【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜 作:塊ロック
「隊長って結婚しないんですか?」
「…え?」
始まりは、比良坂のこの一言から始まった。
平日の昼、アクトレスが一番多い時間帯だった為にあちこちから物音が響きまくった。
ガタタッ!
ゴトッ!
グキッ!
「おい誰か今足捻ってないか」
「隊長、どうなんですか?」
「比良坂…まぁいいや、別に結婚願望は無いよ。今はな」
大分安定してきたとはいえ、未だ成子坂は零細企業だ。
配偶者に苦労を掛けるという意味では些か決断できない。
「今は、じゃあいつかはしたいんだ?」
「兼志谷」
後ろから兼志谷が首を出してきた。
その後ろにはニヤニヤしているジニーといつも通りオロオロしている二子玉がいた。
「私とかどう?見た目は結構自信あるよ?」
「まだお前16だろ。あと5.6年経ってから出直して来い」
「がーん」
「Hey隊長!私も自信あるよ?」
「シャード跨いでの結婚は相当面倒なんだろうな…」
「がーん…」
「た、隊長!カナダシャードとかどうですか!?」
「唐突に移住を勧めてきたぞこの子。あっ同性婚が認められてる国かこの野郎」
トライステラによるジェットストリームアタックを難なく躱す。
一人核弾頭を持っていた気がするが気にしない。
…しかし、結婚か。
(今は…まぁ、夢が実現できそうだしそっちに割いてる余裕は無いかなぁ)
実際問題、成子坂での隊長業務と並行して相棒の改修を進めている。
そして、この隊長は彼女いない歴=年齢を地で行っているので動く気配も無い。
(でも正直ここの皆見てくれだけなら一級品だし邪な考えが無いって言うのも嘘なんだよなぁ)
「勝手に人の思考を代弁しないでもらえますか神宮寺さん」
「え?バレた?あははーごめんごめん」
いつの間にか耳元で囁いてきた神宮寺さんを引き剥がす。
「隊長が結婚についてどう思ってるかちょっと気になってさ」
「別にどうとも。今の所する予定が無いだけで」
「ふーん…?」
意味ありげに薄く笑う。
こう言う時の神宮寺真理はだいたい良からぬ事を考えているに違いない。
ならば、先手を打つ。
「そういう貴女はどうなんです?」
「えー?まだ21だし焦る事はないかなーって」
「21ってアンタこの前誕生日じゃ…」
「舐めるでないよ!!」
「ごはっ!?」
鳩尾に拳が入った。
割と本気だこの人。
「いいかい隊長?世の中には流した方がいい真実もあるのだよ…」
「げほっ、げほっ…貴女本当にその性格なかったら好みなのに残念過ぎやしませんかね」
「えっ」
ぴしり、と神宮寺さんが固まった。
「そ、それはどういう…」
「…なんてね。仕事の時間だ。チーム、トライステラ出撃!」
「隊長、☆も付けてね」
「えっ、いるのそれ」
――――――――――
翌日。
「隊長さん、結婚に興味無いんですか?」
「なんかデジャブが……って、新谷さん」
事務仕事中、新谷さん、百科、安藤さんと机で向かい合って作業中の一言であった。
「隊長、ご結婚されるんですか?」
「安藤さんまで……違いますよ、昨日兼志谷達が騒いでただけです」
「皆さん、仕事中ですよ……っと、もういい時間ですね。お茶淹れてきます、休憩しましょう」
「悪いな、百科」
「いえ、お気になさらず」
百科が席を立った。
……最近割とメリハリ付けてくれるようになってくれてちょっと嬉しく思う。
「隊長、そんな娘を見守る親みたいな顔して」
「うちのアクトレス皆娘をみたいなもんだし」
「隊長さんいくつですか……」
「今年で24」
どことなく枯れて見える、そう評されたこともあったなとしみじみ思う。
「ふーん……?」
「何ですかその意味深な」
「歳が近い男性ってどうしても子供っぽく見えちゃうけど、隊長なら良いかなって」
「……冗談でもたちが悪い」
「あら、本気ですよ?」
「辞めてくださいよ。笑えない」
「……隊長に芹那さん、何やってんの」
新谷さんに詰め寄られてることに気が付きちょっと後ずさっていると、そこに小鳥遊が入ってきた。
……何故か物凄いジト目で。
「お、おう小鳥遊。どうした?」
「別に。ただ、邪魔だった?」
「あら怜ちゃん。こんにちは」
「あ、小鳥遊さんこんにちは」
「こんにちは安藤さん。それで、これはなんの騒ぎ?」
「結婚するなら隊長みたいな人が良いって話よ。怜ちゃんはどう思う?」
「………………別に。興味無いし」
何その無言。
めっちゃ気になってそうなんだけど。
「ただ、」
「うん?」
「隊長は……一緒にいると安心するって言うか、一緒にいられると言うか……」
「ぐはっ!?」
「隊長!?」
いかん、どうした小鳥遊!
俺のハートに火を付けてどうする!
「隊長……!?大丈夫?」
「ああ……大丈夫だ……」
「お茶持ってきまし……何やってるんですか隊長」
多分続きます。