銀騎士珍道中 作:自称・エリート銀騎士
遅くなりましたが最新話です。黒騎士装備なのに頑なに自分を銀騎士と言い張る自称・エリート銀騎士がエ・ランテルを恐怖のどん底に突き落とすお話となっております。
吾輩は誇り高き銀騎士である。相手が獣であれ、戦意を失い降伏してきた相手を斬るような真似はしない。毛皮で新しいマントを作る計画が頓挫したのは残念だが。
というわけで腹を向ける森の賢王の命乞いを受け入れた。まるで借りてきた猫のように大人しくなった賢王を引き連れ、吾輩はカルネ村まで撤退した『漆黒の剣』と合流する。
「まさか森の賢王に勝ってしまうなんて……」
「それも無傷で制圧するとは、凄まじい実力である!」
ペテルとダインの純粋な賞賛が耳に心地良い。そしてルクルットとニニャは恐る恐る近付き、感嘆の声を上げながら賢王を眺めている。見世物にされている賢王は満更でもなさそうだ。
「うおぉぉ……すっげ、本物だ。やべぇよ、俺いま伝説を目の前にしてる……」
「間近で見るとより一層強大さが際立ちます。これ程の大魔獣を従えてしまうなんて……」
「うむ。それがし、殿のお力に平伏し申した。これからは殿に仕え、精一杯お役に立つ所存でござるよ!」
意外にも賢王は敗北をあまり屈辱には思っていないようで、吾輩への従属に意欲的な様子である。
吾輩としても懐いてくれるのは悪い気はしないが、実際どうなのだろう。どうやら賢王はついてくる気満々なようだが、確かこいつはトブの森の秩序形成の一角を担っているのではなかったか。
「その、ガレアさん。カルネ村は森の賢王の縄張りに隣接しているからこそこれまでモンスターの脅威に晒されずにいました。もし森の賢王がガレアさんについて行ってしまえば、縄張りがなくなって森からモンスターが溢れたりするのでは……」
ンフィーレア殿も同じことを思ったようで、不安そうに尋ねてくる。遠巻きにする村人たちもその言葉にざわざわと騒めいた。
「そこの所どうなのだ? お前がいなくなることで森の秩序が崩れるのであれば、残念ながら吾輩はお前を連れて行くことはできん」
「ま、待ってほしいでござる! そもそも今の森は妙に荒れていて、それがしの縄張りも以前ほどの影響力はないのでござる」
短い手をわたわたと動かして捲し立てる賢王。
賢王が言うところによると、最近になって森を出ていくモンスターが増えてきたそうだ。そのモンスターたちは何かに追われるように忙しなく移動しており、賢王の縄張りだろうがお構いなしに侵入してくるのだという。
今回吾輩たちが襲撃を受けたのは、そういったモンスターの存在に気を張っていた賢王の感知に吾輩の強い気配が引っ掛かったかららしい。フッ、またしてもエリートの弊害か……
「言われてみりゃ確かに、カルネ村までの道中でも妙にモンスターの襲撃が多かったよな」
「
「実は少し前に西の魔蛇から協力を求められたのでござるよ。協力というか、森の異変が収まるまで互いの縄張りには手出ししないという取り決めでござるな」
西の魔蛇。そういえば先の戦いの最中にもその名前は聞いたな。
「あの森は南をそれがしが、東を不死身の巨人が、西を魔法の蛇がそれぞれ支配し縄張りにしているでござる。そして魔蛇曰く、空白地帯だった北の領域で異変の兆しが見られるそうでござるよ」
「何か強力なモンスターが新たに居座ったのか?」
「さて、それがしは殆ど自分の縄張りから動かないでござるし、色々と探っているらしい魔蛇も原因は特定できていないみたいでござるよ。東の巨人も独自に動いているようでござるが、そちらは非協力的で魔蛇の奴も殆ど情報を得られなかったとぼやいていたでござる」
ふむ、何と言うか西の魔蛇とやらは苦労しているらしいな。協調性のない巨人に、“賢王”という割に無知で縄張りから出てこないマイペースな魔獣。吾輩が魔蛇の立場だったら面倒臭くなって両方ともぶちのめしてしまいそうだ。
