死神幻想奇譚   作:16

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前回のあらすじ

朝起きたラグナと魔理沙は異常に気づいた。
赤い霧の異変、所謂紅霧異変は既に霊夢と魔理沙、
彼女たち二人の手によって解決された筈だった。
再発した原因を調べるため、二人は紅魔館へ向かう。

ラグナは途中氷の妖精チルノと出会い、案内させ、
紅魔館へ到着する。そこにいたのは館の主、レミリア。
霊夢、魔理沙と合流したラグナは事の顛末を聞き、
関係が無い事を知る。その後、魔理沙の提案を聞いて、
ラグナは彼女とふたりで解決に乗り出す。


第五話 死神と紅霧再来 下

「.....ごにょごにょ.....」

「お前.....いつの間にそんな事.......」

「な?私と、ラグナにしか出来ない事だぜ?」

 

彼女が提示してきた案は確かに彼らにしか出来ない。

それは、この場所この時では、というだけであるが.....

魔理沙は、なんとラグナが寝ている間に八卦炉と呼ばれる彼女のマジックアイテムに術式を施していたのだ。

『検知』の術式は、魔素の濃い場所を特定する事が出来、

それの他にも幾つかの術式を施しているという。

 

「んじゃ、私たちに任せるんだぜ」

「っつー訳だ。レイムは帰ってて良いぜ」

 

そう言われて巫女が引き下がる道理は無い。

霊夢は魔理沙とラグナに食ってかかった。

 

「ち、ちょっと!私にも原因を調べる役目があるわ!」

「お前は協力を拒否した奴は片っ端から潰してくだろ。

.........私もだけど.............とにかく、私らだけで充分だぜ」

「ま、レイム。今回ばかりはマリサの言う通りだぜ。

お前に術式が使えるかもわかんねぇしよ」

 

数日前にラグナと魔理沙の決闘で目にした謎の技術。

『術式』を使う術を霊夢は知らなかった。

 

「むぐぅ.......わかった、今回は大人しく身を引くわ。

でも、もし貴方達が危なかったらすぐに教えて。

私が巫女の威信にかけて必ず助けるから」

 

頼もしい霊夢の言葉に、魔理沙は少し喜んだ。

自分が喜んだと思った彼女は俯きがちに言った。

 

「.....まぁ、わかったよ。もしもの時は頼むぜ霊夢」

「じゃあ、私達は魔理沙とラグナの二人に任せる。

霊夢は私と咲夜と一緒に待機。これでいいかしら?」

「おう、えーっと.......レミリア。問題ねえ」

「あら、覚えてくれたのかしら?」

「チッ.........やっぱ苦手だわ、吸血鬼って」

 

レミリアはほくそ笑んでいた。

運命を観測て、ラグナの何かを知ったから。

 

「他に吸血鬼を見た事があるような口ぶりね?

そういう事は言わない方がいいわよ?『死神』さん?」

「...............っ!?テメェ、どこでそれを.......!?」

 

「はいはーい、行こうぜラグナ!異変が私達を待ってる!」

 

「おい、待てって!まだ聞きてぇ事があんだけど!?

痛てぇ!襟を掴むな!引き摺んな!痛ててて!話を聞けええぇぇぇ...

 

レミリアを問いただそうとしたラグナだったが、

成果を確認したがっていた魔理沙に引き摺られて、

その姿も声も、聞こえなくなっていった。

 

「あら、引き摺られていっちゃったわね、ラグナ」

「それではお嬢様。そろそろお時間です」

「え?もうそんな時間なのね」

 

そう言うと咲夜は消えた。

時間を極限まで遅くして部屋を出て行った為だ。

彼女の能力を知っている霊夢とレミリアは驚かない。

 

「で、私はどうするのかしら?まさかじっとしていろ、とでも言うんじゃないでしょうね、レミリア?」

 

「昨晩、新鮮な茶葉が入ったのよね、飲む?」

「..................緑茶?紅茶?」

「無論、紅茶よ」

「飲む」

 

その後、優雅なお茶会が開かれた事をラグナは知らない。

それはラグナを引き摺っていった魔理沙も同様である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう...首痛えわマジで........」

