死神幻想奇譚   作:16

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あらすじ

先週幻想郷にやってきてから体の調子が悪かったラグナだったが、ついに倒れてしまった。
気がつくと、ラグナは呆然と立ち尽くしていたのだが......




Gag Story ラグナの災難

 

「さあ、どいてどいて!」

 

人だかりを捌きつつもラグナの元へ駆け寄ってきたのは

緑の服と赤いおさげ髪の少女だ。

 

「どわっ!?...あ、あんた誰だ?」

「あたいは火焔猫燐。お燐って呼んでね」

「へぇ。で、なんの用事だよ?」

 

そうラグナが尋ねると、少し笑いながら答えた。

 

「君の死体の回収だよ!」

「.....................え」

「あれ?聞こえなかったのかな...........?

もう一度言うよー!君の、死体の、回しゅ...........」

「だああああああ!聞こえてる!聞こえてるから!

そう何度も言わなくても聞こえてます!」

 

急に死んだとか言われても納得できない。

 

「なんで死んでんだよ!俺は生きてんぞ!」

「いや、足元見なよ」

 

そこに転がっていたのは、安らかに眠るラグナ。

無論なんで死んだのか理解は出来ていない。

 

「...........え。え?」

「いやね、流石のあたいも一体何が起こって君が

死んだのかまでは知らないんだよね」

「つまり......今の俺って......」

「あたいから言わせてもらうと最高品質の死体。

君からするとオバ.....................」

 

「い、嫌だああああああああああああああ!!!」

「うわっ!君、自分の死体だよ!?置いてっちゃうの!?」

 

しかし、ラグナはお燐の言葉に耳を貸さず走り去った。

後には哀れなラグナ=ザ=ブラッドエッジの亡骸だけが残された。

 

「あーあー、まったくもう。もったいないって、こんな逸品」

 

そう言うと、愛用の火車にラグナを丁寧に寝かせ込み、

そのまま持ち去っていってしまった。

その後、ラグナの遺体が何処に消えたかは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは悪い夢だ......これは悪い夢だ......」

「あ、あの。ラグナさん?......大丈夫ですか?」

「う、うわぁぁあ!......だ、誰だ!?」

 

そう聞くと、オリエントタウンでよく見る服*1を着た彼女は自分の事をこう名乗った。

 

「あぁ、そういえば初対面でしたね。

私は紅美鈴。ここの門番をさせていただいています」

「メイリン......あ、そういやここ、紅魔館か」

 

美鈴の後ろには巨大な門。更に後ろには巨大な館。湖のほとりにそびえ立つ、景観を崩しそうな赤い洋館だ。

霊夢曰く『幻想郷にとって、異質』であるそうな。

 

「...........なあ、メイリン」

「なんです、ラグナさん?」

「...........俺の事、どう見えてる?」

「................あ、言われてみれば、透けてますね。少し」

 

頭を抱えるラグナの事など気にも留める様子は無く、

代わりにその様子を面白がって眺めている美鈴。

 

「ウフフッ......面白い方ですね、ラグナさん」

「面白くねぇし!なんも面白くねぇし!一大事だよ!」

 

天然ボケとでも言うべきボケにキレッキレのツッコミを見せるラグナ。何故彼がここまで恐怖しているのか。それは後で嫌という程わかるだろう。ところでラグナには霊夢を訊ねる用事があるのだ。

何故かって?それは彼にしかわからない。

 

「とにかく、俺はレイムの所に行くから、お前とはここでお別れだな」

「あ、待ってください、ラグナさん!私も貴方に追従するよう仰せつかっているんです。私も行きます」

「え?いや、いいんだけどよ。誰に行けって?」

「やー、それがですね。ラグナさんには絶対に言うなって

レミリア様に言われてるんですよね」

「いや、言っちゃってんじゃねえか」

「.....................あ」

 

聞かなかったことにしよう。うん、そうしよう。

 

「......じゃあ、着いてくるか?」

「......あ、はい!行きます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、あー......マジでこの階段きっついな」

「よっ!ほっ!ラグナさん!遅いですよ!」

「無茶言うな!こちとら人間なんですけど!」

 

妖怪である美鈴は体力も人と比べればまるで無尽蔵、

その運動神経も滅茶苦茶に抜群なのだ。

それに比べてラグナは人。いくら強くても人は人。

妖怪に体力で勝てる訳が無いのです。

 

「ほらほら!もう少しでお社に着きますよ!」

「......おう。行くから待ってろー......はぁ、はぁ......」

 

 

 

 

 

 

 

 

最上段を登りきった時にはバテバテだった。

死神も、こうなってしまっては形無しである。

 

「あー......つかれた...........マジで......」

 

あれ。おかしいですね。

ラグナ君は疲れるはずは無いのですが。だってオバ......

