ラブライブ!アラカルト   作:la55

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注意
この小説は全年齢版となっておりますが、小説の流れ上、ちょっとだけ刺激が強すぎるところがあります。なので、「R-15」に近いかもしれません。大変申し訳ございませんがご了承のほど、お願い申し上げます。


あまやどり

「今日もいっぱい練習したな~!!」

そう言うと、ある少女は背伸びをしつつ夕日に向かってこう叫んでいた。そんな彼女の名は、梨子、桜内梨子、静岡県沼津市内浦にあるとても小さな女子高、浦の星女学院の2年生である。そして、その浦の星が誇る部活、スクールアイドル部Aqoursの一員でもあった。この前に行われたスクールアイドルの甲子園、ラブライブ!夏季大会静岡県予選を無事突破したAqours、続く東海予選に臨むため、毎日、遅くまで練習に明け暮れていた。で、今日もその練習が終わった、ということで、梨子は練習で疲れた自分の体をいたわりつつ自分の家へと帰っていた。

 が、そんな梨子にある不運が起きる。上にあげた手を下した梨子、その瞬間、

ポツン ポツン

という小さな音が聞こえてきた。これには、梨子、その音に気づき、

「あれ、雨かな?」

と言うも、梨子の心の中では、

(でも、雨は雨でも、小雨、でしょうね)

とつい思ってしまう。梨子、今降っている雨を甘くみていたようだった。

 が、この梨子の予想はすぐに外れてしまう。

ポツン ポツン

という雨の音が突然、

ザーザー

という音に変わってしまう。そう、小雨だったのが突然、大雨、いや、スコール、に変わってしまったのだ。これには、梨子、

「小雨だったのになんで大雨に変わっちゃうの!!」

と、この天気を呪う。

 しかし、梨子、このままだといけない、と思ったのか、駆け足で近くにあった商店の軒下に逃げ込んではそこで雨が止むまで雨宿りをすることを決める。だが、梨子、商店の軒下に着くとすぐに、

(う~、全身びしょ濡れだよ~)

と、自分の今の状況を悔やむ。どうやら、梨子、突然の大雨で全身びしょ濡れになってしまったようだ。いや、それだけじゃない。梨子、すぐに、

(制服が(自分の)体に引っ付いちゃったよ~!!とてもいやな感じだよ~!!)

と、これまた自分に今起きていることも悔やむ。そう、今、梨子が来ているのは浦の星の夏の制服である。今日は学校で練習していたため、学校の制服で学校に登校するのは当たり前・・・なのだが、浦の星の夏の制服といえば・・・薄くて白い生地、そんな生地でできた半そでのセーラー服である、それが突然の大雨により全身びしょ濡れになったのだ、そうなるとその白くて薄い生地でできたセーラー服が梨子の肌に引っ付いてしまったのも無理じゃない、むろん、それにより梨子がいやな感じになってしまう、というのも仕方がないことであった。

 そんないやな感じになっていた梨子、なのだが、それ以上にとても気になることがあった。それは・・・。

(ああ、全身びしょ濡れ・・・。靴もびちょびちょ。いや、それ以上に、今日着てきた下着もびちょびちょだなんて、今日は本当に最悪だよ~!!)

と、梨子、また全身びしょ濡れになったことを悔やむ・・・以上に今日着てきた下着がびちょびちょになったことを悔やんでいた。でも、梨子、なんで下着がびちょびちょになったことを一番悔やんでいたかというと・・・。

(ああ、これ、私の中で一番のお気に入りの下着、なんだけどな・・・)

そう、今梨子が着ている下着、なんと、梨子にとって一番のお気に入りの下着、だったからである。ブラのある部分にワンポイントで桜の花びらの刺しゅうが施されている、上下ともに桜色の下着、その下着は梨子のためにある、といっても過言ではない、そんな下着だった。で、その下着、梨子も自分が持っている下着のなかで一番好き、一番のお気に入りの下着、それをとある理由で今日着てきたのである。そんな、梨子一番のお気に入りの下着、それが突然の大雨でびちょびちょになった、のであれば、梨子がとても悔やむのは至極当然であった。

 が、梨子が自分の着ている下着がびちょびちょになったことを悔やんでいる理由はそれだけではなかった。梨子、続けて、今日着てきた下着についてあることを考えていた。

(でも、今日は本当に最悪だよ!!今日は一番お気に入りの下着を着て、それを愛しの果南ちゃんに見せたかったのに~!!そして、あわよくば、果南ちゃんから(下着を)褒めてもらいたかったのに~!!)

なんと、梨子、今日は打算的にわざと自分にとって一番のお気に入りである下着を着てきたのである。その理由であるが、梨子にとって、今、Aqoursのなかで一番憧れている、いや、愛しいと思っているメンバーである果南に自分の一番のお気に入りである下着を見せ、あわよくば、その果南からその下着をほめてもらおうと画策していたからであった。

 その果南というメンバーであるが、本名を松浦果南といい、梨子と同じAqoursのメンバー、そして、浦の星の3年生であった。その果南、夏休み前にあった沼津の夏祭りの時期にAqoursに加入したばかりであるが、果南が1年のときに、ダイヤ、鞠莉と一緒にスクールアイドルをしていた経験があり、梨子にとってみれば、学校、そして、スクールアイドルの先輩、ともいえる存在だった。

 が、梨子が果南に憧れる、いや、愛しいと思っている理由はほかにもあった。梨子、果南のことを思い出すと、こんなことまで考えてしまった。

(果南ちゃん、私の愛しの先輩・・・。いつも私の相談に乗ってくれるし、あの男っぽい性格、私好み、なんだよね・・・)

