【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜 作:塊ロック
春の陽気が過ぎ、少し夏の暑さが先行してきた5月末。
もう慣れ親しんだ道の途中で活発な挨拶を受ける。
「おはよう、比良坂。今日も元気だな」
「はい!今日も成子坂の為に頑張るっす!!」
おーっ!と腕を突き上げ気合充分な様子。
比良坂夜露16歳。
俺がこの春働き始めた、成子坂製作所の新人アクトレスだ。
なんと俺が隊長としてやってきた日に入社しているので、ある意味同期とも言えるのかもしれない。
そのせいか、年が少し離れているにも関わらずよろしくやってくれている。
「体調はどうだ?」
「バッチリっす!いつでも出撃出来ます!」
「と、行ってもまず依頼があるかどうかだけどな」
がくり、と夜露が項垂れる。
…成子坂製作所は現在、過去に起こった不祥事により経営が傾きかけているのだ。
当然、そこへ舞い込む依頼も相当絞られてしまっている。
「隊長はいじわるっす」
「比良坂の反応が良いからな」
うーっとうなりながら非難の目を向けてくる。
感情表現が豊かだからこそ、弄り甲斐があるのだ。
「そこは俺の仕事だからな。せいぜいお前が輝ける場所を探してやるよ」
「約束っすよ、隊長」
「勿論だ。…百科にどやされるのも勘弁だしな」
苦い顔をしながら成子坂所属のもう一人のアクトレスを思い出す。
「隊長がサボるからいけないっす」
「そうは言うが休憩するタイミングを見計らって追加で仕事入れてくるのはどうかと思うぞ」
「えっ、サボってたんじゃなかったっすか!?」
「おま、人をなんだと」
なんて事だ、俺の勤務態度に問題があると思われてしまっている。
「そんな事はないぞ、うん。やるときゃやってるから」
我ながら苦しい言い訳になってしまったが、夜露は困ったように笑う。
「私も頑張るんで、やっぱり隊長にも頑張って欲しいっす」
思わず面食らう。
それもそうだ。
いくら危険性が低くなってるとはいえ最前線で戦うのは彼女たちなのだ。
こんな少女が戦ってるのに、自分はみっともなく言い訳をしている。
「あっ!その、別に…えーと」
自分の言ったことに気付き、慌てて訂正しようとするが上手いこと言葉が出てこない。
そんなあたふたしている表情を見て、暗くなりかけた思考が一気に緩む。
「ああ。まだまだ頼りない隊長かもしれないけど、俺なりに頑張るよ」
「はいっす!その意気っすよ!!」
「比良坂ァ!お前も俺に発破掛けたんだ。持ってきた依頼へまするんじゃねぇぞ!!」
「望むところっす!」
「なら成子坂まで競争だ!行くぞォ!!」
「うおおおおお!!」
雄叫びを上げならが走り出す二名。
朝っぱらから何だなんだと周辺住人が顔を出すが当人たちの知る由もなかった。
この光景が日常になるまで、もう少し係るだろう。
なお、その後奇跡的に隊長が依頼をもぎ取り、突如乱入してきた大型ヴァイスを夜露が討伐し、成子坂の復興に貢献した。
「成子坂、ファイトー!!」
黎明期が終わるまで、あと少し。