月の少年と5人のマーメイド   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回は、もう1人のVRの歌姫、チェル回です。
自分なりに頑張りましたので、楽しんでくれると嬉しいです。
そういえば、あと2日で、ブースターパック第8弾『銀華竜炎(ぎんがりゅうえん)』の発売日ですね。
ヴァンガードでも、人気のある4クランが収録されているので、お求めの皆様もいるんじゃないでしょうか?

それではどうぞ。


第7話 だから全部いただくわ

「え? 次の上映会……?」

「うん。コーダの希望でね?」

 

悠里の疑問にソナタが言う。

コーダ曰く、大画面で観た映像に感動したらしく、まるでコンサート会場にいるような感覚だったらしい。

まぁ……その気持ちは分からなくもないが。

 

「それでね? これが観たい映画なんだって」

 

キャロが見せてきたのは少し古い年代映画。

ジャンルは……ミュージカル系だろうか?

 

「うむ。とにかく曲が最高なのだよ! 君達も聴いた事があるんじゃないか? 有名な曲で、最近もアイドルがカバーしていて……聴いてみるのだ!」

 

コーダが何処から取り出したのか、機械を出して、セットする。

すると音楽が流れ出した。

 

「…結構いい曲だね。歌い方によっては子守唄にもなりそう……」

「だろう? これを歌う歌姫、チェルちゃんはこの海に舞い降りた天使、いや女神!」

「それはまた評価が高いね……」

 

悠里がコーダに言うと、ソナタが何かを発見したようだ。

 

「あれ? 似てる……」

「あっ……本当だ、そっくり……」

 

続けてキャロも言う。

気になって悠里も様子を見ると、そこには銀髪の長髪に紅い瞳。赤いワンピースを身に纏ったソナタ達と同い年くらいのマーメイドの少女がいた……

 

「…あの子がどうしたの? って、コーダどうしたの?」

「ほ、ほほほほ……本物のチェルちゃんだ!」

 

コーダの表情を見て察する悠里。

どうやら、あの少女の正体は先程まで話題?になっていた歌姫だった。

 

「ほ、本物のチェルちゃんがパーレルにー!?」

「アタシ達、チェルの事、なーんにも知らないもんね」

「僕は全く知らないんだけど……」

「カノンは知ってるの?」

 

ソナタが訊くと、カノンは頷いた。

何でもチェルは小さい頃からアイドルとして活躍しており、その歌声は音楽界でも1、2を争うくらいの素晴らしさで、今やテレビでは見ない日はないとの事。

 

「そのくらい忙しい……筈なんですが……」

「小さい頃からアイドルか。そうなると……第4世代辺りなんだね。彼女」

「第4世代?」

「小さい頃からアイドルをやる……まぁ最年少アイドルの事。数える程度しかいないからね。あの年で。第3世代が僕の知る限りだと……ティルアかな。後は……ローリス、リディ、スピカ、エミリア、シズクかな。あっでも……シズクは特別扱いなんだよな。第1世代と第3世代の2つ称号を持ってるし……」

『…………』

 

悠里の説明に驚愕する一同。

しかも話に出てくる人物は全員、伝説の歌姫の名前ばかり。

 

「…それにしてもカノンの言ってた事が本当なら、なんでパーレルにいる訳?」

「きっと、訳ありら……」

「……あ。アザラシさんだ」

 

悠里の言葉を引き継いだのは、パーレル村で運び屋をしているアザラシさんだった。

 

「彼女は誰かに追われている様子だったら。アザラシは決死の覚悟でアトランティアから彼女を連れだした……」

「カッコイイー」

「でもそれって大丈夫かな……」

 

フィナが言いたい事も分かる。

何故なら……

 

「立派な誘拐罪だ。ユーリに誘拐されるなら、私は全然オーケーだが」

「…究極的に第三者から見たら、誘拐罪だろうね。というか、セレナは何を言ってるの?」

「「「「うんうん!」」」」

「…いや、ソナタ達もなんで頷いてるの……」

 

セレナの意見に同意しつつ、違和感に突っ込む悠里。

しかもソナタ、カノン、フィナ、キャロも何故かセレナの意見に頷く。

 

