いきなりダンスの講師をお願いされた絵里、その理由を果林に問うた。
「どうしてこの私が果林にダンスを教えないといけないの?果林だったら私が教えなくても上手のはずじゃ・・・」
だが、果林はすぐにその理由を答えた。
「私、今度、せつ菜とダンス対決をするの。たしかに私のダンスはうまいよ。でも、せつ菜は私以上にダイナミックさを持っているの。こうなってしまうと私のセクシーなダンスでは太刀打ちできないわけ。だから、お願い、絵里、私にダンスを教えて!!」
この果林の言葉に、絵里、
「たしかに私と果林は前にダンス対決で互角以上の勝負をするくらい果林のダンスはうまいけど、それでも、私からダンスを習いたいのね?」
と、もう一度果林に確認をとると、果林、
「絵里は小さい時からバレエでダンスセンスを磨いてきたことを聞いたことがあるの。だからこそ、私、朝香果林、そんな絵里からダンスの指導を受けて今以上にダンスがうまくなりたいの!!」
とはっきりとした口調で言うと、絵里、
「とはいえ、果林のダンスレベルは私と引けを取らない・・・と思っています。なので、指導・・・ではなく、お互いにダンス練習をして気づいたところは指摘していく、そんなスタイルでの練習をしてみましょう」
と、果林に指導・・・ではなく、お互いにダンス練習をしていく、その方向でいくことにした。
「1,2,3,4、2,2,3,4」
と絵里の声がまわりに響き渡る。それに合わせて果林も、
「はい、はい」
という声とともに絵里に合わせていく。これには、絵里、
(果林ったら、私と練習といいつつも私に負けじとついていっているじゃない・・・)
と、果林のことを認めつつも、
(でも、なにかいつもよりキレが悪い感じじゃないかしら・・・)
と、果林のダンスのキレについて心配する。そう、果林は絵里のダンスについていってはいるがいつもよりダンスのキレが悪かったのだ。いつもならキレキレのダンスを果林はするのに今はそのキレが感じられないくらいに、まるで絵里のダンスについていくだけの状態に絵里にはみえてしまった。ただ、このときの果林はただ、
(もっと絵里を超えないと・・・、じゃないとせつ菜に負けてしまう・・・)
と勝負のことだけを考えて・・・、考えて・・・、
(せつ菜に負けて・・・、負けて・・・、でも、私、そのせつ菜に・・・、せつ菜に・・・)
と、なぜかせつ菜のことを考えてしまった・・・。
と、ここで、絵里、
(これは果林の心配事を解決するのが先ですね)
ということで、
「果林、そこでストップ!!」
と言うとすぐに、果林、
「絵里、どうしたのですか?突然、練習を止めるなんて・・・」
と絵里に対し聞いてみると、絵里、そんな果林に向かってこう尋ね返した。
「果林、なぜ、ダンスにキレがないのですか?」
これには、果林、
「そ、それは・・・」
と言葉に窮すると絵里はまるでわかったのようにこう答えた。
「もしかして、なにか考え事があるのではない・・・。たとえば・・・、せつ菜のこととか・・・」
この絵里の言葉に、果林、
ドキッ
と心臓が鼓動すると慌てたのかように、
「そ、それは・・・」
とまたもや言葉に窮してしまった。
だが、それでも絵里は果林に迫ってきた。絵里、果林に対しこう言ってくる。
「果林、このままだとせつ菜に負けてしまうのでは・・・」
この絵里の言葉に、果林、
(う、うそでしょ・・・。絵里になにかバレている気がする・・・)
と思ったのか、
「うぅ・・・」
とうなってしまった。果林にとって絵里から図星を言われたことに相当ショックを受けたのだろう。
そんな果林に対し、絵里、
「果林、私に話してください。そうすればなにかスッキリすると思います」
と言うと、果林、
(もうここは絵里に自分が思っていることを思いっきりださないとダメだよね・・・)
と観念したのか、絵里に対し、今、自分のなかでため込んでいるものを吐き出した。
「絵里、実は、私、せつ菜に私のダメなところをみせてしまったの・・・。部屋の片付けができないところ、朝が非常に弱くてせつ菜に着替えさせてもらったこと、勉強が苦手でせつ菜に勉強を教わったこと、あと・・・、方向音痴でせつ菜に部室まで連れて行ってくれたこと・・・」
これには、絵里、
「でも、果林は「セクシーなお姉さん」というイメージが・・・」
と言うと、果林、絵里に泣きついてはこう叫んだ。
「私はこれまで「セクシーなお姉さま」というイメージがあったの。でも、こんなポンコツな私をせつ菜に見せたら幻滅しちゃうよね・・・。でも、そんな私をせつ菜は優しく接してくれた・・・、それに、私・・・、私・・・」
