銀騎士珍道中 作:自称・エリート銀騎士
申し訳ない、しばらくはダークソウル編です。
銀騎士日記:1
***月***日
人の子が書くと聞く日記というものを、神族の吾輩もしてみようと思って書くこととする。
吾輩は銀騎士である。太陽の光の神、偉大なるグウィン王に仕える近衛騎士。眩い銀の鎧を身に纏い、輝ける白銀の剣を佩く精強なる騎士団。それが銀騎士である。吾輩ことガレアもまたその一人だ。
しかも吾輩は第一世代……伝説の大戦争、灰色の古竜との戦いを偉大なるグウィン王の指揮の下戦い抜いた古参も古参の配下である。言うなればエリート中のエリート。伝説のスーパー銀騎士ということであるな。
さて、そんなエリート銀騎士であるところの吾輩が何故日記などを始めたのか。勿論エリートである吾輩としては矮小な小人どもの真似事などするつもりは更々なかったのだが、同じ銀騎士のレド君からのプレゼントとあっては無下にするわけにもいかない。
エリート銀騎士仲間であるレド君は吾輩の数少ない友人の一人である。……いや、別に人付き合いが苦手というわけではない。エリート中のエリートである吾輩はどうも他者からは取っ付きにくく感じるらしく、あまり話しかけてもらえないだけだ。向こうから話しかけてくれればこちらとしても付き合うに吝かでもないのだが、話しかけてくれないのだから仕方がない。かと言ってエリートである吾輩が自ら話しかけて一般銀騎士君を委縮させてしまうのも忍びない。エリートの弊害というわけであるな。重ねて言うが、別に友達作りが苦手というわけではないのだ。
……吾輩は日記で何を弁明しているのだ。話を戻そう。
そう、プレゼントだ。何を隠そう本日は吾輩の誕生日である。毎年誕生日になるとレド君は手製のダンベルやリストバンドを送ってくれるのだが、流石にそろそろダンベルの置き場所にも困ってきたし、鎧の下は漏れなく貰ったリストバンドでギッチギチだ。嬉しくないわけでは断じてないのだが、「たまには別の物が欲しいなぁ」とさり気なくお願いしてみたところ、今回はこの日記帳を頂いたというわけである。
しかし日記帳とは、脳筋なレド君らしからぬチョイスじゃないか。しかも随分と洒落た装丁の上物だ。上司から譲って貰った銀細工の万年筆の使い所にも困っていたところだし、ありがたく使わせてもらうとしよう。
***月***日
日記を始めて二日目。二回目にしてこんなことを書くのもどうかと思うのだが、少々参ったことがあったので愚痴らせて頂く。
今この日記を書くのにも使っているちょっとお高い万年筆を吾輩に譲ってくれた上司……オーンスタイン殿が酷いのだ。聞いてくれ。いや、日記なんだから誰に見せるわけでもないのだがとにかく聞いてくれ。
“竜狩り”オーンスタインといえば、我らアノール・ロンドの衛兵たる銀騎士を束ねる四騎士の長。偉大なるグウィン王が最も信頼を置く戦士の筆頭である。その戦闘力は並の神格を凌駕する。彼を純粋な力で上回るのは神々の中では偉大なるグウィン王、そして武力においては大王に並ぶと称えられる偉大なる太陽の長子様ぐらいなものであろう。
そんな無敵のオーンスタイン殿であるが、彼に伍する戦士がいないというわけではない。それは誰あろう同じ四騎士の一人、“深淵歩き”ことアルトリウス殿である。
片や、かの大戦において王のソウルを見出した神々を除けば最も多くの首級を挙げ、我ら銀騎士を率い数多の古竜を討ち果たした“竜狩り”オーンスタイン。片や、我ら神族にとっては絶対の毒である深淵を踏破し、世界を侵す暗黒から神々を守護する“深淵歩き”アルトリウス。いずれも押しも押されもせぬ最強の戦士、アノール・ロンドを代表する神々の守り手である。伝説のスーパー銀騎士である吾輩をして尊敬を禁じ得ない素晴らしき忠臣なのだ。
