死神幻想奇譚   作:16

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あらすじ

魔理沙に術式を教えていたラグナ。
魔理沙が魔素の使いすぎでバテてしまった為、
外に出て自作の地図を埋めようとしていた。

途中、迷いの竹林で道を失ってしまうが、
白髪の少女『藤原妹紅』の助けで脱出する。
そして、出会った妖怪『射命丸文』の姿を見て
以前から敵対していた統制機構の『蛇』を
思い出すラグナであった。




第五話 死神と紅霧再来 上

その日は、お世辞にも気持ちの良い朝とは言えなかった。

人里を包むのは赤く染まった空...いや、『霧』だった。

その霧は異常なまでに濃く、窓の外を覗いてたとしても、隣の家はおろか煌々と照る太陽すらその姿を現さない。

 

「.....嫌な霧だな」

「おはよう、ラグナ.....ふわぁ...」

「おう、魔理沙。珍しいな、赤い霧なんてよ」

「赤い霧...そりゃ確かに珍し.....なんだって!?」

 

一瞬聞き逃しそうになった魔理沙だが、その言葉を聞き

文字通り血相を変えた。

 

「こりゃ不味い..........ラグナ!ここで待っとけよ!私は霊夢に話をつけてくるぜ!」

「待て!俺に何か出来ることはあるか?」

「馬鹿言うな!普通の人間にこの霧は毒だ!出るなよ!」

 

それだけ言って魔理沙は箒にまたがって飛んで行った。

異常な速さで霧の中を突き進む少女の影は、

心做しか光り輝いているようにも見えた。

一方ラグナの方は、と言えば。彼の性格は短く表すと、

なんだかんだ他人を放っておけないというものだった。

 

「悪ぃが、俺は生憎普通の人間じゃないんでな」

 

勢いよく寝室の戸を開けると、目の前には彼がいつも世話になっている女性、上白沢慧音がいた。

彼女はとても驚いた表情をしていた。今まさに持っていた書簡を落としそうになっていた程だった。

 

「きゃっ...ラ、ラグナ!?どこへ行くんだ!」

「決まってるだろ、悪い野郎をぶっ飛ばすんだよ」

「悪い奴って.......っておい!行くなってば.....ああもう.....」

 

慧音が止める前にはラグナは走って行ってしまう。

ラグナを止めようとした慧音も、呆れるしか無かった。

 

「仕方ない.....住民の避難勧告なら今の私でも....」

 

慧音もラグナと同じように寺子屋を出て、ラグナの走っていった道とは逆の方向に向かい、人々に注意を促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラグナはこういう時絶対に連れて行きたくない知人を思い浮かべていた。彼女はラグナにとって恩人であるが、共に外出はしたくない。彼女を見つけるだけで疲れるからだ。

そう、『彼女』は極度の方向音痴なのである。

単純な構造の街で、道は真っ直ぐと言い聞かせても。

挙句の果てには地図を持たせても隣の国へ行くほどに。

彼女に地図は、紙切れでしか無いのである。

それが、今はいない。大変喜ばしい事である。

だって彼女の捜索に時間を費やす必要が無いのだから、

余計な手間をかけずに目的地に向かえる、という理由だ。

 

だが、ラグナは神社に向かえず悪戦苦闘していた。

赤い霧が物理的にも『精神的』にも邪魔をする為だ。

特異なドライブを持つとはいえ、『普通の人間』である

ラグナが霧に迷うのは仕方がない事だった。

 

「クソッ.........この霧の中では幾ら進んでも戻ってるのか?

マジで、このままじゃ神社にも行けやしねえじゃねえか...」

 

戻っているという事は無いのだが、先程も伝えた通り

この赤い濃霧は、人間にとって精神的な毒にもなりうる。

 

「.......まさか、魔理沙が言っていた『普通の人間に』って...

毒って『精神に攻撃』してくるのか.....だから戻っている

ように見えてしまっているという事なのか?」

 

考えるが、そんな毒は人生で一度も見た事が無い為、

霧が持っている毒素の効果はわからず終いだった。

 

「だけど何もしないって言う訳にはいかねぇしよ.....ん?」

 

行先に詰まっていると、少し頭の上を通る一筋の箒星。

その後ろをついて行く空を飛ぶ影には見覚えはないが、

箒星の方に関しては一目見てすぐに正体がわかった。

 

「おお、あれは.....マリサじゃねえか!ラッキーだったぜ.....