「つ、捕まるのは困るだ! アザラシは何も知らないらー!」

「待てー!? 詳しく聞かせるのだー!!」

 

逃げるアザラシをコーダは追いかけていくのであった。

 

「大丈夫かな、あの子……」

「彼女には、彼女なりの……何か理由があるんじゃないですか?」

「…理由かぁ……」

「? 何ですか?」

 

カノンの言葉に悠里がチラッと彼女を見る。

何ですか?と聞かれたが、僕の考え過ぎかもだから何でもないよと言った。

 

「やはり似た者同士、分かりあっちゃうんだね」

「似た者同士?」

「都会、逃亡、訳あり……」

「ん~?」

「最近、聞いたような~……」

「ん~???」

「アイドルにも関係していてー……」

「もう! みんなカノンを虐めないの!」

「…そうそう。3人の言ってる事も分からなくもないけどさ……」

 

弄られてるカノンを止めるソナタと悠里。

 

「そうですよ! 私とは全然似て────「()()()()()()()()()()()()」あっ……」

 

後ろから別の声が聞こえ、その言葉にショックを受けるカノン。

自分が来たばかりの時と一緒だったのだ。この村について最初に思った事と。

 

「ちょっとそこ。騒がしいんだけど。……ったく、あなた達暇な訳?」

 

悠里達が振り向くと、そこには先程の声の主、チェルがいた。

まぁあれだけ近くで話してれば、彼女に騒がしいと思われても仕方ないのかもしれないが。

 

「ふーん……っ! いいわ。だったらあなた達、あたしを案内しなさい」

「「「「「「えっ?」」」」」」

 

何故かチェルにパーレルを案内しろと言われた。

一瞬だけ彼女は悠里の方をジッと見た気がするが……5人は気のせいかと思った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「フェルマさん、こんにちはー」

「「「「こんにちはー」」」」

「…どうもです、フェルマさん」

「いらっしゃい♪ あら……」

 

エスポワールにやって来た6人……否7人。

店主であるフェルマが、チェルの姿を見て珍客を見るような表情になる。

とりあえず悠里が粗方の経緯を話すと納得してくれた。

 

「へぇー、なかなか良さそうじゃない……」

 

チェルの表情を見る限り、店内の評価はお気に召したようだ。

 

「でしょ。どれもこれも美味しくて。あー、オススメが決めきれない……」

「いつも選ぶのが大変なんです」

「1時間はざらだな……」

 

今日のケーキを見て言うキャロ、カノン、セレナ。

 

「チェルちゃんも迷うよね?」

「ええ」

「だよねー?」

「だから、全部いただくわ」

「ぜ、全部……!?」

 

チェルの言葉を聞いたキャロは、この世の終わりのような表情をしながら倒れかけたそうな。一方で悠里は、フェルマだけだと大変なので、チェルがケーキのお持ち帰りの手伝いをする為、厨房で準備をしていた。

 

「キャロさん、大丈夫ですか?」

「全部って……全種類って……」

「再起不能だ……」

「あたし達でも全部食べた事ないのに……」

「それも1時間で……」

「…後で僕が作ってあげるから、機嫌直してよ……」

 

何故か荷物運びをする6人。

未だ、先程のケーキの事を引きずっているキャロ達をフォローする悠里。

 

「ねぇ。ちょっと。荷物預けちゃいたいし……ホテルどこ?」

 

するとチェルがそんな事を言い出した。

それを聞いた6人は当然……

 

「え……?」

「ええ~?」

「ほ、ホテル?」

「……って、ありましたっけ?」

「…僕のイメージでは、民宿はありそうな気がするけど……キャロ、実際はどうなの?」

「いやいや。パーレルにそんなのあるわけ……」

 

この反応である。

 

「えっ!? あ、ああ……ありえなーい!?」

 

チェルの驚愕した表情と叫びがパーレルの広場でこだました……

 

 

「お風呂とキッチンは上ね?」

「全く……ホテルがないとか、信じらんない……」

 

とりあえず寮に移動した一行。

 

