この後、しずくはその生徒が眠るように倒れてしまったのでベンチに行くとそのベンチに座り、眠るように倒れてしまったその生徒の頭を自分のひざのところに置くとまるでその生徒がしずくに対し膝枕をしている、そんな光景が出来てしまった・・・。ただ、これについては、しずく、
(この子、なんか眠っているけど、このままだと風邪をひいてしまいます。なので、私、その子のために、この子が起きるまで、ひざまくら、するつもりです)
と、まるで聖母みたいな思いでその子が起きるまでのあいだ、しずくはその子の面倒をみることを決めたようだった。
ただ、このままだといつこの生徒が起きるのかわかならい・・・、というわけで、しずく、
(だけど、このままだと時間は過ぎてしまいます。なら、ここは、私にとってのバイブル、それを読んでこの子が起きるのを待ちましょう)
と、自分のカバンから一冊の本を取り出しその本を読むことにした。しずくが今読んでいる本、それはしずくにとって演劇という世界の扉を開けるきっかけをつながったともいえる映画、その小説版であった。その映画の名は「ローマの休日」。戦後から数年後に作られた映画のなかでは名作中の名作であり、そのヒロインであるアン王女をしていたオードリー・ヘップバーンの出世作としても有名であった。ある新聞記者の男性とある国のお姫様が1日だけ一緒にローマでの休日を過ごした(ただし、お姫様は自分の身分を隠していたのだが・・・)、そんな禁断のラブロマンスを描いた作品であった。実はしずくはその映画を見て、昔の映画、というかその映画に出てくる俳優みたいに自分も俳優として演じてみたい、そう思って、演劇、それと映画や小説に興味をもつようになったのである。いわば、「ローマの休日」こそしずくの今の、演劇を志す、そんなしずくの原点ともいうべきものであった。そして、その「ローマの休日」でヒロインのアン王女を演じていたオードリー・ヘップバーンこそしずくがせつ菜以外に憧れを抱いた人物であった。しずくはオードリー・ヘップバーンみたいな女優になることを夢見ていた。少しでもヘップバーンに近づきたい、その一心でしずくは少しでも自分の役になりきろうとしていた。それくらい、しずくにとってこの「ローマの休日」はバイブルといえた。
そして、「ローマの休日」の小説版をしずくが読んでいる最中、しずく、この生徒の正体が誰なのかわかってしまった。
(あっ、この子、見たことがあります!!たしか、全校集会のときに演壇に上っていた、たしか・・・たしか・・・、あっ、たしか・・・)
そんなときだった。
「うわ~、よく寝ました・・・」
と、突然、寝ていた子が起きてしまった。その子、というより、ニジガクの制服を着た黒縁眼鏡と三つ編みをしたニジガクの生徒の顔はなにか疲れがとれた感じがしていた。
そんな生徒に対し、しずく、優しくこう言った。
「おはようございますって、今はもうすぐ夜ですから、こんばんわ、でしたね。こんばんわ、中川奈々、生徒会長さん!!」
そう、そのニジガクの生徒の正体、それはニジガクの生徒会長である中川奈々であった。ただ、奈々にとってしずくのこの発言は不意打ちだったらしく、すぐに、奈々、
「こ、これは、しずくさん、こんばんわ、です・・・」
と、なにかばつが悪そうに言ってきてしまった。
ただ、この奈々の発言に、しずく、ある疑いをもってしまった。
(えっ、なんで、私の名前、中川生徒会長がなぜ知っているのでしょうか?たしか、私と生徒会長、見識なんてないはずです・・・)
そう、なんでしずくの名前を奈々が知っているのかつい疑問に思ってしまったのである。たしかに、しずくにとって生徒会長である奈々との見識はなかった・・・というか、奈々と会うのは初めて・・・というのがしずくの見識であった。また、学外から演劇のためにニジガクに編入してきたとはいえ、しずくのニジガクでの知名度なんてそこまでなかった。そんなことを知っていたしずくがこれまで会ったことがない奈々に突然下の名前で呼ばれたもんだから、しずくにとってそれについて疑問を感じることは不思議ではなかった。
