ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~ 作:鈴亜サクサク
メルキドの町を覆っていた影は外にまでは広がっていない。
そしてさっきまで散々竜仁達を追いかけた死霊達は影の範囲から出るようなことはせず、追跡を止めて何も無かったかのように各々の居場所に戻ろうとしていた。
「にしてもまだヒリヒリすんな」
斬り跡を擦りながら呟いた。
やくそうなりホイミなり使えればよかったが、望んでも無い物ねだりにしかならない。
死霊の群れの追跡を撒けた今、竜仁は改めて今の状況を確認し、目標を定める。
まず遠方に見える禍々しい城。あれこそが竜王の城で間違いないだろう。あれを目印に脳内地図を思い浮かべれば東西南北を知ることができる。故にコンパス無しでも迷うことはない。
そして西のドムドーラ、東のリムルダールどちらに進むかだが、竜仁には一つ気になる点があった。
アレフガルドの世界地図。記憶が正しければメルキドからリムルダールへの道は陸続きではなかったはずだ。
向かうには半時計回りにぐるっと一周しなければならない。
その道中でドムドーラも通過する。
「だったら最初からドムドーラを目的地に据えていいか」
進む道を定め、ゴーレムに移動を命令する。
だが、メルキドから離れようとする竜仁に向けて紫色の物体は二発、進行方向を遮るようにして何かを射出した。
「うっわぁ、見逃してくれよ……」
深紅の鎧に手には斧と盾。
射出されたものの正体は二匹のしにがみのきしだった。
その内の一匹が竜仁を亡き者にしようと、呪文を唱えようとする。
「あいつ止めてくれ!」
呪文詠唱中のしにがみのきしにゴーレムは右腕を振りかざし、殴り飛ばそうとした。
しかし、もう一匹のしにがみのきしが前に割り込み、ゴーレムを止めようと盾を構える。
衝突の結果はゴーレムの優勢。しにがみのきしをよろけさせ、空いた体に今度は左腕で殴りかかる。
そこへ飛んできたのは地から昇る炎、ベギラマの呪文だ。
「あちぃ!」
炎に巻かれたのは直線上にいたゴーレムとしにがみのきしだけでゴーレムの上に乗っていた竜仁に炎は届かず。
ゴーレムもベギラマだけでは止まらず、拳の一撃でしにがみのきしの重い体を飛ばした。
殴られ焼かれ、相当なダメージを受けているが、それでもしにがみのきしは起き上がる。
更にベホイミを唱え、傷を癒す。
「モンスターですら回復できるってのに……」
実力、知力共に町の中の死霊とは格が違う強敵。
双方共に引けを取らず、しばらく相手の出方を伺う。
そして最初に動いたのは傷を負っているしにがみのきし。
鎧を装備しているのを思わせない程にジャンプし、竜仁ごとゴーレムの脳天をかち割ろうと斧を振り上げた。
もう一匹のしにがみのきしは地上から、ゴーレムの下半身を斬ろうと鎧を鳴らしながら走り出す。
それに対してゴーレムは、両手に力を込めて、宙にいるしにがみのきしごと地面に叩き付けた。
ゴーレムの怪力によって大地が揺れて隆起が生まれる。
叩き潰されたしにがみのきしは青い光となって消滅。
残った方も逆にゴーレムに接近されて斧を当てる前に叩き潰され鎧が大きく破損する。
瀕死になったしにがみのきしは最期に斧を投げて攻撃するも、ゴーレムの石造りの体を少し削っただけで大したダメージは入らない。
そのままがくりと動かなくなり、青い光となって消える。
「……強ぇ」
竜仁は割れた大地を見て思わず言葉が漏れた。
こんな怪物をようせいのふえを使いつつもたった一人で撃破した勇者に尊敬の念を抱く。
「って、まだ急いだ方がいいか」
紫色の物体は不気味に胎動を続けている。
新たにモンスターが打ち出される前にここを離れる事にした。