死神幻想奇譚 作:16
結界について巫女と話していたラグナは、
話の腰を折るかの如くやってきた白黒の少女
『霧雨魔理沙』にも質問を投げかけた。
魔素の事を話そうとしない魔理沙はラグナと激突。
互いの必殺技が炸裂するも、ラグナが機転を効かせて
魔理沙は敗北し、魔素について吐かされる。
そして、術式の存在を知った魔理沙は、
ラグナに弟子入りする事としたのだ。
「うーん、つまり術式ってのは魔法が使えない人間の為に開発された、科学的な魔法の総称ってことなのか?」
「まあ、ここら辺は俺もよく知らんが、だいたいそんな感じだったと思うぞ」
「思うってラグナ、随分と適当だぜ」
「仕方ねーだろ?俺だって師匠から感覚で扱えって言われて、何をどうすればいいかわかんなかったんだしよ」
慧音の寺子屋の一番奥、来客用の部屋で、ラグナと魔理沙の二人は術式の習得に励んでいた。主に魔理沙が。
「術式を使う為には適正がいるんだよ。俺はこいつのお陰で、元々適正がなかったのに術式を使える」
「じゃあ、私に適正があるかわかんないのか?」
「いいや、イシャナの魔法使いが昔検査を代表して行っていたらしいし、もしかするとお前でもわかるかもしれん」
そう伝えると魔理沙は目を輝かせる。
術式は魔素を糧に扱うものだから、あまり濃度の濃い場所で扱うと自身がキャパシティに耐えられない事もあるが、そんな心配事は彼女にとって壁にもならないようだ。
「それじゃあその方法を教えてくれ!師匠No.2!」
「誰がNo.2だコラァ!.......これだ」
怒鳴りつつもポケットから謎の機械の断片を取り出す。
それは元々一つの塊の様なのだが、どこかで割れたのか
円形の物体が真っ二つに割れたような様相になっている。
「これがなんだぜ?」
「これが検査器具の一部だそうだ。原理は知らんが、使用者の適正に応じて光る具合が変わるらしい」
「何色ならいいんだぜ?」
「明るい色ほど良いらしいぞ」
そう言うと、魔理沙は袖を捲り欠片を握りしめる。
そして自分の持つ魔力を注ぎ込む。もとい体内の魔素を。
「ふっ.....うぐ....」
そして、欠片は眩いほどの青で染まった。
まさしくその光は、適正のある絶対的な証拠だった。
「おお、良かったな魔理沙。使えそうだってよ」
「ほ、本当か?やったせ.....ふう...」
息も絶え絶えだった魔理沙だが結果を聞いたからだろう、疲れと喜びで半々といった具合だった。
「でもその様子じゃあ術式の修行はキツそうだな」
「.....いいや、大丈夫だぜ。続けてくれ、ラグナ」
「.....無理すんなよ」
「じゃあさ、ラグナが得意な『迷彩』は、他人から自分の姿を認識できないようにする術式って事か?」
「おう、そういう事だ。お前の魔法から身を守ったのも『防御』っつー術式の効果って訳だ。」
術式について教えていると、魔理沙は口を紡いでラグナの話に傾聴していた。完全に術式の機能をマスターするつもりなのだろう。時折紙にメモしたりする事で術式をモノにしようとしているのがわかる。
「.....よし、理論はだいたい分かった。わかったけどさ」
「どうした?何かわかんねー事でもあったのか?」
「いやさ.........この理論を実行に移して、しかも『術式』の構造まで組み立てた人はスゲーって思ってさ。普通なら思い浮かばないぜ。魔素と科学を両立させられるなんて考える奴、いても私ぐらいのもんだぜ」
「ふーん...俺はそんな凄いことはわかんねえけどよ」
ラグナがそれを聞いて顔をしかめる。
魔理沙の過剰な自信は、どこか別の人物を彷彿とさせる。
「よし魔理沙。これが一番重要なんだが」
「ん?.......まさか『術式は女の子には使えない』とか言うんじゃないな?」
「そういう訳じゃねえよ。術式を使う為には『理論』だけじゃ使えない。言わばそれを行使するアイテム.....
『
「魔道書ね...箒に付呪するだけじゃダメか?」
「いや、それなら充分だろ。『媒体』が要るだけだしな」
術式は通常『媒体』つまり魔道書を介して発動される。
それは術者によって違う事がある。
ある者は持ち歩く本、ある者は決して離さない武器...