「まぁでも……悪くないわね。じゃ、ここを衣裳部屋にするわ」

「「「「「ええ~!?」」」」」

「…えっ? 服だらけになんの? この部屋一帯……」

 

チェルの一言で驚愕する6人。

この部屋一帯が衣裳だらけになるとか、色々と気を遣わなければいけないじゃないかと思う悠里。

 

「寝室は……ここに決めたわ!」

「あっ。そこは、わたしのお部屋~……」

「…フィナの部屋が陣取られたよ」

 

チェルに自分の部屋を陣取られたフィナは半泣き状態。とりあえずセレナが、自分の部屋に来るといいよと言って、事なきを得たが。

 

「それじゃあまた何か用があれば……」

 

ホテル?の件は何とかなったので、ソナタがチェルにまた何かあったらと言ったのだが……

 

「あら、待ちなさい。まだ終わってないわよ」

「「「「「「え?」」」」」」

 

チェルに呼び止められた6人。

 

「この姿見、あたしの部屋に移動ね」

「えええ~!?」

「このカーテンも気に入ったわ!」

「うわぁ!?」

「この子もね!」

 

ソナタの姿見、カノンのカーテン、キャロの鮫のぬいぐるみ等々、チェルに持ってかれてしまった……

ちなみに悠里の部屋からは、ライオンをモチーフにした手作りの『さくたろう』ぬいぐるみが持ってかれたが。

ちゃんと大事にするならあげるよと悠里が言ったら、チェルは喜んでいたが。

 

「かっわいい~♪」

「うわぁ……アタシのラブちゃんがー……うわあぁぁん……ユーリぃ~~……」

「よしよし……」

 

大泣きしながら、悠里に抱きつくキャロ。

そりゃ名前を付ける程、大切にしていたぬいぐるみを持ってかれたとなれば、泣いてしまうのも当然だろう……

悠里の場合は条件付きであげると言ったとはいえ、また作ればいいかなと思ってる感じである。まさかチェルが喜ぶとは思ってなかったが……

 

ちなみに危うくポコまで持ってかれそうだったのをフィナが必死に止めたのは余談である。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

「ではない……」

「だろうね」

「チェルちゃん、凄いパワーだねぇ~……」

「嵐が過ぎ去ったかのような……」

「絶賛停滞中だもん。またいつウルトラハイパートルネードがくる事か……」

「…まぁチェルを一言で嵐って例えるのは間違ってないね」

「失礼するのだ!」

 

6人が休憩していると、コーダがやって来た。

 

「コーダさん、どうかされましたか?」

「ちょっと確かめたい事が……」

 

そう言うと、コーダは寮にあるテレビの電源を付ける……が砂嵐状態だった。

パーレルでは、潮の流れのせいで電波が悪いと悠里がパーレルに迷い込んで来たばかりの時にソナタから聞いた。

 

「お。任せろ。ほおぉ…………とぉ!!」

 

セレナがダブルチョップでテレビを叩く。

すると、どうだろう………さっきまで砂嵐だったのに一気に映像が映し出された。

 

「…………(ふーん、チェルが思い悩んで失踪ねぇ)」

 

テレビには、そう報じられていた。

しかし悠里にはどうも辻褄が合わない気がした………

そう考えてると、テレビがプツンと切れた。

 

「見てないわよね?」

 

後ろを振り返ると、テレビの電源コードを持ち、笑っているチェルの姿が。

ただし目は笑っていないが……

 

「見・て・な・い・わ・よ・ね?」

 

これには全員、はいと言わざるを得なかった。

チェルはそれを聞くと、部屋に戻って行った……

そしてコーダが気絶した。この後どうするかとなったのだが、コーダを送り届けるついでに映画館に行けばいいんじゃない?と悠里の意見で決まった。

 

そして何故かチェルも気になったのか、ついてくる事になってしまったが。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「シネマ・カラフル……?」

「そう。ここがあたし達の映画館だよ」

 

チェルを案内しつつ、映画館に入る7人。

 

