木々に囲まれた道を真っ直ぐ進んでいくと、第一エリアにたどり着いた。
きょろきょろと周りを見渡せば、正面から右側にかなり大きめの体育館を見つけた。
この大きさなら涼も充分バスケ出来るだろうな、なんてことを考えながら体育館の扉を開くと、そこには案の定涼と牙山、禍埜羽の三人がいた。
そこそこ広いから、三人で探索してる…と思ってたけど…。
「…お前ら何してんだ…」
「あっ、直!すげーんだぜこいつ!オレのスピードについてこれてんだ!」
「ははっ。やるからには負けないっすよ!」
「じょーとー!負かしてやんよ!」
何故か涼と禍埜羽はバスケットコートで1on1をしていた。
しかも本気を出していないとはいえ、禍埜羽はあの涼と互角に渡り合ってる。
純粋に凄いな、と感心してしまった。
体育館の舞台側の面は畳張りになっており、そこで坐禅をしていた牙山に近づく。
牙山は俺に気づいたのかゆっくりと目を開き、俺を見て爽やかな笑顔を浮かべた。
「おや、向月殿。どうなされた」
「いや、一応一通り調べてみようと思ってな。ついさっきここに来たんだが…」
「あぁ、あの二人でござるか」
チラリと横目で二人をみると、その瞬間涼がゴールネットにダンクしていた。
「体育館の探索は終わったのでござるが、黒紫峰殿がバスケをしたいと言い出し…」
「あの馬鹿…。今の状況わかってんのか…?」
おそらく、涼の我儘に禍埜羽が付き合ってくれてるんだろう。助っ人という才能から、バスケの経験もあるんだろう。涼が楽しむ程度には実力もあるみたいだし。
「拙者は少々精神を落ち着かせようと坐禅を組んでおり…。しばらくすれば探索に戻ろうと考えていたのでござるが、」
「おーい!次直、と〜…肌黒い人もやろうぜ〜!」
「黒紫峰くん、名前覚えた方がいいっすよ〜。牙山くんっす、牙山柁紀くん」
「………」
はぁ、とため息を吐く。
苦笑している牙山をそのままに、俺は二人に近づいて涼の頬をつまみ、引っ張った。
「いふぇえ!」
「悪い、禍埜羽。こいつが満足するまで付き合っててくれるか?俺は探索に行くからさ」
「それは別に構わないんすけど…。あの、痛そうっすよ…?」
禍埜羽に必要なことを告げ、最後に涼を睨んで手を離せば、「直のばーか!」と叫んだ馬鹿は禍埜羽の後ろに隠れた。
「じゃあ、俺探索するから」
「はは…。いい頃合になったら集合場所へ連れていくので、安心して欲しいでござる」
牙山の言葉に頷き、体育館内を調べる。
倉庫や舞台の方まで調べた後、バドミントンもどきをしていた三人に一声掛け次の建物へ向かった。
体育館を出てしばらく歩くと食堂が見えてきた。
中に入ればそこには食堂らしく、少人数で食事をとれるテーブルと椅子が三十人分程用意されており、奥の方にはキッチンへ繋がる扉もあった。
キッチンの扉を開くと、そこにはエプロンを身につけた機織と鈴木(妹)が何かを作っているのか、テキパキと忙しなく動いていた。
「あ、向月くん…でしたね。集合時間にはまだ早いですけど…どうかしました?」
「いや、ちょっと一通り見て回ろうかと。お前らは何してるんだ?」
「ほら、もうすぐ夕食の時間じゃないですか。ちょうど集合場所もこの食堂ですし、夕ご飯を用意しておこうと思って、その準備です」
機織の言葉を聞き、壁に掛けてあった時計を確認する。
時刻は既に五時手前。一通り探索が終わった頃には夕食時にはなってるだろう。
にこりと笑みを浮かべた彼女は素直に可愛いと思ったが、その機織の両手近くに置いてあったものに俺は自分の顔が引き攣るのがわかった。
「えーと、その鍋に入ってるのは?」
「あ、これは一応卵スープです。でも少し失敗しちゃって…」
失敗どころじゃない。
機織がお玉で混ぜていたスープと思わしき液体は何故か蛍光の緑色をしており、ぶくぶくと変な泡が発生していた。
物凄く食欲をそそる匂いをさせているのがかなり恐ろしい。
どんな言葉をかけたらいいのか、口元をひくつかせながら鍋の中を見ていたら、機織の隣でフライパンをふるっていた鈴木(妹)が口を開いた。
「安心しろ、流石にそんなもん食わせるつもりはねぇよ」
「…助かる…」
「う。…そんなに美味しくなさそうですかね…」
あからさまにしょぼん、と落ち込んだ機織を見ていられなくてちら、と鈴木(妹)を見る。
はあぁ、とため息を吐いた鈴木(妹)は鍋の卵スープ(?)をスプーンで一口掬い、ぺろりとひと舐めした。
そして思いっきり顔を顰めた。
「…まず香りに対して味が悪い。何がどうしてこうなった…?多少不味くても調味料でどうにか味を整えることはできるけど、これはもう手遅れ…。つーかお前、自分で味見したのかよ」
「し、…してない、です…」
「人に料理振る舞う前に味見を覚えろ。もったいないからこれはモノクマに差し出す」
「はい…」
隣で手際よく調理しながらそう指摘された機織は落ち込みながらも鍋に蓋をし、背負っていたバックからメモ帳とペンを取り出して「モノクマさんへ」と書いたメモを蓋に貼った。
…校則違反にならないことを祈ろう。
「…ところで、鈴木は何作ってるんだ?」
「中華料理。メニューと量を多めに作って大皿に盛っとけば誰かしら食うだろ。俺はちゃんとした料理作れっから心配すんな」
「それは手際の良さを見てれば分かるけど…。でも、材料とかどうしたんだ?」
「冷蔵庫に入ってたぜ。作る前にモノクマが説明してったけど、ここの冷蔵庫には定期的に食料が入ってくんだってよ。だから、少なくとも餓死で死ぬやつはいねーってこったな」
「そ、そうか…。まぁ、鈴木の夕飯楽しみにしとくよ」
「おう。…それと、鈴木って呼ぶの、歪見と間違えっから名前でいい。機織、お前も」
「え、…分かった」
機織の使った器具の片付けを少し手伝い歪夢の料理を少し味見した後、俺は他の場所の探索をするため食堂の外へ出た。