秋天に望む (非)日常編①
全員の自己紹介が終わると、岩崎が「さて、」と一拍置いてから話し始めた。
「とりあえず、モノクマの言っていたルールとやらを確認しないか?後から知らなかった、と言い訳しても通用しない場合があるからな」
その提案を聞き、俺たちは顔を見合わせながら電子生徒手帳を起動させた。
そこにはモノクマの言っていたルールの他に、この山……絶望山の地図やこの場にいる十六人の情報などが載っている項目があった。
様々な項目の中にある"林間学校のルール"という項目をタッチすると、画面にモノクマの言っていたルールが映し出された。
・生徒達はこの絶望山内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。
・夜十時から朝七時までを夜時間とします。
・この山について調べるのは自由です。特に制限は課せられません。
・学園長ことモノクマへの暴力、監視カメラの破壊を禁じます。
・仲間の誰かを殺したクロは"下山"となりますが、自分がクロだとは他の生徒に知られてはいけません。
注意 なお、ルールは学園長の都合により順次増えていく場合があります。
「…随分と勝手だな」
「勝手って…えっと、どこがでしょう…?」
アレクの呟きに機織が不思議そうに首を傾げて聞き返すと、アレクはチラリと機織を見てとんとん、と電子生徒手帳を軽く突いた。
「注意の部分をよく読んでみるといい。あのヌイグルミ…モノクマが不都合だと判断した事は禁止させる、と言っているようなものだろう」
そう言い終えると、アレクは冷ややかな目を電子生徒手帳に落とし、すぐに電源を落とし胸ポケットにしまった。
確かにアレクの言っていた注意も気にかかるが、でも…このルール、なんかおかしいって言うか…。
「…どういうことなんだ?これ…」
「うん?何が?」
いつの間にか隣に来ていた涼にそう聞かれ、俺は首を傾げながらじっと電子生徒手帳を見た。
「…"自分がクロだと知られてはいけない"って、どういうことかと思ってな」
「ま、まさか直オマエ……!」
「バカ言うな、そんなわけないだろ。単純に気になっただけだって、裏がありそうで…」
涼の言葉を聞いて全員が疑惑の目で俺を見始めた為、涼を睨んでそう訂正すれば、涼はカラカラと笑いながら俺の背中をバシバシと叩いた。
「わかってるって!直が殺人なんてするわけねーもんなー!」
「お前さぁ、相変わらず能天気だよな…今の状況分かってんのか?」
「わかってるわかってる!でもさ、その校則の事って単純に考えて"完全犯罪を成立させろ"って事じゃねーの?」
「…ま、それもそうだよな…そうとしか考えられないし…」
「……完全犯罪…果たしてそれで正解なのかな?」
俺たちの会話を聞いていたらしい野宮は誰に言うでもなくそう呟くと、俺と涼を見てフッと口元に笑みを浮かべ、先程のアレクと同じように電子生徒手帳の電源を落としてスウェットのポケットに入れた。
「な、何だ?今の意味深な笑顔…」
若干顔を引き攣らせながら小声で呟いた涼をスルーしつつ、俺は再びルールを最初から読んだ。
俺たち全員をこの山に閉じ込めてまでさせることが、"この山で共同生活をさせて誰にも知られないように人を殺させる"だけ……
だけ、って言い方もどうかと思うが……本当にそれだけか……?
「と、まぁ…自己紹介もルールの確認も終わったことだし、今から各自解散してこの山の探索をするとしよう。モノクマはこの山で一生を過ごせと言っていた。ということは、それなりの宿泊施設も整っているはずだ。
さっき向月くんと鈴木さんがやって来た方の道の奥にはまだ何かしらの施設があるだろうしな。…どうだろう、何か意見がある人は?」
つらつらと噛まずに言いきった岩崎の言葉に、俺達は肯定の意味で無言で頷き、その場で各々どこかへの歩き出した。気がつけばこの場に残ったのは俺一人だけだった。
「……とりあえずMAPを見てみるか」
そう呟き、電子生徒手帳のMAPが乗っているページを開いた。
MAPは全部で六ページに別れており、一ページ目は今いるこの場所。中央エリアと記されていて、目の前にある噴水と噴水を囲むように設置されている十六個の小さなコテージ、そしてそれ以外には森しかなかった。
次のページには第一エリアと記されており、体育館、食堂、図書館、病院の四つの施設があるらしい。
とりあえず、まずはこのコテージを調べてみるか。一番近いし、誰かいるかもしれないし。
…別に誰かいないかなとか思ってないからな、置いてかれたことを気にしてるわけじゃないからな。