ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~   作:鈴亜サクサク

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モンスターとのエンカウント

 島の探索を開始してわずか三分。

 竜仁は島の南方に生い茂る森林にて自分以外の生命体との遭遇を果たした。

 ただし、不幸な方の。 

 相手はそんなこと露知らずな様子で、咄嗟に竜仁が隠れた木の横を通り過ぎた。

 

 「あれってドラクエのモンスターだよな……」

 

 竜仁は今の生物を見たことがあった。

 赤いワンショルダーを着た青い毛皮の狼男。その名はリカント。

 所謂雑魚敵の部類だが、竜仁はゲームの中の敵が自分の目の前を通ったことに衝撃を受け、声こそ出さなかったものの、リカントが木々に隠れて見えなくなるまで呆然と立ち尽くしていた。

 

 「ハハッ、ゲームの中の世界ってことかよ」

 

 状況が理解しきれず、場違いなのは本人も分かっていたが、思わず乾いた笑みをこぼしていた。

 その後ろをバサバサと何かが羽ばたく。

 それに驚いて反射的に後ろを見ればかろうじて蛇の胴体があったのを確認する。

 

 「今のは……キメラか?」

 

 ハゲタカの頭に蛇の胴体を持つ怪鳥。

 それが二羽、三羽と次々に木々の間を縫って飛んでいく。

 キメラが見えなくなったあと、目ざとい竜仁は通っていた場所に生える木には一枚の羽が引っ掛かっているのを発見した。

 

 キメラのつばさ。

 使用すると訪れたことのある町などに瞬時に移動できる道具だ。

 竜仁もその効果を知っており、キメラの後続が来ないのを確認したら急いで羽を回収しにいった。

 

 「一枚だけか」

 

 他に何枚か落ちてないか地面を見渡したが、土と枝と葉だけでキメラの羽は木に引っ掛かった一枚しかなかった。

 残念なことに羽が数枚集まらないと本来の効果は発揮しない。

 竜仁も今までのドラクエの知識からキメラのつばさが羽一枚では足りないと察しており、役に立たないと分かっていながらも捨てる理由もないと、ズボンのポッケに仕舞った。

 

 「にしても、ドラクエの世界か。それだけはありがたいかもな」

 

 竜仁はゲームでのドラゴンクエストをいくつかプレイしたことがある。

 故に道具やモンスターについての前情報はそれなりにあった。

 が、それ故に疑問も出る。

 

 「どの辺のモンスターなら倒せるんだ?」

 

 腕っぷしは人並みの竜仁。

 自分の実力でどのモンスターなら相手出来るかを測りあぐねていた。

 

 「まず、リカントとかキメラは無理だろ」

 

 自分がレベル1だと仮定して、最初のフィールドに出てくるような魔物ではないこの二体は無理だと断定。

 もしこいつらがこの島の平均だとしたら早々に島を脱出しなければというとこまで行き着いて気分を重くする。

 

 「そんな事は今はいいんだって」

 

 話を戻す。

 この場でばったり出くわしても勝てるモンスターとなると、やはりスライムやドラキーが竜仁の頭の中に浮かんだ。

 それでも無傷の勝利は厳しいだろう。

 

 「やっぱ、隠れ身生活かぁ」

 

 今日出会ったモンスターはたった二種類だが、どちらにも感付かれてすらいない。

 偶然かもしれないが、モンスターにも根気よく探すつもりもないので、へまをしなければバレることはない。

 

 そう結論付け、探索を再開しようと足を踏み出したところで竜仁の度肝を抜く一言が投げ掛けられた。

 

 「に、人間か!?」

 「ヴァッ!?」

 

 声が聞こえたのは後ろから。

 誰もいないとたかをくくってたのに人に話し掛けられたら誰でもどんな言葉でも驚くだろう。

 竜仁は声の主を知ることもなく距離がある今の内に逃げ出そうとした。

 

 「待て待て! 別に取っ捕まえようって訳じゃねえよ!」

 「殺すってこと!?」

 「違うっ! オレの話を聞いてくれぇ!」

 

 最早隠れることは頭から抜けた竜仁は全力で走った。

 しかし、追いかけっこの最中の問答の末に命を狙われてる訳ではないと知り、ようやく足を止めて後ろを振り返る。

 

 「やっと止まったか」

 

 声の主はリカント。

 最初に見たリカントとは違い、赤いベリー系の果実が盛られた篭を持っている。

 果実を落とさないように走り、立ち止まった竜仁に追い付いた。

 

 「人間、お前どっから来たんだ?」

 「日本……っす。来た方法は分からないです。いつの間にかここに」

 「ニホンってのは聞いたことねぇな」

 

 竜仁は帰る手掛かりが少しでも掴めるかと心の奥底で思っていたが、そう甘くはなかった。

 そして、いつの間にかこの島にいたという話を聞いたリカントは怪訝な顔もせず、理解したという風にある提案を出した。

 

 「オレ達の集落に来てくれよ。だいまどう様ならなんでも知ってるはずだし」

 「何が目的です?」

 「外の情報がほしいんだ。お前も色々知りたいことはあるだろう?」

 

 情報の交換。

 モンスターの住みかに丸腰で入るのは躊躇ったが、判明している情報がドラゴンクエストの世界とだけの現在、竜仁にとってこの島について知れるだけでも価千金の成果だ。

 リカントが話が通じる相手だったということもあり、他の魔物も出会ってすぐに襲いかかってくる輩ではないと信じ、竜仁は大きく頷いた。

 

 「案内頼みます」

 「よし、任せろ!」

 

 リカントが走る後を竜仁が追う。

 森林を抜けた先にあったのは白いテントが立ち並ぶ空間だった。

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