ドラゴンクエスト~世界は砕けて千切れて混ざる~ 作:鈴亜サクサク
鬱蒼と生い茂る森を抜けると、歪な形の黒い岩の地面が広がるエリアに出た。
竜仁は自身の記憶からこの形状は溶岩が固まって出来たものなのだと判断する。
魔物が生息していないこともあってか、腰を下ろして休憩する冒険者らしき一団の姿もあった。
しかし、竜仁はとある違和感が頭に浮かび、それが拭いきれずにいた。
森を抜けたはずなのにいまだに辺りが薄暗い。
世界ごとに時間が異なるのかとも考えたが、空を見上げると黒煙が天を覆い尽くし、光を遮っているのが原因だと分かった。
黒煙の発生先を目で辿ると、遠方に雄大な火山が目に映る。
明るく輝く溶岩を流しているその景色の美しさに思わず竜仁は見入っていた。
「すごいよね。私も初めて見た時は思わず見惚れたよ」
しばらくは眺め続けていられそうだったが、サザレを待たせるのも悪いと思い、程程に切り上げる。
「ところで、どこに向かってるんです?」
「シズニアンって町に繋がってる旅の扉さ。こんな暑いところに長居はしたくないでしょ?」
「そりゃもちろん。ん? じゃあサザレさんは何しにここに?」
「小銭稼ぎ。これがそこそこの値段で売れるっぽくてね」
サザレはそう言いながら束ねられた薄紅色の小さな鱗をひらひらと見せびらかす。
「それと、さんは無理に付けなくていい」
「じゃあ、サザレ……姉さん?」
「増えたね」
その旅の扉までは少し距離があるようだったので、移動の間に竜仁は自分の置かれている状況、すべき事をサザレに説明した。
「記憶が曖昧な割には結構覚えてることあるんだね。まぁいいや」
一拍置いてから話は続く。
「まず日本ってのは見たことも聞いたこともないな。この辺の世界から辿り着ける所にはないと思う。それから魔物達の住める場所か……これはお偉いさんと話付けないといけないね」
「お偉いさんってのは王様とか?」
「そこまではいかないかな。会うのはギルドマスターだ」
「なるほど。どんな人かは知らないけど」
「というか竜仁、町については何も知らないよね。私が案内してやるよ」
シズニアンという名の町にギルドマスターなる者。
どちらも未知の存在だが、その地を知る者が共に居てくれるのは非常にありがたい。
竜仁はその善意に素直にあやかることにした。
「他に何か聞きたいことある?」
「あ、そうだ。今更だけど俺の話って信じてくれてるの?」
「そりゃあね。実の所、君みたいな人の話をは前に聞いたことがある」
「え!?」
「私も詳しくは知らないんで情報くれって言われても無理だけど」
二人は話をしている間にも次の旅の扉が見える範囲まで進んでいた。
自分と似た境遇の人間がどこかにいる。
もし、その人間が同じ日本出身だとしたら帰るための重要な手がかりになり得る。
竜仁はその情報をしかと記憶して、旅の扉を踏んだ。