 

「言うな!絶対に言うな!......って、あれ?」

 

あれれ。彼は誰に話しかけているのでしょうか。

少しばかり滑稽ですね。虚無に話しかけていますね。

 

「.......な、なんか声が聞こえんだよな......おい、レイム!

お前巫女だろ!?除霊とか出来ねぇのか!」

 

「じ、除霊ですか!?ラグナさんが!?

...........プッ......ブフッ!」

「笑うな!」

 

「あーもう!うるさいわね他人の家の境内で!」

「レイム!助けてくれ!なんか声が聞こえんだよ!」

 

必死に掛け合うラグナだが、霊夢は聞く耳を持たない。

それどころか、更に厄介な提案を出してきた。

 

「ラグナ、貴方『白玉楼』に行ってきたら?」

「え?どこだって?」

 

「白玉楼ですか。確かにそこならラグナさんに

お誂え向きですね。霊夢さんもなかなかやりますね」

「でしょう?......ラグナならもうすぐ逝けると思うわ」

「な、なんか漢字が違う気がするんだが......」

 

そう言っていると、ラグナの周りを光が包んだ。

そしてラグナの体は宙に浮き、雲を突き抜けていく。

 

「うわ、お、おい!なんだコレええええ!」

「「行ってらっしゃいー」」

「まて!説明しろ!説明しあああぁぁぁぁあああぁぁぁぁ......」

 

説明される間もなくラグナは天へ昇っていった。

 

 

 

 

 

「......という訳ですか」

「まあ、薄々感づいてはいたのだろうけどね、彼も。

大方、死んだ事を認めたくなかったんでしょ」

 

霊夢と美鈴が会話していた。中身はラグナに関する物で、

彼がどうしてあんなに叫んでいたかを議論していた。

 

「......おーい

 

他愛ない話を繰り広げていると、階段から声が聞こえる。

誰かを呼んでいたようだ。この場合は霊夢の事だろう。

その声は次第に大きくなっていった。

 

「ん?」「あら、誰かしら」

「おーい、博麗の巫女さーん」

 

姿を現したのは緑の服と赤いおさげ髪の少女......

先程ラグナと会った火車、火焔猫燐である。

 

「......あら?さとり子飼いの猫じゃない」

「猫ではなく火車!......じゃなくて、ラグナ見なかった?」

「どうしてラグナを...........あっ」

「どうしたんです、霊夢さ................あっ」

 

お燐が引いてきた火車の中には状態の良い死体が......

まあ、今回でいえばラグナの死体が横たわっていた。

 

「その様子だと、さとりに返してくるよう言われたのね」

「そうなんだよぉ......ストックが多すぎるってね......

...........でー。肝心のラグナは何処にいるんだい?」

 

そう言うと、霊夢も美鈴も一様に上を指差す。

天に伸びるその指が指し示す事はただ一つ。

 

「......逝っちゃったのかい」

「めっちゃいやいやだったけどね」

「すんごい絶叫でしたもんね」

「惜っしー。あたいも見てみたかったなぁ」

 

人が死んだとは思えない物言いに、慣れとは怖いものだねと『彼女』は感じたと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって白玉楼。

ラグナは魂となって冥界へと辿り着いた。

 

「...........」

「................あ、あの」

「......誰だ」

 

ラグナに話しかけたのは黒いカチューシャの似合う少女。

二振りの刀と()()()()()()()()()を携えた剣士だった。

彼女の後ろには何か白いものが漂っているようにも見えるが、ラグナにはそれが見えていない。という事にしておこう。

 

「えーっと。幽霊ですよね?」

「......おう、もういいよそれで。そうだよ。で、なんだよ」

 

大人気なく不貞腐れている彼に困惑しつつも話を続ける。

 

