死神幻想奇譚   作:16

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あらすじ

愛用の大剣『荒正』を振るい、妖狼を退けたラグナは
人里で食い逃げを敢行しようとしたところ、女性に
声をかけられる。彼女の名は上白沢慧音。

慧音との質問の受け答えで博麗の巫女に会う必要がある
事がわかったラグナと慧音は、翌日早朝に人里を発つ。
道中千疋狼と呼ばれる妖狼を相手に軽々と勝利し、
博麗の巫女に会いに行く為に数百の階段を登る。

そこで出会った少女こそが『博麗霊夢』、巫女だった。




第三話 死神と紅白巫女

「はい、お茶。緑茶しかないけどいいわよね?」

「おう。飲みもんが飲めるだけありがてえよ」

 

巫女の差し出した茶に口をつける。

淹れられたばかりの茶はまだ非常に熱く、火傷によって唇を容赦なく傷つける。熱くはあるが、飲めぬ訳では無い。

一度に飲み干し、ご馳走様と伝える。

 

「茶、ご馳走さん。さてと、本題に入るとするか。まずは結界について知りてーんだけどよ」

「ええ。その前にひとつ、前提があるわ」

「前提?」

 

霊夢は『前提』なる存在を教える。

 

「前提として、結界は基本的に人間には通れない。

正確には生死問わず意志を持っている者はダメなのよね」

「なるほどな...じゃあ、俺が通り抜けられたのは特例か?」

 

「そういう事。生命が『博麗大結界』を抜けられるのは

意思がない、すなわち死んでいる時か、何者かの干渉、

つまり、誰かさんの能力によって穴が空いた時だけよ」

 

ラグナは『ライフリンク』によって死亡しない為、

一つ目の線はまず有り得ない。二つ目の線の方が可能性としては有り得る話だ。

 

「それじゃあよ、その誰かさんに心当たりはあんのか?」

「あるにはあるけど.....こういうのを故意で行った時は

必ず私の方に連絡が行くのよね。何かしらの方法で」

 

話を纏めると、ラグナが結界を通り抜けた理由は、

何者かによる干渉の線が一番濃厚だが、霊夢本人は

その心当たりのある人物は違うと言っている。

つまり第三者、それも、霊夢もまったく知り得ない誰かが

結界に干渉を引き起こし、何らかの方法でラグナを結界の内部に叩き込んだ事になる。

 

「まあ、ここら辺は俺が調べていくとして、気になる事は他にもあるんだけどよ、質問してもいいか?」

「ええ、いいわ。答えられる範囲でなら教えてあげる」

「『魔素』について心当たりはあるか?」

「魔素.....いいえ、知らないわね」

 

魔素を知らないと彼女が答えた事で、ラグナの抱える謎はより一層深みを増してしまう結果となった。

だが、まだ他にも聞きたいことはある。

 

「ここには『術式』を使えるやつはいんのか?」

「『術式』.....妖術の事かしら?それとも陰陽術?」

「いや、いい。多分別モンだ」

 

術式の存在も知らないという事は、多分ここは術式が存在しない世界という事になるのだろうか。しかし謎は多い。

 

ここが2000年だとしよう。

2000年には黒き獣は居ない。つまり、獣に対抗する為に開発された術式すらも存在しない事になる。更に言えば、獣が死んだ事で魔素は世界中に大量にばら撒かれる事となるのだが、それも黒き獣が存在していないことで魔素の存在自体少ない事になる。人里の時といい、少ない魔素で充分な性能の術式が使える理由がわからない。

 

仮説を組み立てていると、霊夢が話しかけてきた。

 

「ねえ...あなた、ラグナ=ザ=ブラッドエッジでしょう?

アリスから聞いたわ。森の瘴気が効かないそうじゃない」

「アリス...ああ、あの人形師か。瘴気って?」

「魔法の森はね、地中の死骸とか、そういったものから

魔力が吸われて出来た草葉が多く群生してるのよ。

普通の生物がその魔力に長く当てられると、正気を失って

死んでしまったり、妖怪化してしまったりするの」

 

ラグナにはそれが効かなかった、と伝えられたのだ。

ラグナの持つ蒼の魔道書、そしてソウルイーターは、像を殺す猛毒さえ無効化し、吸収してしまう程に強力なのだ。おそらくそういった部分も関わっているのだろう。

 

更に蒼の魔道書によって致命傷さえ、ものの数分で

完治してしまう程の生命力を有しているのだ。

そういった瘴気を無効化するのもある意味頷ける。

 

ふと、遠くから声が聞こえた。

その声もまた少女の発するものに思える。

 

「おーい!霊夢ー!ラグナっての、居るかー!?」

「俺、そんな名前知られてんのか?」

「みたいよ、ラグナさん?」

 

