ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~ 作:鈴亜サクサク
シズニアンの町、夕~夜
シズニアンには王はおろか、町長と呼べる人物すらも存在しない。
代わりに冒険者ギルド、魔術師ギルド、商人ギルド、正義ギルドの四つのギルドが協力、もとい牽制し合って秩序を保っている。
今回会いに行くギルドマスターは冒険者ギルドのタムオーン。これからアポを取りに行く。
竜仁は夕暮れ時の町を歩いている中、サザレからこのような説明を受けた。
ただし、目線は現代日本では見られない町並みや、道行く人々へと向けられていた。
「話聞いてるか?」
「き、聞いてる! あれでしょ? タオムーンさんにアポ取りに行くんでしょ?」
「少し違う」
冒険者ギルドがあるのは町の西部。
通ってきた旅の扉は正反対である東側にあったようで、それなりに歩かされるが、それでもまだ日が落ちきる事はない。
それともう一つ、竜仁は西に進むにつれてどこかただ者ではないような人間が増えてきたと感じる。
角付き覆面を被り×型のハーネスベルトを付けた上半身裸のお馴染みあらくれを見た時は思わず声が出そうになった。
「この辺には犯罪者紛いの奴もいるからね。スられないよう気を付けなよ?」
「生憎無一文なんで、そこは問題ないな」
「おまっ、それはそれで大問題だぞ!?」
約半日の間にもたくさんの魔物が倒れて消える瞬間を見てきたが、
当時はそこまでファンタジーではないのかと軽く見ていたが、サザレに指摘されて初めて一つの問題に気付いた。
「今日の宿どうしよう……」
ゲーム内では宿屋代に困った事が無かったのも気付くのを遅らせる原因になったのであろう。
竜仁の首に冷や汗が流れる。
野宿するか? いや、持ち物を売れば足りるだろうか?
「私が出そうか? 後で返してもらうけど」
そこへ出された助け船。
竜仁は迷うことなく船に乗ることだろう。
「本当にいいのか? 金返さず逃げるかもよ?」
「それは大丈夫。逃がすつもりはないから」
「……ホラー的なアレ?」
「さぁ? どうだろうね。っと、ほらここだよ」
周りの建物と比べると一回りも二回りも大きな木造建築物。
もうじき夜になるというのに忙しなく人の出入りが行われているこの場所が冒険者ギルドのようだ。
斧を担いだ厳つい大男や、緑色のローブを身に纏った魔法使い風の女性。竜仁よりも背が小さい少年?も通った。
外にも漏れる賑やかな話し声を聞けば、中は活気に満ち溢れているのだと容易に想像できる。
実際に中に入れば当たり前だが喧騒はより増す。
「あー、聞こえる?」
「なんとかぁ」
「こっちだ。カウンターまで行くぞ」
何かの会話、笑い声、怒号。
人間のあらゆる感情が飛び交うこの場では隣のサザレの喋ることすらも聞き取りずらい。
例えば怒号が飛んできた方に目をやれば、二人の男による取っ組み合いの喧嘩が繰り広げられており、それを煽る野次馬が集っているのが見えた。
その間にもサザレとの距離が離されており、慌てて彼女の後ろを付いて行って、カウンターの前まで来れば、既に受付の女性とサザレで話を始めていた。
「今日はどのようなご用件で?」
「タムオーンさんに報告したいことがあってね。今日はアポ取りに来たんだけど」
「おっと、ギルドマスターならついさっき用事で出ていってしまいましたね」
「ありゃ、入れ違いか」
「ひとまず用件は伝えておくので、ご足労ですがまた明日いらしてください」
「だってさ、竜仁。話終わっちゃった」
「俺出る幕無かった」
今日のやること終わり。
と、ほぼ同時に竜仁の腹の虫が鳴る。
恥ずかしいことにその音はサザレにも聞こえたようだ。
「腹ごしらえ行くか?」
「そうするわ」