気温が上がり、ようやく夏っぽくなった気がします。
……暑いですけど。
それではどうぞ。
今日も映画館の掃除をしている悠里達。
内装もある程度マシになったので、まずはひと段落である……
「みんな~、休憩しよ~。今日のおやつはパヴロヴァで~す♪」
フィナが悠里達に声をかける。
とりあえず作業を一時中断し休憩に入るのであった。
「かっわいい~♪ けど……変わった名前」
「遠い外国のお菓子で、サクサクに焼いたメレンゲにクリームと果物を色々乗せたのだよ」
キャロの疑問にフィナが由来を教える。
同時に悠里は、確かに発祥地は外国だけど、クレイに外国ってあるのかと一瞬だけ思ったが、きっと『ズー』のネオネクタールの種族、ドリアード達が広めたのでは?と勝手に割り切った。
「ん~♪」
「んー♪ サックサクのメレンゲに、すっぱ甘い果物♪ フィナの作るお菓子ってほんとに美味しい♪」
「どうしたら、こんなに美味しいお菓子とか作れる訳?」
「本を見たりとか、話を聞いたりしてかな。後は実際に作ってみる♪」
カノン、キャロが絶賛する中、ソナタがフィナに訊く。
「……フィナ。いっその事、パティシエか何かになったら? こんなに難しいお菓子とか作れるんだし」
「え? そ、そうかな~?」
「…向いてると思うよ。それにフィナみたいな可愛い子がお店開いたら、世界中からお客が来ると僕は思う……」
「へっ!? わ、わたしが……か、可愛い……可愛いって言われちゃった……」
「「…………」」
悠里が思った事を言っただけなのにフィナは何故か黙ってしまった。
あとソナタとカノンの視線が痛い。
とりあえず2人の機嫌を直してあげなければと思った悠里は、持参したバケットを取り出す。
「…そうそう、シフォンケーキ作ってきたんだけど……食べる?」
「わーい! 食べる食べる♪」
真っ先に反応したのはキャロ。
お皿に乗せ、それぞれに渡す。
「うーん……」
「? セレナ、フィナとユーリが作ったおやつ食べないの?」
「食べる」
先程から考え事をしてるセレナにキャロが声をかける。
そして2人が作ったお菓子を食べる。
「…セレナ、必死だね? 今朝からだけど……」
「映写機が未だにちゃんと動かないのが許せないみたい」
「まともに映らないキネオーブ……まだかなりあるもんね」
悠里、フィナ、ソナタが言う。
実はセレナ、今朝からずっとこの調子なのだ。
「でも、おやつタイムなのに、セレナそれちゃんと味わってる?」
「味わっている。しっかり泡立てた卵白を時間をかけて焼き上げないと、ここまでサクサクにはならない。ユーリのシフォンケーキは隠し味に果物の果汁を何種類か入れてるし……調節配分しないと、こうも美味しくはならない」
キャロの言葉にちゃんと味わってると言うセレナ。
しかも律儀に感想も言ってくれてる。というか、隠し味が果物の果汁だという事を一口食べただけで分かってしまうとは……
「わ、私も2人のお菓子、大好きです……」
「…そう言ってくれると作った甲斐があるよ」
カノンの言葉に悠里はそれは良かったと言う。
現に今も美味しそうに食べている……
「だがこのままじゃダメだ!」
セレナが読んでいた本を閉じて突然言い出した。
「ソナタ。映画とは、わくわくドキドキで出来ている。そうだな?」
「えっ? う、うん……」
「ならば……この、ゲロゲロどよーんな
そう言いながらセレナはキネオーブを映写機にセットする。
しかし映し出されたのは、先程彼女が表現した通り、ゲロゲロでどよーんと流れる映像だった。
正直に言って、見てて目が悪くなりそうだ……
「ここまで綺麗になったのにね……」
「キネオーブもピカピカなのに……」
「何がいけないんでしょうか……」
「…で? 実際にセレナ的にはどうなの?」