あいつを追っていきゃあその内辿り着くだろ」

 

箒星について行く様にラグナも駆け出す。

そのダッシュは速かった。瞬発力もあり、その速さを

維持するスタミナも有り余っている。

何より、幼少期からラグナは走り込んでいるのだから、

彼にとって走る事が得意でも何ら不都合はない。

むしろ好都合。走っていて良かったと思うラグナだった。

 

「...つーか速え!あいつ空挺術士より速いんじゃねえか?」

 

空を飛ぶ術士より速いというのは相当な評価だった。

流石のラグナも追い縋るのがやっとと言ったところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い霧を突き進む霊夢と魔理沙。

術式によって互いの視界を確保しているが、それでも

数メートル先が見えなくなるこの霧は大した魔法である。

 

「それにしても、レミリアがまた異変を起こすなんて.....」

「.....今は急ごう。フランの事も心配だしな」

 

時は数十分前まで遡る。神社の境内に辿り着いた魔理沙は

霊夢と『紅霧再来』について話し合っていた。

 

「どうしてレミリアは紅霧を再発させたのかしら.....」

「さあな。言えるのは、レミリアがお前の約束を破って

新たに野望に燃えている.....って事だけだぜ」

「そうね.....もう終わった事にしていたけど、レミリアが

健在なんだから、また霧を発動させるのも可能なはず...」

 

二年前に紅霧異変を解決した時、レミリアは

あの霧を発現させるのに大量の妖力を開放した。

それはコンデンサー的役割を持つ魔封陣に貯蓄しており、

キーとなる呪文を唱える事で妖力が開放されるものだ。

レミリアが魔法を発現させると同時に妖力を開放し、

それによってレミリアの魔力と妖力が合わさった

文字通り紅い毒霧が幻想郷中に飛散したのだ。

 

ただ、魔封陣は霊夢自身の手で破壊したのだが.....

そこだけが、今彼女にとっての疑問点だった。

 

「でも、その条件で発生させられる霧は小規模.....

こんな広範囲に広がるなんて有り得ない........」

「考え込んでるとこ悪いけど、そろそろ行こうぜ。

里の人達が手遅れになる前にさ」

「..............そうね。行きましょ」

 

魔理沙と霊夢の二人は一気に飛び上がり、空を駆けた。

高速で空を飛ぶ彼女達の面持ちは、どこか暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは.....マリサじゃねえか!ラッキーだったぜ.....!」

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ.....あいつら、何処に向かってんだ?」

 

霧の中を走り続けるラグナだが、霧に惑わされるような

ヘマはまだしていない。彼女達を見失っていないからだ。

 

「はっ.....はっ..........あ?なんだ、あれ」

 

ふと前を見た時、何かが視界に入ってきた。

それは人影で、幼い少女の様な背格好だった。

小さい子がこんな外で遊んでいるなんて危険だ。

そう思ったラグナは彼女に話しかける事に決めた。

見失ってしまうのは仕方ないが、それはそれ、だ。

助けられるなら、他人でも見捨てはしない。

 

 

「おい、ガキ!そこは危ねぇぞ!俺が里へ送ってやる!

声は.....聞こえるよな!?こっちに来い!」

 

「はあ!?あたいは最強だし!危なくなんかない!」

 

聞こえた声は元気な娘のそれだが、奇妙な点が一つある。霧の中であるにも関わらず声が透き通っている事だ。

この紅い霧は、どうやら振動を緩和するようで、

それによって声が遠くまで届かない事がわかっている。

そして、もう一つおかしな事がわかった。

少女に近づくに連れて寒気がする事だ。

 

恐怖による身震いなどではなかった。

正真正銘寒さによるものだ。事実、衣服の上から冷たさが覆い被さるように襲ってきている。

 

「クッ.....一体なんなんだ...!」

「そこのお前!あたいの氷漬けコレクションになれ!」

「.....は、はあ!?」

 

そう言うと霧は晴れた。

 

 

いや、晴れたのではない。実際には霧が凍結した事で

周囲の視界が一気にクリアになったのだ。

ラグナの目の前にいるのは青いワンピースを着た少女。

目を引いたのは、背中から出ている氷で出来た羽だ。

 

「まさか......テメェも妖怪か!?」

「ハズレー!あたいは最強の妖精『チルノ』だ!」

 

チルノと名乗った少女の妖精が両腕を振り上げる。

それをラグナにかざした途端、冷気が襲ってきた。

 

「おわっ!つ、冷てぇ!テメェ、ざけんな!」

「へっへーん!怖いだろ、恐ろしいだろ、人間!

あたいは氷の妖精!最強の妖精なんだぞ!」

 

善意で行った行動が裏目に出た。

それだけなら良いが、助けようとした相手に、

あまつさえ攻撃されてしまった事で、ラグナは怒る。

彼女は、死神の逆鱗に触れてしまったのだ。

 

「ナメてんじゃねぇぞ!このクソガキが!」

「うっ.....に、人間があたいに勝てるのか!?」

 

チルノはラグナに見栄を張る。事実ただの人間には

氷の妖精なんてとても手に負えないだろう。

だが、彼は違った。何がだろうか?そう.....