そしてカルネ村の小人たちはトブの森に森の賢王と同格のモンスターが更に二体もいたことを知らなかったらしく、不安そうに顔を見合わせている。加えて、そんな強大なモンスターが三体もいて未だに全容を把握できていない“北の異変”。不安に思うのも無理はない。
「うーむ、やはりお前を連れ出すわけにはいかなそうだ」
「そ、そんなぁ! 殿~!」
「まあ待て、何もこれ切りの縁というわけでもなかろう。賢王よ、森の異変が収束するまでは今まで通り縄張りを治めていろ。荒れているとはいえ、お前がいれば多少はマシな筈だ。魔蛇との取り決めもあるのだろう?」
「うぅ……殿のお力があれば異変もすぐに解決できるのではござらんか?」
「何が起きているかも分からぬのに介入できるわけなかろう。ただでさえ混乱している現状に、モンスターによって保たれている秩序が吾輩の介入で崩壊したらどうする。異変の内容によっては徒に森を荒らす結果にもなりかねん」
魔蛇と巨人が賢王のように力で言う事を聞かせられる手合いであれば良いがな。もし争いになり、吾輩が魔蛇なり巨人なりを殺してしまえば、彼らが支配していたモンスターたちは統率を失い更なる混乱を引き起こすかもしれん。それでカルネ村にまで被害が及ぶのでは本末転倒だ。
「森の異変は森に棲む者らの手で解決するに越したことはない。お前が森を出るのは異変が収束し落ち着いてからでも良かろう。
それでもし、北の異変がお前たちの手に負えぬものだった場合は吾輩を呼ぶがいい。その時は力を貸そうではないか」
「でも、森の外にいる殿をどうやって呼べばいいでござるか?」
「これを使う」
吾輩が取り出したのは、ソウルの力が溶け込んだ
使い方は簡単、サインに触れて念じるだけだ。そうすれば吾輩の霊体がその場に召喚される。サインを書くにはサインろう石に自らのソウルを溶け込ませる必要があるためソウルの業の習得が必須だが、ただ協力を求めるだけなら賢王にもできるだろう。
「こいつでお前の寝床にでも吾輩のサインを書いておいてやろう。もし窮地にあればサインを通じ吾輩に助けを求めるがいい。すぐに駆け付けるであろう」
「す、すごいでござる! 流石は殿、かような魔導にも精通しているとは……それがし、感服したでござる!」
「ははは、やめいやめい。褒めても何も出んぞ」
吾輩のいた世界では特に貴重でもなんでもないサインろう石だが、ソウルの業など影も形もないこの世界においては珍しく映るらしい。ニニャ曰く転移の魔術を扱えるような高位
「殿、殿」
「む? 何だ賢王よ」
「一度別れる前に、それがし名前が欲しいでござる」
「名前とな?」
はて、お前には既に森の賢王という立派な名前がついているではないか。名前負けしてる感が否めないのは事実だが。
「森の賢王というのは人間が勝手につけた通り名であって、それがし自身の名前ではないのでござる。これまでは特に不便もなかったので森の賢王と名乗っていたでござるが、それがしは今や森の南方を統べる魔獣ではなく、殿に仕える忠実な獣。是非とも殿自ら名前をつけて欲しいのでござる」
ほほう、何とも可愛らしいことを言うではないか。
確かにこいつの言う事も分からんでもない。吾輩は最初の火の傍でにゅっと自然発生した名も無き銀騎士であった。故に大王より授けられたお気に入りの銀騎士の兜にちなみ「
よろしい。ならば、この銀騎士ガレアがお前に相応しい名を考えてやろうではないか。
しかし残念なことに吾輩はあまりネーミングセンスに自信がない。レド君からは「自分の名前を考えるのにセンスを使い切った男」呼ばわりされたぐらいだ。
なので過去の偉人の名を拝借しようと思う。実際、神や英雄の名に肖って名付けを行う慣習は至る所に存在するからな。
