【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜 作:塊ロック
…唐突に視線を感じてその方向を見てしまう。
視線の先は…通気ダクト。
いや、ガタガタ言ってるし…。
「来弥、女の子がそんな所通るんじゃありません」
「おはようございまーす、隊長さん!」
天井から赤毛の女の子がぶら下がり、降りてくる。
まるで忍者の様だが……本人の便を信じるならアーバン流忍術免許皆伝…だそうだ。
その名を、蛙坂来弥。
現代に生きる忍者……らしい。
「元気があって宜しい。けどな来弥、玄関があるんだから玄関使ってくれ」
「えー、忍びっぽくないじゃないですか」
「あのね、ダクトのホコリを事務所に落とすなって事言ってんの」
「あー、そっか。ごめんね隊長さん!気を付けるよ!ホコリ落とさないように」
「通らなきゃ良い話だからな!?」
本人は快活で素直な良い子なんだが、いかんせん忍術を使いたいのかじっとしていてくれない。
「あら、おはよう来弥ちゃん」
「おはよう芹菜っち!」
「にゃーさんも何か言ってくださいよ……」
「え?私ですか?」
スーツ姿の黒髪の女性が出勤してきた。
事務員兼アクトレスの新谷芹菜さんだ。
意外な事にこの二人、交友関係があり仲がいい。
「駄目じゃない来弥ちゃん」
「ごめんなさーい」
流石に二人に諭されれば折れるしか無いのだろう。
「それで、今日はどうしたんだ?非番だろ?」
「あ、そうなんですよ隊長さん!ちょっとお願いがあって」
「お願い?」
アクトレス達からのお願いか……聞くのはやぶさかじゃないが。
「今月ピンチなんです!日雇いで忍者雇いませんか?」
「え、えー……」
ちょっと予想していた内容と…いや、ちょっとどころじゃないな?
しかし今時忍者て。
「すまんな来弥。今の所ライバル企業を亡きものにする用事はない」
「隊長、考えが物騒過ぎます……」
「そんなんじゃなくて良いよ、雑用でも何でも任せて任せてー!」
「と、言われてもなぁ……最近特に忙しいわけでも無いし……」
成子坂にも人が増え、かつての勢いを取り戻しつつある。
そのせいか、多少案件が入った所で揺らがない程度には余裕が出来ている。
………………相変わらず隊長俺しかいないけどな。
「仕方ない。事務所の掃除頼むよ。報酬は晩飯な」
「やたっ!ありがとう隊長さん!」
「あらあら……」
「……うん、待とうか手裏剣なんて何に使う気だ!!」
ちょっと心配だ。
―――――――――
なんてことはなく、案外要領が良いのか綺麗に仕上げてくれた。
「おはよう……ございます、隊長」
「深沙希さん、おはよう」
「あ、深沙希っちだ。おはよ!」
しばらくして、これまた黒髪の女性が事務所に訪れた。
籠目深沙希さん。
お隣さんでAEGISから派遣されたアクトレスだ。
「今日の事務所は……綺麗ですね」
「ふふふ、何を隠そうこの来弥さんが綺麗にしたのだ!」
「そうだったのですか……」
「深沙希、おはよう。今日は特に忙しくないからゆっくりしてて」
「おはようございます、芹菜さん」
しかし、今日は珍しく仲のいいアクトレス三人が固まっている。
来弥と深沙希さんも、芹菜を通して接点を持ち仲良くなったらしい。
「ですが……少し甘いようですね」
「えっ、どこどこ!?」
「ここに」
「いや姑かよ」
微笑みながら深沙希さんが窓のさんを指でなぞっている。
笑ってるから多分冗談なのだろう。
……それにしてはガチな笑い方してる。
こわい。
「冗談ですよ。来弥さんは素直ですね」
「うう、酷いよ深沙希っち!」
「でも大したものね。一人でしっかりここまでするなんて」
「えへへー、前に深沙希っちに教えてもらったからね」
「そうなのか。じゃあいつ嫁に行っても大丈夫そうだな」
「えっ、お、おおおお嫁さん!?い、いやー……来弥さんにはちょっとそういうの早いかなーって……」
「そうでしょうか?東京シャードの法律では16歳から婚約が結べますが……」
「いいっ!?」
「来弥ちゃんはもういい人見付けてるのかしら?」
「も、もう!そんな人いないってば!」
成人女性二人がJKをイジるの図。
まぁ、三人とも気心がしれてるし来弥も笑ってるからいつもの絡みなのだろう。
「隊長とかどうかしら」
「俺?自慢じゃないが給料そんな高くないぞ」
「た、隊長さん!?……隊長さんの事は信頼してるし……」
「来弥、冗談だからな……深沙希さん?視線怖いんだけど」
「何のことでしょうか」
たまにこの人目が捕食者のそれになるんだよな…。
「あら、もうこんな時間ですね」
時計は12時を指していた。
昼の時間か……。
「お昼にしますか…今日どこ行こうかな」
「隊長は外食ですか?」
「ああ。最近ちょっとうどんにハマっててな」
近くのチェーン店だけど。
「おうどん!良いねぇ来弥さんも行こうかな〜」
「お?一緒に行くか?」
「……あっ、財布……忘れてきちゃった……」
「良いよそれくらい。出してやるよ」
「えっ、そんな、悪いよ隊長さん」
「午前の仕事の報酬だ。気にするな」
「ふふ、良かったわね。それじゃあ行きましょう?」
「にゃーさんも来るのか?珍しい」
「たまには良いじゃないですか。深沙希は?」
「……それでは、ご一緒させて頂きます」
「深沙希さんまで。……じゃ、早めに行かないと席が取れないな……行こうぜ、来弥」
「え、あっ、はい!ありがとう隊長!」
その日の午後、リンもやってきてちょっと騒動があったのはまた別の話。
「…何で焼き肉奢ることになってんの!?」
エピソードちょろ見してきただけだからキャラ違っても許して…ユルシテ…。