さて、そんな最強の座を二分するお二人であるが、実は両者の仲はあまりよろしくない。別に悪くもないし互いが互いの力量を認め合っている雰囲気は感じるのだが、それ以上に相手をライバル視しているようなのだ。どちらも真面目な方なので仕事に私情を持ち込むようなことはなさらないが、たまに顔を合わせれば互いに火花を散らしている。大らかなレド君などはそれを見てもしれっとしているが、繊細な吾輩は運悪くその場に居合わせる度に胃がキリキリと痛むもので少々困っている。
うむ、何故こんな話をしたのかと言うと、どうも先日の模擬戦でオーンスタイン殿はアルトリウス殿に負けてしまったようなのだ。
何かと多忙なお二人であるが、時間が合えば模擬戦とは名ばかりの決闘を始めるのは有名な話だ。「やろう」「うむ」の二言で激闘が始まるのはもはやアノール・ロンドの日常と化している。一周回って仲良いんじゃなかろうか。これが小人が言うところの「ツーカーの仲」というのだろう。
で、その決闘でオーンスタイン殿が敗北した。それも何と二連敗である。珍しい。
これまでは一勝と一敗の繰り返しだった。オーンスタイン殿が勝てば次の決闘ではアルトリウス殿が勝ち、アルトリウス殿が勝てば次はオーンスタイン殿が勝利する。ここ数百年はずっとそんな調子だったのだが、どうも今回ついにその法則から外れてしまったらしい。
勿論それでアルトリウス殿に道理の通らぬ悪感情を抱くようなオーンスタイン殿ではない。騎士長殿は高潔な精神の持ち主である。勝利してなお驕らず、敗北すれど決して腐らぬ武人の鑑たるお方だ。そしてそれはアルトリウス殿にも言えることである。今回の結果がお二人の関係に尾を引くようなことはないだろう。
だが、それで納得できるかといえば別である。敗北したオーンスタイン殿は「このままではいかん」と思ったのか、これまでと比べてより一層鍛錬に打ち込むようになった。
これには我らが偉大なるグウィン王もにっこりである。元より神懸かった実力の持ち主であったお二人だが、決闘をするようになってからというもの、両者の実力は“鷹の目”殿と“王の刃”殿を置き去りにする勢いで上昇を続けている。即ちそれは神々の座すアノール・ロンドの守護がより一層盤石となることを意味していると言えよう。彼らが健在である限りグウィン王の治世は安泰であろう、と銀騎士たちからの評判も上々である。
吾輩としてもオーンスタイン殿が更なる力を得るのは大歓迎である。その鍛錬に付き合わされるのが吾輩でなければの話であるが。
繰り返すが吾輩はエリートである。多くの銀騎士が塵となったかの大戦を生き残り、今なお第一線で活躍しているのだからエリートでないわけがない。大戦後に生まれた一般銀騎士君たちなんぞ吾輩からすればヒヨっ子もヒヨっ子、レド君≧吾輩>>>一般銀騎士君ぐらいの実力差がある。だが、それ故にオーンスタイン殿の目に留まってしまったのであろう。エリートの弊害というわけであるな。
ぶっちゃけオーンスタイン殿は吾輩の完全上位互換である。稲妻の如き身のこなし、大槍を手足のように扱う技量、岩の鱗を穿つ雷の力、兵を統率する優れた指揮能力。まさに騎士の長に相応しい実力の持ち主なのだ。
一方、吾輩が明確にオーンスタイン殿に勝てると断言できるのは腕力ぐらいのもの。体術では及ばず、技量でも及ばず、吾輩の雷では古竜の鱗を貫けても命までは届かない。しかも銀騎士の代名詞たる白銀の剣の扱いですら敵わない。槍一本のみで戦場を駆けるオーンスタイン殿だが、あれであの方は武芸百般を体現する武人の中の武人なのだ。剣・槍・弓、いずれの扱いにおいてもアノール・ロンドで比肩する者は限られる。
そんなオーンスタイン殿と吾輩が戦えばどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。そりゃあもうボッコボコである。サンドバッグよりはマシ、といった程度であろう。これは酷い。
それでも相手がいないよりは余程実りのある鍛錬になったらしい。一頻り吾輩を痛めつけたオーンスタイン殿はご機嫌な様子でそう語っていた。うむ、尊敬する騎士長殿が喜んでくれたようで何より……なわけあるかバーカ!!! こんなのいくらエリートの吾輩でも身体が持たんわ!!!