そのため、しずく、奈々に対しこんな質問をしてみた。
「中川生徒会長さん、なぜ、私の名前を知っているのですか?私、生徒会長と会うの初めてなのです。なのに、私の名前、それも下の名前、しずく、と言われたものですから、私、それについてつい疑問に思ってしまいました・・・」
しずくにとって当たり前の質問・・・であったが、奈々にとっては不意打ち・・・だったらしく、奈々、まるでしまったといった感じになりつつも、すぐに、
「そ、それは・・・、私が生徒会長だからです!!ニジガク高等部の全生徒の名前くらい、生徒会長である私にとって覚えていて当然なのです!!」
と、言ってきたのだ。ただ、この奈々の発言に、しずく、
(生徒会長・・・、それって無理ありすぎだと思います・・・。ニジガク高等部の生徒ってゆうに三千人を超えています。その全生徒の名前を覚えるなんて、演劇をしている私からみても無理、というものなのです・・・)
と思ってしまった。たしかにしずくの言う通りであった。ニジガク高等部、いろんな学部が存在していることもあり、一学年だけでも千人以上、全生徒とものなると簡単に三千人を超えてしまう、それくらいのマンモス校であった。そんな三千人以上もの生徒、そのすべてのなめを覚えるなんて演劇で長いセリフを覚えないといけないしずくからしても無理なこと・・・ともいえた。なので、奈々の言うことは嘘、だとしずくはそう思っていた。
が、そんなときだった。突然、奈々、
「あっ・・・」
と、しずくのひざにまた眠るように倒れこんでしまったようだ。奈々、どうやら、急に起きたこともあり貧血を起こしたようだ。これには、しずく、
「中川生徒会長、すぐに起き上がらないほうがいいと思います。すぐに起き上がったから貧血を起こしたみたいです」
と、奈々に注意をすると、奈々、
「う~、しずくさんには申し訳ないことをしてしまいました・・・」
と、反省の弁を述べてしまった。
その後、しずくは倒れこんだ奈々を自分のひざの上で少しのあいだ寝かせたあと、
「中川生徒会長さん、あんまり無理をしないでください。生徒会長としてニジガクのみんなを引っ張っていく存在なのですから・・・」
と、奈々に対し珍しく注意すると、奈々、
「はい・・・」
と、肩を落としてしまった。
そんな奈々を見てか、しずく、
「今日は家でゆっくりとお休みください。そして、明日から生徒会長として頑張ってください!!」
と、奈々を元気づけるとこれまで読んでいた「ローマの休日」の小説版の本をカバンにしまい、それまで座っていたベンチから立ち上がっては、
「それでは、中川生徒会長さん、私はこれにて失礼いたしたします。それでは、さようなら」
と、奈々にさよならを言うと奈々も、
「しずくさん、さようなら」と
と、さよならを言っては、しずく、そのまま、ニジガクの最寄り駅まで歩いていってしまった。
ただ、このとき、しずく、こう思っていた。
(たしかに今日は演劇部の役から外される、演劇部から締め出される、ということが起きてしまいました。けれど、そのなかで苦しんで倒れそうになった中川生徒会長さんの介抱をしたことで少しは私のなかにある失意を少しでも和らげることができました。う~、苦しんでいる人を助けるなんて、私、なんか幸せです!!)
そう、自分の性格、というか、「当たり障りのないいい子」を演じてしまったせいか、演劇部の演劇の役を外されたばかりか、その演劇部から締め出されてしまった、それにより失意のどん底に落ちてしまったが、その失意のなか、苦しんでいる生徒会長を助けることができた、そんな満足感により、しずくのなかにある失意を少しでも和らげることができた、そのことをしずくは喜んでいた。
だが、それと同時に苦しんでいる生徒会長、奈々の姿を見て、しずく、こんなことも考えるようになった。
(でも、なんで、中川生徒会長さんは苦しんでいたのでしょうか?)
