そして、翌日の土曜日・・・、
「あともう少しで奈々さんがやってくる・・・。大丈夫かな・・・」
と、奈々に惚れたためか高まる心臓を抑えつつもしずくは奈々の到着を待っていた。そのときだった。突然、しずくのスマホに、
ツツー ツツツー ツツー
という着信音が鳴る。これに、しずく、
「あっ、奈々さんですね!!」
と、奈々が自分の家の近くに到着したことを知ると電話に出て奈々がいる場所を聞いてから奈々を迎えにいった。
この数分後、
「奈々さん、おはようございます!!」
このしずくの声に今日も黒縁メガネに三つ編み姿の奈々も、
「あっ、しずくさん、おはようございます」
と挨拶をした。その奈々に対し、しずく、
「奈々さん、こんな遠くまで来てくれるなんて嬉しいです」
と言うと奈々も、
「まさかしずくさんの家が鎌倉にあるなんて知りませんでした。しかし、鎌倉から毎日通学しているなんて、私、びっくりです」
と言うとしずくも、
「そんなこと、この私には容易いことです。それに、長時間の通学時間に演劇のセリフなどを覚えるなどして時間を有効活用すれば有意義な時間になります!!」
と答えていた。って、鎌倉!?そう、しずくの家は鎌倉にあった。で、しずくはそこから毎日長時間通学をしていた。とはいえ、しずくからすればその長時間もの通学のあいだで演劇のセリフを覚えたり本を読むなどしているため、その長時間通学の時間こそしずくにとってとても大切な時間ともいえた。
そして、しずくは奈々を自分の家に招くなり、奈々、
「うそ・・・、しずくさんってお嬢様、だったのですか!?」
と驚いてしまった。そう、しずくの家は歴史を感じる家屋であり、玄関で「ただいま」と言っても遠くの部屋まで届かないほどの広さを有していた。なので、マンション住いの奈々からしてもしずくの家はラノベに出てくるお城のように見えたのかもしれない。(ちなみに、広い庭付きかつ雛飾りも七段もあるということです)
とはいえ、奈々はしずくによってしずくの自室に通されるとすぐに、
「ところで、しずくさん、早速ですが、「ローマの休日」のDVDを一緒に見ましょう!!私、「ローマの休日」のDVDをしずくさんと一緒に見たくてしずくさんの家に来たのですから!!」
としずくに対して言うと、しずく、
ドキッ
としつつも、
「あっ、それならもうすでにプレイヤーにDVDをセットしてあります。さっそく見てみましょう」
と言うと奈々も、
「しずくさん、さっそくお願いします!!」
と言ってくれた。ただ、このとき、しずく、
(うわ~、2人だけで「ローマの休日」の鑑賞会だなんて、なんか市増がバクバクしてしまいます・・・)
と今にも炸裂しそうな心臓の鼓動を少しでも抑えようとしていた。
とはいえ、2人だけの「ローマの休日」鑑賞会はちょっと楽しいものとなった。何十回も「ローマの休日」を見ているしずくにとってみれば映画の内容そのものを全部覚えているため、そこまで見る必要はないのだが、
「うわ~、痛そうです・・・」「アン王女、とてもかわいそうです・・・」
と、ついつい自分の思っていることを口にしてしまう奈々の姿を見ては、
(なんか奈々さんを見ていると私としても自分でも忘れているくらい最初にこの映画を見たときの思いを思いださせてくれます。その意味でも奈々さんに感謝です)
と、つい忘れていた、初めてしずくが「ローマの休日」を見たときの思いを振り返ることができた、そのことに深く奈々に感謝していた。
そして、しずくのテレビの画面に「fin」という文字が出てくると、奈々、
「うわ~、とても感動ししました・・・。アン王女と新聞記者の身分を超えた恋愛、なのに、最後は結ばれないなんて、とても悲しいです・・・」
と泣いて「ローマの休日」の感想を述べた。その奈々の感想を受けてか、しずく、
「私も何度も「ローマの休日」を見ていますが、シナリオといい、アン王女役のオードリー・ヘップバーンさんの演技も素晴らしいものがありました。やはり、オードリー・ヘップバーンさんは私にとって目指すべき人です!!」
と、力いっぱい言うと、奈々から、
「へぇ~、しずくさんはオードリー・ヘップバーンさんを目指しているのですね」
と聞かれるとしずくも、
「はい、私はオードリー・ヘップバーンさんみたいな女優になりたくてニジガクに編入したのです!!」
