【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜 作:塊ロック
この日、集まったメンバーの中に隊長の姿は無かった。
投稿時点では大晦日だったんですよ。
時系列がおかしいのはいつもの事です。
…除夜の鐘の音が聞こえる。
「皆、聞こえるか……また年が変わるんだ」
瓶を傾け、グラスに中身を注ぐ。
中身は風情もへったくれも無い日本酒。
屋外で晩酌するには流石に寒い。
そんな中、俺……鳴子坂製作所隊長、二宮暁は空に向けてグラスを掲げていた。
「……第--実験部隊の戦友たちに」
呟きは夜空に消えていく。
俺はグラスの酒を一息に飲み干した。
「……はぁ。今回はいいやつを買った……ようやく余裕も出てきたし」
ぽつぽつと、誰かに語りかけるように最近の出来事を綴る。
「今は鳴子坂ってとこでアクトレス達の隊長もやってる·…大変だけど良い奴ばっかだよ」
グラスにまた中身を注ぐ。
「俺が隊長だってよ……笑っちまうよな」
「そんな事無いよ。よく頑張ってるじゃん」
後ろから声がかかる。
……ここに居ることは、誰にも言ってなかったんだけどな。
「神宮寺さん」
「やっ、隊長」
いつもの恰好とは違って振袖を着ていた。
体系がスレンダーだとやっぱり栄えるな。
「……何考えてんのさ」
「スレンダーだと振袖が似合うな」
「やだ、隊長酔ってる?」
「かもな」
「……誰と話してたの?」
無言で目の前に置かれたもう一本の未開封の酒瓶を指さす。
「もうコイツ飲めないやつらと」
「……そっか。隊長の部隊がやられたのって確か」
「そういう事……今日は初詣行ってたんじゃないのか?」
「気合入った可愛い子たちが一人居ないだけで見るからに沈んでたから、居なくなった罪な男を探しに来たのよ」
「……俺は行けないって言ったんだけどな」
「成小坂に人が集まって最初の元旦でしょう?」
「分かってる。けど、割り切れなくてな……」
手元の酒瓶の中身を注ごうとして、神宮寺にそれを奪われた。
「おい」
「私もご相伴預かって良いかな?」
「それ、結構高かったからな」
「いただきまーす」
「聞いてねぇ」
生憎とグラスは一つしか無い。
飲み干して渡した。
「んっ……ふふ、今年最後の晩酌の相手が隊長か……皆には悪いことしてる気がする」
「そうか……?俺みたいなやつのどこが良いんだか」
「アンケートでも取って調べてあげようか?」
「あんたが実施する時点でうさん臭くて誰も答えんだろう」
「あ、ひっどい」
思ったよりも会話が弾む。
……酔ってるからなのか、口調が素に戻っているのに気付いていない。
「……それが、スイッチ切ってる時なんだ」
「なんの」
「話し方。私に基本敬語じゃん、君」
「そう……ああ、そうだったな」
「そっちの方がかっこいいよ」
「と、言われてもな……何だかんだ年上多いし」
「えー、私21さーい」
「そこまでにしておけよ神宮寺」
無言で拳が腹にめり込んだ。
恐ろしく早い突きだ…俺じゃなきゃ見逃してたね。
「ごはっ……」
「全く……そういうところよ」
「すぐ手が出る」
「うるさい」
「ぐえっ」
……そのまま、なんのけなしにお互い笑みがこぼれる。
「さて、ホラ行くわよ隊長。皆待ってるわ」
「……しょうがねぇなぁ」
今から走れば、0時には間に合いそうだ。