そう、果南との関係、果南の性格、それらにより、梨子は果南に憧れ、いや、愛しさを抱くようになったのである。Aqoursにおいて、梨子は作曲、果南はダンスを担当していた。なので、ことあるごとに梨子と果南はそれらについて相談していた、のだが、相談事はそれだけではなかった。梨子、なんと、自分が悩んでいること、そのすべてを果南に相談していたのである。その果南であるが、邪見することなく、真摯に梨子の相談に乗っていた。むろん、果南、かなりの世話好き、というのも果南が真摯に梨子の相談に乗る理由の一つなのだが、その果南の姿に、梨子、心ときめくものがあった。また、果南の性格、なのだが、ほかの人からは、「大人っぽく、小さいことにもくよくよしない、サバサバしている」、まるで「男」なのでは、と思えるほどの性格、だと評されていた。で、その男っぽい性格、なんと、梨子にとってみれば、「どストライク」、いや、梨子の一番の好み、であった。が、言っておくが果南は「女の子」である。ではあるが、そんな「男っぽい」性格の「女の子」、その性格をしていた果南に梨子は憧れていた、いや、好き、といっても過言ではなかった。そして、果南が「男っぽい」性格の「女の子」であったとしても関係ない、いや、そのほうがいい、と、梨子は常日頃思っていた。そんな、果南に特別な感情を抱いていた梨子、なのだが、なんで梨子がこうなってしまったのか、それには理由があった。それは梨子が持つある性癖が関係していた・・・。

 

 では、今からその説明を・・・と言いたいのだが、ちょっと長くなりそうなので、話を先に進めることにしよう。

 梨子、果南のことを思い出してはにやけてしまう・・・はずだったが、突然、あることを思い出しては怒ってしまう。

(うう、私にとって愛しい存在、果南ちゃんに1番お気に入りの下着を見てもらって褒めてもらおうと思っていたのに、なんか用事があるから、って、果南ちゃん、先に帰っちゃったんだよね~!!ああ、結局、一番のお気に入りの下着を果南ちゃんに見せること、できなかったよ・・・。それどころか、まさか、突然大雨が降ってきては下着がびちょびちょ・・・。うう、ほんと、今日は最悪だよ!!)

そう、梨子、愛しい存在である果南に一番お気に入りの下着を見せて褒めてもらおうと画策していたものの、運悪く用事があるからといった理由で、果南、ダイヤと鞠莉と一緒に先に帰ってしまったのだ。これにより、梨子の思惑が外れてしまうのだが、さらに運悪く突然の大雨でその下着はびちょびちょになってしまう始末・・・。これには、梨子、「今日は本当に最悪」、と思ってしまっても無理ではなかった・・・。

 が、そんな最悪だと思ってしまった梨子であったが、

(うう、こんな悔しい思いをするなんて、もういや!!だったら、そんな悔しい思い、ここで忘れてやる!!)

と、思ったのか、梨子、突然にやけてしまう。どうやら、梨子、頭のなかである妄想を膨らませているようだ。

(う~、果南ちゃん、私、もう食べられませんよ~。えっ、果南ちゃん、「私を食べたい」って!!いや~、果南ちゃん、それだけはご勘弁を~!!)

梨子、なんか危ない妄想・・・というか、果南が梨子を攻めている、そんなことを妄想しちゃっていた。が、これこそ、梨子が一番隠しておきたい性癖、だった。なんと、梨子、かなり百合志向が強い、そんな性癖の持ち主だった。この性癖、梨子にとってみれば、Aqoursメンバーには一番隠しておきたい、ことなのだが、時々それが行動にあらわれてしまうことがあったりする。たとえば、梨子、東京に行くときには必ず百合本を買ってしまう。さにには、ラブライブ!夏季大会静岡県予選と同時期に東京で開催されたピアノコンクール、梨子はそれに参加していたのだが、そのときも百合本を買っていた・・・のであるが、その量、なんと、駅のコインロッカーに入りきれないほどのものだった。梨子、それほど重度な性癖持ち・・・といっても過言・・・ではなかった・・・。そんな梨子であったが、今、それを活かすときがきた・・・みたいだった。このとき、梨子、梨子にとって愛しい存在である果南から攻められる、そんな百合的な妄想をすることで少しでも現実のことを忘れようとしていたのである。まっ、果南が「女の子」であるのに「男っぽい」性格だからこそできる妄想、というのもあるのだが・・・。

 だが、梨子の妄想はついにレッドラインを越えてしまう。

(えっ、果南ちゃん、えっ、えっ、私の顔の近くに、手、置かないで!!えっ、そんなことをされて、そんなに攻められたら、胸のドキドキ、止まらなくなっちゃうよ~!!えっ、果南ちゃん、私の・・・、掴まないで~!!えっ、顔、近すぎるよ!!きっ、キス!!ちょっとはやいよ~!!)

梨子、ついにいけないことまで妄想し始めてしまった!!いや、それこそ、梨子の願望、なのかもしれない・・・。梨子、かなりの百合志向の持ち主、なのだが、特に、相手から攻められてされるある行為が特に好きだった。その行為だけを集めた百合本をせっせと集める、それくらい梨子はその行為が超大好き・・・なのだが、果南がその行為を梨子にしている、そんな妄想は今の梨子にとってみればそれは単なる現実逃避・・・としかいえなかった。だが、そんな自分の願望を妄想という形で叶えようとしたこと自体、今の梨子にとってみれば、重なる不運で傷ついた梨子の心を癒す一種の清涼剤、だったのかもしれない・・・。

 

 しかし、そんな梨子の幸せはそんなに長くは続かなかった。にやけている梨子に対し突然ある言葉が投げかけられた。

「おい、姉ちゃん、嬉しそうだな!!」

その声に、梨子、

(うっ、誰なの、この幸せのひとときを邪魔してくるのは?)

と、ひとときの幸せをぶち壊した声の主の方を見る。すると、そこには・・・、

(えっ、誰!?こんなヤンキーな男の人、私、知らないよ!!)