そう、なぜ生徒会長である奈々が苦しんでいるのか、それがしずくにとって疑問だったようだ。ニジガクの生徒会長と言えばニジガクの生徒を代表する者である。そんな奈々が苦しんでいる、そのことをしずくは疑問に思ってしまったのだ。
そして、しずくは1つの結論を導いた。それは・・・、
(もしかして、中川生徒会長さん、生徒会の激務に苦しんでいるのではありませんか?だって、ニジガクの生徒会と言えば仕事量が半端ないはずです。なので、中川生徒会長さんはその仕事量を毎日こなさないといけないのであんなに苦しんでいたのですね)
そう、奈々にとってその生徒会の激務こそ奈々が苦しんでいる理由だと結論づけたのである。だって、全生徒数をゆうに三千人を超えているそんなマンモス校の生徒会となればその仕事の量も半端ないものだったりする。そんな量を毎日こなさないといけない、そうなると相当な激務になるのは仕方がないこと。「それを毎日こなさないといけいない=その毎日の激務に生徒会長である奈々が苦しんでいる」としずくはそう考えたのである。
そして、そんな奈々のためか、しずく、ある決断を下した。
(そんなに苦しんでいる中川生徒会長さんの姿を見て、私、そんな生徒会長さんのお役に立ちたい、そう思ってしまいました。だって、あんなに苦しんでいる生徒会長の姿、あれを見てしまっては、私、もうほっとくことなんてできない、そう思ってしまいますから!!それに、乗りかかった船です!!もう私は演劇部を締め出されてしまった身ですから時間はたっぷりあります!!だから、私、桜坂しずく、中川生徒会長のために一肌脱ぎます!!)
翌日・・・、
「みなさん・・・、おはようございます!!」
と、奈々は生徒会室のドアを開けて室内にいる生徒会役員たちに挨拶するとすぐに、
「中川生徒会長さん、おはようございます!!」
と、奈々自体聞きなれている・・・というか、これまで生徒会室のなかでは聞いたことがない声が聞こえてきた。これには、奈々、
「おはよう・・・って、しずくさん、なぜここにいるのですか?」
と、その挨拶の声の主ことしずくがそこにいることに気づいてびっくりしてしまう。
そんな奈々に対ししずくはこう答えた。
「中川生徒会長さん、昨日、ニジガク近くの公園で私と会ったとき、なんか苦しそうでしたから、もしかすると、生徒会の激務に疲れているのではと思い、私、そんな中川生徒会長さんのお手伝いをしたいと思いましてここに来ました!!」
そう、しずく、昨日、公園で会った奈々が苦しんでいるところを見てそれならばと生徒会の仕事のお手伝いをして奈々を助けようと思い生徒会室に来ていたのだ。。
ただ、実はその裏ではしずくのある後悔が隠れていた。昨日、奈々と別れたあと、自分の家に帰る途中、しずく、こう考えていた。
(中川生徒会長さんの役に立つ方法、それは、私自身、生徒会の仕事を手伝うことです。私には演劇部がありますが、現状、演劇部から締め出されております。なので、時間に余裕があります。なら、その時間を使って中川生徒会長さんの仕事の手伝いをすれば中川生徒会長さんもそんなに苦しまなくてすみます!!)
実は、しずく、演劇部から締め出されたあと、SNSアプリのグループチャットで演劇部の部長からこんなメッセージが送られていた。
「しずく、勝手に役をおろしてしまってもうしわけないけど、今のしずくではこの役はきつすぎると思います。それに、しずく、なんかここ最近根気詰めているようにみえてました。このままいけば、しずく、演劇の役が十分できずにずっと監督から怒られ続けてしまい、結果的にしずくが壊れてしまうのではないかと心配になってしまいます」
そう、部長から演劇部を締め出されたとき、しずく、慣れない役ができないというプレッシャーとともに、数日前、せつ菜から同好会の休止を宣言されたときのショックから抜け出せずにいた。なので、そのときはこの2つが原因でしずくは根気詰めていたのである。それを部長は危惧していたのだ。
そして、部長はしずくに対しこのメッセージでしずくを慰めたのである。
「しずく、今のままだとしずくは壊れてしまいます。なので、しずく、少しは休んでリフレッシュしてください。そうすれば、今までのしずくみたいなどんな役でもこなせる、そんなしずくに戻るはずですから・・・」
そう、演劇部の部長は根気詰めていたしずくに対し少しは休むように言ってきたのである。少し休んでリフレッシュすれば、今までのしずく、どんな役でもこなせる、そんなしずくに戻るだろうと考えていたのだ。
そんなわけで、しずく、少しのあいだだけは演劇部から締め出し・・・、ごほん、演劇部を休部することになったのだが、今までしずくが所属していた部活、スクールアイドル同好会、演劇部、ともの行く必要がなくなったので、しずく、急に時間が余ることとなった。だが、そんなときになにかによって苦しんでいる生徒会長の奈々と出会い、それならばと余った時間を奈々のために使おう、生徒会の仕事を手伝うことにしようと考えたのである。
と、同時にしずくのなかにはある思いも、いや、後悔も潜んでいた。それは・・・。
(それに、私のせいで同好会が休止になったのです。私が強く自分の意見を言わなかったから・・・、私が「当たり障りのないいい子」を演じてしまったから、せつ菜さんは同好会を休止したのです。その罪滅ぼしのためにも、私、奈々さんのお手伝いをしないといけないのです!!)
