書いていた小説を失った絶望に陥っていた男の物語。

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ある男が与謝野晶子を見習って源氏物語に挑戦するようです

「……ふう、俺ってバカだよな」

 俺は明治から昭和にかけて活躍し、情熱的な作品が多いと評される歌集『みだれ髪』(1901年)や、日露戦争の時に歌った『君死にたまふことなかれ』などの代表作を生み出した歌人であり作家、与謝野(よさの)晶子(あきこ)の伝記を読み終わると「ふうっ」と重い溜息をついた。

「与謝野晶子はあの海外でも読まれている恋愛長編小説、『源氏物語』を翻訳した。しかしそれを関東大震災によって失った。俺もさわりの部分であるとはいえ源氏物語を勉強してきた。だからあれを翻訳する難しさはわかる。そしてそれが長いことも。そんな『これさえ出来ればもう思い残すことはない』と言える偉大な長編小説の翻訳を失った。それだけでもう心は折れてもしかたないだろう。それでも彼女はもう一度翻訳に挑戦し無事翻訳することに成功した。なのに俺は……」

 俺はパソコンに目を向ける。そこには数時間前まで書いていた小説が無くなったマイページ。

 俺はたまりにたまった執筆中小説を整理しようと「もう書かないな」と思ったものを削除していった。そして「もうお分かりだろう。誤って書いていた小説も削除してしまったのだ。

「俺の小説はたかだか数千文字。それに対して与謝野晶子は数十万。しかも俺は手書きではなくパソコンだ……。俺の喪失感なんて彼女に比べたら(たい)したことじゃないよな……よし!」

 俺はパンッ! と両頬を叩く。

「俺も与謝野晶子を見習って源氏物語の翻訳に挑戦してみるか!」

 そう思った俺はキーボードに指を置いてカタカタと指を走らせた。

 

『昔々、それは昔のことでした。

 人々は石を研いだ武器を用いてナウマン象のような大型の哺乳類やニホンシカ、イノシシ、ノウサギなどの中・小哺乳動物を狩って生活しておりました。人々は洞窟や岩陰などを住処として生活していましたが中には少ないながらも竪穴住居で生活している人もいました。またどのように使われているか用途は明確ではありませんが土器を使用しておりました。

 また木に石器を取り付け(くわ)(おの)、槍、矢、スコップなどの生産用具を作りだしていました。

 また漁なども行われていたと思われる証拠は少なからずあり、(もり)と思われる物も見つかっています。

 日本の土壌は酸性ということもあり人骨などが無くなっており「当時の人が何をしていたのか?」謎の多いですが……』

 

「(この小説を読んでくださった皆様のセリフ)」




筆先文十郎は『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の二次創作小説、シーマ・ガラハウに成り代わった女という小説を書いています、そしてシーマに成り代わった女~ゲルググ・M対ガンダム試作1号機③~というのを書いていたんですよね。

もうお分かりだと思いますが。誤って消してしまいました。私、戦闘シーン苦手でそれでも何とか書いてあと少しで完成……だったんですよね。……もう目の前が真っ白になりました。
ただそれでも与謝野晶子と比べれば大したことないんですよね。本当に。

皆様も書いていた小説が無くなってしまっても与謝野晶子の再度源氏物語を翻訳したことを思い出していただければ幸いです。

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