ある電気屋の記録   作:もよぶ

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CASE06 一色家の電子レンジ

奉仕部にて

 

「しつれーしまーす、せんぱーい、責任取ってくださいね?」

 

「なんだ突然、何がどうなって責任を取らなくてはならんのだ」

一色が部室に入るなり比企谷へ詰め寄る

 

「昨日、結衣先輩から、先輩に自宅でクッキーをごちそうしたって聞いたんですよ」

 

「・・・ああ・・・」

 

「わたしー結衣先輩よりお菓子作り得意じゃないですかーそれで対抗しようとしてお菓子作っていたらオーブンレンジがピーピー言いだして動かなくなってなって、困ってるんですー、これ先輩のせいですよね?責任取ってください」

 

「言い方があざとい、要はお前んちのオーブンレンジが壊れたってだけだろ、お菓子作りをアピールするところが余計にあざといそして俺は全く関係ない、あと由比ヶ浜に失礼だろ、謝れ」

 

「あざとくないですよ?それで、先輩がそういうのに詳しいって結衣先輩から聞いたんで、是非私の代わりに修理の依頼お願いしますね?ついでに結衣先輩ごめんなさい」

「がーん!ついで扱いだ!ひどいよいろはちゃん!ゆきのーん慰めてー」

雪ノ下に抱きつく由比ヶ浜を横目に比企谷はまたかとうんざりした表情

「由比ヶ浜・・・余計なことを・・・」

 

ふと見ると、由比ヶ浜は雪ノ下の横で手を合わせてゴメンのポーズをしている

 

「一色さん?そういうのはご家族にお願いすることではないかしら?」

雪ノ下がちょっとキレ気味だ

 

「それにうち共働きなんで電話するの無理なんですよー、私も詳しくなくて、雪乃先輩が修理してくれてもいいんですよ?」

それに対し挑発的な笑顔の一色

 

「比企谷くんは奉仕部の備品よ?勝手に持ち出すのは部長の私の許可が必要よ?もちろん不許可だけれども」

ちょっと雪ノ下さん、やっぱ俺は備品扱いですか・・・

「へー、備品なら仕方ないですね、では生徒会権限でこの備品は没収とさせていただきますよ?生ものが備品なんて認められませんからね?」

おい一色一応俺は先輩なんだから物扱いはやめろ

 

雪ノ下も一色も笑顔なのだが目が全く笑ってない、なんか二人の間で火花が散っているような幻覚が見える。

俺はこの雰囲気に耐えられそうにない、逃げても家まで追いかけられそうだし、電話ぐらいならいいだろ

 

「ちょちょっと、要は連絡すればいいんだろ?」

「そうですね、お願いしますね?」

一色は持ってきた保証書等の書類一式を比企谷へ渡す。

比企谷は仕方ないなと代わりにコールセンターへ連絡

 

「ヒッキーいろはちゃんに甘すぎ」

「この場合こうする他ないだろうが、あと由比ヶ浜、今回のはお前のせいでもあるんだからな?あんまほかの人に言うなよな」

「だってヒッキーのすごいところみんなに教えたいじゃん?」

「すごかねぇよ・・・」

ちょっと照れ臭い比企谷

 

ほどなくしてコールセンターにつながった

「えー修理の依頼なんですが、電子レンジで型番は~」

 

電話している様子をじーっと見る一色

「えーこっちの名前ですか?一色です、そうですね一色・・・」

 

「雪乃先輩!結衣先輩!今の聞きました?先輩が一色って!先輩の名字は今日から一色ですね!・・・は!いや駄目です、まだそんな年齢でもないですし婿養子だと家の両親も喜びますけどまだお互い学生なのでせめて卒業してからでいいですかごめんなさい」

 

「うるさい一色、全く何度ふられりゃいいんだ、折り返しするってよ、訪問はいつがいいんだ?」

「え?訪問ってうちの両親に挨拶ですか?まだ紹介もしてないのに?せめてきちんと告白してお付き合いしてからでいいですか?ごめんなさい」

 