「来たんですか?まだ大丈夫そうなのに」

「いや、そう言われても俺死んでるらしいし......」

「いや......だって、霊体ですけど、死霊ではないですよね。

生霊みたいですし、まだ戻れそうですけど」

 

「......え。え!それマジか!?」

「いや、時々いるんですよ。肉体から幽体が離脱する人。

今回のあなたの件もそれかなーって」

 

ラグナの目に炎が灯る。生きる事を諦めない。

そう固く決意した目だった。

 

「よっし、そうと決まれば早速帰ろう!で、どうやって帰ったらいいんだ?」

 

「はい、取り敢えず私では無理です。なので、私の主、

つまり冥界の管理者である幽々子様に掛け合います」

「そのユユコってのに話を通せば出られるんだな?」

「そうです。ただ───」

「よし!待ってろよ地上!俺は生き返ってやるからな!」

 

そう気合いを入れて、ラグナは走っていってしまった。

少女はそれに気が付かない。

 

「───ただ、幽々子様は、その...大食らいなんです。

今もお腹を空かせていますから、料理を......って、あれ?」

 

妖夢が辺りを見渡すも、既にラグナの姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──あら、幽々子の所へ言っちゃった。

 

「あれ、紫?何してるの、こんなとこで?」

 

──あ、霊夢。いやあ、ちょっとね。

 

「ならちょうどいいわ。紫もお茶、飲んでく?」

 

──それなら御一緒させていただこうかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひえええええ......!」

「ねーえ、ご飯まだぁ?」

「い、今作ってんだよ!少し待てぇぇ!」

 

厨房から、妖夢とは別の声が聞こえたのはわかったが、この際誰が飯を作ってくれるかはどうでもいい。

何故ならば幽々子は腹を空かせているからだ。

この空腹を満たしてくれるなら誰でもいいのである。

 

「オラ!天玉うどん五杯、いっちょあがり!」

「あらー、とても美味しそうねぇ。いただきまぁす」

 

そう言うと幽々子は箸を掴み、物凄い勢いでうどんを貪り始めた。その破竹の如き勢いに、ラグナは終始圧倒されていた。

一杯、二杯、三杯と椀を空にしていき、五杯目を食い終わるのに三分とかからなかった。今回使ったお椀は、一杯でさえラグナが満腹になってしまう程の大容量だったというのに、当の幽々子本人はおかわりを求め始めた。

 

「美味しい〜!こんなに美味しいならもっと作ってもらおうかしら、妖夢♪...........あら?貴方、どなたかしら?」

 

料理を作ったのが妖夢では無いと、訊ねた時点で見てわからなかったのか、とラグナは言いたくなったが、今はそれより生き返る事を優先したいので堪えた。

 

「ようやく気付いたかよ......俺を地上に戻してくれ」

「......あら、貴方、まだ死霊ではないのね。ええ、わかったわ。地上に降ろしてあげる」

 

幽々子が指をラグナに向けると、急に意識が朦朧とする。ラグナの意識が曖昧になってきた時、幽々子がラグナの隣に屈んで語りかけてきた。

 

「今度来た時、またご飯作ってね?」

「......二度と、来たくねぇよ..........ガクッ」

 

そしてラグナの意識は落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目覚めた時、ラグナを見下ろしていたのはお燐だった。

「ラグナ、気が付いたかい?」と言われて、ラグナは上体を起こした。広い草はらのうえで眠っていたような気もする。

 

「俺は......生きてるのか?」

「......あぁ......それがね......」

 

ラグナが聞くと、お燐はその勝気な性格に反して珍しくどもった。ラグナが不安になる中、お燐がその重たい口を開く。

 

「いやあ......もう帰ってこないかと思って、ラグナの死体を剥製にしちゃったんだよね」

「......は?」

「だから、剥製に─」

 

「ふざけんなああああああああぁぁぁ!!!」

 

そう叫びながらラグナの霊魂は天に登っていった。

霊夢が後に白玉楼を訊ねた時、そこには妖夢と一緒に、忙しそうに食事を準備するラグナの姿があった。

 

 

~完~

 

 

 

 

 

「ふざけんなッ!...........はっ!......夢か......」

「どんな夢を見ていたの?」

 

ラグナの後ろから妖夢が話しかけた。

 

*1
いわゆるチャイナドレスの事





夢オチではありません。
ラグナ、南無。
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