「ねっ、ねっ? 凄いでしょ?」

「最初はボロボロだったんだけどね? やっと使えるようになったんだー」

「全部6人で修理したんだよ~」

「客席も素敵なんです」

「映写機もあるぞ」

「…まだ課題は色々あるけどね?」

「好きに見てくれていいから」

 

6人がそう言うと、チェルはつまらなそうな表情をする。

その瞳を見て悠里は彼女が何を思ってるのかを理解できた。

 

「そういえば、この前の上映会、カプリ達が迷って倉庫に行っちゃったって」

「案内板が必要かもしれませんね」

「…それには僕も賛成。必要最低限の案内板を作って設置しとかなきゃね。応接室もあったくらいだし……」

「コーダは軽食を所望していたぞ?」

「…その辺はフェルマさんとアルディさんに相談かな。最悪、持ち込み制っていう手もあるけど────「わけわかんない!!」?」

 

相談をしていた時、チェルが言い放った。

 

「どうしてこんなのに盛り上がれるわけ? だってそうでしょう? 古臭くて、機材も最新じゃないし、音響だって最悪に決まってる! あなた達はそれでいいわけ?」

「あのね? チェルはそう思うかもしれないけど、あたし達にとっては特別な場所で……」

「特別? 笑わせないでよ。こんな場所、何も無────「あります!」」

 

しびれを切らしたのか、カノンが言った。

 

「ここには……ソナタとみんなで見つけたこの場所には、数えきれないくらいの思い出があります! キャロのみんなを楽しませたいって想いも、セレナの諦めない想いも、フィナの言ってくれたひじきサンドな想いも、ユーリの優しさも……それにパーレルのみんなが、ここを楽しみにしてくれているんです! 見た目には分からないかもしれないけれど……ここにはたくさんあるんです!」

「…………」

「それを……何も知らないあなたに好き勝手言われたくありません!」

「……ばか………ばか! ばかばかばかばか!!」

 

するとチェルは子供のような捨て台詞をはいて映画館から出て行ってしまった……

 

 

────今日の作業が終わり、6人は寮に戻っていた。

 

「やっと終わった~……」

「上々の出来だ」

「上映するキネオーブも見つかったし………」

「そうですね」

「チェルはまだ部屋に閉じこもったまま……?」

「うん。差し入れのひじきサンドもね? 食べてないみたい……」

「そっか……」

「そりゃ食欲でないよ。さっきのカノン……すっごく怖かったもん……」

 

キャロの言葉で同意する4人。

件のチェルは部屋に閉じこもったままだ。

フィナ曰く、鍵も閉まってたらしい……

 

「…………」

「? ユーリ、どうした?」

 

いつもと違う表情をしてた悠里が気になったのか、セレナが声をかける。

 

「……え? あぁ……チェルの事。カノンと言い合いしたでしょ? チェルの言い分も解るんだよね。もちろんカノンがみんなの為に言ってくれたのは嬉しかったよ?」

 

誤解を招かないように、悠里は5人に言う。

当の5人は嬉しさ半分と疑問半分だったが……

 

「……ちょっとチェルのところに行ってくるよ。アイスケーキがそろそろできてる筈だし……後は……シャル!」

「はい。マスター」

 

悠里のデッキケースから歌姫のシャルが現れた。

ここ最近分かったのだが、数回くらいなら、自分のユニットが召喚できるらしい。

 

「…5人に質問されるかもしれないけど、出来る範囲で説明よろしく」

「……それはご命令ですか? 私はあまり言いたくないんですが……」

「…マスター権限だよ。それに僕は全部を話せなんて言ってないよ? その辺はシャルに任せる」

「はい。承りました」

「あ。あと、アイスケーキ……シャルの分もあるから5人と一緒に食べていいからね」

「はい♪ 美味しくいただきますね?」

「「「「「…………」」」」」

 

一瞬だけ真剣なやり取りから一変、微笑みながらの会話する悠里とシャルを見て呆気にとられる5人であった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「チェル?」

「…………」

 

やはり返事がない。

試しにドアノブを回してみるがフィナが言ってた通り、鍵がかかっていた。

そこで悠里は少し強硬手段に出る事に。

 