とはっきりと答えた。これには、奈々、
「なるほど。しずくさんなら絶対にオードリー・ヘップバーンさんみたいな女優さんになれると思います!!」
と笑いながら言うと、しずく、一瞬、
ドキッ
と、胸を打つような心臓の音が聞こえたのか、
(うわ~、とても恥ずかしいです・・・。奈々さんにかっこいいことを言われました・・・)
と、少し恥ずかしそうになりつつも、
「な、奈々さん、ありがとうございます!!」
と、お礼を言った・・・のもつかの間、奈々から、
「それとも、しずくさん、お笑いに進むのも手かもです!!鬼瓦!!」
とふざけながら言われると、しずく、
「そ、そっちの方には進みません!!」
と、逆に拗ねてしまった。ただ、この奈々の言葉に、しずく、
(でも、私を少しでも落ち着かそうとする奈々さんのお言葉、本当に嬉しい限りです)
とわざとしずくを笑わせようとしている奈々に対して心のなかでお礼を言った。
その後、いつもの通り、「ローマの休日」のの映画版について2人は、
「やっぱり映画版は小説版よりとてもいいです!!やっぱり、実際に見たほうがいいですね!!」(奈々)
「小説版は小説版の、映画版には映画版のいいところがあります!!だから、どっちがどっちなんて言えないのですがね・・・」(しずく)
「たしかにしずくさんの言う通りですね」(奈々)
と、2人はとことん語り合うことに・・・。
とはいえ、ここでもいつもの通り、時間がたつのは早いものでして・・・、
「あっ、もうすでに17時を過ぎてしまいました。もう家に帰らなないと・・・」
と奈々は残念そうに言うとしずくも、
「たしかにそうですね。奈々さんは有明に住んでいるのですね。もう帰らないと夜になってしまします・・・」
と、こちらも少し残念そうにしていた。
と、ここでしずくはあることを考えてしまう。
(奈々さん、なにか残念そうに見えます。でも、なんで、奈々さん、普段は「クールで真面目な生徒会長」をしているのでしょうか。私が偶然知ったのもありますが、普通の奈々さんは「好きなもの」を熱く語れる情熱派です。それはまるでせつ菜さんみたいな人です。ですが、私以外のときだと「クールで真面目な生徒会長」を演じている気がします。それはなぜなんでしょうか?)
そう、奈々はしずくのときだけ、2人だけの時間だけ、自分の「好き」を言うことができるのだが、それ以外のときは「クールで真面目な生徒会長」をしている。それは奈々がまるで2つの性格を使い分けている、そんな気がしずくは感じていた。でも、なぜ、奈々は2つの性格を使い分けているのか、しずくには不思議に思ったのである。
そんなわけなのか、しずく、
(それなら直接何さんに尋ねるだけです!!)
と、意を決して奈々にあることを尋ねてみた。
「ところで、奈々さん、私、少し不思議に思ったのですが、私だけの時間のときだけ自分の「好きなこと」を熱く語れるくらいの情熱派なのに、それ以外のときはなぜ「クールで真面目な生徒会長」をしているのですか?」
このしずくの質問に、奈々、
「そ、それは・・・」
と、言葉に窮してしまう。
だが、それでもしずくの決心は固かった。言葉に窮する奈々に対し、しずく、
「奈々さん、答えてください!!」
と、押しに押して奈々に迫った。
すると、奈々、なにか決心したのか、しずくに対し、こうお願いした。
「しずくさん、それでしたら、明日、私の家に来てください。そこで、その理由をお話ししましょう」
このときの奈々の表情はなにかを決心した、そんな感じがしていた。そのため、しずく、奈々の言葉に対し、
(奈々さん、なにかを決めたみたいですね)
と思うとすぐに
「はい、わかりました。明日、奈々さんの家に行くことにします」
と答えた・・・。
翌日の日曜、しずくは自分の家がある鎌倉から東京有明まで電車に乗って行くとそのまま奈々の家へと直行した。そのとき、しずく、
(ラノベなどが好きな奈々さんだからラノベの本を書棚に揃えているかもしれません・・・)
と少し期待しつつも、
(でも、奈々さん、私が奈々さんの秘密を・・・、生徒会の役員のみなさんが帰ったあと、私がラノベをこっそり読んでいる奈々さんを初めて見かけたときに、「とある理由で私のラノベをここに隠しているのです」っておっしゃってましたが、なぜ、そうおっしゃったのか謎ですね・・・。なにか、奈々さん、私にまだ隠していることがありそうですね・・・)