「よし。ではロードランより遥か東方に伝わるという古き賢者の名に肖り、テオフラストゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイムと……」
「長い長い! 長すぎるでござるぅ!」
と思ったら速攻で文句をつけられた。
何だ何だ、賢王なんだからそのぐらい覚えたまえよ。
「あの、ガレアさん。王族ですら名前は五個構成なので、森の賢王とはいえ六つというのは流石に長すぎるかと……」
「むぅ、そんな決まりがあるのか? 仕方がない、ンフィーレア殿に免じて別の名前を考えるとしよう」
センスの無さを露呈してしまう前にさっさと良い感じの名前をつけてしまいたいところだったが、致し方ない。
「では小人の国家にて善政を布いたと伝えられる賢王の名に肖り、ハンムラビ・ニムロデ・ユスティスケというのは」
「おお、それなら覚えられるでござるよ!」
「略してハムスケだ」
「略す必要あったでござるか……?」
「短い方が覚えやすいのであろう?」
ともあれ、ハンムラビ・ニムロデ・ユスティスケ(ハムスケ)の名付けを終えた吾輩は『漆黒の剣』に事情を説明し、サインを置くために今一度森へと引き返す。
ハムスケとは一旦そこでお別れだ。彼にはカルネ村の様子を気に掛けておくように言いつけ、吾輩は仲間と共にエ・ランテルへ帰還するのであった。
「皆さんのお陰でかなりの量の薬草を採取することができました。ありがとうございます」
「いえ、また何かあれば是非『漆黒の剣』を頼って下さい! それじゃあ、俺はンフィーレアさんのサインを持って組合に依頼達成の報告をしてくるよ」
「おう。俺らは先に荷下ろししてるから、早いとこ終わらせてこいよー」
冒険者組合への報告はリーダーであるペテルが受け持ち、残る我々は荷車に満載された薬草を店に運び入れるのを手伝う。
所詮は葉っぱとはいえ、麻袋にぎっしり詰め込まれているためそこそこの重量がある。これをンフィーレア殿一人で運ばせるわけにはいかないため、これも冒険者である吾輩たちの仕事となる。
「じゃあ皆さん、こちらへ運んで頂けますか?」
「わかりました」
「了解である!」
キビキビと荷物を下ろすニニャとダインに続き、吾輩とルクルットも持てる限りの荷物を抱えてンフィーレア殿の後を追う。
既に日は落ち辺りは薄暗い。ンフィーレア殿は火の点いたランタンを片手にバレアレ薬品店の扉を開けた。
「おばあちゃんはいないのかな……?」
見る限り店内は真っ暗で照明の一つも点いていない。ンフィーレア殿の祖母であるリイジー・バレアレはかなりの高齢らしいため、明かりもなくこの暗闇の中にいるということはないだろう。
となれば必然留守ということになるが……はて、
ンフィーレア殿がランタンを掲げ店内に入る。同時、店の奥の扉……恐らくは従業員用の勝手口と思しき扉がゆっくりと開いた。
「はァ~い、お帰りなさぁい」
甘ったるい声が不吉に響く。暗闇の中から現れたのは、外套で身体を覆った金髪の女だった。
「あ、あの……あなたは、一体……?」
「え、知り合いじゃないんですか?」
困惑したンフィーレアの様子に、女を完全に店の従業員だと思っていたらしいルクルットが呑気に尋ねている。
吾輩はンフィーレア殿を守るように前へ出る。巧妙に隠してはいるがこの女、抑えきれぬ殺気が微かに漏れ出ているぞ。
女は鳶色の瞳を猫のように細める。一見すると緊張感の欠片もないふざけた笑みだが、その視線は油断なく吾輩の一挙一動を見定めていた。
「……ふーん。王国の冒険者なんてアダマンタイト以外はノーマークだったけど、とんだ隠し玉がいたものねぇ。そのオーラで
「答えよ女。貴様の目的は何だ」
吾輩が詰問の声を上げたことでようやく異常事態を悟ったのだろう。遅れて他の面々も武器を構えンフィーレア殿を庇うように前に出た。