取り出したのは針金で作った鍵。つまるところ、ピッキングである。

 

「はい。入るよっと……」

「えっ!?」

 

鍵は閉めたのに普通に入ってくる悠里を見て驚くチェル。

そんな彼女をよそに、隣に座る悠里。

 

「…ん。アイスケーキ作ったから、差し入れ」

「…………えと、あの……ありがとう…………」

「……ん」

 

てっきり要らないって言われるかと思ってた悠里だったが、チェルは素直にアイスケーキを受け取った。

 

「…チェルって、小さい頃からアイドルやってたって聞いたけど、そうなの?」

「……そうよ」

「…パーレルに来たのは……アイドル活動中で個人的に何か嫌な事があったから?」

「…………。あなたって変な人ね……?」

「…僕の事をそういう言い方するのは、チェルが初めてだよ」

 

澄まし顔でアイスケーキを食べながら、答える悠里。

するとチェルは、ここに来た経緯を悠里に話し出した……

自分のマネージャーが『さっきの温いステージは何? 気持ちが全然入ってなかったじゃない』や『あるでしょ? 曲に込められた想いとかメッセージとか』等を毎日のように、言われたらしい。

 

「……君のマネージャーの言い分も分からなくもないけど……そりゃチェルが家出モドキをしたくもなるよ」

「あたしには分からないわよ……小さい頃からアイドルで、何がしたいのかも分からない……()()()()……あたしには……」

「…………」

 

()()()()

 

その一言が悠里には突き刺さった。

なんで彼女の気持ちが一発で分かったのか……

 

チェルは似ているのだ。

 

幼い頃の自分に……

 

「…チェルに少し……僕の昔話をしてあげるよ。聞き流してもいいから……」

「えっ……」

 

涙目になりながらも、悠里を見るチェル。

その時の彼の瞳は寂しさが窺えた……

 

「…僕は昔ね────」

 

 

「……元の世界でマスターは幼い頃、()()()()だったんです」

「「「「「…………えっ!?」」」」」

 

一方でシャルも悠里の事を5人に話し出した。

 

「アイドルになった経緯は省きますが、マスターは当時、ステージに滅多に現れない事から、『幻の歌姫(ファントムディーヴァ)』と言われていました。ですが、ライブ公演の際は満席になる程の人気でした」

「確かにユーリの歌は、引き込まれるな……」

「あたしも……」

 

セレナとソナタが言う。

その言葉にカノンとフィナ、キャロも同意する。

以前一度、5人は悠里の歌を聴いた事があるが、例えるなら一度聴いたら二度と忘れられない……それくらい素敵な歌だったのは今でも覚えてる。

 

「私やレイ……それにぺルラやペルルもマスターの歌が大好きでした。しかし現実は非常に残酷でした。マスターをよく思わない方がこう言ったんです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と……」

「「「「「…………」」」」」

 

シャルの重い言葉を聞いた5人は何も言えなかった。

 

「リヴィエールとそのマスターである千聖様や、リディと璃夢様は悪くないと何度も仰りましたが…………毎日のように罵倒されれば、貴女達でも分かるでしょう?」

 

そう締めくくった。

 

「きっとマスターはチェルが昔の自分と重ねているんだと思います。もちろんあの子が悪いのも一理あります。その辺はカノンが代表して言ってくれたので」

 

マスターに代わってお礼を申し上げますと深く頭を下げるシャルを見て、慌てだすカノン。

同年代とはいえ、相手は伝説の歌姫なのだから、カノンからしたら堪ったもんじゃない……

 

「チェルが言ってたのも分かります。都会育ちの女の子からしたら、パーレルは何も無いと第一印象が付いてしまうのかもしれません。ですが逆の場合……言い方は少し悪くなりますが、田舎からしたら都会は賑やかすぎて落ち着かない……と一緒です」

 

最も私はマスターの下で過ごすのが一番ですが。と付け加えながら、アイスケーキを口にするシャル。

 

「レイも同じ事を言うと思いますよ?」

「レインディアさん……も?」

「はい。セレナから見て、レイはどんな印象ですか?」

 