と、奈々の発言を思い返しながら考えていた。たしかに、しずくが奈々の秘密の時間のことを知ったとき、奈々は「とある理由で私のラノベをここ(生徒会室)に隠している」と発言していた。そう考えると、ラノベが好きな奈々がわざわざ生徒会室に自分のラノベを隠す必要があるのか謎である。その点からしても奈々はまだしずくに隠していることがあるのではないかと思ってしまうのも仕方がなかった。
そんなことを考えつつも無事に奈々が住むマンション1階のエントランスに到着したしずく、すぐにエントランスにあるインターホンを押しては、
「桜坂しずくです。奈々さん、いらっしゃいますか」
と、インターホンのマイクに向かって言うとエントランスのドアが開いた。すると、奈々の家まで上っては奈々の家の前にあるインターホンを鳴らした。
すると、
「あっ、しずくさん、こんにちは!!」
と奈々が玄関のドアから現れた。これには、しずく、
「おじゃまします」
と言っては奈々の家にあがることにした。
そのときだった。突然、奈々のスマホが鳴る。これには、奈々、
「うぅ、また父さんからです・・・」
とうんざりした感じで自分のスマホを取り出すとその画面を見ては奈々はまたうんざりする。その画面には、
「奈々、友達を読んだそうだがちゃんとした友達だろうな?」
という文字。これには、奈々、すぐに、
「はい、お父さん、(今回訪れた)しずくさんは私の後輩で生徒会の手伝いをしてくれるいい子です。心配しないでください」
と返信した。すると、すぐに、
「いいか、友達はちゃんと選べよ!!奈々はちゃんとしたリーダーにならないといけないのだからな!!」
という奈々の父親からの返信が届いた。
この奈々とその父親とのやり取りを見ていたしずく、
(わ、私を見定めている感じがします・・・、奈々さんのお父さん・・・)
と、いっしゅんびくっとするも、奈々、つかさず、
「しずくさん、あまりびくっとしないでください・・・」
と言ってはさっさと自分の部屋へとしずくを連れて進んでいった。
そして、奈々の部屋に入るなり、しずく、あるものにびっくりする。
「あ、赤本ばかり・・・」
そう、しずくがもともと想像していた奈々の部屋、ラノベがずらりと並んだ書棚のある部屋・・・ではなく、赤本などの大学受験のための参考書が書棚にずらり・・・というか書棚の本すべてが大学受験のための参考書であった。それ以外についてもトロフィーなどが数点置いているだけで、オタク部谷・・・とは180度違う勉強部屋そのものだった。
そのため、しずく、奈々に対しこの部屋について尋ねてみることにした。
「あ、あの・・・、私が・・・想像したものとは違う気がするのですが・・・」
これには、奈々、
「たしかにしずくさんの想像した通りです。この部屋はまさに勉強部屋です。そして、この部屋こそ私が「クールで真面目な生徒会長」をしている理由の1つでもあるのです・・・」
とたんたんと答えていた。この奈々の答えに、しずく、
(も、もしかして、奈々さんのお父様に原因があるのでは・・・)
とつい思ってしまい、奈々に対しあることを尋ねてみた。
「奈々さん、もしかして、まるで奈々さんのことを監視しているような発言をしているお父様との関係によって・・・」
このしずくの発言が引き金になったのかはわからないが、奈々、真面目な表情になってあることを語り始めた。
「実は生徒会長になったのも私の実績作りのためだったのです・・・」
この言葉のあと、奈々が「クールで真面目な生徒会長」を演じるようになった理由を話してくれた。奈々の両親は笑顔の少ない堅物な人であり、自分の子である奈々には「リーダーシップをとれるような人間になってほしい」という願望があったためにとても真面目でないといけないと思っているためか、ラノベはおろか漫画やスクールアイドルにすら存在を否定するくらい、いや、奈々がそれを読むこと、見ること、することすら禁止されるくらい厳しかった。だが、そんな両親に対して奈々は自分の好きをしたいという欲求が強かったのだが、堅物な両親のもと、小学校中学年くらいまでは両親が奈々が自分たちの言いつけを守っていると思えるくらい奈々はいい子にしていた。だが、小学校中学年のときにたまたま友達の家で見たアニメに深く感動した奈々はそれがきっかけとなり、アニメ・ラノベなどといったものが好きになっていった。