「んじゃんじゃ、やろうぜ、ラグナ!」

「はいはい............『術式展開』!」

「『術式展開!弐!』」

 

ラグナは聞き覚えのない術式展開の文言に疑問を覚えた。

 

「『弐』ってなんだ?」

「八卦炉に五つの術式を組み込んでるんだぜ。

使いたいのに応じて番号を口に出すだけで良い」

「ほーん.......便利なもんだな」

「そうだな...これで魔法も撃てるんだから、最高だぜ」

 

そう言いながらかざした八卦炉が光り輝いた。

それは次第に輝きを増し、青い光球が辺りを漂う。

ラグナも良くお世話になった術式だ。

『検知』は使役者の周囲に展開されて、魔素の濃さを

検知するのだ。魔素の過剰摂取は危険な為、地上では

ラグナはこれを頼り、安全なルートを歩いていた。

 

ただ、今回の用途は逆だ。

魔素の濃い方を調べに行く事で原因が掴める算段だ。

 

「こんな使い方するとは思わなかったな........」

「え?私はてっきりこうするものだと思ってたぜ」

 

魔理沙にはラグナの元いた場所がどんな世界なのか

教えてはいない。外に変に失望されても困るからだ。

 

「ま、いいか。とっととやろうぜ」

「おう」

 

館を歩き回る。

時折検知が反応を見せることがあったが、

大抵は僅かな力ばかりが残ったマジックアイテムだった。

 

「お、これは.....なんか強い反応だぜ」

「この先だな。気をつけろよ」

 

検知の指し示す先は地下。重々しい扉の先には

階段が深くまで続いており、先は暗くてとても見えない。

魔理沙がラグナの方に振り向くと、怖いのか震えている。

 

「........行くか?」

「お、お、お、おう.............」

 

情けない第二の師に呆れ返るも、気を取り直す。

ラグナの腕を掴み、半ば連れて行くような形で

階段の奥へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼さの目立つ吸血鬼は、新しい玩具を手に入れた。

鈴が装着されていて、ハートの形をした可愛らしい杖だ。

二年ほど前に姉が起こした異変以降、外出許可を得たり

古道具屋で手に入ったものの遊び方を模索していたりと、あの日以降彼女にとって暇な時は無かった。

 

でも館の裏庭に出た時に『これ』が埋まっているのには

流石に495年の時を生きた彼女も驚いた。

前日も裏庭でお茶を飲んでいたが、この杖は無かった。

面白がって持って帰ったが、誰にも咎められなかった。

 

 

じゃあ、私のものにしても、構わないよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強い魔素を感じるな...」

「でも、ここ...............」

 

検知の術式を収束させた後、魔理沙が言い淀む。

ラグナはこの先がどうなっているのか知らない。

 

「おいマリサ。おら、とっとと行くぞ」

「いや、待ってくれラグナ。私が行く」

 

ラグナを押しのけて重々しい両扉を開く。

ギ、ギ、ギ、と鉄と床が擦れる不快な音が耳を突く。

その先に広がっている光景は、少女の子供部屋だった。

桃色や黄色などのカラフルな絨毯に、大量のクマの人形。そして床に散らばるボードゲームや積み木などの玩具。

 

その中でも異様に目を引くのは、部屋の真ん中で佇む、

長い何かを持った金髪の少女。

 

背中からは色とりどりな水晶の翼が生えていて、

彼女が持つものは、ラグナの知り合いが持っていた物だ。

 

事象兵器(アークエネミー)《雷轟・無兆鈴》』だった。

 

 

 

 

「っ...!?テメェ、なんで《ソレ》を持ってやがる!」

「ラ、ラグナ!行くな!........ああ、もう!」

 

ラグナが彼女の元へ向かう。それを止められないと思い、

魔理沙もまた彼女を『諭す』為に向かった。

 

 

 

 

 

 

「おじさん誰?フランの遊び相手になってくれるの?」

「遊び相手だと?俺はテメェがどうして《ソレ》を持っていやがるのか聞きてぇだけだ!」

「これは私が裏庭で見つけたの!誰にも渡さないわ...」

 