まあ、問い詰めるまでもなくこの女の目的など分かり切っているが。案の定女は小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、それまで抑えていた悪意を隠すことなく曝け出した。
「私の目的はンフィーレア・バレアレを攫うコト。君の
夜闇に溶け込むような暗い色の外套が翻る。視界を遮るように広がった布を突き破り、
スティレットとは鎧や鎖帷子の隙間を貫くための細く鋭い形状の短剣である。その設計思想通り、女が操るスティレットは吾輩の胸当と腰当の隙間を狙って突き出された。狙いが腹だったのは単純に身長差の問題で狙いやすかったからであろう。
こんな貧弱な短剣の一撃を受けたところで吾輩の腹筋を貫くことは不可能であろうが、みすみす直撃を許すのも癪だ。吾輩は盾であっさり弾いてやると、女を袈裟斬りにすべく大剣を振り回した。
だが、吾輩が大剣を振るった時には女はその場を離脱していた。
思えば速さの割に盾に感じた衝撃はあまりに小さかった。この不意打ち気味の刺突はブラフ。女は端から吾輩と戦うつもりなどなく、与しやすしと思わせ剣を振らせることが目的だったのだ。
刹那の思考で女の狙いを悟るも、振り抜いた腕はそう易々と止まってはくれない。吾輩の大剣は小人の家屋で振り回すにはあまりに大きく、テーブルなどの家具を破壊し粉塵を巻き上げた。
舞い上がった木屑や埃などを隠れ蓑に、胸が床に接するほどの前傾姿勢になった女が『漆黒の剣』の足元を縫うように駆け抜けていく。その際、手にしたスティレットでルクルットたちの足の腱を切り裂いていったのを吾輩は見逃さなかった。
「……小癪!」
この女やりおる。振り向いて剣を振るおうにも、腱を裂かれ頽れた仲間の身体が邪魔になって思うように腕を動かせない。済まぬと手短に詫び、吾輩は動けないルクルットらを蹴り飛ばし強引に空間を開いた。
「じゃあねん♪ この子は頂いてくよ~」
「が、ガレアさん!」
だが、その時には既にンフィーレア殿の身柄は女の腕の中にあった。女は人一人を抱えているとは思えぬ程の身軽さで跳躍し、窓を割って外へ飛び出していった。
吾輩は体当たりで壁を粉砕し強引に外へ出る。だがその一瞬で女は姿を眩ませており、しかも何らかの魔法か道具でも使ったのか気配すら感じられなくなっていた。
やられた。多くの家屋が立ち並ぶ街中は複雑に入り組んでおり、身を隠す場所など幾らでも存在する。加えて人が多いせいで特定個人の気配を辿って追跡するのは困難であり、しかも相手は自在に気配を隠せるときた。これでは追いかけようがない。刺客の類であればあるいは可能なのかもしれないが、近衛騎士である吾輩には身を隠しながら逃げる相手を追跡する技術がないのだ。
「否、まだだ」
認めよう。まずは貴様の勝ちだ、女。吾輩はンフィーレア殿を護衛する任を負っていたにもかかわらず、無様にも出し抜かれ護衛対象を連れ去られてしまった。何という失態、何という醜態であろうか。これは言い訳の余地なく吾輩の敗北である。もし騎士長殿がこの場にいれば叱責は免れなかったであろう。
だがまだだ。まだ終わっていない。奴の口振りから察するに、どうやら敵はンフィーレア殿の能力を利用するつもりでいるらしい。
ならばすぐに殺されるようなことはないだろう。何らかの利用価値があるから生かしたまま連れ去ったのであり、少なくともその利用価値が失われるまではンフィーレア殿の身の安全は保障されているといって良い。それまでに連れ戻せれば最悪の事態は避けられる。
「な、何じゃ。これはどうしたことじゃ……!?」
「ガレアさん、何があったんですか!?」
振り返ると、戻ってきたペテルがただならぬ様子の吾輩を見て驚いた顔をしていた。その隣には老婆がおり、彼女は吾輩が粉砕した店の壁を見てギョッと目を剥いている。
