【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜 作:塊ロック
年末だけどアクトレスとダラダラしてるだけ。
朝。
目覚めは悪くない。
年の瀬が迫る中の早朝はやたらと寒い。
思わず布団にくるまりたくなるがぐっと堪えて洗顔を済ませ軽く朝食を取る。
テレビを付けてニュースをチェック。
丁度宇佐元が受け持つ番組がやっていたので目を通す。
AEGiSから受け取った端末に依頼が無いかチェック。
…特になし。
なんかヴァイスの方も出現数が極端に減っている。
向こうも忘年会シーズンなのだろうか。
「…あほくさ」
スーツに袖を通す。
さぁ、出社するか。
「あ、おはようございます隊長」
「おはようございます、籠目さん」
玄関を出ると、隣人の籠目さんに遭遇する。
うーん、今日も綺麗。
やる気が出てくるったらないね。
毎日『偶然』玄関出るとか考えちゃいけない。
「今日は籠目さんオフですよ。ゆっくりしててください」
「いえ、隊長も大変でしょうしお手伝いしますよ」
「いやいや、自分の仕事くらい片付けますよ」
なんか最近籠目さんの俺を見る目が優しい。
この前の盗聴機の件から大分同情されてる感じがする。
「お体にはお気を付けてくださいね…?」
「ありがとうございます。それでは」
さて、出社しよう。
AM10:00
書類の整理をしていると、談話室からアクトレスがひとり出てきた。
「隊長、ヒマすぎて死にそうだよ」
「10分前にも同じ事言ってたなジニー。休みの待機シフトなんだからくじ運のなさを呪え」
ブロンド美少女のグリーンベレー。
休日シフトで入っていたので待機してもらっていた。
「構って♪」
「仕事が終わらん。あとにしてくれ」
「さっきもそう言ったじゃん」
「こっちも休日出勤してるから事務員足らないんだ。勘弁してくれ…」
午前中で終わるとイイなー程度に作業していた。
…見通しは甘かったと言わざるを得ない。
「フミカは?」
「休ませた。年頃の娘さんにあんまり働かせたくないし」
「…ほっとくとずっと書類触ってるし」
「新谷さんは別件だし。ほら、兼志谷と舞と遊んでこい」
「舞がなんか語り出して」
「兼志谷…」
基本的に良い子なんだけど暴走すると手が付けられないのがネック。
…常識人枠だと思ったんだけどな。
「もうしばらく辛抱してくれ。終わったら構ってやる」
「約束だよ。破ったら今度デートしてもらうから」
「…前から疑問だったんだけど」
俺、ナンデこんな慕われてる訳?
「隊長何だかんだ優しいからね」
「兼志谷」
「隊長さんは…その、いつも気遣ってくれて…話しやすいです」
「二子玉まで…」
「ウチで隊長の事嫌ってるアクトレスなんて居ないんじゃない?」
「それはそれで嬉しいけど」
「後はたいちょーが腹括れば解決なのだよ」
「何だよ腹括るって。俺は女性と健全な付き合いをしたい」
彼女はいないけど。
「健全な付き合いて…たいちょー今どきそれは」
「やっぱり東京シャードの男の人って消極的だよね」
「隊長さん。男の人は男の人と、女の子は女の子と付き合うべきだと懐います」
「二子玉?大丈夫?起きてる?寝言は寝てから言おうね?」
やばいさっきから書類がなんか進まない。
「昼コースか…先に飯買ってこよ」
「あ、じゃあ冷やし中華で」
「あ?ねぇよんなモン」
季節考えろ。
――――――――――
PM1:00
「…終わった」
覚悟してたけどそんなに苦行ではなかった。
さて、後は緊急の依頼がない限りフリーか…。
「…本でも読むか」
何となく気まぐれで買った文庫本を取り出す。
栞が最初の方のページにあるのは読む暇が無かったから。
本を開き読み始め…。
「とーかちゃん参上だゾ☆」
なんか来た。
「下落合?どうしてここに?まさか、自力で…」
「いつも自力よ!!」
江古田のロコドル、下落合桃歌が現れた。
なんの前触れもなくえらく唐突に。
「で、どうしたんだ?こんな休みに」
「別に…この前のお礼よ」
「お礼?」
はて、なにかしただろうか。
「忘れんじゃないわよ。誕生日よ誕生日」
「あー、アレ?別に礼なんか言われる程じゃ」
「今日び誕生日にわざわざ手作りのプレゼントくれる男が居るもんですか。とーかちゃんアイドルだからそんなファンは大事にしたいの」
「下落合…」
ええ子やんこの子…イロモノとか思ってごめんよ…。
「ほら、差し入れ」
「ありがとう」
紙袋を受け取る。
中身は雑多な菓子類。
あとで兼志谷達にも分けるか。
「それじゃ、仕事頑張って」
「おう。ありがとな」
答えはなく、そっぽを向いてそのまま出ていった。
「可愛いとこあるじゃん、あいつも」
「ふーん…隊長、ああ言うのがいいの?」
「悪くはな…ジニー、お前何してんの」
「隊長が約束破って他の女とおしゃべりしてた」
「おまっ!人聞きの悪い!?」
このあとめちゃくちゃご機嫌取りした。
――――――――――
PM5:00
結局終業時間ぎりぎりまで四人でス○ブラやる事に。
「それじゃ、隊長またね」
「おう、おつかれさん」
兼志谷達を見送り、事務所の戸締まりをする。
平和な一日だった。
こういう日がずっと続けば良いのに、
「いや、違うだろ」
いつかヴァイスを殲滅し、仲間たちの仇を…。
「…………そうじゃない」
仲間たちの想いに報いる為に、空を飛ばなきゃならない。
相棒は粗方修理はした。
後は試験飛行の場を抑えるだけ。
「…空が、遠いな」
東京シャードに落ちる夕日を眺めて、ひとりごちた。
「隊長?何してるの?」
「小鳥遊…?お前こそ」
事務所に鍵を掛けたあと、後ろから声が掛けられた。
「私は買い物の帰り。もしかして隊長、仕事?」
「その通り。…小鳥遊のとこは今日おでんか」
寒いしちょうどいいな。
「隊長も食べてく?」
「おばあさんに悪いよ。遠慮しとく」
「そう…」
小鳥遊がしゅんとする。
最初と比べると本当に表情豊かになったなぁ。
頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。
「そんな顔するなよ。また今度な」
「…うん」
薄くだが、笑顔を見せてくれた。
そんな小鳥遊に別れを告げて、俺は帰路に着いた。
(晩飯…どうしよ)
飲みにでも行こうかな…。