【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜   作:塊ロック

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酔っ払い達の讃歌

 

どうしてこうなった。

 

「ねーねー隊長きいてるー?」

「はいはい聞いてますって」

「えーほんとですかー?真理ちゃんのえっちー」

「聞いてねぇよそんなん」

「やーん隊長のえっちー」

「てめー実は酔ってないだろ神宮寺」

 

事の発端は、新任の隊長補佐、山野薫子さんが着任してからの事だった。

 

「成子坂は婦人会の助っ人としてバレーボール大会に参加します」

「えっ、あっ、はい。頑張ってください」

 

以上。

回想終わり。

いやだってこっちも業務忙しくて差し入れ持っていってもらうしか出来なかったんだ。

 

で、打ち上げの宴会をやってたらしく、潰れた人たちを回収するという任務を付与された俺こと隊長が店にやって来たのだが…。

 

「アハハーワタシー」

「アハハー、隊長ーもう一杯ー!」

「勘弁してくれ…」

 

見事に泥酔した杏奈と真理に絡まれる羽目になった。

なお、二軒目である。

 

「ほら、それ飲んだら帰りますよ」

「隊長ー、のめのめー、おねーさんのおごりだぞ♪」

「奢りは嬉しいけど」

「アハハ、良いなー真理ちゃん私もー!」

「しょうがないにゃあ…いいよ!」

「「イェーイ!!」」

「うわぁ…」

 

さっきからずっとこのテンションである。

正直まぁ、神宮寺しかり宇佐元しかり、成子坂の為に頑張ってくれているしこれくらいは面倒見てやらないとなーと思う所もある。

 

「隊長ーおねーさんが貰ってあげようかー?」

「素面だったらオーケーしても良いですよ」

「よってないよー」

「すみませーん水一つ」

 

情報を掴むために色んな所を敵に回しながら必死に七年戦ってきたという。

…せめて、俺の下にいる間くらいは羽目を外させてやりたい。

 

(エゴかなー)

 

神宮寺真理にとっての事態は、実際何も解決していない。

 

(エゴだよなー)

「隊長ーどーん」

「うおわぁ!?」

 

雷撃ハンマーの如きタックルが背後から飛んでくる。

背中に柔らかい感触。

 

「隊長ー、真理ちゃんとばっか飲んでないで私と飲んでくださいよー」

「ちょっ、宇佐元重っ」

「重くないですよーアンナちゃんは軽いですよー」

「やめっくっつくな!」

「隙あり!」

「やめろ神宮寺手帳抜き取るな!酔ってねぇだろ!」

 

終始この調子なので凄まじく疲れる。

 

「オラァ帰るぞ!」

「「きゃー♪」」

 

結局、酔い潰れた二人を両肩に担いで米俵よろしく運ぶのだが…。

 

「…やっべ、家知らねぇぞ」

 

事務所に連れてくわけにも行かず、タクシーも捕まらない。

電車もバスも止まったこの時間。

 

「隊長ー、泊めてー」

「あんた本気か?」

 

相変わらず宇佐元は寝ているが、目が冷めたのか神宮寺の方は耳元で囁いて来た。

 

「本気ー。ちょっとくらい役得あったほうがいいでしょ?」

「…俺は嫌なんだが」

「素面なら受けてくれるんでしょ」

「何で覚えてんですか」

「隊長が珍しく甘いから…甘えたい、かな」

「…はぁ。今回だけですよ」

「ありがとー」

 

年上は苦手だ。

というか、この人は本当に狡い。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「はい、乾杯」

 

かつん、とグラス同士がぶつかる音。

場所は結局自宅。

宇佐元は先に隊長のベッドで寝ている…勿論諸々は神宮寺がやったが。

 

それで、二人は何しているかと言うと。

 

「全く。宅飲みまでもつれ込ませおって」

「綺麗なおねーさんと飲めるのが不満?」

「まさか」

「なら良かった」

 

さっきまでの馬鹿騒ぎが嘘のように、静かに飲む。

 

「ふぅ…」

「で、何が目的だ?」

「あ、ひっどーい。疑うの?」

「どう考えたって裏があるだろ」

「ぜーんぜん…」

 

急に覇気のない表情になる。

 

「私さ…ちょっと前までなりふり構わず必死に色々やって来たのに…最近ちょっと楽しいなーって思っちゃったんだ」

「…」

「でもさ、やっぱり凪のこと諦められないし止まるつもりも無いんだけど…ここでの生活も手放したくなくてさ」

「…居てくれよ、神宮寺」

「何、隊長もしかして寂しかったりする?」

「ああ」

 

アルコールのせいだけじゃない赤みが神宮寺の頬にさす。

 

「どうしたの隊長…今日はやけに優しいじゃん」

「甘えたいって言ったのはそっちじゃないか」

「そうだけどさ……」

「少し立ち止まったって罰は当たらない。神宮寺さんだけが必死になる必要はもうない」

「ずるいなぁ……そんなこと言われたら……本気……に……するじゃん……」

 

限界が来たのか、そのまま突っ伏して眠ってしまった。

 

「せめて、いい夢でも見てくれ」

 

宇佐元の隣に寝かしつつ、どこで寝るか考えるのだった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「隊長、私も招待してよ」

「何の話だ?」

 

翌日、話を聞いたのか小鳥遊やら吾妻やら、果ては四谷まで自宅に上げろと言い出してきた。

 

「あー…昨日のアレか」

「隊長」

「未成年はだめ」

「たーいちょ、今夜空いてますか?」

「四谷さん、あんたも駄目」

 

朝からこんなやり取りがずっと続いているのだった。

 

「隊長さん、随分とアクトレス達に慕われていますね…」

「山野さん。なんか、慕われるって感じはしませんがね」

「いえ、皆が隊長の事を信頼しているのが伝わってきます」

「ただ甘いだけですよ」

 

甘くても、彼女たちの為になるならそれも悪くないか、と思う。

 

「おはよー隊長ー!合鍵作っちゃった!」

「おうコラ神宮寺しばくぞ」

 

この後合鍵争奪戦が勃発したとかしなかったとか。

 

 

 




後悔はしていない。
年上のお姉さんがふとしたときに見せる弱気なところって良いと思いませんか?
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