守秘義務を話す気は無い様子で、半ば諦めた夕呼も溜め息をつくとどの道いずれ話さなければならないかもと一先ず置いて。

 

夕呼「それと涼宮、今までの話しとこれからの…計画もまだ一部しか知らない事だから当然他言は禁物よ。いいわね?」

遙「え…あ、はい!」

 

念の為改めて忠告すると当の遙は記録任務こそ全うしているも異世界の話しや、自分の世界においても人工生命体など知らずにいた為その壮大な内容に頭が追い付いていかず、唖然としていた処で急に意識半ばな頭を覚醒させられると慌てて返事をし。

 

夕呼「…あたしも配慮が足りなかったわね。計画については記録する必要は無いからあんたも座って楽にしてなさい」

遙「うっ……すみません…ではお言葉に甘えて」

 

その事に一目瞭然で一旦は今までの作業は必要無くなると休憩を促され、素直に受けると刹那の隣の空いているスペースに移動して座り。

それを確認してはスクリーンの映像を切り替え。

 

夕呼「さて…さっきも言ったようにあたし達は奴等に生命体としてみなされず、それはリーディングの対をなす能力…対象へ自分の思考や感情のイメージを投影して送るプロジェクション能力によってありったけの和平のイメージを送り続けたけど反応なしで結果変わらず。そもそも彼らには和平や紛争という概念が無いのか、人類を生命体に認識していないから単に無視しているのか…いずれにしても現時点では和平など到底不可能。ここまでがオルタネイティブ計画の第3段階」

刹那「オルタネイティブ計画……3という事はそれ以前も?」

 

計画の概要を改めて説明していくと段階を踏んでいる事に当然気付く刹那。

 

夕呼「ええ。第1計画は最初に話したように火星探査機が発見した時点、非人類にどうコミュニケーションを取るかで動物や言語や数学に精通した学者を集めたのだけど、解析以前にBETAが言語を持ち合わせているのかが不明な時点で第1計画は破棄。そうしている内に月にまで侵攻したから対抗する為にBETAの生態研究が要される。捕獲に成功した奴から調査と分析を行い分かったのが彼らは炭素生命体であり、様々な環境下にも対応出来る身と適応能力、その上別種のBETA同士で種を同定するための特徴は一切発見できずに消化気管や生殖器も特定不能。これがオルタネイティブ2にあたるわ」

 

次々省略化して解説していくと先のオルタネイティブ3へ繋がり。

 

刹那「…なるほど。それで直接奴等と接触を」

夕呼「そうね」

 

肯定すると更にスクリーンを【AlternativeⅣ】と記された映像へと変える。

 

夕呼「そして今までの第3計画をシェイプしてあたしが編み出したのがBETAが生命体と認識し得る人工存在を創り上げる事…炭素系擬似生体からなる身体に人の魂を宿し、量子電導脳による様々な情報並列処理を同時に可能とする存在、それが00ユニット。オルタネイティブ4の鍵よ」

武「!」

遙「!?」

 

そしてついに取り上げられた計画の第4段階の内容。遙は勿論武も初耳なのか目を見開いている。

 

刹那「情報並列処理……まさかヴェーダ…?」

 

しかし刹那はそれを聞いてとあるシステムが脳裏を過る。己が組織の作戦において中核を為していた量子型演算処理システム。イオリア計画に必須とされていたそれを囁くと夕呼も話し途中で反応し。

 

夕呼「…セイエイ?」

刹那「!いや…なんでもない。続きを」

 

言葉までは聞き取れずも口の動きで何か囁いたのを疑うと呼び掛け。だが刹那は答える気が無く彼が話す内容に秘匿性が多いのを予め把握していた夕呼はこれも一先ず流し。

 

夕呼「そう。…悪いけど場所を移すわ」

 

そう言って立ち上がると退出のため扉へと歩みだし、これからの事を熟知している霞以外は訝しみながらも大人しく従って、刹那達もソファーから立ち上がれば夕呼に続いて歩き。