と、梨子が全く知らない、それでいて、典型的なヤンキー、ともいえる男たちが数人経っていた。

 そんなまったく知らない男たちから声をかけられたことで、梨子、きょとんとなるも、その男たちのリーダーらしき男、そんな梨子に対し、

「おい、姉ちゃん、俺たちと一緒に、もっと楽しいこと、しようじゃないか!!」

と言っては梨子のもとに迫ろうとする。このリーダー格の男の言葉を聞いて、梨子、あることに気づく。

(これって、もしかして、俗にいう・・・、ナンパ、っていうものじゃないかな!!)

そう、男たちは商店の軒下にたった一人でいる梨子に対してナンパを仕掛けようとしていたのである。これには、梨子、

(私には果南ちゃんという愛しい存在がいるんだよ!!こんな誰とも知らない人たちに私の純潔は渡さないんだからね!!)

と、あくまでも男たちの要求を突っぱねることを決め、その男たちに向かって大きな声でこう言った。

「そんなの、いや、です!!どっか行ってください!!」

梨子の完全拒否・・・であったが、それでも男たちは負けじと、

「ねえねえ、彼女、そんなこと言わずに、俺たちと一緒に、もっと面白いこと、しちゃおうよ!!」

と言っては梨子に迫ってくる。これにも、梨子、強気な口調で、

「そんなの、いやったら絶対にいや!!」

と、完全拒否を貫く。

 が、その状況、次の男たちのある言葉によって一変してしまう。梨子に迫り続ける男たちのうちの一人が突然梨子の全身を舐めまわすかのように見ると、梨子、

(うわっ、きもい!!)

と、ちょっといやな感じになるも、その男、突然、こんなことを言いだしてきた。

「ねえねえ、お嬢ちゃん、なんかかわいいブラ、しているね!!」

 この男の言葉に、梨子、

(えっ!!)

と、一瞬戸惑ってしまう。

 さらに、そんな戸惑う梨子の姿を面白がるように見ていた別の男からこんな発言が飛び出してしまう。

「嬢ちゃん、今の自分の姿に気づいていないかもしれないから言うけど、雨で相当濡れているから、お嬢ちゃんのかわいいブラ、完全に透けて見えているんだよね!!」

 この男の発言を聞いて、梨子、

(えっ、えっ、ブラが透けてみえている!!)

と、一瞬はっとすると、すぐに自分の胸元を確認する。すると、男たちが言った通り、セーラー服からブラが完全に透けているではないか!!どうやら、突然の大雨で全身びしょ濡れになった梨子、本人は今まで気づいていなかったが、白くて薄い生地でできたセーラー服が雨の水で梨子の体にべたついてしまい体の肌色さえ見えてしまうほど透けてしまっていたようだ。特に、色物のブラは梨子の肌以上にくっきり透けてみえていたため、ブラそのものがより強調される結果になってしまったようだ。

 で、ブラが透けていることに気づいた、梨子、

(み、見知らぬ男たちにブラを見られた!!は、恥ずかしいよ・・・)

と、顔を真っ赤にしては恥ずかしい思いになる。さらに、梨子、

(こ、こんな男たちにこれ以上ブラを見せたくない!!)

と思ったのか、透けているブラを隠そうとしているのか前かがみになって座り込んでしまった。

 が、それが逆に男たちの欲情をそそる結果になってしまった。梨子が前かがみになって座り込んでしまったことで今度は背中のブラのラインが強調される結果になってしまう。これにはリーダー格の男から、

「おいおい、今度は背中のブラのラインが丸見えじゃないか!!それほど俺たちを魅了したいのか!!」

と、笑いながら言われ、これには、梨子、

(も、もう言わないで・・・)

と、恥ずかしい思いから逃げたい、そんな弱気ともとれる気持ちになってしまった。

 しかし、男たちの梨子に対する言葉の攻撃はまだまだ続く。今度は梨子のブラが透けているのを指摘した男からこんな言葉が飛び出す。

「おい、よく見たら、ブラの色、ピンクじゃないか!!やっぱ、女の子、なんだね~」

そんな男からの容赦ない言葉に、梨子、心のなかでツッコミをいれる。

(ブラの色、ピンクじゃないよ、桜色だよ!!)

そう、梨子が今着ているブラの色はピンクではなく桜色・・・というのはおいといて、そんなツッコミを心のでいれている梨子に対しリーダー格の男はとどめを刺そうとしていた。

「ねえねえ、お姉ちゃん、その透けているブラをもっと見せてよ!!もっと俺たちの欲情を満たしてくれよ~」

 そして、このリーダー格の男の言葉に、梨子、ついにダウンする・・・。

(もういや、やめて!!こんなところから早く逃げたいよ・・・)

これまでの男たちの容赦ない言葉攻めに、梨子、精神的ダメージが大きいのか、この場から早く逃げたい、そんな気持ちになる。が、梨子のまわりを男たちが取り囲んでいるせいか、梨子、逃げることすらできない。これには、梨子、

(でも、この男たちに囲まれているから逃げることすらできない・・・。私、どうすることもできないよ・・・)

と、半場諦め状態・・・。さらに、透けていた自分のブラを男たちに見られたことに関しても、

(今日、愛しの果南ちゃんに見せるためにつけてきた、私のなかで一番のお気に入りの下着、それをこんな誰とも知らない男たちに見られるなんて、本当にいや!!)