このように、人によって媒体となる魔道書は違うのだ。
「じゃ、今から付呪するから待ってて」
「おう」
そう言うと魔理沙は自前の長い箒に力を込める。
魔理沙の身体が淡く発光し、その光は箒に注がれる。
しばらく後、更に光を注ぐ為なのか魔法陣が彼女の周囲を囲み、箒は更に光を増していく。
「...っはあ、はぁ、はぁ.......お、終わりだぜ.....」
そう告げて魔理沙は倒れる。
その顔に生気は感じられず、魔素のみならず生命力すら
注いでしまったのではないかとも感じられた。
「おいおい...この様子じゃ本格的な会得は明日からだな」
「悔しいけど.....そうしてくれると助かるぜ.....」
魔理沙が布団に倒れ込んだ後、ラグナは慧音に世話を頼み
(押し付ける、とも言う)自らは町を出た。
(『地図』も埋めていきたいんだよな)
ラグナが取り出したのは、昨日人里の調査に使った紙。
二枚あり、一枚は白紙、もう一枚は人里の内部の
構造が大雑把に描かれていた。一応読み取れる程度には。
「よし、書き込むか」
そう言うとラグナはペンを取り出し、紙に書入れる。
人里、そして博麗神社と魔法の森の位置を。
「あれは...林か?.....行ってみるか....」
林。別名迷いの竹林と呼ばれている事を彼は知らない。
よってその危険を知らぬまま足を踏み入れてしまった。
「だあああっ!また迷っちまったよ、クソ!なんなんだ!
獣道の癖に変な曲がり方したり!落とし穴があったり!」
案の定、悪戦苦闘を繰り広げていたラグナ。
どう見ても侵入者を惑わす罠が張り巡らされている。
更に言うと恐らく児戯で作られただろう落とし穴に
引っかかってしまったラグナのイライラは有頂天だった。
「チッ!あぁあうざってええええッ!」
「おい、うるさいぞ」
「ああ!?」
後ろから声をかけられたラグナが振り向くと、
そこに居たのは赤いもんぺと白いシャツを着、
そこら中に札を貼っている奇妙なファッションの、
年齢に不相応な落ち着きを見せる少女だった。
「チッ.....なんだよ、ガキ。俺は今イライラしてんだ」
「道に迷ってる奴がいるって兎達から知らせがあってな。
そのままじゃ林を傷つけてしまいそうだったらしいし、
私がお前を道案内しに来た」
「.....ウサギ?おい、あいつがここにいんのか!?」
「......?ああ、そうだけど?」
「よし、俺をそいつん所に案内しろすぐに」
少女は疑問を浮かべながらもラグナを『兎』の元へ
案内すべく歩きだし、ラグナもそれについて行った。
「さっきは悪かったよ。ムカついててな」
「いや、いいんだ。ああいう扱いは慣れてるしね」
白髪の少女はにへらと笑ってみせた。
やはり見た目の割に落ち着きすぎている。
そう感じたラグナは、彼女に一つ質問を問いかけた。
「.....お前、数えて何歳だ?どう見ても15とかの見た目で
そんなに落ち着いた口調ってのはおかしいだろ」
「勘が鋭いな、お兄さん。ま、正解だとだけ言っとくよ」
彼女は質問にも動じず、淡々と答えた。
少女が話す言葉としては似合わなさ過ぎる。
彼女が女だと声だけでわかるのはこの声音だけである。
口調だけならまるで男のようにも感じ取れる。
「さて、そろそろ着くよ」
「なんだ.....家?」
見えてきたのは家。それも、竹林であるにもかかわらず
オーク材をふんだんに使った木造の家である。
「そう、あれが私の家な。兎連れてくるから待ってな」
そう言うと少女はラグナを置いて、家の中に入っていく。
そのうち話し声がしたかと思うと少女は一匹の兎を連れて
家から出てきた。
「ウサギ...って、こいつが?」
「そうだ。兎。こいつ以外に兎がいるか?」
「.......いや、よくよく考えればわかる事だったわ」
そもそもラグナが奇怪な出来事に巻き込まれているのだ、
からかう為だけに顔を出すような奴が出てこない時点で
ここには干渉出来ないのだと考えるべきだった。
そもそも、彼女をウサギと呼ぶのはラグナだけである。
「まあ、うん.....帰るわ」
「あ、それなら送るぞ」
「あー...おう、頼むわ」
知人に会えると思ったラグナは出鼻を挫かれた。
すっかり意気消沈し、その返事もどこか上の空だった。
帰る頃には日も暮れ、鴉が人の時間の終わりを告げる。