失礼、奥ゆかしくなかった。だが考えてみてほしい。オーンスタイン殿は朽ちぬ古竜すら単騎で討ち滅ぼすような実力の持ち主。一方の吾輩はレド君と協力しても古竜には及ばない。古竜の末裔である飛竜ぐらいならまあ単独でも倒せるだろうが、流石に古竜ともなると格が違う。
うむ、改めて考えてみるとやべーなオーンスタイン殿。正直勘弁して頂きたいというのが本音なのだが、さりとて吾輩以外の適任がいないというのもまた事実なのだ。
なら同じ四騎士がいるじゃないかと思われるだろうが、ライバルのアルトリウス殿と比べて残る二人はやや毛色が異なるタイプの戦士である。
“王の刃”ことキアラン殿はどちらかと言えば凶手に近い。闇に潜み、気配もなく静かに大王に仇なす者の息の根を止める。その腕を疑う愚か者などアノール・ロンドには一人もいないが、正面切っての戦いとなると話は別。恐らく吾輩でもそこそこ戦えてしまうのではないだろうか。ましてやオーンスタイン殿と面と向かってよーいドンで戦うなど論外であろう。
というかそもそもキアラン殿はアルトリウス殿にほの字であるしな。騎士長殿に頼まれたとしてもアルトリウス殿に不利になるようなことをする彼女ではない。吾輩そういう男女の機微には敏いからすぐわかっちゃう。
“鷹の目”ことゴー殿は巨人族の戦士だ。その弓の腕前は並ぶ者なく、アノール・ロンドの城壁から山向こうの竜を撃ち落とした逸話は誰もが知るところだ。しかも巨人族だけあって単純な腕力にも優れ、恐らく真っ向からの殴り合いになればオーンスタイン殿もアルトリウス殿も敵わないだろうと思われる。
だがその巨体がために動作は鈍重である。懐に入られればオーンスタイン殿の敵ではないだろう。狼の如き俊敏な身のこなしを持ち味とするアルトリウス殿との決闘を見据えた鍛錬の相手に向かないであろうことは明白である。
ゴー殿と同様の理由でエリート銀騎士のレド君も不適格となるだろう。彼はとても力持ちで、腕相撲では吾輩は一度も勝てたことがない。竜退治の遠征後、見上げるような竜の死骸を一人で担いで運ぶ光景には吾輩も騎士長殿も流石にドン引きしたものだが、筋肉に全振りしている分彼はフットワークに難がある。縦横無尽に戦場を駆けるオーンスタイン殿との相性は最悪だし、対アルトリウス戦を想定した鍛錬の相手として向いているとは言い難い。
一方の吾輩はオールラウンダーなエリート銀騎士である。通常の銀騎士の三倍の実力がある。
アルトリウス殿は片手それぞれに大剣と大盾を持ち自在に振り回す腕力があるが、吾輩とて同等かそれ以上の怪力である。レド君が規格外なだけで十分に力持ちなのだ。加えて足腰にも自信がある。勿論アルトリウス殿の剣技について行ける程ではないが、辛うじてオーンスタイン殿と打ち合える程度のフットワークはある。
以上の理由により吾輩に白羽の矢が立ったというわけなのだ。これから暫くはオーンスタイン殿のスパーリングに付き合う毎日が続くだろう。他に適任がいないのだから仕方がないと諦めるしかあるまい。
いやしかし予想以上に辛い……一般銀騎士君たちは「騎士長殿から直々に稽古をつけてもらえるなんて!」と大層羨んでいたが、体験してみればわかるけどそんなに良いものじゃないぞ。
何しろオーンスタイン殿はとても真面目なお方。何をするにも全力なのだ。騎士長の任においても、竜狩りにおいても、ライバルとの決闘においても、当然鍛錬においても常に全力である。手加減などしない。岩の古竜を貫いた十字槍が騎士長殿の全力で襲ってくる様を想像してみるといい。流石の吾輩も何をとは言わないが少し漏らしてしまった程だ。ちょろっとだけ。
一応吾輩も先の大戦を戦ったエリートであるからして、偉大なるグウィン王の加護により岩を穿つ雷の力をこの身に宿している。対古竜戦においては雷の大槍で飛来する竜を迎え撃ち、剣の刃に雷を纏わせて岩の爪牙と打ち合ったものだ。特にこの雷の力の扱いに関しては全銀騎士の中でも吾輩が最も達者であるという自負がある。