と、梨子、愛しい存在である果南に見せるために一番お気に入りの下着を着てきたのに、その果南に見せることができなかったばかりか逆に誰とも知らない男たちに見られたことにある種の絶望を感じていた。

 そんな絶望を感じていた梨子はついにある人の名前を呼んでいた。

「か、果南ちゃん・・・、助けて・・・」

そう、梨子は自分にとって愛しい存在である果南の名を口にしていたのである。梨子はそんな果南に助けを求めていたのである。

 だが、梨子はわかっていた、たとえ震える体を振り絞り力いっぱいの声で果南に助けを求めたとしても、大雨が降っているため、どんなことがあっても果南に聞こえるはずがない、絶望へのカウントダウンは続く、自分はどうすることもできない、自分は助からない、キセキが起きない限り・・・。そのためか、梨子、目にうっすら涙を浮かべていた、絶対キセキなんて起きない、絶望するしかない、と・・・。

 しかし、そのキセキが、今、起きようとしていた。突然、梨子を取り囲んでいる男たちと梨子に向かって大きな声がこだました。

「おい、そこでなにをやっているんだ!!」

この突然の大声に、男たち、後ろを振り返ると、そこには一人の女子高生が立っていた。その女子高生は男たちに向かってこう叫んだ。

「おい、そこで何をしているんだ!!梨子ちゃんが悲しんでいるだろうが!!」

この声の主は梨子がよく知る人物の声だった。その声を聴いて、梨子も前かがみになりながらもその声がするほうを見る。そして、その女子高生に向かって、梨子、こう叫んだ。

「か、果南ちゃん!!」

 

「う~、少し遅くなったよ・・・」

学校を出た果南はこう言うと自分の家がある淡島に行く船の乗り場へと駆け足で移動していた。練習をはやめに切り上げた果南、ダイヤ、鞠莉の3人はそのまま生徒会室に行くと、ラブライブ!夏季大会東海予選でAqoursの応援に行く浦の星の生徒たち+内浦の人たちのためのバスの手配をしていた。が、その手配にとまどり、果南が学校を出たときにはすでに完全下校時間をとっくに過ぎてしまったのだ。そのため、果南、できるだけ駆け足で船付き場に移動していた。のだが、果南が学校を出た時にはすでに雨が降っていたため、果南は学校に置いていた自分の傘をさして移動していたのである。

 そんな果南、その船着き場に近づいたそのとき、

(あれっ、あそこに誰かいる・・・)

と、商店の軒下のところに自分も知らない男たち数人が集まっていることに気づく。が、なんか様子がおかしい、と気づいた果南、

(ちょっと近づいてみよう)

と、ばれないように男たちにそっと近づく。そして、果南、その男たちに囲まれていた女子高生を見つけ、

(あれっ、誰かが男たちに囲まれている!!ちょっと誰なのかのぞいてみよう)

と、その男たちに囲まれている女子高生が誰なのか目を凝らして見てみる。

 すると、果南、その女子高生が誰なのかすぐにわかった。

(り、梨子ちゃん!!)

そう、見知らぬ男たちに囲まれていたのは梨子だった。その梨子であるが、前かがみになって座っており、その梨子に対し男たちが迫っていたのだ。これには、果南、

(梨子ちゃんが危ない!!梨子ちゃんを助けないと!!)

と、思う・・・よりも体が先に動いてしまう。が、果南、その勢いを活かして梨子を取り囲んでいる男たちのところまで近づき、持っていた傘を捨てては男たちにこう叫んだ。

「おい、そこでなにをやっているんだ!!」「梨子ちゃんが悲しんでいるだろうが!!」

 

「おい、そこでなにをやっているんだ!!」

見知らぬ男たちに取り囲まれていた梨子を助けるために発せられた果南の怒鳴り声・・・であったが、とうの男たちはというと・・・

「・・・」

と、ただ無言で果南を見つめるだけだった。

 が、梨子にとってみれば、助けに来た果南の存在はまさに、救世主、ともいえた。

(か、果南ちゃんが私を助けに来てくれた!!こ、これってキセキだよ!!キセキが起きたんだよ!!)

梨子の心のなかでは果南が自分を助けに来てくれたことにとても喜んでいた。いや、絶望のなか、自分にとって愛しい存在である果南が助けに来てくれることを切に願っていたのに、それが、今、まさに、自分の目の前で起きた、それこそ梨子にとって、キセキ、が起きた、と思っても仕方がなかった。

 そんな梨子を助けに来た果南、無言のままの男たちに向かって、

「梨子ちゃんがいやがっていること、すぐにやめなさい!!やめないなら、警察、呼ぶよ!!」

と、警告を発する。

 が、その果南の警告を聞いてか、これまで無言だった男たちから突然、

ハハハハ

という笑い声が聞こえてきた。その男たちの1人が果南に対してこんなことを言いだす。

「ほ~、それで助けた気でいるのかね~。笑止!!たかが女子高生の分際でこの俺たちと張り合うつもりでいるとは、片腹痛いわ!!俺たちのやることに口をはさむな!!女子高生は女子高生らしく、そこで俺たちがやることを指をくわえて見てな!!」

どうやら、男たち、果南のことをただの女子高生としか認識していないようだ。いや、完全に果南のことをなめているみたいだった。

 が、そんな自分のことをなめきっている男たちの姿に、果南、

(くそ~、私のことをなめているなんて、許せない!!)

と、怒りがふつふつと込み上げてきては、そんな男たちに向かってばしっと言う。

「この私をなめないでよ!!」

 しかし、そんな果南の怒りの言葉は男たちには通じなかったらしく、男たちは果南に向かってなめきった口調でこう言い返した。

「お前のこと、なめてませんよ~。哀れみで言ったまでですよ~。この王子様気取りの間違い女にその間違いを指摘しただけですよ~」

 が、この男たちのなめきった言葉に、果南、

プチっ

と、ついに堪忍袋の緒が切れてしまった。そのためか、果南、男たちに対し、

「この私をバカにするなんて、許さない!!」

と、怒鳴り散らすと、その男たちに向かって殴り・・・込みに行かず、男たちの方に向かって歩くと、そのまま男たちをかき分けて梨子の前に立った。これには、男たち、そんな果南をただ見ているだけだった。

 が、もう一人の当事者である梨子はというと・・・、突然自分の前に進んできた果南を見ては、

(か、果南ちゃん、今からなにをするの!!)