 

「生憎俺は『半分人間辞めてる』んでなぁ!」

 

ラグナが雄叫び、全力で走り出す。

チルノの表情が余裕さを失い、代わりにラグナへの畏怖が彼女の顔面に張り付いているのが見てとれる。

 

「.....!わ、うわ、うわあ!なんだこいつ!」

「甘ぇよ!『ヘルズファング』!」

 

チルノが弾幕や氷の壁を作りラグナを止めようとするが、それをスイスイと避けられる事で更に恐怖したチルノは

抗戦を止めてうずくまった。それが幸いして、

ラグナの拳は当たらなかった。

 

「ご、ごめんなさい!あたいが最強だと思ってたけど赤いおじさんの方が強いってわかったからもう許して!」

 

妖精、という事は、見た目に反して数十年を生きているのかもしれないが、見た目としては完全に幼子である。

小さい子どもをいじめている気分を体験したラグナは、

非常にいたたまれない感覚に陥った。

 

「.....チッ.......マジでよ、お前に時間取られてんだわ。

この霧について調べてんだけど何か知ってっか?」

 

「...うん.....赤い霧は吸血鬼が出してる。でも違うよ。

あたいにはわかるんだ、これは吸血鬼の力じゃないって」

「チッ.......んじゃ、そのコウモリ野郎の所まで連れてけ」

 

吸血鬼の単語を聞いてしかめ面を見せたラグナだが、

すぐに向き直り、吸血鬼の元へ案内してもらう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!レミリア!咲夜!どういう事なの!?」

「全くだぜ。こんな事今まであったか?」

 

霊夢と魔理沙は、レミリアと咲夜の二人と面と向かって

話し合い(という名の言論戦)を敢行していた。

 

「ですから、お嬢様が仰られました通りです。

『赤い霧は何度も出せない』これが理由です」

「事実、私の魔力は殆ど二年前に消えたからね」

 

「だが...ありえないぜ。お前以外であの霧を出す奴?

そんなやつ、この幻想郷にいるわけないぜ」

「ええ.....だから私達も妖精メイドを使って、

事態の究明に当たらせているのよ。わかったかしら?」

 

「ケリが着かないわね.....結局のところ、この事態に

関与してはいないという事なのね....」

 

四人が話し合いをしていると、霊夢の後ろのドアが

勢いよく開かれた。咲夜がレミリアの前に立つ。

 

「おい、吸血鬼!ここにいんのか!」

「ラグナ!」「ラ、ラグナ!?」

 

紅白の二人組は予期せぬラグナの登場に困惑し、

咲夜は警戒態勢を崩さず、レミリアはほくそ笑んでいた。

 

「貴方がラグナ=ザ=ブラッドエッジね?

私の力で貴方の存在は観測ているわ」

「観測た、だと?随分と悠長に構えてんな、テメェ。

お前の霧のせいで里がやべえんだよ。とっとと止めろ」

 

ラグナが挑発的な言動を取ると、咲夜が動き出した。

当のレミリア本人は笑みを崩さないが。

 

「貴様...お嬢様を愚弄するとは...死にたいか」

「はっ、時間へ干渉するのか、お前の力は。

悪ぃけど、その手の奴とは戦い慣れて.......あ?」

 

ラグナに得体の知れぬ違和感が襲いかかる。

結局拭うことの出来なかった違和感を置いて話は進む。

 

「はぁ.....咲夜、その辺りにしておきなさい」

「.......はい」

 

レミリアに止められて、咲夜は渋々引き下がり、

彼女の隣に移動していった。

 

 

 

 

 

 

「んで、結論から言うとこの霧はお前のじゃねえと。

でも、どうして霧が湧いていんのか説明できるか?」

「今の私には難しいわね。なにせこの霧に、私達は

一切合切干渉していないのだから」

 

そう言っていると、ラグナが来たようにドアが開かれる。

現れたメイドがレミリアの元へ小走りで向かう。

 

「レミリア様、咲夜様!パチュリー様とメイド達の

魔法障壁内への避難および施錠、完了しました!」

 

メイドの中でも高い階級の妖精がレミリアに報告した。

咲夜は彼女に避難するように伝え、レミリアは咲夜に

「貴女も逃げておきなさい」と指示を出したが、

咲夜はそれを拒否し、レミリアの傍を離れなかった。

 

「んじゃあこの霧はどう止まるんだよ」

「.....ラグナ、耳貸してくれ」

 

魔理沙が耳打ちするためにラグナを呼ぶ。

それに誘われてラグナも魔理沙の近くに着いた。

そして、驚くべき事を話し始めた.....

 





次回予告

魔理沙と共に調査する事になったラグナ。
彼らは原因を発見するのだが、その場所とは。

今後の展開について

  • 他キャラとの絡みによるギャグ路線
  • 他キャラとの絡みによるシリアス路線
  • 既登場キャラとの絡みによるギャグ路線
  • 既登場キャラとの絡みによるシリアス路線
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