だが、うむ。流石に“竜狩り”オーンスタイン殿の雷光と比べられては如何ともし難い。騎士長殿の総身に漲る雷気は吾輩の比ではなく、神々の特別製である竜狩りの槍がその力を更に押し上げている。騎士長殿を指して吾輩の完全上位互換と言ったのにはこの辺りの事情もあるのだ。ただでさえ戦士としての位階が違うのに、吾輩の一番の得意分野でさえ後塵を拝しているのだから勝ち目など皆無と言っていいだろう。
だが、吾輩とてエリートとしての自負がある。ただ為す術なくサンドバッグに甘んじるなど伝説のスーパー銀騎士らしからぬこと。何とかして一矢報いようと思う。
それに仮にもアノール・ロンド最強の戦士の鍛錬相手として選ばれたのだ。嬉しくないと言えば嘘になる。そもそも消去法での指名とはいえ、ある程度の信頼なくば一銀騎士相手に本気で打ち込んでくる筈がない。きっとオーンスタイン殿は吾輩ならば本気の鍛錬にもついて来れると判断して下さったのだ。その信頼に応えられずして何が誉れ高きエリート銀騎士か。
……しかし何だ、愚痴が大半だったとはいえ二日目にして随分と書き込んでしまったな。いや、案外筆が進むものだ。吾輩これまで碌に書き物などしてこなかったが、もしや意外と向いているのではなかろうか。部屋のインテリアにしかなってなかった銀細工の万年筆も心なしか喜んでいるようにも感じる。
それを見越したプレゼントだったとするなら、レド君の慧眼には感服する他ない。流石は我が無二の親友であるな。もう脳筋なんて言わないよ。
***月***日
レド君はやっぱり脳筋だった。あの野郎ついにやりやがった。銀騎士としての誇りを捨てたのだ。
何と騎士長殿と鍛冶長殿に無理を言ってでっかいハンマーを作ってもらい正式装備にしやがったのだ。許せん。白銀に輝く剣と槍こそが我ら銀騎士の象徴であろうに、あんな野蛮な大槌に走るなど。洗練さの欠片もない黒くて硬くて大きいばかりの得物など誇りある銀騎士に相応しくない。
でも吾輩は面と向かってそうは言わなかった。決して新しい専用装備を手に入れて喜んでいるレド君に気を遣ったわけではない。
だが腹立たしいものは腹立たしいので、夕飯のおかずを一品ちょろまかしてやった。しかし浮かれているレド君はそのことに気付かなかった。ちくしょう。
だが、まあ良い。吾輩は優しいからな。レド君は親友だし、一度の過ちぐらいは大目に見てやるのが良き友人というものだろう。
それに悪いことばかりではない。レド君に専用装備が許されたということは、同じエリート銀騎士である吾輩も頼めば特例を許してもらえるかもしれないということだ。
いや、別に今の装備に不満があるわけでは断じてないのだ。偉大なるグウィン王より下賜された銀騎士の剣と槍はかつてより今も変わらず吾輩の誇りである。ぶっ壊れる度に打ち直してもらい使い続けてきた我が愛剣と愛槍はもはや吾輩の半身と言っても過言ではない。
でも、でもだよ? エリートである吾輩の武器と一般銀騎士君たちの武器がデザイン・性能共に全く同じって正直どうなの? と思わなくもないのだ。別に不満があるわけではないのだけど。
うむ、そうと決まれば頃合いを見て直談判だ。幸か不幸かオーンスタイン殿と会う機会には事欠かないので、騎士長殿の機嫌が良い時にでもお願いしてみようと思う。
***月***日
吾輩の武器が黒くて硬くて大きいばかりの野蛮な得物になってしまった。吾輩は悲しい。
いや、うむ。この一文だけでは何を言っているのかさっぱりだな。後で読み返した時に吾輩自身混乱するかもしれないし、一応詳しい経緯を記しておこう。
事の発端はイザリスの異変である。偉大なるグウィン王と同じく始まりの火より王のソウルを見出した大いなる魔女殿の名を冠したかの地が混沌に呑まれ、今やデーモンなる魑魅魍魎が跋扈する異界と化してしまったらしい。
詳しい事情は我々銀騎士に知らされることはなかったが、為すべきことはしっかりと伝えられた。我らに課せられた任務はデーモンの殲滅。銀騎士たる我らは偉大なるグウィン王の勅命に従い、大いなる忠誠と慈悲を以てデーモンの尽くをこの地上より消し去るのみ。イザリスで起こった何かについて我々が知る必要も意味もない。勅の実行のみが我ら銀騎士の至上命題である。