この果林の言葉に、絵里、
「もしかして、果林・・・」
と言うと果林は自分のなかにある心情を暴露した。
「そう、私、そんなせつ菜にときめいてしまったの・・・。でも、私にとってせつ菜はライバル。あのせつ菜に負けたくないくらいの完璧さがないとダメ・・・。それなのに、私、本当にポンコツだらけ・・・。これじゃ、私、ダメダメじゃない・・・」
そう、果林はせつ菜に、ライバルであるせつ菜に恋をしていた。だが、せつ菜はニジガクのスクールアイドル同好会のエース、ということもあり、とても高い実力を、いや、完璧さを有していた。それに対し、果林、「クールなお姉さま」というイメージをみんなが持っていたもののその中身は超がつくくらいのポンコツであった。そんな完璧にちかいせつ菜とは見劣りしてしまう、ということなのだ。
だが、絵里、それを聞いた上でこんなことを言いだしてきた。
「果林、私としては別にそれでもかまわないと思います」
この絵里の言葉に、果林、
「えっ、絵里、それって・・・」
と逆に尋ねてしまった。
その果林の言葉を受けてか、絵里、果林に自分の言葉の真意を語った。
「果林、この世の中に完璧な人なんてあまりいません。それよりも、人はどこかに必ず弱いところがあるのです。もちろん、この私にも・・・」
この絵里の言葉に、果林、
「えっ、あの完璧超人の絵里でも・・・」
と唖然となってしまう。だって、絵里といえば完璧超人としてのイメージが強かったりする。音ノ木坂の前の生徒会長かつまわりのみんなから慕われている、また、眉目秀麗、文武両道、と非の打ちどころがないものだった。そんな絵里にも弱いところがある、これにはさすがの果林もびっくりするものだった。
そんな果林に対し、絵里、自分について語り始める。
「たしかに私はまわりから完璧超人とみられていると思います。ですが、そんな私にもポンコツなところがあったりするのです!!たとえば、この前の合宿のとき、私、暗いところが苦手でずっと明かりのあるテントのなかに隠れていたの。また、私、まわりに流れやすいみたいで、みんなからの悪ノリについついのってしまうところもあるし、(μ'sメンバーの)にこの作り話を鵜呑みにしてしまったり、などなど。それくらい、完璧超人と思える私でさえポンコツなところがあるのです」
そう、絵里にもポンコツな部分があった。絵里といえば、完璧、でも、意外と暗がりのところが苦手であったり、みんなに流されやすい(悪ノリにのっかってしまう、人の作り話、嘘を信じてしまう)、そんな性格の持ち主である、絵里は。また、絵里はこのときは言っていなかったが、μ'sを結成したころ、スクールアイドル活動のせいで絵里がダメになると思った教師たちに対し、絵里、「エリチカ、おうちに帰る!!」と言ってしまったこともあったりする(それ、忘れて!!By絵里)。それくらい、絵里にポンコツなところがあったのだ。
そんな絵里の話を聞いて、果林、絵里にあることを尋ねた。
「完璧な絵里にも私と同じポンコツなところがある・・・。でも、絵里、それいよって自分が嫌にならないのかしら・・・」
そう、ポンコツな自分に嫌気を指しているのでは、と、果林は絵里に対しそう思ったのだ。
だが、そんな果林からの質問に、絵里、こう言ってしまう。
「ポンコツなところ、私、あまり気にしていないわよ。それ以上に、私、それを自分の個性だと思っているの。だって、そんなところを含めて、私、ですから・・・」
そう、ポンコツなところ、それも1つの個性といえる、と絵里は言っているのだ。人というのは得意なところもあれば苦手なところもある。いいところもあれば悪いところ、ポンコツなところもある。それを含めて個性だといえる。その個性があるからこそ人は面白みがでてくるのかもしれない。絵里はそれを含めて果林にそう伝えたのである。
そんな絵里の言葉に、果林、
「私の個性・・・、ポンコツなところも私の個性・・・」
と唖然となるも、絵里、さらに続けてこんなことを言いだしてきた。
「「セクシーなお姉さま」、それなのにポンコツなところ、その果林の個性があるからこそせつ菜も果林の世話をしたのではない」
そう、せつ菜は果林の個性の部分、ポンコツなところ、そのところにひかれて果林のお世話をした・・・かどうかはわからないが、それでも、その果林の個性の部分を認めつつも、その個性、ポンコツなところで果林のために動いた、お世話をした、そう思って間違いないだろう、その点を絵里は果林に指摘したのである。