と、今から果南がないをするのかハラハラして見ていた。もし、暴力沙汰になれば、ラブライブ!夏季大会東海予選に出場できなくなる、それを危惧していたからだった。

 その果南であるが、梨子の前に立つと、男たちのいる方を向いて手を構えては男たちに向かって張り手をぶちかますようなポーズをとる。これには、男たち、予想だにしていなかったことらしく、

「ヒィッ」

と、身を構えて目をつぶってしまう。で、この果南の行動に、梨子も、

(か、果南ちゃん、暴力はやめて!!)

と、果南のことを心配する。

 そんな果南、ついにその男たちに向かって張り手をぶっぱなした・・・と思ったら、なぜか、梨子の後ろのほうから、

ドンッ

という音が響いてしまった。この音を聞いた男たち、ふと閉じていた目を開いて果南の方を見る。すると、果南、男たちに向かって張り手を・・・ぶっぱなしたと思っていたのになぜか商店の壁に向かって張り手をぶっぱなした・・・みたいだった。これには、男たち、

「なんで俺たちじゃなく壁に向かって張り手をぶっぱなしたんだよ!!バッカじゃないの!!」

と、果南のことをバカにする。

 しかし、果南はそんな男たちの言葉を無視しつつ目の前にいる梨子に向かってこう叫んだ。

「梨子ちゃん、今のうちに・・・」

 だが、梨子の様子がおかしい。果南、いそいで梨子の顔をのぞく。すると、なんと、梨子、目を回しているではないか。いや、梨子、なぜか機能不全に陥っていた・・・。

 

 梨子は果南が助けに来たことで安心していた。が、そんな果南を男たちはなめていた。そのために果南が突然男たちをかき分けて梨子の前に立つと、その男たちに向かって張り手をぶちかまそうとしていた、そんな果南を梨子は心配そうに見ていた。が、果南、その男たちに張り手をぶちかますことはせず、逆に、回れ右、をして梨子の方を向くと、なんと、その回れ右の勢いのまま、梨子の方に向かって張り手をぶちかましてきたのだ!!これには、梨子、

(こ、これじゃ危ない!!)

と身の危険を感じ、男たちと同様に身を構えては目をつぶってしまった。

 が、梨子、果南が梨子に向かって張り手をぶっぱなしてから数秒ほど経つはずなのにくるはずの痛みがなく、逆に、

(あれっ、なんか自分の耳元から「ドンッ」という音が聞こえてきたよ・・・)

という自分の耳元に鈍い音が聞こえてきたことに気づく。そして、梨子、その音の正体がなになのか確かめるため、恐る恐る目を開けると、なんと、自分の耳元近くの壁に手をつき顔を近づけてくる果南の姿があった。これには、梨子、あることに気づく。

(こ、これって・・・、いわゆる・・・、壁ドン、だよね・・・)

そう、梨子にとってみれば、果南、なんと自分に対して、壁ドン、をしている、そう見えていたのだ。

 で、これに気づいた瞬間、梨子、

(う、うそ・・・。まさか・・・、(私の願望だった)果南ちゃんからの壁ドン・・・、それがここで叶うなんて・・・)

と考えてしまい、頭のなかが真っ白、機能停止に陥ってしまった。たかが壁ドンぐらいで・・・と思われがちだが、壁ドン、こそ、梨子にとってみれば(性癖的な意味での)一番の好物・・・というか、願望、だった。実は百合志向が強い梨子にとって相手から攻められるシチュエーションが好み、というのは前にも言ったが、そんな梨子であるが、特に、壁ドン、に関しては、いつかは相手からされてみたい、そんな願望を常日頃から持つほどの好物だった。が、それが、今、こんな形でその願望が成就されたことで、梨子、興奮してしまう。それも、自分にとって愛しい存在である果南から、壁ドン、をされたのだ。これにはさすがの梨子も頭が真っ白になるほど興奮しすぎてしまい、逆にどうしたらいいかわからないほどパニック状態に陥ってしまった。それにより、梨子の心臓は破裂するくらいバクバク、もういつ死んでもおかしくない、そんな状態に梨子はなってしまった。むろん、こうなると、梨子が身を守るために機能不全に陥るのも無理ではなかった。

 

 そんな機能不全に陥った梨子を見た果南、

(えっ、梨子ちゃんが固まっている!!これはなんとかしないと!!)

と、梨子のことを気遣いつつも、

「梨子ちゃん、梨子ちゃん!!」

と、何度も梨子のことを呼び掛けるも梨子は復旧せず。これには、果南、

(梨子ちゃんが動かない・・・。どうしよう、どうしよう・・・)

と、逆にパニックに陥ってしまう。

 そして、果南、ついにある行動にでる。なんと、果南、なにも考えずに突然梨子のあごを持ち上げては自分の顔を近づけてきたではないか!!で、その梨子であるが、突然あごを持ち上げられたことにより、

(あれっ、なんであごを持ち上げられているの?)

と、少し意識を取り戻すも、それをした相手を見ては、梨子、

(えっ、果南ちゃん、なにやっているの!?)

と、それが果南の行動であることに気づく・・・だけでなく、果南が自分の顔を梨子の顔に近づいけているためか、

(うわ、うわわわわ!!)