裏庭で無兆鈴を見つけたなんてありえない。

事象兵器の殆どはラグナの知る人物等が保有しており、

それがフランと名乗る少女の手にある訳は無かった。

 

「裏庭だと..........テメェ...嘘をつ.......!?」

「(ラグナ!お前、死にたいのか?少し黙ってくれ)」

「.....あ、魔理沙!」

 

少女は魔理沙の姿が目に入った途端、目を輝かせる。

幼い少女が走る様は、これが吸血鬼でなければラグナでも可愛らしいものだと思えるものだった。

 

「よっ、フラン。元気してたか?」

「もちろんだよ!フランはずーっと元気だったよ!」

「よーしよーし、良い子、だぜ」

 

まるで子が母親に甘えるかのように抱きつく。

魔理沙は頭を撫でつつ、質問を投げかけていく。

 

「なあ、フラン。その杖は庭で拾ったのか?」

「そうだよ。お茶を飲んでたらこれが庭に落ちてたの」

 

フランは眩しい笑顔と言葉を持って魔理沙に答えた。

彼女にうんうんと頷きつつ魔理沙はラグナに耳打ちする。

 

「(フランはな、絶対に嘘はつかないんだよ)」

 

それを聞いて、ラグナは様々な質問を投げかけたくなる。

具体的には3つだ。

 

「えーっと.....フラン、だったか。

無兆鈴の元の持ち主は一体誰なのか、知ってるか?」

「無兆鈴?いいや、フランは落ちてたのを拾ったから」

 

つまり彼女は『プラチナ=ザ=トリニティ』を知らない。

白金の錬金術師は六英雄の一人。

幾ら歴史に疎くてもその名位は知っている筈だが...

 

「じゃあよ、『アークエネミー』は聞いた事あるか?」

「えーっと........無いかな」

 

という事は、無兆鈴がどんな代物かわかってもいない、

そういうことになるのだろう。ラグナには不思議な話だ。

 

「んじゃ、最後だ。この霧はお前の仕業か?」

「.....................」

「チッ、だんまりかよ」

「おいラグナ、もうそこまでに...........?」

 

答えない、という事が彼女が犯人だと確信させる。

魔理沙が言い過ぎたラグナを止めようとした。

しかし、時は既に遅かった。

フランは嗚咽を漏らしながらもこう言った。

 

「フランっ........お姉様の、役に...立ちたくて..........!

でも、私........上手く魔法を使えなかった......から......!」

 

「その果てがこの事件、か。おい、この霧消せるか?」

「.......................だ」

「..........あ?」

 

フランが小さい声で何かを呟く。

それは子供が駄々をこねる様な可愛らしいものではない。

彼女から溢れる力強い感情がこの場を支配する。

 

そしてその感情は、恐ろしい事に無兆鈴と共鳴した。

アークエネミーは彼女を新たな主として認めたのだ。

 

「........やだ、いやだ!お姉様の役に立ちたい!

力を貸して!『《無兆鈴》』、お願い!」

「なっ.....!?離れろ、マリサ!...うがっ!」

 

魔理沙を突き飛ばしたラグナは、フランの無兆鈴が放った赤い霧に紛れて飛んで来た弾に当たってしまう。

威力は低いが、ラグナを怯ませるには充分だ。

 

「........キャハハハッ!赤いおじさん、私と遊ぼうよ!」

「...チッ!後悔すんじゃねぇぞ!」

 

双方が臨戦態勢に入った。

魔理沙は止められない事を悟ってラグナの側に着いた。

 

「魔理沙も遊ぶ?やったぁ!沢山遊ぼうね!」

「くっ...ラグナ!恨むぜ!」

「仕方ねぇだろ!無兆鈴はガキにはやべえシロモンだ!」

 

フランは両手を広げて飛翔する。左手にはプラチナの杖、

《無兆鈴》が握られており、その力で3人のいる地下室はまるで内部が膨張でもしたかのように広い空間となった。

 

「...........凄え」

「当たり前だろ。あれがアークエネミーって奴なんだよ。やべえのは、その力はただの一欠片って事だ」

「はぁ!?一体どんな力を携えてんだぜ!?」

 

無兆鈴が発する力によって拡張された部屋で、

フランは両の手から自分の力を分けた分身を造る。

 

「遊ぼう?『フォーオブアカインド』!」

「なっ........なんだ!4人に増えやがったぞ!」

「アレがフランのスペルだぜ...!いや、この感じ........