この絵里の言葉を聞いて、果林、
「そう言われてみると、私、ポンコツなところも私の個性だと思えてしまうわ・・・」
と、自分の弱いところ、ポンコツのところを認めるとともに、
「それに、そんな私のポンコツなところをせつ菜は認めてくれた・・・、そんなの、私、せつ菜に惚れるしかないじゃない・・・」
と、せつ菜の果林に対する行いのところに惚れてしまったことを再確認していた。
そして、果林、ついにあることを自覚した。
「私はせつ菜のことをライバルとして認めているけど、それ以上にせつ菜のことが好きになってしまったわ・・・。それって嬉しいことでしょ・・・」
そう、ついに果林はせつ菜のことをライバルとして、そして、好きな人として認めてしまったのだ。それは果林にとって晴れやかなものだった。果林はこれまでせつ菜のことを、ライバル、そして、自分の弱いところを見られてしまった者としてみていた。だが、その自分の弱いところを認めつつもそれでもそんな果林のお世話をしてくれるせつ菜のことを好きになったのである。そのことを認めたことで果林の心は晴れていったのである。
そして、果林、もう1度、絵里とダンス練習を行った。すると、
「ここっ!!」
と、これまでとは違う、キレキレのダンスをしていた。これには、絵里、
「そう、その調子!!」
と、果林を褒める。ついに果林はもとの自分に、キレキレのダンス、セクシーなダンスをみせることができる、そんな本当に自分へと戻ることができたのである。
これで果林は立ち直ることができた・・・のだが、ここで、果林、絵里にこんなことを話す。
「絵里、ところで、絵里に悩み事はないのかしら」
この果林の言葉に、絵里、
「そ、それは・・・」
と言葉を窮してしまった。これには、果林、
「絵里、なにか隠し事をしているでしょう」
とニヤニヤしながら言うと、絵里、すぐに、
「果林、今はダンス練習の時間です。さっ、再開します!!」
と言ってはダンス練習に戻った。
そして、練習を再開・・・。
「1,2,3,4、2,2,3,4」
と今度は果林が言うも、絵里、
「うっ、うっ、うっ」
とうなると同時に絵里のいつものダンスとは違った、キレキレでないダンスを披露して
しまう。これには、果林、
(絵里ったら、わかりやすい性格・・・)
と思ったのか、
(あれっ、こうだったのかな・・・。それとも、あれだったかしら・・・)
とうまくダンスが踊れないことに戸惑いを感じていた絵里に対し、
「絵里、隠すのはいいけど、ダンスの状態でもうバレバレ・・・」
と絵里と同じこと?を言うと絵里も、
「まさか、この私が果林と同じことをするなんて信じられない・・・」
と肩をがくしと落としながら言うとダンス練習をいったんやめては、絵里、
「果林、それなら、私の悩みも聞いてくれるかしら」
と言っては自分が今悩んでいることを果林に話した。
「果林、実は海未のことで悩んでいるの。(音ノ木坂の生徒会長である)穂乃果が大ケガをして入院しているあいだ、(生徒会の副会長である)海未はその代理を勤めています。その海未の補佐として前生徒会長だった私が海未のサポートをしているのですが、海未に対して厳しく指導しているものの、海未はそれを受け止めてくれていました。ところが、とある案件に対して海未自身でその案件の判断をしないといけなかったのですが、その海未から私にアドバイスを求めようとしたのを、私、それを断ってしまったのです。それで、海未とのあいだがギクシャクしてしまったのです。私、これから先、いったいどうすればいいのでしょうか」
絵里からの珍しい相談事、これには、果林、
(これはこれで大変・・・)
と思いつつも、
(でも、そんなの、簡単じゃないかしら・・・)
と、なにかを悟ったのか、ある言葉を絵里に投げかけた。
「絵里、それは海未と絵里のことだから私からアドバイスは送れないわ」
これには、絵里、
「そ、それはたしかに・・・」
とまた肩を落とすも、果林、そんな絵里に対し、
「でも、そんな絵里にあるアドバイスを送ることはできるはず・・・」
と言うと、絵里、
「果林、そのアドバイスとはなんでしょうか」
と逆に尋ねてみた。
すると、果林、絵里に向かってこうアドバイスした。
「絵里、1番大切なことは相手を突き放すことじゃなくてどういった解決方法があるか一緒に考えることではないかしら」
この果林のアドバイスに、絵里、
「でも、この案件は今の生徒会が決めることであって私たちででは・・・」