と、再びパニックになる。そんな梨子、つい、こんなことも考えてしまう。

(こ、これって、か、果南ちゃんからの、あ、顎クイ、だよね・・・)

そう、今、果南が梨子にしている行為、それは、壁ドン、の上位互換、顎クイ、であった。これも梨子にとってみれば、いつかは相手にしてもらいたい、そんな願望、というか、好物の一つであった。で、あごをグイっと持ち上げて顔を近づける、こうなるとこのあとの展開は相場が決まっている、そう、強引なキッス、である。それこそ、「女の相手から攻められる」という百合的行為が好みである梨子からすれば、「顎クイ」こそ、好物の極み、といっても過言ではなかった。それを、壁ドン、に続いて(自分にとって愛しい存在である)果南からされているのだから、梨子が興奮を通り越して再びパニックになるのも無理ではなかった。

 というわけで、果南からの顎クイ、により、再びパニックに陥った梨子、また、少しずつではあるが意識が遠のいていく。

(か、果南ちゃん・・・、キ、キスはまだはやいよ・・・)

 そんな薄れゆく意識のなか、とつぜん、こんな声が梨子の頭のなかに響き渡る。

「梨子、梨子、梨子!!」

自分の名を呼ぶ声が聞こえてくる・・・、それに気づいた梨子、

(あっ、だれか私のこと呼んでいる!!しっかりしないと!!)

と、薄れゆく意識を強引に引き戻し意識を取り戻すと目をばっちりと開く。

 すると、そこには、

「梨子、梨子、しっかりして、梨子!!」

と、梨子のことを呼び続ける果南の姿があった。これには、梨子、

「か、果南ちゃん・・・」

と、果南の名を言うと、果南も、

「梨子ちゃん、突然固まってしまったから心配していたんだよ・・・。でも、梨子ちゃん、意識が戻って、本当に良かった~!!」

と、梨子がもとに戻ったことを喜んでいた。

 こんな果南に対し、梨子、

「果南ちゃん、私のこと、呼び続けてありがとう!!」

と、お礼を言うとともに、

「でも、なんで私の名前、ちゃんづけせずに呼び続けたのかな?」

と、果南に尋ねる。これには、果南、

「そ、それは・・・」

と、言葉を濁す。どうやら、何度も呼びかけても梨子が返事をしないため、呼びかけていくうちに無意識に「ちゃん」づけするのを忘れていたみたいだった。

 そんな果南であったが、もう一度梨子の姿を見て一言申す。

「梨子ちゃん、(今している)桜色のブラ、本当にかわいいね!!梨子ちゃんにお似合いだよ!!特に、桜の花びらの刺しゅう、梨子ちゃんだからこそとても美しくみえるよ!!」

この突然の果南の言葉に、梨子、一瞬、

(えっ!!)

と戸惑うも、もう一度自分の今の姿を確認する。すると、果南の登場でつい忘れていたことに気づいてしまう。

(あっ、私、今、全身びしょ濡れで、ブラ、透けて見えちゃっているんだよね・・・)

そう、今の梨子の状態だが、梨子にとってお気に入りの下着(ブラ)が全身びしょ濡れのために透けてみえていたのだ。これによって男たちから迫られそうになっていたのだが、そのことすら忘れていた、それどころか、突然、一番お気に入りの下着(ブラ)を、本来学校で着替えるときに見せようとしていた、自分にとって愛しい存在である果南からここで褒められたことに、梨子、

(でも、突然とはいえ、あの果南ちゃんから一番お気に入りの下着(ブラ)を褒められるなんて、なんか恥ずかしいよ・・・)

と、一瞬照れてしまった。こんな場面での出来事ではあるが、梨子にとって一番お気に入りの下着を着て果南に褒めてもらうという今日の目的は一応達成できた、ということで、それに対して、梨子、少し嬉しさを感じていた。

 が、照れてしまっていた梨子に対し、果南、冷静な対応をみせる。照れている梨子に対して、果南、

「でも、それをふていの輩に見せびらかすのはよくないよ!!せっかくの桜も散ってしまうものだよ!!」

と、強く梨子に注意すると、自分のバックから、今日果南が練習のときに使っていたスポーツタオルを出してはそれを梨子の頭の上にかけるては梨子に対してこんなことを言いだしてきた。

「梨子ちゃん、私が男たちの視線を遮っているあいだにこのタオルで濡れた制服を拭いてね。だって、梨子ちゃん、ブラが透けたままだとずっと恥ずかしい思いをし続けないといけないからね!!」

 この果南の言葉を聞いた瞬間、梨子、あることを悟る。

(か、果南ちゃん、まさか、自分を壁にして男たちから私のことを守ろうとしているの!!)

そうである。果南が梨子の前に立った理由、それは、梨子を男たちから守る・・・というよりも、梨子の透けているブラを男たちから見えないようにするためだった。もし、このまま梨子のブラが透けてみえているとしたら男たちはさらに欲情してしまうはずである、それを果南は自分が壁になることで男たちの梨子への視線を遮る、そのための果南の行動だった。また、果南の張り手もはったりであったが男たちを梨子から少しでも遠ざけるための行動だった。ただ勢いありすぎてそのまま壁に張り手をぶっぱなした格好になった・・・だけでなく、梨子から見ればまさかの、愛しい存在である果南からの壁ドン、に見えてしまったのだが・・・。それでも、梨子にとってみれば、そんな果南のやさしさに感動していたのは間違いなかった・・・。

 

 が、そんな梨子と果南のやり取りを近くで見ていた人たちがいた。そう、梨子に迫ろうとしていた男たちであった。その男たち、この2人のやり取りをただ茫然と見ていたのだが、すぐに我に返り、梨子の前に立っている果南に対し、