だが、それでも、奈々の両親は奈々をちゃんとしたリーダーになってほしいらしく、奈々は自分の「好き」、ラノベ・アニメなどの「好き」を隠しつつも、両親の求めるリーダー像目指して頑張っていく。そして、両親の願望、真面目でちゃんとしたリーダーになるためにニジガクに入学したあと、そのリーダーになるための実績作りのために生徒会長になったのだが、自分の「好き」を隠してきたことがわざわいしたのか、それとも、クールで真面目な自分を演じていないと両親に本当の自分がばれてしまう、そんなことを危惧したのか、わからないものの、通常の奈々はいつもクールで真面目な自分をずっと演じていたため、生徒会長になってもそのスタンスは変えることができなかった、というか、「クールで真面目な生徒会長」というイメージがついてしまい治すことができなかった・・・とのことだった。
そんな奈々の話を聞いて、しずく、
「うそ・・・」「な、奈々さんが両親のせいで苦しんでいるなんて・・・」
と、絶句するしかなかった。しずく、奈々の話を効いている最中、
(奈々さんは本当の自分と自分の両親から求められている自分、その2つのあいだで苦しんでいます。その苦しみというのは、もしかすると、今の私、いつも「当たり障りのないいい子」を演じている、自分の「好き」を大々的に言えない、そんな今の私よりも深刻なのかもしれません・・・)
と、奈々のことを心配そうに感じていた。しずくにとって今の悩みは同世代のみんなとのあいだで浮かないように「当たり障りのないいい子」を演じていること、それに対して、自分の「好き」をせつ菜みたいに大々的に言えるようになりたい、そのことである。だが、奈々が抱えている悩みはしずく以上のもの、自分の「好き」を言える、本当の自分、それと、奈々の両親により強要されているかもしれない、「クールで真面目な生徒会長」、その2つのあいだで苦しんでいることだった、それに今の奈々は苦しんでいる、といっても過言ではなかった。
そんなこともあり、しずくは自分の二面性などで苦しんでいると思われる奈々に対し、
(このままだと奈々さんが壊れてしまいます。なら、自分の好きをもっと出せるようにしないといけないと思います・・・)
と、その苦しみから奈々を少しでも和らげようと思ったのか、奈々に対し、あることをしずくは奈々に提案した。
「そんなに苦しんでいるのなら、奈々さん、今度の土曜日、私とデートをしましょう!!デートをして、お台場のいろんなところに遊びにいきましょう!!私、これ以上、奈々さんを苦しませたくない、と思います!!だからこそ、奈々さん、今度の土曜、私とデートをして、自分の「好き」を発散させてください!!」
このしずくの提案に、奈々、
「し、しずくさん・・・、その日は・・・」
と、言葉に窮してしまうも、しずく、そんな奈々に対し、
「私にも悩みがあります。なので、私もこのデートを通じてその悩みを解消させたいと思っております。だから、奈々さん、私と一緒にデートをして私たちの悩みを発散させましょう!!」
と、力強く言った。しずくの悩みとは・・・、そう、いつも「当たり障りのないいい子」を演じている、それから脱却すること、自分の「好き」をせつ菜みたいに言えるようになりたい、そのことだった。そして・・・、
(私は奈々さんに惚れている気がします。そんな自分の気持ちを確かめるために、そして、せつ菜さんに憧れている、いや、奈々さんと同様に惚れている、そんな自分の気持ちを確かめるためにも私は奈々さんとデートをします!!)
と勢い込む。しずく、そのためか、昨日みたいに強気に奈々に迫ろうとしていた。もちろん、
「奈々さん、私、奈々さんとデートをしたいです!!」
と言いながら。
これには、奈々、昨日みたいにしずくに根気負けしたのか、
「は、はい・・・」
と、ただただうなずくしかなかった。ただ、このときの顔はなにかまだしずくに隠していることがある、そんな思いが見え隠れしていた。
ただ、そのことも知らずにしずくはウキウキしながら自分の家へと帰っていった、
(これで奈々さんとデートができる!!私としてはとても嬉しいです!!)
と、奈々とのデートができる、そこで自分の悩みと奈々の悩みの両方が解決できる、そう確信しながら・・・。