竹林にて迷ったのがだいたい午後4時頃である。
そこから少女.....『
8時前後。実に4時間近く竹林をさまよっていたのだ。
「あーめんどくせぇ.....なんでただの林を抜けんのに
3時間も4時間も掛けなきゃなんねーんだよ...チッ」
林を抜けたラグナは30分の道のりを歩いていた。
人里にいるだろう魔理沙の所へ見舞いに行く為だ。
整備されていただろう獣道には草が生い茂っている。
通る人間が少なくなってしまったのだから仕方がない。
微妙に歩きにくい地面にもイライラしていた。
そんな彼を尾ける一人の影。
「.....で、テメェはなんなんだ?」
「.......」
道を歩いている間、正確には林から出たタイミングで、
ラグナはこの妙な気配を感じていた。
更にこれは人里に入る時にも感じた事があった。
「チッ.......『迷彩』」
術式によって自分の気配全てを消失させる。それは姿形も例外なく消し去ってしまうのだ。これで追っ手はラグナを見つける事が難しくなった。
「あ、消えちゃいました!どこに行ったんですかね...」
「ここだよ、羽ヤロー」
『羽ヤロー』の背中に剣を押し当てる。
「術式解除.......ったくよ、面倒事は持って帰れ」
「矢張り、噂通りですね.....私は貴方に興味があるのです。『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』さん?」
「.......どこで知りやがった?答えなきゃテメェを刺す」
緊張した空気が両名の間に流れる。
「落ち着いて、ラグナさん。私は鴉天狗の『
「どこで知ったか言え。次はねえぞ」
刃を押し当てる力を強める。
「おお、怖い怖い...ってね。いやなに、私はこう見えても新聞記者でして。魔理沙さんの追跡中に貴方を見つけたのですよ」
これは嘘だ。ラグナにはわかった。
「人里で俺を観測ていたのもテメェか」
そこまで言及すると、射命丸文は笑う。
誤魔化すことを諦めたのか、次々と話し始めた。
「ネタ探ししている時にですね、森から出てくる人間.......
つまり貴方の事なんですがね。貴方を見つけまして」
「見た事の無い服装をしていたので、ネタにちょうど良いと思いましたね、ええ。まさに僥倖でしたよ」
「やっぱテメェか.....俺と敵対する気はねえんだな?」
「ええ、滅相もございません」
それだけ聞いてラグナは剣を仕舞った。
敵対する意思がないとのことなので、ここで殴り合う
意味はないのだと考えたからだ。
「おや、そんな事して.....良いんですか?」
「...なっ.......ッ!?.....後ろだと.....!」
剣を仕舞った途端に射命丸を見失ったラグナは、
辺りを見渡す前に真後ろから声をかけられて戦慄した。
「あっはははははは!......冗談ですよ、冗談!あー面白い。
今後もしかしたら『取材』に伺うかもしれません。
その時は、是非ともよろしくお願いしますよ?」
金色の瞳が目立つその目は、どこだか『蛇』に似ていた。
幾度も対峙した因縁の緑髪の男とは似ても似つかないが、
その雰囲気は、どことなくそっくりにも思えた。
「ケイネ、戻ったぞ」
「おお、ラグナ。魔理沙がお前に話があるそうだ。
時間があるのなら彼女を訊ねてやってくれ」
「おう」
その晩、何故か寺子屋に泊まることにした魔理沙は、
ラグナとの術式談議に花を咲かせていたという。
当のラグナ本人は至極面倒そうにしていたが。
次回予告
バテた魔理沙を置いて里を出たラグナは、
帰ってくるまでに散々な目にあった。
翌日、窓からは紅い霧が顔を覗かせていた。
今後の展開について
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他キャラとの絡みによるギャグ路線
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他キャラとの絡みによるシリアス路線
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既登場キャラとの絡みによるギャグ路線
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既登場キャラとの絡みによるシリアス路線