ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~ 作:鈴亜サクサク
死霊に支配された世界でも特に変わった地形は見られない。
草原も森林も汚染されたような雰囲気はなく自然な緑が広がっている。
また、毒の沼地はあれど、これは原作にも存在していたし、やたらと広がってる訳ではなかったので特に違和感は感じず。
違うのは出現する魔物だ。
ゴーストやしりょう等の原作にも登場した奴らからくさったしたいやアンデッドマン等のドラクエ1では未登場の奴らまで死霊系の魔物がわんさかといる。
こいつらは皆竜仁に襲いかかり、そしてゴーレムに返り討ちにされた。
死霊系以外で出会った魔物は毒の沼地を這いずるバブルスライム程度だった。
「けど、危なかったのは最初だけだったな」
ドムドーラまでの道中はあと半分というところまで来たが、種類こそ多いものの、しにがみのきしのような単体で強力な魔物には出会っていない。
キメラのつばさは使わずに済むか。なんて考えている頃には橋を二つ渡り終え、アレフガルドの南西に位置する砂漠地帯にまで行軍は進んでいた。
「やっぱここでもお出ましか」
相も変わらず襲い来るゾンビ達。
砂漠に入ったからか新たにミイラ男やマミーが混じっている。
だが、それだけの話でゴーレムに歯が立たないのには変わりはない。
「あと一息だ! 突っ走ってくれ!」
竜仁の命令通り、ゴーレムは障害をものともせず走って走って、遠方にドムドーラのものらしき建物の残骸が見えてきたあたりで動きが止まってしまう。
「お、おい!? どうした!?」
ゴーレムは眠っていた。
その理由はマミーが唱えたラリホーによるものだ。
動かなくなったゴーレムに次々に魔物が集い、竜仁の元へとよじ登ってくる。
その様子はさながらゾンビ物の映画のよう。
次の行動を考えている暇は無い。
竜仁はゴーレムの肩に手を掛けていたミイラ男を踏み台に高くジャンプした。
砂地に足を着けたらドムドーラに向かってひたすらに走り出す。
幸いにもモンスター達の大半はゴーレムに注意が向いており、逃げる竜仁を追わない。
追う奴らもその鈍足さ故にどんどん距離を離されていく。
しかし、進路を塞ぐように回り込んでいる魔物には動きの鈍さは関係ない。
くさったしたいの一匹が近付いてくる竜仁を毒が付着した爪で引っ掻こうとする。
「当たらねぇよっ!」
竜仁は攻撃を繰り出そうとするくさったしたいの横をスライディングですり抜ける。
その際にマミーが呪文を唱えるような動作をしていたので、革袋から木の実を取り出しマミーの顔面目掛けて投げつけた。
この木の実は齧ればカリッと音が鳴る程には硬い。
小ダメージを与える簡易的な投擲武器にはなるが、既に痛みを感じぬ体となっているマミーの行動は止められない。
詠唱が終わると、竜仁の眼前に透明な波紋と泡が浮かんで眠りへと誘おうとする。
しかし、結果はミス。竜仁は眠らない。
更に背後では集っていた魔物達の攻撃で目を覚ましたゴーレムが一発、大きな打撃音を響き渡らせる。
音には竜仁を狙っていた魔物も反応し、わずかに動きを止めた。
「このっ隙に!」
竜仁はドムドーラの町跡地に足を踏み入れた。
当然、人っ子一人おらず、魔物の巣窟となっている。
そして、町の左側に旅の扉による水色の光る渦巻きが発生している。
「あそこがゴールか」
旅の扉を抜ければ、死霊だらけの危険地帯からおさらばできる。
そうと分かれば気を引き締めて、最後の包囲網を突破する為に足を動かす。
伸ばされた腕は回避して、地面から生えた手は飛び越えて、避けきれないような遠距離攻撃は甘んじて受け入れて。
必死に駆ければ旅の扉を踏むのはあっという間の出来事だった。
光の渦が強まり、転移が行われる中で竜仁が見たのは最後まで自分に一撃浴びせようと飛び掛かる死霊達。
それと、遠くで数多の死霊相手に無双するゴーレム。
「ゴーレム! ここまで護衛してくれてありがとな!」
その声がゴーレムに届いたのかは定かではない。
竜仁はアレフガルドを去り、一切の情報もない新たな世界へと旅立った。