と言ってしまう。たしかに絵里のいうことも一理ある。この案件は今の野球部とサッカー部のいざこざが原因だった。なので、海未率いる今の生徒会がこの案件を対処すべきであり、前の生徒会に所属していた絵里が勝手に決めるわけにもいかないのである。
だが、それでも果林は絵里にこう訴えた。
「別に絵里がその案件に介入するわけではないわ。でも、この案件の決断を下すべき今の海未は0か1かの解決方法しか答えがないと思っているのではないかしら。なら、絵里はそれ以外の解決方法があることを海未に伝えるべきではない。たとえば、曜日によって分けるとか、そんなアドバイスを海未に送ることもできるのではないかしら」
これには、絵里、
「いつもの果林とは少し違う感じ・・・」
と驚いてしまった。実は、果林、頭は悪いのだが頭の回転は早かったりする。さらに、これまでモデルで活躍していたこともあり処世術にも長けていた。なので、絵里が驚くくらい柔軟な発送が果林にはできたのである。
とはいえ、果林、絵里に対しこう言った。
「絵里、かわいい後輩に対して厳しい指導もいいけど、もし、その後輩からアドバイスを求められてきたら先輩としてできる限りのアドバイスを送ることも大切だと思うわ」
この果林の言葉に、絵里、
「たしかに果林の言う通りかも。私、海未に対して失礼なことをしたかも・・・」
と、少し反省した素振りをみせつつ言う。
そんな絵里に対して、果林、とんでもないことを言いだしてしまう。
「ところで、絵里、もしかして、私と同じく、海未のこと、好きになったのではない・・・」
これには、絵里、
「そ、それは・・・、その・・・」
と図星をつかれてたのかおどおどするも、果林、そんな絵里に対し、
「へ~、絵里、厳しいい指導をしていくうちにそれを受け入れてくれた海未のことが次第に好きになったのね」
とからかうように言うと、絵里、ついにカミングアウトする。
「えぇ、そうよ!!私、海未のこと、好きになったの!!それっておかしい?」
絵里、ついに自覚した、自分が海未のことを好きになったことを。絵里はこれまで生徒会の後輩として海未のことをみてきた。だが、縁あって後輩として厳しく指導していくうちにそれを受け入れてくれた海未と一緒にいたい、そんな時間が続いてほしい、絵里はそう思えるようになったのである。ただ、それを今まで絵里は自覚していなかった。だが、それが今になって絵里は自覚したのである。
でも、そんな絵里に対し、果林、こう言った。
「でも、私たちも、絵里と同じく、後輩のせつ菜に恋をしちゃったわけ。なら、私、絵里と同じじゃない。そう考えたら、絵里、それって別におかしいことじゃないわよ」
この果林の言葉に、絵里、
「た、たしかに絵里の言う通りですね。私と果林、とても似たもの同士、なのかもしれませんね」
と言うと、これまでの暗い表情から一転、明るい表情になった。自分と同じ者が隣にいる、そのことが絵里に安心感を与えていた。
そんな絵里に対し、果林、こう宣言した。
「私、このときめきを失いたくない!!ライバルであり、私の恋した相手、せつ菜に、戦いのあと、告白する!!ライバルだからって恋に関係ないわ!!」
この果林の宣言に続いて絵里もこう宣言した。
「私も海未のことを信じる!!この案件、海未が解決してくると思うしできなければ私が必ずサポートしてあげる!!そして、それが終われば、私、海未に告白する!!私も自分の思いに嘘をつきたくない!!」
この絵里の宣言に、果林、こう考えてしまう。
「でも、絵里の場合、どちらかと言うと、海未との関係、(生徒会の)先輩と後輩の恋愛、だから、どちらかというと、スール関係、に似ているのではないかしら?」
これには、絵里、
「スール関係とはなんなの?」
と果林に尋ねると、果林、こう答えた。
「スール関係、指導役の先輩と生徒役の後輩が恋愛関係になること。海未と絵里の関係ってそれに似ているわ!!」
この果林の言葉に、絵里、こう答えた。
「たしかに、私と海未の関係、そうなるかもね。スール関係、その名を聞いたら、私、そんな関係に海未となりたいと思えてきます」
この絵里の言葉を聞いて、果林、プッシュする。
「絵里、その関係になるためにも、海未との関係、進めないとね!!」
これには、絵里、
「たしかにそうなってほしいわ」
と言っては、海未との告白を成功させる、そのことを誓おうとしていた。
その後、絵里と果林、2人はダンス練習を再開した。だが、このときの2人の表情はとてもすがすがしいものだった・・・。