 

刹那「!」

遙「これは…!」

 

扉を出て直ぐ横の部屋へと向い、その行き先で武は理解したようで夕呼が認証IDのカードを通して扉を開き、その中を見て刹那と遙は目を見張る。

室内には幾つもの機材やコードが張り巡らされ、その中央には脳髄が浮かぶシリンダーが佇む。異様な光景だが刹那は特段取り乱す事もなく遙も冷静を装い。

 

夕呼「…白銀、例の数式のお陰でついに理論が完成したわよ」

武「!まさか、00ユニットが…!?」

 

それを聞いて今度は武が目を見開き夕呼を見る。どうやら彼はそれを認識しているようで話しがみえない遙と刹那はその様子を眺め。

 

夕呼「そう、これがオルタネイティブ4を成功させる為の最重要な存在の一つにして現研究の集大成」

 

その言葉に添うように霞が室内の奥にある一室へと去ると殆ど間を置かず再び現れ、手には傍らの人物の手が繋がれ誘導する如く歩幅を合わせる。

 

夕呼「彼女がその00ユニット」

武「……ッ!!!??」

 

夕呼の差し出す掌の先、霞が繋ぐ手に引かれる者を遙に刹那、そして武は向いて再度目を見張る。

 

遙「この娘が…」

刹那「……00ユニット」

 

囁くは遙と刹那。

 

武「……純、夏…?」

 

名を呼ぶのは白銀武。

 

純夏「………」

 

その瞳で武を見据え、霞の誘導で目の前まで歩み。

 

夕呼「………」

遙「えっ?」

刹那「!………」

 

様子を伺う夕呼とその真意が分からない遙とは対象に武の反応でおのずと理解した刹那は夕呼を見て、それに気付いた彼女も不適な笑みを向ける。

 

武「純夏…」

 

目の前まで来た00ユニットに尚も名を囁く。そんな武に虚ろ―――では無い確りと意思の籠った瞳を向ける純夏が武の頬を撫で。

 

純夏「…タケルちゃん」

 

彼女も武の名を囁いた。

 

夕呼「やはり調律が必要無いまでに…!後は白銀の存在を傍におけば―――」

 

二人のやり取りに夕呼は先程までの毅然とした態度は一変、何か思案し企み始めるとその独り言に遙はまた理解が及ばず様子を伺い、そんな遙に刹那は告げる。

 

刹那「あの二人は知り合いなんだろう…そして00ユニットの人格は恐らく」

遙「!それじゃあ…!」

 

そう言って刹那は脳髄が入ったシリンダーへ視線を移すと遙も見て漸く理解した反応を示すと続いて夕呼へ視線を向け。

 

夕呼「…なにか?」

遙「あ……いえ」

 

しかし軍事機密な上に悪意を以て為した訳では決してない事くらい遙も理解出来るので言葉にならない思いが胸に絡み目を逸らす。

 

刹那「…一つ聞きたい。アレは誰がやった?」

 

その様子を見た刹那は再度夕呼へ向き直り視線のみシリンダー内へと送ると問い質すような言動で。

 

夕呼「…アレはハイヴを攻略した時に見付かったそうよ。つまりBETAが何かをしたか…」

遙「!!」

 

質問に素直に答え脳髄を見ながら悍ましい事をしたであろう張本人の正体に遙は一層目を見開く。

BETAの中にはあらゆる物を"食べる"個体も存在していてこの世界の住人である遙は勿論其れを知っている。悲惨な出来事があったのを容易に想像すると額を押さえ目眩を覚え。

 

刹那「BETA……こんな行いをする奴等は、やはり駆逐対象…」

 

一方の刹那も武力介入の際に異形の小型種が機器や人を食い荒らし殺戮するのを数度か目の当たりにし、改めて排除する遺志を強める。己とて人を殺めテロ紛いの事をしている自覚はあるも、少なくとも武器も持たず敵意の無い者や一般人を無差別に攻撃するなどという考えは微塵もなく、あくまで戦争根絶という理念の為である。当然その後の報いを受ける覚悟もあり、だが今はその目的を果たすまでは戦うために生きると誓い今に到る。

