【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜 作:塊ロック
前回がちょっと蛇足感凄かったので追加。
「アクトレス同士の模擬戦?」
とある昼下がり、何やらアクトレス達が騒がしいと感じていた頃。
「そ。なんでもシタラとジニーがちょっとね」
「珍しいな。ルームシェアで住んでるくらい仲いいだろあの二人」
「ジニー宛に届いた荷物の話をしてたらそうなってたって」
事情を四谷さんから聞く限り、単純に好奇心で聞いたことが割とジニーにとってデリケートな話だったらしい。
「それで、どうして模擬戦に?」
「ジニーが、勝ったら教えてあげるってさ」
「なるほどね…まぁ、」
そのうち対アクトレス戦も発生するだろうし経験させるのも…と、言おうとしてやめる。
(馬鹿か。そんな事はあり得ない…)
「隊長?」
「ああいや、なんでもない。で、ジニーと兼志谷がタイマンするのか?」
前衛のジニーと後衛の兼志谷だとどう考えても兼志谷が不利だ。
判っていてジニーがこの勝負を仕掛けたとは考えにくいが。
「夜露ちゃん、シタラ、リンちゃん、怜ちゃん、楓ちゃんが参加するそうよ」
「…まさか、ジニーが一人で相手するのか?」
確かにジニーは腕が立つ。
…明らかに民間人上がりではない強さを持っている。
「そうみたいね」
「マジかよ」
ジニーに限って何か思い詰めている、そういった事は無いはずなんだけど…。
「シタラもなんか『灰色の世界』って単語聞いたらジニーが怒ったーとか」
「灰色の世界…?」
灰色の世界、よく自分の価値観を灰色と評する人も居たりするが。
「…………あっ」
わかってしまった。
過去に銃を握った事のある身として、彼女の言葉の意味が。
「…ジニー、まさか」
――――――――――
予想通り、模擬戦はジニーが圧勝した。
ただし、日向と吾妻が食い下がりこの二人には教えるらしい。
「…」
そんな日の数日あと。
ジニーから連絡が入り、一緒に出掛けることになった。
場所は、よくジニーが行くという水族館。
「Hi、隊長!早いね」
「ジニー。学校帰りにそのまま来たな?」
「隊長を待たせちゃいけないからね」
よく見る、シタラと同じ高校の制服姿。
なんとなく、制服を着慣れていない印象を感じる。
「さ、入ろうか」
「ああ」
東京シャード内でも有数のアクアリウムを持つこの場所は、正直縁のない場所であった。
歳は離れているとはいえ、女の子と並んで歩いている事にちょっとした違和感すら覚える。
…生憎相手側も普通の女の子では無いわけだが。
「ジニー」
「?何、隊長」
「この前の模擬戦、ショットギアを一切使わなかったな」
「!気付いて、たんだ」
前回の模擬戦、ジニーは自分の得意武器であるショットギアを封印し、クロスギアの大剣だけで他のアクトレスを圧倒していた。
「どんだけお前達を見てたと思ってる」
「それもそっか。隊長も、軍人さんだしね?」
その一言で、言葉が詰まった。
「そんな事、言ったか?」
「隠してたならごめんね?調べちゃった」
えへへー、と舌を出してわざとらしく笑う。
…まぁ、履歴書に書いてない、アクトレスに伝えていない理由が自分の体裁の為だから別にバレても問題はない訳だが。
「まぁ、バレて困る訳じゃないがもう辞めてるんだ」
「あれ、じゃあ元?東京シャードの言葉は難しいね」
「そんだけ流暢に喋っててよく言う」
呼び出した理由、そろそろ本題に入るかどうか。
結局、話を切り出すことにした。
「…PTSD。もう治ってるだろ」
「………隊長にはほとんど話が行ってないと思ったんだけどな」
「まさか。たまたま聞いただけさ」
自分の世界に色がない。
戦争で精神を病んでしまった兵士がよく掛かってしまう症状だ。
…昔、俺も掛かっていた。
「届いたのは、これなんだ」
取り出されたのは、サングラス…いや、射撃用のアイセーフティだ。
相当年季の入った代物で、常用されていた物だとすぐにわかった。
「私さ、昔…ちょっとした事があってさ。それから人にジュウコウガ向けられなくなったんだ」
「…」
ジニーの年齢を考えると、その過去はとてつもなく重い。
「ヴァイス相手なら何とかなるんだけどね。でも、お世話になった教官が、これを贈ってくれたんだ」
「…そうか」
でも、彼女は立ち上がった。負けなかった。
それがとてつもなく眩しい。
「私にも、大事なものが出来たしね!」
「トライステラか」
「もう!言わないでよ!」
ようやくジニーが笑った気がした。
兼志谷と二子玉。
二人がジニーにとっての世界の光なんだろう。
「大事にしろよ。掛け替えのない仲間なんだから」
「モチロン!」
「あと、」
付け加えるように、ジニーをしっかりと見据える。
まだまだ幼い彼女への、精いっぱいのメッセージ。
「大丈夫だ。俺がいる」
「隊長…?」
「この事は兼志谷には話さない。けど仲直りはさせてやる。お前たちを絶対一人になんてさせない」
それが、俺の役目。
しってしまった人間がしなくてはならない事だ。
だから、俺がこの子達を守る。
「隊長、それ告白みたいだね」
「ま、意味としてはそんなもんかな?」
「えっ」
「まぁでも、お前らがもう少し年食ったら考えるかな」
「隊長その時オジサンでしょ」
「痛い所をつくなオイ」
「私は嫌いじゃないよ、隊長のこと」
「そりゃどうも…?」
ふと、ジニーの姿がブレる。
(…うん?)
ジニーの年齢。
職業、あれは何年前だった。
俺に手を伸ばした、あの少女は、
「…二年前」
「?」
「ペンタゴンシャード周辺宙域で手を伸ばしたのは、まさか」
「隊長」
ジニーが唇の前に、人差し指を押し付けた。
「Thanks、ちょっと気分が軽くなったよ」
「…そうか」
ならば、何も言うまい。
彼女が今回話してくれただけで御の字だ。
「さて、晩ごはん食って帰る…あー、兼志谷誘うか」
「ちょっ、隊長!?」
「言ったろ?仲直りさせてやるって」
「いくら何でも光速すぎるよ!」
「むしろ数日経ってんだから音速くらいだ」
兼志谷にコールしながら、片手でジニーをあやす。
「もう!こんなんじゃ喜ばないよ!」
「もし、兼志谷?今ひまー?」
――――――――――
ちょっとだけ後日談。
あのあと、しっかりとジニーと兼志谷は和解できたらしい。
ファミレスでムードを作りつつ会計を済ませて帰る完璧な作戦によって事なきを得た。
(ま、一件落着かな)
「隊長ー!」
「おう、おはようジニぐえぇっ!?」
振り返って挨拶に応えようとした瞬間、腹に突撃物が。
なんとか踏ん張って見下ろすと、綺麗なブロンドの後頭部…ではなく。
「ジニー…」
「もう!先に帰るなんて水臭いよ!」
「悪い悪い…ちょっとした急用が」
「シタラとの仲取り持ってくれたから今回は許してあげる」
「ははは…」
「急用ってセリナから?仕事貯まってたなら無理しなくて良かったのに」
「…………は?」
「大変なら私も手伝うから!それじゃーね隊長!」
固まるこっちを余所に、ジニーは学校へ走っていった。
…途中で、立ち止まり、
「隊長!私もう結婚できるよ!」
「さっさと登校しろ!!」
ジニー、陥落。