「またふられたよ・・・いい加減話を進めてほしいのだが」

「ヒッキーってどうしようもないね・・・」

「由比ヶ浜さん?この男がどうしようもないというのは今更ではなくて?」

「そうですね、先輩はほんとどうしようもないですね」

 

「三人そろって俺をディスするな、ほらいつがいいんだ?」

結局今週の祝日になった、電話を終えると

 

「んじゃ先輩、休みの日は朝から待ってますので、小町さんにはわたしから伝えておくのでよろしくお願いしますね?」

「おい!ちょっと!」

書類をさっさとまとめるとあっという間に奉仕部から姿を消す一色

 

「あーあいろはちゃんに嵌められたね」

「比企谷くんは次の休みには一色くんになるのね・・・」

 

「頭が痛くなってきた・・・」

頭をかかえる比企谷だった。

 

~~~~~~~~~~

 

今日の1件目のお宅に到着だ、一色さんね。

必要な道具を持ちインターホンを鳴らす、すると鳴らした瞬間玄関が開く

ピンポーンのピで扉が開いたのでびっくりだ。

 

「先輩!遅いですよ!まちくた・・・あ!す、すみません」

勢いよく出てきた女の子から謝られる、なにやら誰かと間違われたようだ。

 

「電子レンジの件でお伺いしたのですが・・・」

「え、えーっと、先輩がー、うーん」

なんか一人で悩んでいる、もしかして『先輩』とやらに一緒に立ち会ってもらうつもりだったのだろうか?

チラッと見るとやけに気合の入った服装である、ピンク色の上着にひらひらとしたものが付いているミニスカート、部屋着ではないような気がする。

ははあ、その先輩とやらと修理の立ち合いにかこつけてデートでもするつもりだったか?

目の前で悩んでいる女の子を見ながら勝手な想像をする。

 

「出直しましょうか?」

回答待っているといつまでたっても決まらないこういう場合まず撤退だ、別件回ってからまた来るか、と思っていたら

 

「まあいいです!上がってください!」

本当に大丈夫なんだろうか?

電子レンジのところまで案内されるが本当にだれもいないようだ、マジで親不在?

「では見せてもらいますねー」

今更両親がいないからと言うのもどうかと思うしお金がかかるようだったら出直すかと思い、症状を確認しエラー履歴や動作履歴のチェックから始める、最近の家電はメモリー機能があるから何時どういったエラーが起きたのか記録される、偶に致命的で出たら動かなくなるようなエラーが記録されているときもあるのだが普通に動いているのでその辺どうなってるのかはさっぱりではあるのだが。

 

そうやって電子レンジをいじっていると

 

「うーっす」

玄関からだれか入ってきた

「せんぱーい!」

女の子がバタバタと玄関に走っていった。

 

「せんぱーい!遅いですよ!わたしとっても不安だったんですよ?見知らぬ男の人と二人っきりなんて乙女の危機じゃないですかー」

 

こっちは仕事で来てるっつうのになんか失敬な言われよう、でもまあ年頃の女の子だから仕方ないかもしれないな

 

「うわ!くっつきすぎるだろおまえ、あとあざとい、そして来た人に失礼だろ」

しかしまったくリア充とは度し難いものだ、しかし聞いたことある声だな?

と後ろを振り返ると

 

「・・・あ・・・・」

「・・・・どもっす・・・」

 

またしても比企谷君だった、こいつとの遭遇率高すぎだろう、いったいなんなんだ?

 

「ああそうだほら、これ土産だ」

「先輩がお土産!うれしいですーって何ですかこれ?」

「MAXコーヒー、通称マッカンだな、家に常備していた物だが小町が少しでいいから減らしてと懇願してきたから持ってきた」

そういやたくさん持ってたね、あんなにあっちゃそりゃ迷惑がられるよ

 

「こんな変な飲み物・・・って先輩の家にあったんですか?ふーんんじゃあ飲まずに家宝にしますね?」

「アホか飲めよ」

「こんな甘いの飲めないです~」

「あざとい、そして飲め」

 

やたらMAXコーヒーを推すな、ありえん量持ってたしMAXコーヒーの信者か何かなんだろうか?