「おい、そこのお前、そこどけや!!彼女のかわいいブラが見れないじゃないか!!」

と言っては男たちにとって邪魔な存在である果南をどけようとする。しかし、果南も、

「いやだね!!」

と、男たちの要求を一方的に棄却すると、その場で仁王立ちになって梨子のことを必死に守ろうとした。

 しかし、梨子のことを精一杯守ろうとする果南に対し、リーダー格の男が突然とんでもないことを言いだしてきた。

「ほう、その彼女(梨子)を必死で守ろうとする王子様(果南)の今日のブラは緑のスポーツブラですか!!」

これにはさすがの果南もハッとする。そう、果南も(梨子を必死で守ろうとして気づいていなかったが)ブラ?が透けてみえていたのである。持ってきた傘を捨ててまで梨子のことを守ろうとしていた果南であったが、いまだに土砂降り状態が続いていたため、果南も全身びしょ濡れになっていたのだ。そして、果南が今着ている服も梨子と同じ夏の半そでセーラー服、なので、梨子と同じく、白くて薄い生地でできたセーラー服は水に濡れて果南の肌にべったり引っ付いてしまい、結果、果南もブラ?が透けてみえていたのである。

 が、このリーダー格の男の指摘に対し、果南、逆に怒りを覚えてしまった。なぜなら・・・。

(このどこがブラだっていうの!!これはね、水着、なの!!水着!!私が今着ているのは、緑じゃなくて、エメラルド色の水着、なの!!)

そう、果南が着ているブラらしきもの、なんと、水着、だった!!ではなぜブラじゃなく水着かというと・・・、とても暑い中で毎日ラブライブ!夏季大会東海予選にむけての練習をしているため、練習が終わるころにはどうしても汗だくになってしまうのである。そのため、果南、練習が終わるとよく学校のプールにそのままの姿(練習着)で飛び込んでしまうのである。しかし、下着を着た状態でプールに飛び込むとあとあと大変・・・なので、果南、それを防ぐために下に水着を着こんでいたのである。ただ、果南、今日は、ダイヤ、鞠莉と一緒に別にやること(バスの手配)があったため、早めに練習を切り上げたことでプールに飛び込むことはなくそのまま水着を着こんだ状態でここまで来たのである。なので、果南にとってみれば、今透けているのは水着であり、たとえ透けたとしても水着と認識している以上そんなに恥ずかしくなかったのである。

 そして、果南、梨子だけになく自分まで失礼なことを言った男たちに対し、

(う~、これ以上、ふていの輩(男たち)の相手をしていても埒が明かないよ~!!もう、こうなったら、最終手段、だよ!!)

と業を煮やすと、果南、男たちの前を向いて、こんなことを大声で言いだしてきた。

「あんたたち、今すぐこの場を去りなさい!!さもないと・・・」

果南の最終警告、であったが、とうの男たちはというと・・・、

「ふ~ん、そうなの。そんなもん、俺らにしてみれば、痛くもかゆくもないわ!!」

と、平気な顔をする。そんな男たちの対応に、果南、耳も課さずに自分のバックからあるものを取り出して男たちにそれを見せつけた。

 すると、その果南が取り出したものを見て、男たち、突然、

「・・・」

と黙りこくってしまった。この男たちの反応を見た果南、男たちに向かって大きな声で怒鳴った。

「もし、これ以上ここにいるなら、これ、鳴らすよ!!」

果南が自分のバックから取り出し男たちの前で見せつけたもの、それは・・・、防犯ブザー、だった。だが、ただの防犯ブザーではなかった。それはとある理由で発売してからすぐに発売中止・回収になった防犯ブザー、「鞠莉ちゃん特製の防犯ブザー(超大音量ver)」、だった。この防犯ブザー、鞠莉の父親が社長を務めている会社の子会社で作られたものなのだが、ひとたびブザーのひもを引くと、この内浦はおろか、対岸の沼津市街地まで響くほどの大音量ものブザー音がなる仕掛けがあった。ただ、その対岸まで届くほどの大音量がゆえに、発売されてからすぐに発売禁止・回収になった、そんないわくつきの防犯ブザーであった。そんないわくつきの防犯ブザーであったが、鞠莉、そんなことを知らずに護身用にと果南に持たせていたのだが、それが今、役に立つとは果南も思っていなかった。が、それでも、果南にとってみれば男たちを黙らせるのに一番効果がある、と思って果南はこの防犯ブザーをバックから取り出した、わけである。まっ、果南はAqoursメンバー随一のプロモーションの持ち主(ダイヤ談)ということで、もしものときのためにと鞠莉が果南に無理やり持たせたものなんですけどね・・・(あと、果南もこの防犯ブザーについては鞠莉から渡されたときは発売中止になったものとは知らなかったものの、あるきっかけで果南もこれが発売中止になったものであり、その発売中止になった理由も知ることになったのですが、果南からしたら、「まっ、いいか」、と、それらについてはあまり気にせず、鞠莉からもらったものとしてそのままにしていた・・・というのが実情・・・でした・・・。まっ、あまり小さいことにくよくよしない、そんな果南の性格を妙実にあらわしているのかもしれませんね・・・)

 そんなわけで、男たちもこの防犯ブザーについては知っていたらしく、この防犯ブザーが鳴れば必ず誰かがこっちに来る、沼津市街地からたくさんのパトカーがやってくるのは目にみえている・・・、たとえそうじゃなくても超大音量を前に自分たちの耳がつぶれてしまう・・・ということを理解していたらしく、リーダー格の男、

「おい、やべぇぞ!!この女(果南)、本気だぞ!!こんなもの(防犯ブザー)、鳴らされたら、俺たち、最後だぞ!!おい、お前ら、逃げるぞ!!ずらかるぞ!!」

と言っては持っていた傘を捨てて逃げていった。むろん、その仲間たちも、

「リーダー、待ってください!!俺たちを置いていかないでください!!」

「もうご勘弁を・・・」

と言ってはリーダー格の男と同じくさしていた傘を捨てて逃げていった。

 こうして、梨子を取り囲んだ男たちはどっかに消えてしまった・・・。

 

 と、いうわけで、男たちが果南の防犯ブザーの前に一目散と逃げたことにより、この場には梨子と果南、2人しかいなかった。その果南であるが、男たちが逃げていくのを確認すると、梨子に対し、