ならば紛争幇助、増してや非人道的な行動をする異種は敵以外のなにものでもないと睨み。

 

夕呼「…鑑、白銀。感動の再会はいいけどまた場所を移すわよ」

武「あ、すみません」

純夏「うわっごめんなさい!」

 

そんな刹那を一望した後、ある程度放っていたら物凄くイチャつきだしそうな様子の二人へ声を掛けると当人も焦って身体を離す。

見れば何かしらの会話後だったのかお互い手を握り合って見詰め合う様に状況的に注意して正解だったと改めて思う夕呼。

純夏の紹介と刹那の鋭い指摘で既にこの部屋での話しを終えたかのように再び執務室へと向かう面々。

それからまた戻れば夕呼は自分の定席に、今度は武を挟み純夏と霞が肩がぶつかる程密着してソファーに、向かい側には変わらず刹那と遙が座る。

 

夕呼「じゃあ改めて紹介といきましょう」

 

チェアへ腰を沈め切り出すとデスクに肘を着いて。

 

夕呼「さっきも言ったけど彼女が00ユニット、人格…人としての名前は鑑純夏よ」

純夏「ヨロシクね!」

 

その大それた存在にしては妙に気さくというか明るいテンションと元気な声に肩の力が自然と抜ける遙と、隣で和んでいる武、そして無表情な霞と刹那。

 

夕呼「本当は理論上、もっと思考の薄い状態で目覚める筈だったのだけど見ての通り…その点については事前に話しが通っているから別に気にしないけど、改めて調律の必要が無いのを見ると科学者としての自信が喪失しそうだわ」

 

対比的に落胆する夕呼。

何せ理論の構築から此処まで全て狂い無く進んだのだが蓋を開けてはこれだ、心中お察しである。

 

純夏「え〜〜、でもこの方がスムーズでいいじゃないですか。そうだよねっ、タケルちゃん!」

武「お、おおう。いやにしても」

 

そんな夕呼を他所に武の肩に腕を絡め引っ付く純夏へ想い人だけに拒否はしないも流石に毒気を抜かれ。

 

夕呼「ハァー…ま、いいわよ。話しが進まないから早速白銀に関する事象、最後にセイエイに関して話すから確り聞きなさい。涼宮は座ったままでいいからまた記録をお願いするわ」

 

その光景に呆れ顔を向けるも放置を決めて各自に話し始めると遙も再び手に電子機器を持ち。

 

夕呼「まず白銀が何故平行世界の住人であるかの証明。これは社のリーディング結果で既に確証を得ているけど、そもそもこの世界の白銀はもっと前にBETAに殺されているのよ」

遙「!?」

 

その事実に本日何度目かの見開きをする遙と、先程までは元気だった純夏も憂い悲壮な瞳に変わり、刹那は尚も無表情で。

 

夕呼「そんな白銀を平行世界から少しずつ集めてこの世界に降り立ったのが因果導体となったこの白銀武」

武「!じゃあやっぱり」

夕呼「―――と言うのが前までのあんた。そこから先は鑑が説明しなさい」

武「……え?」

 

夕呼の解説で合点がいったと思った武だが次の言葉に思考が止まる。続きを促された純夏に全員の視線が集中して。

 

純夏「………まず最初に謝らせて?ごめんなさい!タケルちゃんがこの世界に来たのも因果導体にされたのも全部わたしのせいなの!」

武「ッ!?」

 

少し余裕を作るべく身体を離した純夏が武に頭を下げて全てを打ち明ける。

 




真実を知るも運命に抗い再び純夏と結ばれた武

崇高なる世界の楔に、今度こそ終止符を討つべく

次回
「決意の瞳」

刹那、神を否定する

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