その声は次第に大きくなっていき、最終的に真上から聞こえたと思ったら、屋根からスタイリッシュに降りてきた。

黒いベストとスカートに白いエプロン、最も目立つ白黒の魔女の三角帽子の影から覗くウェーブのかかった金髪は、その少女のトレードマークとも言えるだろう。

 

「よっ、『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』

私は『普通の魔法使い』霧雨魔理沙だぜ」

「マリサ=キリサメ...普通ね.....魔女ってんで、俺としちゃ超嫌味な奴を想像してたぜ。悪ぃな」

「失敬なことを言う奴だな。私は嫌味ったらしくないぜ。少なくともまともな性格だとは思ってる」

「泥棒がまともな性格とは笑わせるわね」

「今言うなそれを!」

 

ラグナは彼女等二人の様子を見、知人の誰かに空目する。もちろんここにはいない存在なのでありえないが。

しかし、魔女と言うならもしかすれば疑問を解消してくれるか、そこに辿り着くヒントを持っているかも知れない。

 

「マリサだっけ?お前『魔素』って知ってるか?」

「.........!!」

「当たりくせえな。話聞かせてくれ」

「あら、魔理沙知ってたの?」

 

しかし、知っていると思われる魔理沙本人は、だんまりを決め込んでしまった。話してくれる様子ではない。

何故話さないのかわからないまま、事態は膠着する。

 

「おい、マリサ...なんで黙る?」

「悪いけど、言えないぜ」

 

魔理沙は帽子の唾を握り、深く被り直す。顔には影が差して目は見えなくなった。目を合わせたくないからこうしているのだと簡単に想像がつく。なぜ言えないのか、その理由は全くもって想像がつかないが、話さないなら.....

 

「お前が黙り続けるってんなら.....」

「一応聞くが.....どうするんだぜ?」

「力づくでもテメェの口から吐かせる!」

「やってみたらいいぜ」

 

ドスの効いたラグナと魔理沙の声が鈍くぶつかりあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The Wheel of Fate is Turning...

 

REBEL 1 ...

 

Action!

 

 

 

 

 

 

「無駄だぜ」

 

魔理沙は開幕と同時にベストから小さな箱を取りだし、

ラグナに向かってかざす。それが危険な物だと瞬時に

判断したラグナはしゃがみ、防御術式で攻撃を防ぐ。

 

「.....チッ!なんて馬鹿力してやがる、あの術式!」

「考え事をしてる暇はあるのか?」

「...クッ!」

 

今度は真上から三発のレーザーが降り注ぐ。一発目をバックステップで回避すると、残った二発の追尾は魔理沙の前に駆け出す事で回避した。

別の魔法を唱えるまでの時間稼ぎとして魔法を行使する魔理沙だが、牽制と足止めの為に放った攻撃中に反撃に転じてくるとは思っていなかったのだろう。

 

「隙だらけだ!」

「なにっ!?」

 

焦った魔理沙にラグナは勢いづいた蹴りを放つ。

 

「ガントレットハーデス!」

「がっ!」

 

闇の瘴気を纏ったラグナの足蹴りは魔理沙を吹き飛ばす。

だが、魔理沙は吹き飛ばされてすぐに受身を取り、

次なる魔法を展開するために弾幕を形成した。

一つ一つが高濃度の魔力の塊であり、触れた所から

徐々に焼けていくような感覚と重い痛みが走る。

 

「クッ.....近づけねぇ...!」

「喰らえッ!『スターダストレヴァリエ』ッ!」

「なっ...!?」

 

弾幕の中から無数の『星屑』が放たれた。

『星屑』を見る限り中央に向かうにつれて色が薄く、

そして明るくなっていく。あの中心に当たる事だけは不味いと直感したラグナは、せめて被弾を回避しようと横に避けるも、右手が巻き込まれてしまった。

 

「グアアアッ!」

「どうだ、私の必殺技は?!」

 

魔法の成果を確認すべく魔理沙が巻き込まれた右の腕を見ると、手首から上が完全に消滅しており、残った右腕部が千切れた手を形成せんとばかりに新しく手を象っていく。

その様子は、人間とは思えない悍ましさを孕んでいた。

 

「チッ.....厄介だな、あの能力(魔法)」

 

互いを見合わせて次の対策を練り始める。

ラグナが最も苦手とするのが遠距離からの連続射撃で、

魔理沙が最も苦手とするのが近距離での連続攻撃なのだ。

 

「(使っていい気はしねえんだがな.....)」

「(師匠から禁止されてたけど.....)」

 

「ここで片をつける!『ブラッドカインイデア』!」

「ここでゲームオーバーだぜ!『恋符』!」

 