悠里がそう聞くと彼女は難しい表情をしながら口を開いた。
「……分からない。ところが分からない。この本の内容は全て読み尽した! 隅々まで洗浄し、設置方法も正しい! 操作方法も何一つ間違っていない!」
「なんか演説が始まりましたね?」
「…確かに」
カノンの言葉に同意する悠里。まぁセレナの性格上、こうなってしまうのも分からなくもないが……
「いやしかし……全く不審な点が無い訳じゃない。うーん……はっ! やはりあるのか!? 素人が無知であるがために見逃してしまう……マニュアルだけでは発見できない未知の領域が!!」
「ちょっと拗らせてますね……」
「…うん。これ以上だと壊れるよ……色んな意味で……」
アカン。これはアカンと思った悠里は、大丈夫かな……と呟くが、フィナが大丈夫だよ……多分。と言った。
それを聞いたキャロが、多分て……と呆れながら言う。
「手掛かりになる本がないか、もっと探してくる! 絶対に映写機は直してみせる!」
それだけ言うとセレナは行ってしまった。
「…さて、僕も依頼された物を届けてくるがてら、図書館に行ってこようかな……」
「? 依頼って?」
「フェルマさんのところ。何処で聞いたのか分からないけど、なんか僕が作ったケーキかお菓子を食べてみたいって言ってたからさ……」
悠里がソナタに言う。
実際に誰が言ったんだろうね? と悠里が言うと、ソナタは多分……と言いながら、キャロに視線を移した。
「キャロ……」
「だってー! ユーリの作るお菓子美味しいから、つい……」
「…まぁいいんだけど。じゃ、ちょっと行ってくるよ」
4人にそう言うと悠里は映画館を後にした。
何故かポコもついてきたが。
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「コーダには既に本を借りっぱなしだし……あれで全部だって言われたし……図書館! 科学技術の棚だけではなく、産業や歴史、芸術の棚も見てみるべきなのか……? うわっ!?」
一方でセレナも映写機を直すため、資料を探すため図書館に行こうとしていた。ちょうどその時、何かが彼女の背中にぶつかった。
「ポコ? それにユーリも。ついてきたのか?」
「…フェルマさんのところに用があって。そのついでに図書館に行こうとしたら、何故かポコがついてきた」
悠里がセレナに理由を話す。
一応、ポコにも遊びに行くわけじゃないと言ったのだが、ポコは何故か悠里から離れようとはしなかった。
…現に今もだが。
「ユーリを困らせたらダメじゃないか。フィナちゃんのところに帰りなさい」
セレナが注意するが、それを聞いたポコは嫌だ嫌だという動作をした後、フェルマがいる喫茶店に行ってしまう。
やれやれと思いつつ、ポコを追いかけるセレナと悠里。
「…こんにちは」
「あら。ユーリ君。それにセレナも♪」
店に入ると、フェルマが出迎える。
アルディの他に、ちびっこ3人組のカプリ、アデル、ナチュラがいた。
「…依頼の物をお届けに来ました。」
「あらあら♪ ありがとう♪ キャロから聞いて、一度でいいから食べてみたかったの♪」
「一応、多めに作ってきたので、みんなで食べてください……」
悠里がフェルマに頼まれてた物を渡す。
セレナが何を渡したんだ?と聞いてきたので、悠里が自分で作ったお菓子だと話す。それを聞いたセレナは、なるほど。納得だと頷く。
「ポコを見ませんでしたか?」
セレナが訊ねるとカウンターに置いてあった布のような物がもぞもぞと動き、中からポコが出てきた。
その光景を見て、悠里は何をしてたんだと思った。
「全く……ん? これは誰の服?」
「カプリの~……」
アデルが答える。セレナが持ち上げてみると形からしてワンピースだろうか?