「梨子ちゃん、大丈夫?」

と、心配そうに尋ねると、梨子も、

「う、うん、大丈夫・・・だよ」

と、少しこわばりながら果南に返事をした。

 が、このときの梨子の心のなかはというと・・・、

(か、果南ちゃん、かっこよすぎだよ・・・)

と、梨子、自分に迫ろうとしていた男たちを撃退した果南の姿に感動しつつも、

(でも、よく考えたら、(愛しい存在である)果南ちゃんから、壁ドン、顎クイ、されちゃったんだ・・・。たしか、これって、俗にいう、「壁クイ」・・・、だよね・・・。私の願望・・・叶ったんだよね・・・。それって、今、考えると、とても恥ずかしいこと、だよね・・・)

と、自分にとって願望だった、愛しい果南からの壁ドン、顎クイ、2つ合わせて、「壁クイ」、それを果南からしてもらったことへの高揚感、恥ずかしさでいっぱいであった。

 と、そんなわけで、その気持ちがゆえに果南からの問いかけにおろおろしながらも返事をした梨子であったが、そんな梨子に対し、果南、

(なんか梨子ちゃんの様子がおかしいけど、このままだと、梨子ちゃん、風邪をひいてしまう!!)

と、梨子のことを心配してか、放り投げていた自分の傘を拾い上げると、梨子の前にその傘を突き出しては、

「はい、梨子ちゃん、私の傘、貸してあげるよ!!梨子ちゃん、それをさして家に帰ったほうがいいよ!!」

と、ぶっきらぼうに梨子に言ってしまう。

 が、ちょっと不器用だけど自分のことを大事にしようとしている、そんな果南のやさしさに、梨子、

(ふっ、ちょっと固いけど、果南ちゃん、私に対して自分の傘を貸そうとしている!!そんな、不器用だけど私のことを大事にしようとしている、そんな果南ちゃんのやさしさ、私は好きだよ!!)

と、心の底からほっとなるのを感じると、梨子、その果南のやさしさにこう言って応えることにした。

「か、果南ちゃん、(傘を貸してくれて)ありがとう!!」

このときの梨子の表情だが、少しはみかみながらも、心の底から果南のことを好きだよ、それを指し示すようなまんべんの笑顔だった。

 この梨子の笑顔を見た果南・・・であったが、突然、

ドキッ

という心ときめくものを果南は感じてしまったのか、果南、少し照れくさい表情になる。これには、果南、

(こ、これは・・・どうすればいいの・・・)

と、これまで経験したことがない、そんな感情に戸惑いつつも、

(でも、梨子ちゃんを助けたことだし、あともう少しで淡島に行く船の出航時間になっちゃうし・・・。う~、仕方がないよ~、梨子ちゃん、ごめん!!私、もう行くね!!)

と、淡島に行く船の出航時間が近づいているために梨子たった一人を残していく、それについてのお詫びの気持ちになる果南。

 と、いうわけで、果南、照れくさい表情をしつつ、梨子に対し、

「梨子ちゃん、ごめんね!!もうすぐ(淡島に行く船の)出航時間になっちゃうから、私、もう行くね!!梨子ちゃん、またね!!また明日ね!!」

と、言ってはそのまま淡島の船乗り場まで駆け足で去ってしまった。この突然の状況に、梨子はただ、

「あっ、果南ちゃん、また明日・・・」

と、言うことしかできなかった。

 

 その後、無事に淡島に行く船に乗ることができた果南であったが、船のなかであのときに見せた梨子の笑顔を思い出すと、果南、

(梨子ちゃん、その笑顔は反則だよ・・・)

と、梨子の笑顔にときめいてしまった自分の姿を気にしつつも、

(でも、あんな笑顔をみせられたら、私、梨子ちゃんのこと、ずっと守りたくなる、そんな気持ちになるよ・・・)

と、あの梨子の笑顔を一生守りたい、そんな気持ちになってしまう自分に戸惑いを感じていた。

 その果南の戸惑いであるが、のちにそれが果南の梨子に対する恋の目覚めになるのだが、このときの果南は知る由もなかった・・・。

 

 対して、たった一人残ってしまった梨子、であるが、自分にとって一番お気に入りの下着、特にブラの桜の花びらの刺しゅうを褒めつつも、身を挺してまで自分に迫ろうとしていた男たちから守ってくれた、だけでなく、自分の願望だった、果南からの壁ドン、顎クイ、2つ合わせて、壁クイ、それを叶えてくれた、そんな果南のことを思い出しては心臓の鼓動が激しくなるも、

(なんか夢のような時間だったよ・・・)

と、この果南との貴重な時間をしみじみに思い返してはそのときの気持ちをふたたび感じとろうとしていた。

 そして、果南が梨子の頭にかけてくれた(果南の)スポーツタオルを広げては、

(う~、果南ちゃんの匂いとぬくもり、感じるよ~)

と、梨子、そのスポーツタオルに残っている果南の匂いとぬくもりを直に感じていた。

 こうして、果南のスポーツタオルで果南成分を十分吸収した梨子は果南が去っていた方向に向かって大きな声でこう叫んだ。

「果南ちゃん、助けてくれてありがとうね!!そして、一番お気に入りの下着をほめてくれただけじゃなく、私の願望すら叶えてくれて、果南ちゃん、本当にありがとう!!私、果南ちゃんのこと、もっと好きになっちゃった!!」

 果南を自分の愛しい存在から恋する相手へと昇華させた、そんな梨子の気持ちはとてもすがすがしいものとなっていた。その梨子の気持ちと通じているのか、次第に雨がやむと、空にはきれいな夕日、そして、とても大きな虹が架かっていた。それは、梨子と果南のこれからの未来を指し示すものになっていたのかもしれない。 (了)

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