何の関係もない一般人を理由もなくペテルが連れてきたとは思えない。状況からして恐らく老婆の正体は話に聞くンフィーレア殿の祖母、リイジー・バレアレ氏であろう。ならば丁度いい。
「ペテル、手短に言うのでよく聞け」
「え?」
「ンフィーレア殿が攫われた。吾輩は今から下手人を追う。店の中に負傷した仲間がいるので任せた。そしてご老人、壁の修理代は後ほど払わせて頂く」
「え……ええ!?」
「ではさらばだ!」
吾輩は返事を聞くことなく駆け出した。
一歩で風になり、二歩で音を超え三歩で稲妻と化す。放電しながら道路を疾走し、四歩目で大きく跳躍する。
敵は気配を隠し逃走しているが、吾輩の目は遮るものさえなければ文字通り千里を見通す。不可視にでもならない限りは何人も我が目から逃れることは不可能である。
……すまん千里は誇張が過ぎた。実際は十里ぐらいだ。それ以上になると見えても個体の判別はできない。
全力の跳躍によって上空から街並みを俯瞰する。敵は恐らく人目を避けるように移動している筈だ。ならば狙い目は路地裏などの暗がりだろう。
「……見つけたぞ!」
飛行能力を持たない吾輩の身体はすぐに自由落下を始めるが、滞空していた一瞬で敵の姿を捉えることに成功した。女は小人らしからぬ速度で西に向かって移動しているようだ。
敵の姿さえ明らかになれば、あとは単純な駆け比べである。小人にしてはあり得ぬほど素早いようだが、このガレアに足の速さで勝てるとは思わぬことだ。
「イザリスの混沌をも踏破した我が駆け足を見せてやろう。イヤーッ!!」
気合一閃、雷気を迸らせながら疾走する。一歩ごとに地面に亀裂を生み、盛大に砂塵を巻き上げつつの全力疾走である。路上にいた小人たちが悲鳴を上げているが、緊急事態につきどうか許してほしい。
「いたぞ、いたぞおおおおおおお!!!」
「あ? んえ!?」
丁度路地裏から出てきたタイミングの女に追い縋る。女は吾輩の姿を二度見すると、血相を変えて更に足を速めた。
だが純粋な駆け比べでは分が悪いことを悟ったのだろう。女は路地裏に戻ることなく、敢えて人混みの多い道を選んで逃げ出した。
「チィ、小癪な真似を!」
女は雌豹の如き身のこなしですいすいと人混みを縫うように走るが、吾輩はそうもいかない。吾輩の大きな身体では路上の小人を撥ね飛ばしてしまう。かといって建物の上を飛び移りながら移動しようにも、小人の貧相な家屋では踏み込みに耐えられず崩れてしまうだろう。仕方なく速度を落とし、だが決して女を見失わない程度の速度で追跡を継続する。
「全身鎧の大男が突っ込んでくるぞ!?」
「に、逃げろ! 逃げろー!!」
日が落ちたとはいえ深夜にはまだ早く、外にはそれなりの人が出歩いている。そんな中に突っ込んでいったものだから路上はちょっとしたパニックに陥っていた。
飛び交う悲鳴に対し吾輩は内心で謝罪しつつ、だが決して追跡を緩めるようなことはしない。そろそろ人混みを抜け都市の外周に広がる共同墓地に辿り着くだろう。そこまで行けば吾輩を遮るものはない筈だ。
「〈能力向上〉! 〈疾風走破〉! クソッ、武技まで使ってるのに全然撒ける気がしねぇぞ!?」
「待たぬかああああああ!!!」
今は後塵を拝しているが、墓地に着けばこちらのものだ。女よ、そこが貴様の墓場になるであろう!
墓地だけにな!!!
ハムスケの名前についてですが、他にしっくりくる名前が思いつかなかったのでかなり強引にハムスケにしました。森の賢王呼びのままでも良かったのですが、やはりハムスケ呼びの方が個人的に好きなので。
そして以前は書き上がり次第投稿していたのですが、今回は試験的に三話分の書き溜めを行いました。
次話は今回と同じ時間、明日の20:00頃に投稿しますのでよろしくお願いします。