【完結】アリス·ギア·アイギス 〜空を目指す者〜 作:塊ロック
そんな男の、一種のケジメ。
時系列はストパンコラボ終了前からになります。
何処までも続く蒼い空に憧れた隊長は何を思うか。
帰ってきても、心に残っている物があるならば。
空を眺めていた。
東京シャードから見える空に、俺は何も感じなかった。
しかし、ここはどうだ!
別の世界と言われてもピンと来ない。
隔離されていても意味が分からない。
「……は、ははっ」
この場所に成子坂とその周辺が飛ばされて来た当初、確かに困惑していた。
出撃していたアクトレスや、整備部の心配。
たまたま事務所に居なかったアクトレス達と連絡を取る。
それらをしなかった訳ではない。
ただ、ふと……空を見上げた。
「ははは……あ、あはは……空だ……空だ!本物だ!!あはははははは!!!」
この時の俺を見た有人は、腰を抜かすほどビビっていたらしい。
この時の俺は、恐らく部隊を辞めてから初めて大笑いしたのかもしれない。
帰ってきた夜露達にもビビられたよ。
……でも、俺がこの空に飛び立つことは無かった。
――――――――――――
「……また空を見てる」
「……ああ、ゆみか」
それから。
俺は毎日この空を眺めていた。
届かないと判っていても、恋い焦がれていた。
理由は簡単だ。
相棒……バイアランはこちらに飛んできていないからだ。
成子坂から少し離れたい第二格納庫にあったせいで。
……修復はおおよそ完了していたが、試験飛行をまだ行ってない為、あったとしても飛べないが。
「癪ね。私達と話してる時より、今の方が生き生きしてるなんて」
「そうかー?……でも、見納めなんだ」
「明日、シタラ達とウイッチの皆が原因の排除に向かうから、ね……」
「せめて、この色は覚えておきたいんだ」
「空が何色か、なんて……貴方には大事なことなの?」
「ああ。心に目指す空の色、だ」
しばらく、そのまま無言でゆみと空を眺めていた。
「駄目ね、私にはちっとも良さが解らないわ」
「別に共感が欲しいわけじゃないさ……ただ、こんな空を、この色を気の済むまま思いっきり飛べたら。そう思っちまう」
「……残りたい?」
俺はその時、初めてゆみの方を見た。
……いつになく、表情は真剣だ。
「何もかも投げ捨てて、あの空に向えたら……ずっと思ってた」
けれど、投げ捨てるには背負ってるものが重過ぎた。
「約束が、あるんだ。向こうに置いてきたたくさんの約束」
部隊の仲間と、ジニーと、地衛理との約束。
相棒との約束。
「そう……暁、帰ったら一杯やりましょう?」
「どうしたんだ、いきなり」
「嫌な事は飲んで忘れるのが一番よ」
「……そうか、そうだな」
結局、ここは偽りの空。
ここで全部投げ出すのは勿体ない。
俺は、自分にそう、言い聞かせた。
…………ただ、飛べなかった後悔は消えなかった。
――――――――――
空を眺めていた。
なんてことは無い、東京シャードのただの映像。
「たーいちょ、また空見てる」
「ん?ああ、ゆみか……いや、少し引っ掛かっててな」
頭の片隅に引っ掛かる記憶。
大事な出会いがあった気がする。
けれど、思い出せない。
詳細を思い出そうとすると、靄が掛かってしまう。
「ふぅん……」
「思い出せないんだが……どうしても、感動と後悔だけは覚えてるんだ」
何かに出会った事への感動。
何かを出来なかった事への後悔。
「そうは見えなかったけどね」
「……?」
「だって隊長……暁はさ、ずっとつまらなさそうに空を見てたじゃん。でも、今は……生き生きしてる」
「そうか?……そうかもな」
手を空に向かって伸ばす。
当然、届かない。
「ようやく、俺が目指してる物が見えて来た気がするんだ」
「空が?」
「ああ……絶対に、掴んでやる」
理由の分からない情熱が、俺の中で炎となる。
理由の分からない後悔を燃料として。
「悔しかった、それだけは覚えてるんだ。だから、次こそ、俺は逃さない」
ゆみは、ただ笑って手を振った。
「暁、今夜空いてる?」
「なんだよ、唐突に」
「飲みに行く約束してた気がしてさ」
「……誘われた気がするな。よし、行くか……皆誘って」
「…………………ばーか」
今日も、東京シャードの空は変わらなかった。
けど、俺には何故か、今日だけは澄んで見えた。
いつのコラボだよって話ですが、これも暁にとって大事な話です。
いつか、空に届くと信じて。