ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~   作:鈴亜サクサク

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孤島の魔物集落

 人間である竜仁が来たことによって小さな集落は一斉にざわめき出す。

 それでも珍しいものを見るかのように様子を伺ってるだけで問答無用で襲いかかってくるような魔物は一匹もいなかった。

 

 「本当に襲ってこないんだ」

 「だろ? 俺達に人間を襲う理由なんてないしな」

 

 とりあえずの身の安全を得れた事に竜仁は安堵の溜め息をこぼす。

 下手を打たないようにと無意識に使っていた敬語もいつの間にか無くなっていた。

 

 「あの色付きテントにだいまどう様はいるはずだぜ」

 

 白いテントに紛れて一つだけ立っている黄色いテント。

 その入口を守るようにして立つ青い鎧を着込んだ魔物、よろいのきしが竜仁を睨んでいた。

 あの人間が少しでも怪しい動きをしたら即刻取り押さえるという心意義だろう。

 

 「止められるんじゃないのか?」

 「大丈夫だ。あいつは話せば分かってくれる」

 

 あちこちから視線を浴びながらリカントと竜仁は黄色いテントへと近付いていく。

 しかし、よろいのきしがテントの前に立ち塞がり、そう簡単には入れさせなかった。

 

 「待て、人間を連れて何の用だ」

 「だいまどう様に話を聞きにいくんだ。もしかしたら新しい世界の手掛かりが見つかるかもしれないぜ?」

 「なるほど……だが」

 

 よろいのきしの大きな手が竜仁の体に当てられる。

 

 「な、なんだ?」

 「ボディチェックだ。武器の類いは預からせてもらう」

 

 くまなく竜仁の体が調べられたが、出てくる物はさっき森で拾ったキメラの羽一枚だけ。

 

 「貴様、これでどうやってこの島まで来たんだ!」

 

 集落に響く、よろいのきしの低い声。

 その答えを知る者はここにはいない。

 

 「どうにもこうにも、いつの間にかここにいて……」

 「アレフガルドから来たのではないのか?」

 

 アレフガルド。それはドラゴンクエストの始まりの地だ。

 今日竜仁が出会った魔物は全てアレフガルドが冒険の舞台であるドラゴンクエスト1に登場している。

 

 しかし、その情報を知っているだけで竜仁はアレフガルドとは微塵も関わりがない。

 よろいのきしの質問には肯定の意味で頷き、日本から来たのだと付け足した。

 

 「ニホン……か。聞いたことない世界だな」

 「だろ? だからだいまどう様なら何か知ってるかとおもってさ」

 「あい分かった。しかし人間よ、もし粗相を働いたら……分かってるな?」

 

 テントの中に入る許可が出された。

 が、竜仁は脅しを入れられてビクビクしながらテントに入ることとなった。

 リカントは半ば押し付ける形で果物篭を渡してから中へ。

 

 テントの中は端にいくつかの樽が並べられ、床全体を覆うカーペットが敷かれているだけの質素なもの。

 件のだいまどうはテントの中央に静かに座していた。

 

 「いらっしゃい、人間」

 

 テントと同じ黄色いローブに包まれて素顔は分からないが、声から女性なのだと竜仁は想像する。

 

 「まずは自己紹介から。私はレレマラ。まぁ呼びやすいように呼んでください」

 「竜仁です。見ての通りただの人間っす」

 

 竜仁とリカントは座るよう促されたので、それに従ってカーペットの上に腰を下ろす。

 

 「さて、中から話は聞かせてもらいました。あなたが言っていたニホン。それはここから遥か彼方。もしかしたら別の次元の世界かも知れません」

 「つまりは……すぐには帰れない?」

 「残念ながら……いくつもの世界を渡らないといけないでしょうね」

 

 落ち着いた声質で伝えられた事実。

 竜仁もある程度覚悟はしていたが、改めて目の前に突き付けられ悲観し、己の運命、そしてこんな所に連れてきた犯人を架空で作り上げ、恨んだ。

 

 「でも、二度と帰れないって訳ではないと」

 「左様。それに、私達も力を貸しますよ」

 

 竜仁の隣に座っていたリカントも深く頷く。

 絶望の淵に立たされていても、希望はまだ潰えていない。

 その事実は竜仁にとって何よりもありがたかった。

 

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