月の少年と5人のマーメイド   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回は陸上がりの回です。
楽しんでくれると嬉しいです。

それではどうぞ。


第8話 それはね、靴っていうの

「あそこじゃない?」

「うわぁ~……緊張する……」

「私もです……」

「大丈夫、大丈夫。予習してきたし……」

 

ソナタ、キャロ、カノン、フィナが言う。

ここはパーレル村から少し離れた海の上……というか、海面である。

 

「5人共。確認だけど、トゥインクルパウダーは持ってる?」

「「「「「うん」」」」」

「……プリズムパールは?」

「「「「「付けてる」」」」」

 

悠里が5人に確認を取る。

とりあえず陸地に上がる。悠里もこの世界では初めての上陸になるが……

 

「せーのっ……!」

 

ソナタの合図で5人は、トゥインクルパウダーを使った。

するとどうだろうか?

光が輝き終わると同時に彼女達の尾びれの部分が()()()()に変わった……

 

「なにこれ……ふええええ!?」

「砂が動いています……なんですか!? これは……」

 

突然の事に驚くキャロとカノン。

ちなみに悠里は、この現象を知ってる為、そこまで驚かない。まぁ……キャロ達からしたら、初めてなんだから仕方がないけども。

 

「とっと……と……!?」

「…おっと。大丈夫?」

 

慣れてないせいか、ソナタがバランスを崩し倒れそうになったところをすかさず悠里が抱きとめる。

傍から見たら、ソナタが悠里に抱き付いてる状態だが。

 

「~~~っ!? う、うん……ありが……とう」

陸上(おかあ)がりは最初だけが大変ってシャルから聞いてたけど……よく考えたら当たり前か。ソナタ達はマーメイドなんだし……」

「…うぅ~………(こ、こんなに近くでユーリと密着……それに今まで水中だったから、あまり意識してなかったけど、パウダリングするだけで……ユーリがいつも以上にカッコよく見えちゃうよ……)」

 

僕の場合、ちょっと変わった人間だしと付け加える悠里。

そんな彼をよそに、ソナタの心臓はいつも以上にドキドキしっぱなしだった。

 

「…カノンも。手を貸すから。……歩ける?」

「あっ…は、はい……(ユ、ユーリがいつも以上にカッコいい……です……)」

「フィナとキャロも。手を貸してあげるから」

「「う、うん……」」

 

……訂正。

カノンとフィナ、キャロもソナタと同じ心境なのであった。

 

「…あれ? セレナは?」

 

ここで悠里はセレナがいない事に気付く。

他の4人も辺りを見渡すが、セレナの姿はない……

まさか、パウダリングを終えた直前に流されてしまったのか?と悠里は思った時だった……

 

「んにゃむにゃむ」

「「「「「えっ?」」」」」

 

後ろから別の声がしたので、5人は振り向く。

そこには、悠里の世界で例えるなら小学生くらいの女の子がこっちを見て立っていた。

 

「だ、誰でしょう……?」

「ふにゃむ、ふにゃにゃむにゃむ……」

「あれ……もしかしてセレナ!?」

「…言われてみれば、セレナに見えなくもない……」

「「セレナ!?」」

 

フィナの指摘にソナタ達は驚く。

 

「にゃむ!」

「そーだよ! セレナだよ!」

「でもでも、昔のセレナだよ!?」

「カプリ達程じゃないけど!?」

「小っちゃい……」

 

ソナタ達の会話を聞く限り、目の前の少女はセレナで間違いないようだ。

 

「か……!」

「「「「か?」」」」

「可愛い~~~!」

 

あまりの可愛さにフィナがセレナに抱き付いた。

しかもセレナ、困り顔である。

 

「…セレナ、プリズムパール落としたよ?」

 

とりあえずフィナを落ち着かせ、落ちていたプリズムパールを拾い、セレナに渡す悠里。

 

「あーあー……うー……」

「…大丈夫? セレナ?」

「大丈夫だ。全く……一時はどうなる事かと……」

「セレナなんだよね~?」

「……間違いなく私はセレナだ」

「うわっはぁ~♪ わたし、陸上がりして良かった~♪」

「フィナちゃん、苦しい……」

 

フィナってこんなにはしゃぐタイプだっけと思う悠里。

おそらく可愛いもの好きが高じて、こんなテンションなんだろう……多分。もしくはセレナだという点もあるかもしれないが。

 