いきなりレインディアの印象を聞かれたセレナ。

一瞬だけ考えたが、こう口にする。

 

「クールで……貫禄がある、ちょっと近寄りがたい雰囲気があるな。私の憧れの人だし……」

「まぁ貴女達からしたら、レイはそう見えますよね。ああ見えてレイは優しいんですよ? 雰囲気のせいで話しかけにくいだけであって。なんなら今度マスターに頼んでみましょうか?」

「ぜ、是非ともお願いする!」

 

セレナが興奮気味にシャルに迫る。

何せ、彼女からしたら、小さい頃からの憧れの歌姫なのだから。

そんな時だった。

 

「……って、セレナが興奮してるけど……どうしたの?」

「お帰りなさい、マスター。実はですね……」

「ユーリ! レインディアさんに会わせてくれるのか!? もちろん今じゃなくてもいいぞ!」

 

悠里が戻って来た。

興奮しているセレナに迫られ、シャルに目線でそういう事です……と言われる。

察した彼は、期間が落ち着いたらね?とセレナを納得させた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そして次の日。

悠里達は映画館に着ていた。

今日も観客は大人数で賑わっており、上映を今か今かと心待ちにしてる人だらけだった。

 

「ユーリ、そろそろ上映時間だ」

「…そうだね。カノン? どうかしたの……?」

「いえ……始めましょう……」

 

セレナの合図で上映時間を知らされた悠里だが、カノンの顔色がが優れなかったので、訊いてみるが何でもないと彼女は言った。

…まるで誰かを待ってるかのような……そんな表情だった。

 

「…………よし。みんな位置について?(そんな表情しなくても来てくれると思うけどな……)」

 

そして6人は各自、配置に着き上映会を開始させたのだった。

途中で音響が止まったが、悠里が直して事なきを得た。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「これで最後かしら?」

「そうら」

「ご苦労様」

 

────夕方のパーレル村の広場。

チェルはアザラシ便で荷物の準備を進めていた。

ちょうどその時、悠里達6人がやって来た……

 

「あの、チェルさん……私……」

「分かったわよ」

 

カノンが何が言いたいのか表情を見て分かったと言うチェル。

 

「そろそろ出発らよ~」

「それじゃあね」

「ええ」

 

出発時間になったのか、アザラシがチェルに言う。

 

「皆様、ごきげんよう」

「さようなら、チェル」

「さようなら~」

「チェル、またね」

「さよなら、チェルちゃん」

「…………」

 

ソナタ、フィナ、セレナ、キャロが別れの挨拶を言う。

悠里は手を軽くチェルに降った。彼なりの別れの挨拶である。

 

「あ、いけない。忘れ物をしてたわ」

「「「「「忘れ物?」」」」」

 

おっと。いけない。と言いながら忘れ物を思い出すチェル。

そんな物あったっけ………と悠里が言おうとした時だった……

 

「ん♪」

「……えっ?」

 

悠里の頬に当てられた非常に柔らかな感触、マシュマロより柔らかい……この正体は……

 

「あなたの事、気に入ったわ♪ 今度あなたの世界の事、あたしに教えてね、ユーリ♪」

 

チェルが耳元で囁いた、つまりこの柔らかいものの正体はチェルの唇だった。

しかも表情は満面の笑顔だった……

 

「それじゃあね♪」

 

それだけ言うとチェルはパーレルを出発した。

最後まで嵐である……

 

「「「「「ユ、ユ、ユ……ユーリのっ!!」」」」」

「…えっ? 何……? 5人共、なんか怖いんだけど……」

「「「「「バカァァァァァー!!!!」」」」」

 

余談だが、悠里はこの後、5人のマーメイドの少女達とパーレル村の広場にて、盛大な鬼ごっこを繰り広げた事をここに記す。




読んでいただきありがとうございます。
『カラフル・パストラーレ』軸を使ってる人だったら、彼女にはお世話になってる方が多いでしょう?
自分も2枚くらいデッキに入れてます。      
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


今回のEDは『シャボン-チェルver.-』をイメージしてください。
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