そう、しずくは自分のせいで同好会を休止してしまったその罪滅ぼしをしたい、それが奈々の手伝いをすることを決めた要因の1つにしたのである、しずくは。自分が同好会のリーダーであるせつ菜に強く自分の意見を言えなかった、「当たり障りのないいい子」を演じてしまった、せつ菜の役に立つことができなかった、それにより、同好会は休止してしまった、いや、同好会のリーダーであるせつ菜が同好会を休止にしてしまった、としずくは思い込んでしまい、そのことをしずくは今なお後悔していたのである。ただ、そんな後悔をぬぐい去りたい、と、しずくは思っているのか、しずく、それならばと生徒会のリーダーである奈々の役に立つことで自分が同好会でできなかったことのすり替えをしようとしていたのである。なぜなら、そのすり替えをすることによりしずくのなかにある思い、せつ菜の役に立てなかったこと、それにより自分の後悔、その代行的なことにしようとしずくは考えていたのである。
でも、奈々からすれば・・・、奈々、突然、生徒会室にいるしずくびっくりしつつも手伝いに来た理由を言ったしずくに対しある質問を投げかけた。
「し、しずくさん・・・、ところで、え、演劇部の方は・・・」
そう、演劇部のことである。奈々はこの時点でしずくが演劇部を少しのあいだお休みすることを知らなかった・・・というか・・・なんというか・・・、とはさておいて、しずく、奈々の質問に対しこう答えた。
「中川生徒会長さん、それなら大丈夫です!!演劇部の部長さんから少しのあいだ休むように言われましたから・・・」
そのしずくの答えに、奈々、
「な、なるほど・・・」
と、ただたんに言ってしまう。
だが、このとき、しずくは奈々に対し衝撃的な質問を投げかけてしまった。
「ところで、中川生徒会長さん、なぜ、私が演劇部に所属していること、知っているのでしょうか?私、演劇部に所属していること、一言も中川生徒会長にお伝えしていないのですが・・・」
そう、しずくは奈々に一言も演劇部に所属していることを伝えていなかったのだ。なので、奈々がしずくが演劇部に所属していることなんて知らないはず、なのになんで奈々がそのことを知っているのかのような質問をしてきたのか疑問に思ってしまったのだ。
で、このしずくの質問に対し、奈々、ちょっと困惑しつつも、
「そ、それはですね・・・、生徒会長たる者、全生徒のデータを覚えている・・・というか・・・」
と答えた・・・というか動揺しまくりの状態で答えていた。まぁ、そんな奈々の答えをみて誰もが疑い深くなるのは当たり前なので・・・、しずく、
「本当にそうでしょうか・・・」
と、動揺しまくりの奈々に疑いの目を向けてしまった・・・。
と、そんなときだった。動揺しまくる奈々であったが、すぐに気持ちを入れ替えたのか、すぐにきりりとした、まるで生徒会長といった風貌に変わり、しずくに対し、
「しずくさん、たしかに今の生徒会は猫の手を借りたいくらいの状態です。なので、しずくさんが手伝ってくれるのであればとても助かります。しずくさん、宜しくお願いします」
と、深々と頭を下げながら言った。たしかに奈々の言う通りである。激務というくらい生徒会の仕事の量は膨大であった。なので、万年人手不足ともいえた。そんななか、しずくがそのお手伝いをしてくれたらそれは奈々にとってみても生徒会としてもとても助かることだった。断ることなんてできない話であった。
まぁ、そんなわけでして、しずく、
「そらなら、桜坂しずく、当面のあいだ、生徒会のお手伝いをします!!」
と、胸を張って答えてくれた。
だが、そのうらでは、しずく、こんなことも考えていた。
(中川生徒会長さんのお手伝いができる、それは私にとっていいこと・・・、だけど、中川生徒会長さん、私に対してなにか隠している気がします・・・。ちょっと気になります・・・)