裾辺りが破けてしまっていた……
「みんなでお歌を唄うって約束したのに~……」
「破れちゃったから、無理ー」
アデルが泣きながら言う。当のカプリは破れたから無理だと言う。
「着たその日に破くとはねぇ……」
「3人で遊んでたら、引っかけて破いちゃったんだって」
アルディとフェルマが悠里とセレナに話す。
するとアデルが大泣きしてしまった。それを見たナチュラがカプリに泣かしたと呟いた。
「フィナだったら直せるんじゃないか?」
「あの子、料理とか裁縫、好きだものね」
「セレナ、ユーリ。その服、ちょっとフィナにお直し頼んでみてよ」
「は、はぁ……」
「え? でもフィナちゃんは今……」
セレナがそう言った途端、アデルがまた泣き出しそうだったので……
「…僕達、これから図書館に行かなきゃいけないから……お直しはその後でもいい?」
「……うん」
「よしよし。お菓子でも食べて待ってるんだぞ?」
悠里が頭を撫でながら、泣き止ませる。
これじゃ誰の服なんだかとアルディが言うが、まさにそうですねと悠里も思うのであった……
そんなこんなで目的地である図書館に来た2人と1匹。
とりあえず必要な本を借りて、テーブルで読む。
「基本的には残像を活かして、動いて見えるようにするものではあるが、全方位に映写するために……」
「…ロイヤルパラディン、シャドウパラディン、かげろうを救う為……ダメだ。こっちは主に解放戦争の事か。こっちは……」
セレナは映写機の資料、悠里は元の世界に帰るための資料を読んでいた。
すると隣が何やら騒がしいので、視線を移すと、カプリとポコが先程の服を取り合っていた。
「直さなくていいって……どうして?」
「…アデルとナチュラの3人で歌うって言ってなかった?」
ここは図書館だから落ち着きなよと悠里がカプリとポコを止め、セレナと2人で事情を訊く。
「アデルとナチュラは似合うけど……カプリはそうじゃないもん……」
「ワンピースが? そんな事はないよ。カプリだって可愛い」
「…………」
セレナはそう言うが、悠里はカプリが服を直さなくてもいいという理由を察した。
おそらく自分は女の子っぽくないから……というコンプレックスだろう。
こういうのは、セレナに任せた方がいいと考え、黙って静観する。
「嘘じゃない。本当だ。カプリは可愛いし、速く泳げるし」
「ナチュラだって速いし……」
「カプリは歌も上手い」
「アデルの方がすっと上手い……」
「好き嫌いもなくて、ひじきもわかめもよく食べる。…………! 誰かと自分を比べるのは良くない!」
「どうして?」
「どうしてって……「…カプリにはカプリの良いところがあると僕は思う。誰だって違う事をやれるから」」
流石になんて答えればいいか分からなくなるセレナ。
すかさず彼女の隣で座ってた悠里が答える。
「…………」
「やれる事がなかったら? 泳ぐのも、歌も、何もできなかったら?」
「その時はカプリが見つければいい。これからね。だから別に今決めなくてもいいんだ」
悠里がそう言うとカプリはとりあえず納得したようだ。
「……よし! 私は何もできない! 映写機は直せないし、フィナちゃんやユーリみたいに美味しいおやつも作れない……ダメダメだ。だから、カプリと一緒に服のお直しをしようと思う!」
「「えっ!?」」
セレナの突然の事に驚く悠里とカプリ。
急にどうしたのと悠里が訊いたら、そしたら1つ得意な事ができると思うからとセレナは言った。
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寮に戻った3人。
「よし、カッターがあった!」
「ノコギリ~」
「いいぞ」
「…………(服を直すんだよね?)」
明らかに服を直すには使わないかもしれない道具を出すセレナとカプリ。
2人がやる気満々なので、言いにくい悠里。
「…なんかあったら呼んでね? 僕、キッチンにいるから」
「分かった。よし、こういうのは大胆に………」
とりあえず、セレナにやらせてみよう。
そう思った悠里は部屋から出ていくのだった………
────それからだいたい20分くらいだろうか?
「あれ? フィナ?」
「あ。ユーリ~、セレナ見なかった~?」
キッチンでお菓子を作ってると、フィナがやって来た。
聞いたところ、様子を見に図書館に寄ったのだとか………
なるほど。入れ違いかと思った悠里は、セレナなら部屋にいる筈だから、一緒に行こうとフィナを誘った。
ちょうどみんなにお菓子を持って行くとこだったしと付け足す。
「セレナ? 入るよー?」
一応、ノックし部屋にフィナと入る。
そこで見たのは、さっき図書館で借りた服飾の本と何故かボロボロになった服だった。
「…………(いや、なにをどうやったらこういう風になるの?)」
「こほん。これは実験だ」
「じっけんだ!」
「……実……験?」
セレナとカプリがフィナに言う。
なんという言い訳だと悠里は内心思う。てか、フィナ……絶対に気付いてるでしょ?と同時に思った。
「私はあの映写機をマニュアル通りにセットした。しかしどうだろう? 短い映像は動くものの、長い映像は、あの通りだ……」
