ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~ 作:鈴亜サクサク
はじまりの島
天は薄紫、眼前に広がるは彼方まで伸びる虚空。
ここがどこだかは分からないが、少なくとも自分が知っている所ではないと、苔が付着した石畳の上に座る高校生くらいの少年
「何でこんなとこにいるんだ?」
さっきまではコンビニへの道中を歩いていたのを竜仁は覚えている。
スマホと財布を持っていたはずだが、どちらも手元からは失くなっていた。
「事故った……にしては痛かった記憶もないしな」
尻と手に触れる石の硬さと冷たさは夢では無くこれは現実なのだと告げる。
現実だとしたらここはどこなのだろうか。
竜仁は思考を巡らせたが、答えは見つからず、ひとまずここが無人島だということにして保留。
そして間髪いれずに次の問題が浮かび上がった。
「どうやって生きていけばいいんだろ」
救助……来てくれるのかも定かではないが、それまでに死んでしまっては元も子もない。
必要なのは食糧と水。出来れば雨風凌げる住みか。
竜仁は海を探すために目を凝らして虚空の方を見つめたが、海らしき青はどこにもなかった。
そもそも島の端から先がない。
海の恵みは頼りにならないことに気を落とすのと同時に、自分のいる場所の異常さを再認識する。
「日本……いや、地球かすらも怪しくなってきたな」
呟きは誰にも聞かれることなく虚空に潰えた。
仮に地球のどこかの孤島だとしても南極北極だとしても大陸の端には海があるはずだ。
しかし、この島の端から外に広がるのは落ちれば助からないような奈落。
島の端が切り落とされて、そこから先が無くなってるような感じだ。
ともかく海の恵みに頼れない以上、島内を探索して、果実や綺麗な水源を確保しなければならない。
人が住んでる場所を発見出来ればなおよし。
猛獣が潜んでるかもという危険は百も承知だが、不確定な危機に怯えて動かず餓死を待つよりはましだという判断だった。
「よいせっと」
なんにせよ座ってるだけでは何も進まないと、竜仁はズボンに付いた苔を払い落とし立ち上がる。
どうやら竜仁がいる場所は無人島の中でも高所らしく、上り下りするだけでも時間が掛かりそうな長い下りの階段が目に入る。
気になって後ろを振り返ってみれば、崩れている箇所はあるものの、神聖な雰囲気を感じる石造りの建造物があった。
入口を塞ぐものはなく、誰の侵入も拒まない。
「しばらくはここを拠点に使わせてもらうか」
罰当たりかとも考えたが、正体不明の島でのサバイバルでそんなの気にする必要はないと一蹴する。
それでも竜仁は「しばらくよろしくお願いします」と、いるか分からない神に挨拶をした。
幸運にも住みかはすぐに見つかったのであとは食糧と水。
早いとこ見つけれればいいなと思いながら、竜仁は所々崩れかけた階段を足を滑らせないようにゆっくりと降りていく。
◇
薄紫色の空の天高く。
石の建物の真上に位置する場所に丸型の黒い空間が現れた。
その空間から鉤爪を持った水色の三本指が這い出て、黒い空間を掴むな否や一瞬にして空間を閉ざした。
島に住む全ての生命がその出来事に気付くことはなかった。