そう、奈々に対する疑いの目であった。たしかにその通りである。今までしずくとは会ったことがないはずの奈々がなぜしずくのことを知っているのか、それも、しずくの名前どころかしずくが演劇部に所属していることも・・・。で、しずくのことを知っている理由、それが「生徒会長だからニジガクの全生徒の名前もデータも知っている」、なのだから。でも、ニジガクは前述の通り、全生徒はゆうに三千人を超えるくらいのマンモス校、その全生徒の名前、データを知っているなんてとても無理だといえる。なので、奈々の答えた理由は嘘ともいえた。では、なぜ、しずくに対して奈々はそんな嘘をつくのか。それは奈々がしずくに対しあんいか隠し事があるから、と、しずくはそう考えていた。ただ、このときはそのことに関しては、しずく、
(でれど、それを断定することは今はできません・・・。今のところはそれは心の片隅にしまっておきましょう)
と、断定できなかったため、今は心の片隅にしまうことにした・・・。
そして、しずくが生徒会の手伝いを初めて数日後・・・。
「しずくさん、この部活の資料作成をお願いします」
と奈々が言うと、しずく、すぐに、
「はい、すでにその部活の関連資料は用意しております。あとはそれをもとに資料を作成するのみですので20分もあれば資料は完成します」
と答えると、奈々、
「わかりました、しずくさん。お願いします」
とたんたんに答えていた。
そして、20分後・・・。
「中川生徒会長さん、頼まれていた部活の資料を作成しました。確認をお願いします」
と、しずくは自分が作成した部活の使用を奈々に渡すと、奈々、
「うん、完璧!!」
と納得の表情。けれど、すぐに、奈々、
「それでは次は部活全体の予算・・・」
と、しずくになにか言おうとすると、しずく、
「中川生徒会長さん、それならすでにこちらに用意しております」
と、持ってきた別の資料を奈々に渡すと、奈々、
「あぁ、しずくさん、ありがとうございます」
と、ちょっとびっくりした表情で答えていた。
と、こんな具合に、しずくが生徒会の手伝いをしに来てから生徒会の仕事の効率が数倍、いや、数十倍にもあがった・・・。それくらい、しずくはかなり優秀かつスピーディー、そして、真面目に生徒会の仕事の手伝いをこなしていたのである。
そんなわけでして・・・、
「みなさん、今日の仕事は以上です。完全下校時間までまだ1時間もありますが、今日はここで解散とします!!みなさん、お疲れさまでした!!」
と、奈々が言うと生徒会の役員たちはそそくさと帰っていった・・・。しずくが手伝いに来るまでは完全下校時刻近くまで生徒会の仕事をしていたのだが、しずくが手伝いに来てから仕事の効率が格段と上がったことで余裕をもって仕事を終わらせることができるようになっていた。そのため、生徒会長である奈々はそのことを踏まえた上でここ最近は生徒会の役員たちを早めに帰らせるようにしていたのである。ただ、これには、奈々、うらがあるのですがね・・・。
と、ここで、奈々、まだ生徒会室に残っていたしずくに対し、
「あっ、しずくさん、今日の生徒会の仕事は終わりましたので帰ってもいいですよ」
と言うと、しずく、
「はい、中川生徒会長さん、わかりました。それなら私はこれにて失礼いたします」
と、奈々に対しさよならを言った。
そんな今にも帰ろうとするしずくに対し、奈々、あるお願いをした。
「あと、しずくさん、「中川生徒会長さん」って言うのは言いにくいと思います。なので、これからは、「中川さん」、もしくは、「中川会長」、でお願いします」
そう、しずくはいまだに「中川生徒会長さん」と言っていたのだ。しずくは真面目であり、どんな相手でも「○○さん」とさん付けをしていた。奈々の場合は生徒会長ということもあり、「中川生徒会長さん」と「○○+役職+さん」と奈々に対し言っていたのである。ただ、これだとしずくが奈々のことを呼ぶときに長すぎて言いづらい、ということで奈々はしずくに自分のことを「中川さん」、もしくは、「中川会長」と呼んでもらうにしずくにお願いしていたのである。
そんな奈々の願いに対し、しずく、
「中川生徒会長さんのお願いですし、わかりました!!これからは「中川先輩」とお呼びいたします!!」
と、奈々のお願いを聞き入れることにした。まぁ、しずくの場合、先輩後輩の線をちゃんとしっかりしておきたいみたいですけどね・・・。
そんなわけで、しずく、
「それでは、中川先輩、お先に失礼いたします」
とさよならを言うと、奈々、
「しずくさん、さようなら。また明日ね」
と、さよならを言ったあと、しずくは生徒会室をあとにした・・・。