ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~ 作:鈴亜サクサク
百聞は一見に如かず。
竜仁がすべきことは直接見せた方が早いと、レレマラに連れられて高所の神殿まで足を運んでいた。
この島に降り立った時、拠点にしようと考えていた建築物だ。
竜仁の腰には集落でもらった革袋が付けられており、キメラのつばさ数枚と島で採れた木の実が入っている。
「この神殿に何があるんです?」
「他の世界に繋がる旅の扉です。生憎この島には神殿内の一つしか存在してません」
薄暗い神殿内部をレレマラが唱えたレミーラで照らしながら奥へ奥へ。
危険なモンスターもいなければ罠もない平和な道中。
その道すがらに旅の扉の行き先。竜仁の冒険の始まりの地についてレレマラから説明がされる。
まずこれから向かう地の名はアレフガルドだということ。
先程、よろいのきしがアレフガルドから来たのでは無いのかと聞いたのは普通ならそこしか出入口がそこしかないからだと竜仁は納得した。
そして、今のアレフガルドは死霊族の魔物の軍団に支配されており、りゅうおうの軍勢と戦いが繰り広げられていることを知る。
人間はほとんどが危険なアレフガルドを去ったか、死霊の軍団の下についたそうだ。
「そんなところに俺なんかが行っても大丈夫なんだろうか……」
「勿論手ぶらで向かわせるつもりはありません。もうじきあれの準備が済む頃でしょう」
二人がアイテムを用意し、ここに来る前にレレマラの指示で案内役のリカント含めた数体の魔物が先に神殿の奥に向かっていた。
神殿は大して広くないようで、先行している魔物達に追い付いたのはそれからすぐの出来事。
「おおっ、でけぇ」
円形の広間の中央にはどこか神秘的にも感じる水色の渦巻き。アレフガルドへと繋がる旅の扉だ。
しかし広間に入り、竜仁が最初に見たのはその奥に眠るレンガの巨人、ゴーレムだった。
「おっ、来た来た」
ゴーレムの陰から数体のリカント。皆同じように土埃で体を汚している。
「どうですか? ゴーレムの起動準備は」
「おうっ、準備万端ですぜ!」
準備万端と言われたゴーレムは目に光は灯っておらず、竜仁にはこれから動くビジョンが浮かばなかった。
すると、レレマラが旅の扉を避けてゴーレムへと近付いていく。
「さて、竜仁さん。アレフガルドに着いたら西に進んでドムドーラ、もしくは東に進みリムルダールに向かってください。そこにまた別の旅の扉があるはずです」
レレマラが杖を頭上に掲げると、先端に付いた宝石に光が集う。リカント達は巻き込まれまいとゴーレムから離れていった。
何らかの魔法を唱えながらも説明は続く。
「アレフガルドを抜けたら、どこか人里を探すのです。それから
「それは……どうして? この島も住み心地は悪くなさそうだけど」
「最近島が徐々に崩れ落ちていましてね。今のペースなら先の話でしょうが手遅れになる前に手を打ちたいのです」
竜仁にその頼みごとを断る理由はなかった。手助けしてくれた優しきモンスターを助けてやりたい。その意思と共に静かに頷いた。
「ありがとうございます。皆で期待してますよ」
レレマラは杖の先端の光をゴーレムに放出した。
虚ろだった目に白い光が宿り、その巨体をゆっくりと力強く起き上がらせる。
立ち上がったその巨体はかつて都市の守り神だった情景が容易に思い浮かぶ。
竜仁はゴーレムが心強い味方となることを確信した。
「これに乗ってけば安全かな?」
「そうですね。ですが仮に竜仁さんが命の危機を感じたらゴーレムを捨ててでもキメラの翼を使ってくださいね」
竜仁は早速ゴーレムに乗ろうと思ったが、巨大すぎて乗れないという問題が発生した。
「えーと……しゃがめる?」
答えは返ってこない。しかし、声は届いたようでゴーレムは音を立てながらしゃがむ。
それでも背伸びやジャンプしても届かない程には大きい。竜仁はなんとか背中をよじ登り、ゴーレムの頭上に腰を下ろした。
「ちょっと待った。立ち上がられたら俺潰されるよなこれ」
気付いた時にはゴーレムは既に動き出していた。
ただし、竜仁を天井で潰さないように姿勢を低くしている。
思わぬ危機は杞憂に終わった。
「そろそろお別れですね。近い内に再開出来ることを願ってますよ」
「竜仁! 頑張れよ! 良い知らせ待ってるぜ!」
ゴーレムが旅の扉の上に乗ると、光の渦が強まって辺りの景色が歪んでいく。
「行ってきます!」
その言葉を最後に竜仁とゴーレムは神殿から消え去った。
一人の少年のドラゴンクエストがここで始まった