多分だけど、あの杖のせいで魔素の流れがなだらかだ。

ただの分身じゃない、均等に力を分けてる...........!?」

「とにかくやるぞ!負けたら霧が晴れねぇ!」

 

魔理沙とラグナは左右に別れ、それぞれ二体の分身を

相手取る事とした。人は倍の数には勝てないと言うが、

二人とも経緯はともかく、折り紙付きの実力者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜ!恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

「「甘いよ、魔理沙!」」

 

渾身の力を込めた魔法は、しかし躱されてしまう。

避けた二人のフランは別々のスペルを唱える。

彼女にとって、これは遊び程度という認識なのだろう。

 

「禁忌『クランベリートラップ』!」

「禁忌『レーヴァテイン』!」

「...........嘘だろ」

 

二年前の紅霧異変の時に戦った時とは比べ物にならない。

より高密度で避けにくい弾幕を放ってくる。それも二つ。

魔理沙は今、史上最大級の化け物と対峙していた。

 

左のフランの手から剣が召喚され、それを振るう。

右のフランから魔理沙を囲むように弾幕が形成される。

 

「まだだ......ボムはある。これは『賭け』だけど......!」

 

破壊の象徴が迫り来る。魔理沙を潰す為に。

フランにそんな気は無くとも、常人には当たれば死だ。

 

「符の一二三(ひふみ)『術式展開』!『三つ』だ!三つぶつける! 

................これは、私の最終手段一歩手前だぜ」

 

「......凄い!凄いよ魔理沙!もっと遊べるんだね!」

 

「久々に私の全力だぜ、フラン!火力はパワーだぜ!

『スターダストレヴァリエ』!『アステロイドベルト』!

『マスタースパーク』!文字通り三つだ!喰らえ!」

 

飛び上がり、八卦炉を掲げる。術式展開の言葉と共に

八卦炉は光り、魔理沙はそれをフランに向ける。

 

刹那の時を輝かしい光が支配する。

 

「...........なっ!」

 

一筋のレーザーがフランを消し飛ばし、

レーヴァテインすら光の弾幕の前に消えていった。

もう片方のフランには当たらない。

 

「く...そ......も、もう...動かない...ぜ...........」

 

一度に出せる全てのスペルを出し切った魔理沙は、

しかし、一度に大量の魔力を使用した為に損耗が激しく

動くことすらままならなくなってしまった。

そんな魔理沙の隣にフランが近づく。

 

「フ......フラン...?私にトドメを刺さないのか?」

「......何を言ってるのよ、魔理沙。貴女を殺しちゃったら

また遊べなくなっちゃうでしょう?」

 

そう言うとフランは微笑む。

二年前は一度トドメを刺そうとしていた事もあって、

この反応は魔理沙にとって意外であった。

同時に嬉しくもある。精神的に成長しているのだから。

 

「んじゃ、回復したら私はラグナを助けに行く。

それまで一緒に居ような?」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デッドスパイク!」

「うふふっ!当たらないよー!」

「クッ!ちょろちょろ動き回りやがって!」

 

一方ラグナは、フランとの戦闘で疲弊していた。

魔理沙の受けそうになった攻撃をラグナは直撃しているという事もあって、まだ動けるが致命的な傷を負っていた。

 

「キリがねぇ......ヘルズファング!」

 

拳を突き出して突進するも、それすら躱される。

 

「じゃあ......もっと楽しもうよ!『レーヴァテイン』!」

「またそれか...........え!?」

 

フランが抜いたのは弾幕を形作るスペルカードでは無い。

先程のものとは根本から全く違うものだった。

彼女が右手を天に掲げると、その手に霧が集まっていく。

 