イザリスへの遠征の指揮は吾輩に一任された。四騎士はアノール・ロンドを離れられないし、妥当な人選であろう。本音を言えば吾輩もアノール・ロンドを離れたくはなかったのだが、他に任せられる者もいない。レド君は優秀なのだがちょっと変わり者だし軍の指揮となると不安が残る。やはり吾輩をおいて他に適任はいないだろう。何しろエリート銀騎士であるからな。
で、遠征に当たって我々には新しい装備が支給された。それが冒頭の一文に繋がるわけであるな。
まず武器だ。銀騎士と言えば輝ける白銀の剣と槍、空駆ける竜を落とす大弓、女神の守護が宿る銀の盾である。だが、我らがこれより相手取るデーモンは強大であり、何より多種多様である。全局面的な対応が求められる故、これまでとは全く異なる得物が選ばれた。それが剣、大剣、大斧、斧槍である。
いずれも従来の銀騎士武器とは比べるべくもなく大振りの得物である。しかも神々の威光を示す壮麗な拵えは新装備にはない。あるのは実用性を突き詰めた武骨さのみ。黒々とした刃に刻まれた金彫りはどこか禍々しく、荒ぶる戦神のような威圧感を感じる。
そして甲冑も新しく改良を加えられた物が用意された。銀騎士の象徴であった鳥の翼を模した
うむ、見事なまでに武骨オブ武骨。まあアノール・ロンドを守護する衛兵には相応の格というか見栄えが求められたからな。むしろ今までが華美すぎたと言えるのかもしれん。長期の遠征、それも激闘が想定されるとなれば見栄えなど余分と言うことなのだろう。
だが吾輩の趣味には合わん。これだけははっきりと伝えたかった。何より吾輩の一番のお気に入りだったお洒落マントが新装備にはないのだ。これが残念でならない。
そしてそれ以上に不満というか腑に落ちないのが、新しい武器が……何と言うか妙に手に馴染むことだった。大きく分厚くなった分確実に重くなっている筈なのに、その重みがむしろ心地良いというか。特にこの大剣。分厚い切っ先は威力を生むが、重心が先端に偏るため扱うには相当な筋力と技量が求められるだろう。かなりの曲者だが、吾輩にとってはむしろこれが一番扱い易かった。何故だ、流麗な銀騎士の剣とは比べるべくもなく異形の剣だというのに。
答えは意外なところからやって来た。誰あろう我が親友レド君である。
「答えはたったひとつ。たったひとつの
君もまた脳筋だったのさ」
「なん……だと……」
要するに吾輩の筋力に見合った武器であるというだけのことだった。むしろ今までが軽すぎたのだという。
確かにオーンスタイン殿との鍛錬では度々威力不足を実感していたが……銀騎士の象徴たる剣が吾輩に合っていなかっただと……?
い、いや。そんなことある筈がない。威力不足は
うむ、この話はここまでにしておこう。これ以上は自ら墓穴を掘りかねない気がする。まだ吾輩は墓王の世話になりたくないのでな。
何にせよ、今は余計なことに思考を割いている余裕はない。イザリス遠征は明朝より開始される。日記はこの辺にして、今夜はしっかりと英気を養いたいと思う。
~登場人物紹介~
・銀騎士ガレア
本作の主人公であり、アノールロンドを守護する自称・エリート銀騎士。だが石の古竜との戦争を生き抜いた実力は本物で、銀騎士としては破格の力を持つ。具体的には中ボス以上エリアボス未満。
部下の一般銀騎士君たちからは寡黙で気難しい人物だと思われているが、人と話すのが苦手なだけで中身はご覧の通り。
・銀騎士レド
『DARK SOULS3』にて登場した銀騎士。主人公の親友。脳筋。
古竜を信奉する「岩のような」ハベルとも友誼を結んだ変わり者の銀騎士。だが主人公とは真逆のコミュ力お化けであり、変わり者ではあるが彼を慕う者は多い。
・“竜狩り”オーンスタイン
ご存じライオン丸。アノール・ロンドを守護する四騎士の長であり、太陽の長子に仕えた筆頭騎士である。
ガレアが神々の次に尊敬する人物であるが、実は主人公とはほぼ同時期に生まれたという背景がある。付き合いはアルトリウスより長い。
・“深淵歩き”アルトリウス
イケメン。説明不要。
人と話すのが苦手という点でガレアに対し妙なシンパシーを感じている。しかしレドとオーンスタインしか友がいないガレアより友達が多い(内訳:キアラン、アルヴィナ、シフ)ため自分の方が勝ち組だと思っている。