「でも……セレナだけどうして?」

 

ソナタの疑問は尤もだ。

すると悠里がああ……と言いながら……

 

「…トゥインクルパウダーによるパウダリングが完全に上手くいかなかったんだと思うよ? 普通はソナタ達みたいになる筈だけど……セレナの場合は体質によるんだと思う。逆も然りで、小さい子がパウダリングしたら、フェルマさんみたいな大人の女性になったっていうパターンもシャルから聞いた事あるし……」

 

だからあんまり気にしなくても大丈夫だよと5人に言う。

 

「さて……と……」

 

そう言うと悠里は靴を脱いで素足になり、準備運動をし始めた。

一通り終えると、今度は腰に付けてあるポーチからある物を取り出した。

それは……

 

「ユーリ、そ、それって……」

「…察しの通り、トゥインクルパウダーとプリズムパールだけど?」

「「「「「ええええええ~~~!?」」」」」

 

そう。トゥインクルパウダーとプリズムパールである。

パウダーの色は彼の髪色と同じミントグリーンで、よく見ると紫色の粒のような粉も混じっていた。プリズムパールはソナタ達と同じ、チョーカー型だが。

 

「…パーレルの図書館でトゥインクルパウダーの歴史みたいなの読んでたらさ、作り方がさり気なく書いてあって、それを基に作ってみたんだ。プリズムパールの方は、アルディさんから貰った」

『…………』

 

悠里がトゥインクルパウダーを作ってみたと聞いて、驚きを隠せない5人。

てか、そんな簡単に作れるものなのか?

そんな5人をよそに悠里はプリズムパールを首に付ける。

 

「…元々が人間だから、あんまり変化がないかもしれないけど……物は試し……」

 

そう呟きながらも悠里はトゥインクルパウダーを使う。

するとどうだろうか?

光が輝き終わると同時に彼の身長は、セレナよりちょっと上まで縮んでいた。

……早い話、小学生。

しかも藍音学院の制服も同じサイズまで縮んでいた。

 

「…おいっすー☆ 検証の結果、僕は縮むみたい。ヤバイですね☆」

「「か……」」

「…か?」

「「可愛い~~~!」」

「こらそこの2人! HA☆NA☆SE!」

 

ソナタとフィナが悠里に抱き付いた。

もしかしてセレナもこんな気持ちだったのかなと納得してしまう悠里なのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「えっと……こっちが~あっちでー……?」

「ソナタ、読み方違う。ちょっと借りるよ。セレナ、現在位置とこれから向かう方向の確認をお願いしたいんだけど」

「分かった。任せろ」

 

ソナタが地図の読み方が分からないのを見かねた悠里が地図を借りて、セレナと一緒に辺りを見渡す。

 

「今いる場所がここで……」

「ふむ。そうなると……ユーリ、あっちだ!」

「というわけで、みんな移動するよー?」

 

セレナからの確認も貰えた事で、悠里達6人は森に向かうのであった。

移動途中でフィナが終始ご機嫌だったが、気にしてはいけない……

更に言うなら、カノンが悠里の手をご機嫌な表情で繋いできた事もだが。

 

「色んな音や声がするー!」

「この島の生き物の声だろう。パーレルとは全く違う生き物が住んでいるらしい」

「図書館で調べたよねー。ケモノ? とか、トリー? とかいるんでしょ?」

 

少し森を歩き、広場で休憩する6人。

 

「…さっき5人が見たのは蝶って言うんだよ。分類的には虫に当たるんだ。僕の世界だとよく見かけるよ?」

「「「「「へぇ~」」」」」

「…他にも季節によって種類が……って、その前になんで僕はソナタの膝に座らせてるのかな? かな?」

 

初めて蝶を見た5人に説明しながら悠里が突っ込む。

何故かソナタの膝に座らせられているのだ。頭を撫でながら……

そして当の本人はというと……

 

「だってその……ユーリが可愛いから……ダメ……かな?」

「…ダメじゃないけど……程々にしてよ?」

「うん♪ じゃあもうちょっとだけ♪」

 

もういいや、諦めよう……と悠里は思った。

 

「…今更だけど……潮ゼリーだっけ? 僕初めて聞くけど……パーレルには無いの?」

「ないよ?」

「そうなんだ……じゃあアトランティアにあるとか?」

「いえ。都会にも無いと思います」

 