そんなことを思いつつエラーコードを確認、故障該当箇所の目星を付ける

 

「まー大体わかりました、保証に入っているのでこのまま作業しちゃいますね」

インバーター基板あたりが故障個所のようだ。

この辺は電磁波を出すところとつながっており超高圧になっている、電源を入れた状態でうかつに触ると感電して大けがしてしまう部位でもある、最悪死ぬ、実際にサービスマンですら年に1、2回そういった事故が起きているので大変な注意が必要だ。

 

電子レンジのガワを外して部品の交換をするわけだがばらしていくと外装の部品の裏には食べ物のカスや汚れが結構ついている、お客によっては綺麗に使っているのにと愕然とする人もいるが、食品を扱う機械の裏なんぞこんなものだ

 

「うわ!これ洗っていいですか?」

大体こう言われるので承諾する、別に電気部品が付いてなきゃ何も問題はない

女の子は汚れている部品をひとまとめにするとシンクで洗い始めた。

 

「なんかこれ一色みたいだな」

「?どういう意味ですか先輩?」

 

「外から見るとピカピカだけど裏から見ると真っ黒でドロドロ・・・っておいやめろ」

「どういう意味ですか先輩!雪乃先輩と結衣先輩に言いつけますよ!」

「あいつらは関係ないだろうが、ちょっと痛いって」

 

振り返ると女の子が比企谷君を洗いかけの電子レンジの部品で叩いてるところだった。

比企谷君はデリカシーという言葉を覚えたほうがいいのではないだろうか、あとそれ一応プラ製だから多少は頑丈だけど壊したら実費だからほどほどにね?

 

「先輩!罰としてこれ全部洗ってください!」

「えーめんどい」

そういいながら比企谷君は部品を一個一個たわしで洗い始めた、君いい奴だなぁ

 

「なあ一、色洗ってやるからせっかく持ってきたマッカン飲めよ」

「えーマジですか?これを?先輩の好物でしたっけ・・・」

缶を開ける音がする

 

「うへ、甘すぎますよ~先輩残り飲んでください」

「おら、いいからちゃんと飲めよ、一滴も残すなよ?ちゃんと残り全部吸いだすんだ」

「もう嫌です~勘弁してくださいよ~」

「おら、ごっくんしろよ、吐き出すな」

「ムグー!ん!ゴクッ」

「ほう、やればできるじゃないか?んじゃもう一本いってみようか?」

「もう嫌です~もう飲めないです~」

 

何プレイっていうのこれ?

MAXコーヒープレイ?

比企谷君はいい笑顔しながら後輩にMAXコーヒー飲ませてるな。

 

そんなこんなで修理は終了、洗ってもらった部品も取り付け動作チェックも問題なしだ。

「終わりましたんでこちらにサイン・・・」

と伝票を取り出そうとすると

 

「じゃあ一色!俺はアレがアレだから帰るわ!」

 

と比企谷君ダッシュで玄関へ

「先輩!逃がしませんよ!」

女の子もダッシュで追いかける、なにやら玄関で揉めたのち腕をつかまれ比企谷君が連行されてくる。

 

「じゃあ先輩、わたしの代わりにサインお願いしますね?もちろん『一色』でお願いします」

「・・・わーったよ・・・」

一色とサインをする比企谷君、なんか尻に敷かれてるね

「じゃあ先輩、わたしさっそくお菓子作るんで手伝ってくださいね?あ!MAXコーヒーはもういらないんで持って帰ってくださいね?」

「へいへい・・・ってそれは駄目だな」

 

「何でですか!あんなものを女の子に飲ませるなんてサイテーですよ!」

「んなこと言ってもお前飲んでただろ」

「先輩が無理やり飲ませたんじゃないですか!もうお嫁にいけないじゃないですか!先輩は責任取って今日一日私の手伝いをしてくださいね!」

といいながらごそごそと材料を取り出す女の子を尻目に俺はそそくさと退散するのだった。

 

「やたらとアグレッシブな後輩だったな、比企谷君の妹さんみたいで大変だなぁ・・・次は・・・戸部さんか、テレビのリモコンが不調ねぇ・・・」

そしてつぎのお宅へと向かうのだった

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