「顕現して、『レーヴァテイン』!」

 

霧は形を成していき、それは歪な形状の剣を象った。

霧が赤い所為もあって、その見た目はさながら血の剣だ。

 

「もっと......遊ぼうよ!赤いおじさん!」

「俺はおじさんじゃねえ!......そっちがその気ならよ、

しかたねえから俺も本気で相手してやんぜ!」

 

そうラグナが言うと、地面が揺れ始める。

ラグナの抑えている右手から赤黒い瘴気が溢れ出る。

フランが様子見していると、ラグナは喋りだした。

 

「見せてやるよ、蒼の力を........」

「蒼の、力......?なんだぜ、それ......?」

 

魔理沙が聞きなれない単語に首を傾げる。

霧がラグナの右腕に吸い込まれていく。

そして、霧が消えて、ラグナの傷は癒えていった。

 

「『第666拘束機関解放......』」

「な、なんだ!ラグナは何をしようとしてるんだ!?」

 

魔理沙が異常な魔素の流れに驚く。

ラグナはそのまま続けた。

 

「『次元干渉虚数方陣展開...........』」

「キャハハッ!おじさん、もっと強くなるのね!」

 

「『イデア機関接続...........』」

「これは...........フラン、ここから離れるぜ!」

「なんで?フランもっと見てたい!」

「駄目だ!下手したらあの瘴気に巻き込まれるぜ!」

 

魔理沙は分身でない本物のフランの手を引いて

広大な地下室の隅に走っていった。

 

「『蒼の魔道書(ブレイブルー)、起動!』」

 

ラグナの周囲を黒い瘴気が包み込んだ。

剣が紅く明滅し、両拳は固く握られている。

 

「行くぞオラァ!」

「あはっ!凄い力だね!」

 

ラグナが拳を突き出して突進する。

フランはそれを受け止めるが、ラグナの勢いに押される。

正確には、フランの生命力を大きく削り取っている為、

フランがラグナの攻撃に抵抗しにくくなっているのだが、

元が桁外れの身体能力を持つ吸血鬼だからなのか、

それに気付く素振りは全く見せない。

 

「『レーヴァテイン』!」

「『カーネージシザー』!」

 

互いの剣がぶつかり合う。

フランの振るう赤い魔剣と、ラグナ愛用の大剣荒正。

魔力で象られたフランの剣は、しかしただの金属......

セラミック製の、何の変哲もない剣を壊せなかった。

 

「もっと!遊ぼうよ!」

「悪ぃが終わりだ!『シードオブタルタロス』!」

 

剣を振り抜く。フランは刃に当たって怯んだ。

床に叩きつけられた剣は赤みを増し、それは滲んで

瘴気としてフランの身体を蝕んでいく。

 

「良い!でも、まだダメ!もっと楽しもうよ!」

「ならお望み通り潰してやるよ!フラン!」

 

瘴気に包まれながらもラグナに切りかかるフラン。

ラグナは剣戟を二度三度といなしていく。

反撃とばかりに四回剣を振るラグナだったが、

それもフランに剣で弾かれてしまう。

 

「ナイトメアエッジ!」

「えっと、こうだったかな?『ガントレットハーデス』!」

「グオォッ......くっ!」

 

フランを上から叩くために飛び上がった途端、

ラグナの技を模倣したフランの蹴りが炸裂した。

もろに受けたラグナは堪らず空中で受身をとって離れる。

術式を展開し、空中で無理やり方向を捻じ曲げた。

 

「すっごいね!じゃあ、こんな感じ?」

「チッ......バケモンじみてやがる......『ブラックザガム』!」

「『ナイトメアエッジ』!『デッドスパイク』!」

 

ラグナの鎌を使った連続攻撃は、フランが彼の技を真似た攻撃で何度も相殺されてしまう。

幾度となく続く剣戟に集中していた事もあって、

ラグナはもう一人の分身の接近を察知できなかった。

 

「私の事、忘れてない?『クランベリー......!』」

「......!?しまっ......!」「トラッ...........!?」

「『スターダストレヴァリエ』!」

 