カノンが悠里に言う。

……そう。悠里達が陸地に来たのは、アルディとフェルマに頼まれたお使いである。

『潮ゼリー』という食べ物が作れる人物、グラディスという人?に頼みに『ギンリン亭』に行く最中なのである。

 

「そのギンリン亭は、まだー?」

「地図によれば、この森の先だ」

「あの、この島……全部森なんですけど……」

「こんなところに住居を構えるとなると、相当この森の地理に詳しいってなるよ」

 

悠里が5人に言う。

こんな広い森に家を建てるとなると、まず森の地理を完全に把握しなければならない。それがどれだけ難しいかは悠里でも理解できた……

 

歩いてる途中、片言だがインコのような鳥を見つけた。

グレートネイチャーの鳥かな?と悠里が疑問に思っていると、何処からか少女の笑い声が聴こえ、気づけば目の前に黒髪で褐色肌の少女が6人の前に現れた。

 

「こんにちは」

「「「「「「こ、こんにちは……」」」」」」

 

突然の事に困ったが、悠里がグラディスさんという人を捜してるんですがご存知ですか?と少女に尋ねると、少女は知ってると言い、悠里達を案内するのであった……

 

 

案内されたのは、レンガと木材で作られたログハウス。

近くには竃も置いてあった。

 

「入って~!」

「お邪魔します……」

 

少女に中に入っててと言われて、中に入る6人。

 

「気になった物があったら好きに触ってくれていいよ? ここにあるのはみんなの物。独り占めはしないんだよ?」

 

そう少女は6人に言うが……

 

「グラディスさん、怒らないかなぁ……?」

「どうして?」

「難しい人だって聞いたから……」

「誰に?」

「アルディさんとか、フェルマさん。パーレルっていう村の人に」

「…………?」

 

キャロの疑問に少女は怖い人じゃないよと言う。

そのやり取りを聞いてた悠里は少し疑問を持ったが、まさかね……と思いつつも気にしない事にした。

 

すると少女は、悠里達に色々手伝ってほしい事があるんだけどと言った。

 

少女からの手伝い……それは家事だった。

役割分担をし、それぞれこなす。

そして気づけば、夕方になり……

 

「「「「「「ええええ!? あなたがグラディス……さん?」」」」」」

 

少女の口から衝撃の事実が。

なんと、目の前の少女本人がグラディスだったのだ。

 

「6人共お疲れ様。お手伝いありがとう。ご飯にしましょ」

「…やっぱり。でも……グラディスさんって大人の筈じゃ……あっ。そっか……」

 

ここで悠里が疑問に気づく。

 

「そ。トゥインクルパウダーが合わなかったって事」

 

人は見かけでは判断してはいけないのは、クレイでも共通だな悠里は思った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁ~♪ 美味しかったー♪」

「トマトのムース、美味しかったです♪ チョップドサラダも♪」

「いい人で良かったー」

「幸せ~♪ 来て良かった~」

 

夕食を食べ終わり、一息つく6人。

頂いた料理は、悠里が住む地球の料理に近かった。個人的にはトマトのムースが美味しかったと悠里は内心思っていた。

 

「そういえば、棚に凄く綺麗な物が飾ってあった……」

「何々? 何それー?」

 

セレナが5人に言った。

 

「斜めになった細長い入れ物と細長い台に、色とりどりの紐が付いていた! ユーリが普段から付けてる物に似てて、どれも2つでセットなんだ……!」

「僕が付けてる物……?」

 

悠里が答えを探そうと考えてると……

 

「それはね、靴っていうの」

 

空をを見て来ると言ってたグラディスが戻ってきて、セレナ達に言った。

…なるほど。セレナが言ってたのは靴の事かと納得する悠里。

 

「(よくよく考えてみたら、セレナ達って水中の生活が主だから、知らないのは当然か。そういえば、この世界に迷い込んだ時も僕が履いてた靴を物珍しそうに見ていたし……)」

 

同時に疑問が解決した。

ちなみに5人が靴を履いた姿を見て、悠里が似合ってるね。と言ったら頬を赤くし俯く5人の姿が。

それを見たグラディスがニヤニヤしてたのは言うまでもない。

 

 

────その日の夜。

悠里は夜空を眺めていた。

 

「ん……? ユーリ……?」

「眠れないんですか……?」

「あ。ごめん、起こしちゃった?」

 