両者走り出し、互いの必殺技(ディストーション・ドライブ)をぶつける為に

互いに接近する。魔理沙に至っては、敵がどこにいようが射程距離に入っているのだが、最高火力を出す為に近づく必要性があったのだ。確実に仕留める為だろう。

 

「くたばりやがれッ!『カーネージ.....』」

「こっちのセリフだぜ!」

 

互いに攻撃の構えに移るラグナと魔理沙。

ラグナの剣は魔理沙に命中したが、魔法を行使するための魔法障壁によって初段の一撃は防がれた。

ラグナの本命の二撃目が、魔理沙の必殺の一撃が、

両者を捉え、攻撃に移る。

 

「貰ったッ!『マスタースパーク』!」

 

魔理沙のマスタースパークが一瞬早かった。

極めて太いレーザーはラグナの全身を焼き尽くす。

 

「(勝ったッ!.......なっ!?)」

 

しかし、ラグナは絶命してはいなかった。

マスタースパークに当たっても攻撃に移れた理由は、彼が魔理沙と同じように『術式障壁』を解放していたからだ。

 

「『シザー』!!」

「うああああああっ!」

 

大剣による直接的なダメージはないが、ソウルイーターの闇の瘴気は魔理沙の肉体の一部から人の生きる力を吸い、それは、魔理沙がダウンするのに充分な威力だった。

 

「かはっ.........今回は、私の負けだぜ.......」

「さて、色々と話してもらうぜ、マリサ」

 

 

 

 

 

 

Distortion Finish

 

RAGNA Win

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、んじゃ、聞かせてもらおうか」

「はあ.......特別だぜ」

 

渋々。本当に渋々という具合に魔理沙は答えた。

 

「魔法の森には長年重なってきた妖怪同士のいざこざがあったんだぜ。そこで死んだ妖怪は土に還るんだけど、その時残った妖力....つまり魔力は昇華しないんだぜ」

 

「妖力ってのが昇華しないのがなんだってんだ?」

 

「それを今から話すんだぜ、少し静かに聞けって。んで、残った魔力はそのままでは使えないんだぜ、なぜなら人間が扱うには濃過ぎたからだったんだぜ。それを薄めるのが魔法の森の土。つまり、森の土はいわゆる『ろ紙』の役割を果たしてたんだぜ。それでもかなり毒だけど」

 

「そして地上に出てきた魔力は『魔力では無い別物』へと昇華する。それを私は『魔素』と呼んでいるんだぜ。

まだ師匠にも言ってないし秘密な、これ」

 

「そんな事が.....」

「なるほどな...んじゃあ、それが、俺が『術式』を

この場所でも充分な性能を持って使える理由か」

 

「そういう事だぜ。術式が何かは知らんが」

「じゃあ、とりあえず解決だな。力づくで喋らせちまって悪い。この事はきっちり秘密にしとく。それで許せよ」

 

「.....一回だけだぜ」

 

では疑問も解消されたことだし、人里へ帰ろう。

そう言ってラグナは階段を降りていく。

彼について行ったのは魔理沙だった。

 

「待て」

「あ?なんだよ一体」

 

魔理沙がラグナを呼び止めた。一瞬躊躇した様に見えた。

そして少し経って、意を決したかのように言い放った。

 

「私に『術式』を教えてくれ、ラグナ!」

「は.....はあ!?」

 

「頼むよラグナ!私はもっと強くなって師匠を見返して、ついでにお前をぶっ飛ばしたいんだぜ!」

「おい!後半のは余計じゃねーか!」

 

頭を掻きむしりながらツッコミを入れるラグナ。

食い下がる魔理沙とラグナのコンビは、

霊夢の目には微笑ましく映った。

 

「......まあ、いいぜ。ケイネんとこ行くからよ、

マリサ、お前が良けりゃ来るか?」

「.......!!やった!行く!行くぜ!」

 

何度も飛び跳ねて狂喜乱舞する魔理沙の元気さ加減には

さすがのラグナも呆れ返るしか無かったといっておく。

 

 

 

 




術式について

魔素と科学の両方が備わった事で魔法への適正のない者が魔法の片鱗を行使することができるようになる。
今までで上がったものはほんの一部であり、あらゆる事に術式を使えると思われる。
外の灯りやドアのロック、天候すら術式で操れる。


次回予告

魔理沙を打ち倒し、何故彼女が魔素の存在を
教えようとしなかったのか知ったラグナは、
魔理沙に術式を教えようとする。

今後の展開について

  • 他キャラとの絡みによるギャグ路線
  • 他キャラとの絡みによるシリアス路線
  • 既登場キャラとの絡みによるギャグ路線
  • 既登場キャラとの絡みによるシリアス路線
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