二人目のフランの刺突は、しかし魔法によって防がれた。

光のシャワーがフランを包み、身動きを取らせない。

 

「待たせたな、だぜ、ラグナ!」

「......マリサ!?助かったぜ!」

 

これで2対2に持ち込めた。

二人のフランは相変わらず狂気の笑みを浮かべていた。

対するラグナは次の一撃で決める気満々であり、

魔理沙も絞りカスが如き量の体力を振り絞っている。

二人とも、次の攻撃は全力だろう。

 

「マリサ、右をやれ。俺は左だ」

「良いぜ」

「行くぞ!うぉぉぉぉぉぉあああッ!」

「『術式展開、(拘束)(魔砲)』!」

 

魔理沙が八卦炉の術式のうち、二つを展開する。

ラグナは両方の注意を引きつつ左側のフランを叩く。

 

「カーネージ......!」

「......っ!」

 

フランが守りの体勢に入る。が、一向に攻撃が来ない。

二段目をキャンセルし、次に繋げていたのだから当然か。

 

「『ブラックオンスロート』......!」

「なっ......!?」

 

ゆったりとした振り上げ斬りだったが、それがかえって

フランの判断を鈍らせた。反射に物を言わせるフランの

弱点は急激なスピードの変化である。

ラグナとの戦いはハイスピードだったからだろう。

その一撃をいなそうとした剣の腹は空を切り、

ラグナの剣はフランに命中した。

 

「『ブラックザガム』!」

「がっ!があっ!ぐはっ!」

 

先程も放った連撃だが、今度は弾かれることなく、

数多の刃はフランに吸い込まれていく。

 

「『ナイトメアレイジ』!」

 

そして、シードオブタルタロスとは比べ物にならない程の

超高濃度の瘴気の塊がフランを包み込んだ。

そしてラグナの体は黒く染まり、黒い肉体の中で

真紅の瞳と瘴気で包まれた右手が紅く輝いた。

そして......

 

「......『ディストラクション』!」

 

渾身の突きが炸裂して、フランの胴を貫く。

フランの分身は消え、後には消耗したラグナが残った。

 

「ラグナ!私とも戦ってよ!」

「うるせぇ......テメェの相手は俺じゃねぇ」

「こっちだぜ.....」

 

フランが振り向いた時、魔理沙は八卦炉を構えていた。

射撃態勢に入ったのだと理解して逃げようとするフランはしかし動くことすら出来なかった。

フランを囲むのは白い魔方陣の、拘束術式である。

 

「まさかあの時!」

「魔砲ともう一つ、拘束術式も使わせてもらった」

 

先程展開した術式は四番と六番。

六番は魔理沙のスペルカードだが、四番には拘束術式が

合図ひとつで展開・解除を行えるように設定されている。

魔理沙の術式に、フランはまんまと嵌められたのだ。

 

「魔砲『ファイナルスパーク』!」

 

魔砲の名が関するとおりの火力を携えたレーザーが

文字通りフランの分身を焼き尽くした。

超高濃度の魔力を収束させて放つ魔砲によって、地下室の隅から隅まで全てを消し炭にしかけた。

 

「前のよりすげえな......」

 

前に魔理沙が見せた魔法......『マスタースパーク(ディストーション・ドライブ)』は

見た目こそ遜色ないものの、規模や火力が今回まみえた『ファイナルスパーク(アストラル・ヒート)』と比べて小さかった。

しかし、それでも圧倒的な火力を誇る魔理沙の主力だ。

マスタースパークが魔理沙の主砲ならば、魔砲は正しく

彼女の『切り札』となりうる力を持っている。

 

魔理沙は自身の内包する魔力を使い切った。

とうとう動く事も出来なくなり、床に倒れ伏した。

 

「も、もう駄目......動けないぜ...........」

「無茶しやがる......ほら、立てよ」

「...........立てない...」

「チッ......しゃあねえ、おぶってってやるよ」

 

「で、あと問題なのはフランの方なんだが......」

 