「うん……」
「はたしてマニュアルに記されているように、実践すると上手くいくのかという……これはあくまで実験であって……分かるかな?」
「うーん……?」
フィナの反応を見て観念したのか、セレナは本当の事を話すと言った。
初めからフィナに正直に言えば良かったじゃん、ちゃんと聞いてくれるんだからさ……と悠里が言うと、仰る通りです……とセレナは言った。
「セレナの工具だけじゃ足りないから、わたしの裁縫道具も使うね?」
「…やっぱりあれだけじゃ足りなかったんだ……」
「私とカプリは手を出さない方がいい。フィナちゃんに全部任せるよ」
「何言ってるの? セレナが教えてくれた事だよ? 一緒にやるって……」
そう言ってる内に、フィナの部屋に着いた4人。
フィナが棚のドアを開けると、ぬいぐるみが雪崩のように落ちてきた。
「また適当に押し込んでいたのか? ちゃんと決まった場所に片付けなさいって、何度も言ってるのに……」
「お菓子は作れても、片付けるのは苦手なんだもん……」
フィナが苦笑いしながら言う。
悠里も彼女に料理を教えてた時に、初めて聞かされた時は、驚いたし意外だと思った。
「カプリ、知ってる? セレナはすっごいんだよ♪ セレナが応援してくれるから、わたし……お裁縫もお料理も好きになったの♪」
「えっ?」
「……フィナね? 凄く嬉しそうにセレナの事話してたよ?」
それはまぁ子供のようにはしゃぎながらね?と悠里が付け足すと、フィナがもう~!と言いながら、ポコポコと悠里を叩いてきた。
…全然痛くないが。
その後、フィナの指導の下、カプリの服の直しをしたのである。
────そこから更に20分くらいした後だった。
「セレナいる────って、ええっ!?」
「あっ。ソナタ、カノン、キャロ。お帰り……」
ドアが開く音が聞こえ、悠里が振り向くとソナタ達だった。
まぁソナタ達から見たら、布やらリボン等の残骸が宙を舞っている……という珍妙な光景だが。
「何の騒ぎ?」
「騒ぎというか、なんというか……」
悠里がソナタ達に説明する。
説明し終えると、ちょうどフィナ達が仮縫いを終えたところなので、一行は、エスポワールに向かうのであった。
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「買ったばかりのワンピースを作り直したってわけか」
「よく似合ってるわぁ~♪ 3人共、可愛い」
「「「えへへ」」」
アルディとフェルマがカプリ達の服を見て感想を言う。
「ありがとう、セレナ」
「セレナ? フィナじゃないのか? お直しは」
カプリの言葉にアルディが意外な声を上げた。
フィナがそう思うでしょ?と言うとセレナの手を見せる。両手の指には絆創膏が。
「…セレナ、何回も怪我しながらも一生懸命にやってたので……」
「名誉の負傷って訳か」
「とも言いますね……」
セレナが難しかったですけど……と付け加えた。
その後、カプリ、アデル、ナチュラの3人はみんなに見せてくると言い、店を後にしたのだった……
再び映画館に戻ってきた6人。
セレナが試したい事があると言ったのだ。
「映写機をバラしてみるって……」
「大丈夫なんでしょうか?」
ソナタとカノンが口にする。
そう。セレナは一度、映写機をバラしてみるというのだ。
「セレナがやるんだから大丈夫……多分」
「多分って言ってるし……」
「フィナ、そこは自信もっていいと僕は思うよ」
悠里がそう言うと、セレナは……
「いいか? こういうのは大胆に思い切って……」
映写機を叩いたのだ。
それを見て驚くカノンだったが、何だってありなんだからと言うセレナ。
すると映写機のパーツの一部が外れてしまった……
「「…………」」
外れてしまった箇所を悠里とセレナが近くに寄って見る。
「いや。これはおかしい………」
「何が?」
「…普通、外側のパーツって、外れないように出来てる筈なんだ。外れちゃダメなんだけどね? けど、セレナが叩いた時に簡単に外れたでしょ? こんな簡単に外れる訳がないんだよ……」
ソナタの疑問に悠里が答える。
そこでセレナにさっきのパーツを付けてみてと促す。彼女も同じ事を思ってたらしく、パーツを手に取り、付けた瞬間に気付いた……
「そうか。そういう事か!」
「どういう事です?」
「微妙にズレていたんだ! 今まで!」
「「「「ええええええ~~~!?」」」」
衝撃の事実を聞き驚く4人。
寧ろ、よく今まで落ちなかったのが驚きだよと悠里は言った。
「原因も分かった事をだし、試しにキネオーブをセットしてみてみようよ」
悠里の一言で、5人は早速、映写機を試すのであった。
ちょうどアルディに連れられて、カプリ、アデル、ナチュラがやって来た。
「早く、早く♪」
「今始まるとこ」
こうして映写機は無事に完成したのであった。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
今回のEDは『シャボン-セレナver.-』をイメージしてください。