ソナタとカノンに謝る悠里。

何してるの?と聞かれたので、月を見ていたと言った。

海の音も聴きながらだけどねと付け足す。

 

「この世界でも月は変わらないなって思って……今頃みんな何してるんだろ……」

「みんな……って、ユーリの世界の人?」

「…そ。って言っても向こうだと案外、時間は進んでないかもだけど」

「寂しくないんですか?」

 

ソナタとカノンに聞かれ、悠里は寂しい半分、寂しくない半分だよと答える。

元の世界の時間が、あまり進んでないかもと思えるのはなんとなくだ。自分がパーレルに迷い込んだのは、高校2年生になったばかりの最初の休日の前日の夜なので、余裕がある……

それに当分は休日続きだと思うし。

 

「…僕がパーレルに迷い込んだのは多分……やるべき事があるかもだと思う」

「「やるべき……事……?」」

「…多分ね。それが何なのかは分からないけど……」

 

いや。実を言うと分かりつつある。

まだ半信半疑だが、ヴァンガードファイトで何かをするんじゃないかと思った。証拠は悠里のデッキ。

ただ確信が持てないので、保留である。

 

そう思ってると、ソナタとカノンが抱き付いてきた。

 

「…もし……それが終わったら、ユーリは元の世界に帰っちゃうの……?」

「そんなの……そんなの、嫌です……」

「…………」

 

部屋が薄暗くて、はっきりとは確認できないが、2人の声は震えていた。

多分……泣いているんだろうと悠里は察した。

近くで寝ているセレナ、フィナ、キャロ……アトランティアにいるチェルも同じ反応をするんじゃないかと思った。

だから……

 

「…当分はまだ一緒だよ」

 

そう答えるしかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

次の日。

朝方にグラディスに起こされた6人は浜辺に着ていた。

天気は朝方なのか、濃い霧がかかっていた……

 

「ここに薪を集めて積み上げて。多ければ多い方がいい」

 

何やら真剣な表情だったので、6人は指示に従って薪を集める。

そして充分な量が集まったところで、グラディスは火を点けた。

すると霧がさっきよりより濃くなっていった……

 

暫くすると、巨大な影が浜辺にどんどん近づいてきた。

その影を見た5人は全員、悠里にしがみ付いた……

しかもセレナはしがみ付く……というより、抱きつき状態である。悠里からしたら、動きにくいったらありゃしないと思った。

 

「…………(あれって船?)」

 

巨大な影の正体は船だった。しかし海上戦艦にも視えなくもない。

そして火が消えると同時に、大きな汽笛を鳴らして去って行った……

 

「あれは船だ。お客をたくさん乗せて、ずっと遠くから来て、ずっと遠くに行く……厄介者は、この濃い霧。船が座礁しなくて良かった。この灯りが無かったら……浜辺に乗り上げていたかも……」

 

それを聞いた悠里は、それなら納得ですと言った。

 

「あの……この5人、どうしましょう? 気絶してるんですが……」

「「「「「きゅう~~~……」」」」」

「あはは……」

 

グラディスが苦笑いするのも無理はない。

何故なら、悠里に器用にしがみ付きながら気絶する5人の姿がそこにはあった……

 

 

────そして夕方になり悠里達は最初の浜辺に着ていた。

6人の手には昼間にグラディスの作った潮ゼリーの袋が。

 

「みんなによろしく。フラゼにやっとそれなりの珊瑚糖が作れるようになったねって言ってやって」

「あの……グラディスさん……」

「ん?」

「グラディスさんは、パーレルに戻って来ないんですか?」

 

カノンが言いにくそうに訊いた。

 

「もう少し……ここに居ようかな」

「「「「「「…………」」」」」」

 

その表情はちょっとの寂しさもあるように6人には視えた。

 

「君達もまたおいで。待ってるよ………ありがとう」

『はい!』

 

そう言って、6人はパーレルに帰る為、海に入る。

それと同時に、トゥインクルパウダーの効力も切れ、本来の姿に戻る。

パーレルに移動する際に悠里は、グラディスの別れの挨拶を思い返していた……

 

「(…僕もいつかは元の世界に帰らなきゃいけない……)」

 

パーレルに着くまで悠里は、その事ばかり考えていた。

この時、悠里は気づかなかった。

 

5人が寂しそうな表情をしながら悠里を見ていた事に……

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。      
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


今回のEDは『シャボン-セレナver.-』をイメージしてください。
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