そう言いつつちらりと吸血鬼の少女を見やる。

フランは立ったまま俯いている。

冷静に考えて、事の重大さを理解したのだろう。

 

「仕方ねぇ。少し話だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、フラン。その杖はお前にしか扱えなくなった。

お前は、すげぇ力と、それの責任を負ったんだ」

 

「うん......」

 

「だから、霧みたいな危なっかしいモン、軽々と出すな。

それでテメェの身近なヤツが怪我したらどう思う?」

 

「......やだ」

 

「だろ?その杖は持っててもいい。でもな、これは約束しろ。

絶対に危ねぇ事には使わねぇ事。約束できるか?」

 

「うん......する。絶対、危ない事はしない」

 

「......ふー。んじゃ、霧を消してくれ」

 

ラグナがそう言うと、フランは僅かに力を入れる。

無兆鈴に霧が吸い込まれていった。

その様子を眺めながら、魔理沙はラグナに言った。

 

「これにて終幕ってやつだな」

「おう......どっと疲れたぜ......」

 

フランの持つ無兆鈴が霧を全て吸ったのを確認して、

ラグナは踵を返して、レミリアに報告しに行こうとする。

魔理沙もそれに続くが、二人は歩を進める事が出来なかった。

 

「......フラン?どうしたんだぜ」

「...........また」

 

「......ん?」

「遊びに来てくれる、よね?」

 

「まあ、いいぜ」「わかったよ」

 

そう言って二人は地下室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労様。魔理沙はともかく、ラグナ。

貴方が無事だとは思わなかったわね」

 

「へっ。この程度、朝飯前だっての」

 

ラグナと魔理沙はレミリアに事の顛末を報告していた。

レミリアはフランを退けたラグナに関心を持っている。

 

「とにかく、俺はもう帰る。疲れたしな」

「私も帰るぜ。パチュリーによろしく言っといてくれ」

「ええ、二人とも、気をつけてね」

 

そう言って二人はレミリアの部屋を出ていった。しばらく経って窓を覗くと、二人が歩いているのが目につく。

 

「......それじゃ、私も帰るわ」

「あら、霊夢。貴方も帰ってしまうの?」

 

「まー......今回は私の立つ瀬もなかったから。じゃあね」

 

そう言って霊夢もレミリアの部屋を出る。

手を振るレミリアに、目を合わせずに振り返した。

 

 

 

 

 

霊夢は帰り道に考えていた。

茶の礼はいつか返すとして、二つ気になることがある。

この異変はフランが独断で起こした事。

そして、件の杖をフランに預けっぱなしであることだ。

 

前者は話によって姉レミリアの役に立ちたかった、という事で理由付けできたが、問題は後者の方である。

言わば暴君に軍隊を持たせるようなものだ。

そんな危ない真似はしない彼だと思っていたのだが。

 

「ラグナ......貴方、何を考えているの?」

 

その霊夢の言葉は、誰もいない空間に消えていった。

 

 

 




雷轟・無兆鈴

ライゴウ・ムチョウリン

物質を顕現させられる。以上!(ラグナの解説より)
BLAZBLUEではプラチナ=ザ=トリニティが持っていた
11個ある事象兵器アークエネミーの内の一つ。
暗黒大戦時に造られた物で、元の所有者はトリニティ。
白金の錬金術師、トリニティ=グラスフィールである。

何故プラチナの手を離れフランの所有物となったか、
何故フランを所有者として認めたのかはわからない。
無兆鈴に取り付けられた鈴は、今も鳴り続けている。


『レーヴァテイン』

フランが繰り出す、赤い瘴気で象られた曲剣。フランのドライブ攻撃が遠距離攻撃から近距離攻撃に切り替わる。ディストーションとしての『レーヴァテイン』は、相手を四回斬りつけた後に瘴気によるダメージに見舞われる、というもの。本編では出ること無く終わった。

今後の展開について

  • 他キャラとの絡みによるギャグ路線
  • 他キャラとの絡みによるシリアス路線
  • 既登場キャラとの絡みによるギャグ路線
  • 既登場キャラとの絡みによるシリアス路線
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