デュランに転生したから、本気でマナの樹を守ってみる   作:縁の下

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第三章 砂漠の嵐編
第十二話 砂漠の嵐を探してみる


 

 

 

 

 

 リースには、エリオットを守れたら聖都ウェンデルに来て欲しいことを伝えた。

 

 なぜフォルセナでないかは、その頃ウェンデルに向かっているからと、わかるような、わからないようなことを言ってしまった。

 

 まぁ納得していたからいいだろう。

 

 それにしても、なんかこう、リースとちょっといい感じじゃなかったか?

 

 いやいや。

 

 やめとこう、なんか浮かれ過ぎてあとから勘違いでしただと恥ずかし過ぎるしな。

 

 あれは、ほら、あれだよ。

 

 海外でよくある別れのハグってやつだ。ローラントではあれが一般的なんだよ。たぶん。

 

 フォルセナにない文化だから、すっかり勘違いするとこだったぜ。

 

 まったく……。一国の王女様に対して考えることじゃないな。

 

 と、分かってはいるが。

 

 一人の旅がなんだか寂しく感じてしまう。

 

 パロではマタローからの伝言を確認したが特に残されてはなかった。

 まぁ、そんなもんだろう。きっとどっかのタイミングで会えるさ。

 

 てか、今幽霊船乗ったら詰みだからな。

 

 そのフラグだけは全力で回避しておく。

 

 

 

 

 

 砂の都サルタン。

 

 火のマナの濃いこの大地は、砂漠地帯となっており、近年少しずつ気温が上がっているらしい。

 

 幸い、サルタンにいる分にはまだ水に困ることはないようだ。砂漠を横断していくならば、十分な量を確保しておく必要がある。

 

 砂漠で水が貴重なことには変わりはないからな。

 

 パロから乗るときにも船に大量の樽を詰め込んでいた。これは船内で飲む水も含まれているが、この地では酒に適した作物が育ちにくいこともあり、大量に酒を輸入しているかららしい。

 

 まぁ、そんな事情があるからか、酒などの輸出入を管理している商人は、だいぶあくどい儲け方をしていると噂になっている。

 

「もっとも、昔からいる義賊によって、そういう商人は痛い目を見ることになるがな」

 

 薄暗い店の中で、ターバンを巻いた小麦色の肌をした男が言う。どこを歩いてもそんな身なりの人ばかりだがな。

 

 ここは、サルタンにある酒場だ。まだ昼間だからか、中にいる客は俺一人だけ。目の前でせっせとグラスを磨いているのはここのマスターだ。

 

「へぇ、その義賊ってのは」

「ナバール盗賊団さ。名前くらい聞いたことあるだろう?奴らに目をつけられた商人は必ず罰がくだるのさ。街の奴らからは砂漠の嵐って呼ばれてる。英雄みたいなもんだ」

「英雄ねぇ……。その英雄に会いたいんだが、どうすりゃ会えるんだ?」

 

 ぬるいワインを半分ほどまで飲んだが、あんまり美味いとは思えない。

 

 舌がお子さまなんだろうか。ぶっちゃけまずい。

 

 なんだろ、舌に残る酸味がちょっと苦手だ。

 

「なんか依頼でもあるのかい?」

「まあな。ちょっと観光で火炎の谷まで案内してくれそうな人物を探してるんだが、見つからなくてな」

「……兄さん、悪いことは言わないからやめとけって。あんなところ、観光で行くような場所じゃない。死ぬぞ」

「それを聞くのももう何回目かわからん。そんな話を聞いても、どうしても行きたいのさ。だから、あとは骨がありそうなナバール盗賊団頼りなわけよ。なんか知らないか?」

 

 ため息混じりにだが、重い口を開いた。

 

「さてな、そんなこと依頼する奴なんて今までいなかったしな」

「そう言わずに、さ」

 

 そっとチップを出して、更なる情報を引き出そうと交渉する。

 

「まったく。こっちは親切のつもりで言ってんだぜ?本当に死んでも知らねえぞ」

「あいにくと、死神じゃなくて女神がついてるからな」

 

 というか、ついていて欲しい。願望だが、言い続ければ本当になる、きっと。

 

「ナバールに繋ぐほどのコネは残念ながらねぇが、今狙われている商人ならわかる。そこで腕の立つ用心棒を募集しているらしいが——そっからは自分次第だぜ?」

「紹介してもらえるかい?」

 

 ノータイムで返事をすると、ぐいっと残りのワインを飲み干す。

 

 うーむ、やっぱ美味くない。

 

 空いたグラスにさらにチップを放り込むと、綺麗な音が反響した。

 

「まいどあり!」

 

 

 

 紹介されるままに屋敷まで足を運んで来たわけだが、どう対応したものか。

 

 砂漠地帯でこれほど広い屋敷に住むとなるとかなりの財を築いたのだろうということはわかる。

 

 わかるが、それを守る用心棒がこいつらではお粗末にもほどがあるんじゃなかろうか。

 

「おいおい、お前みたいなヒョロっちいのが用心棒だって?笑わせてくれるぜ!」

「まったくだぜ。早くママのところに帰っておっぱい飲んで寝るんだな!」

 

 は〜。

 

 なるほどなるほど。

 

 街のその辺にいるごろつきでも連れてきたのかな。

 

 というか人相といい、だらしない服装といい、悪人にいいように使われるチンピラAとかにしか見えない。

 

「おーい、きこえてまちゅかー?」

 

 潰すか?

 

 いや、冷静になれよデュラン。

 

 最近の俺は王族やら、国の兵士やらといった常識も礼儀も弁えた人とばかり接し過ぎたんだ。

 

 いいじゃないか、たまにはこういう元気な人達と関わったってさ。

 

 けっこうけっこう。気にしないよ、別にサ。

 

「へ、こいつびびってら。声もでねぇみたいだ!」

 

 ゲラゲラと下品な笑いが響いた。

 

 ……ここで揉めても仕方ない。

 

 大人になれ。

 

 クールにいこう、クールにな。

 

 ふー、ふーっ!

 

 とりあえず、この一番偉そうにしてるハゲ、もとい、スキンヘッドが素敵に似合う中年男性に聞くべきだな。

 

 ただし、こっちも礼儀はいらんだろ。

 

「こんなかの一番はどいつ?」

「見てわかんねえのか、てめぇの目の前にいるだろうが」

「ああ、あんたか。だったら、ここの用心棒とやらも価値がないな。まだ犬っころを番犬にしておく方がマシじゃないのか?なんせ、全員かかってきても俺より弱いんだからな」

「……てめぇ、どうやら死にたいらしいな」

「お前ら倒したら用心棒として雇ってもらえるなら、いくらでも相手してやるけど。まあ、余計な手間と金を省くなら、今すぐこの木偶の坊共を砂漠に捨てて俺を雇うのが賢い選択ですけどね」

 

 うん。ちょークールにいいきった。

 

 穏便に終わらせましょうって意味が伝わったかな?

 

「言ったな?旦那、やらせてくだせえ、こいつ、骨の一本でも折らないと分からないらしいんでさぁ」

 

 あー、残念だ。交渉決裂ですね。

 

 スキンヘッドが、商人にへこへこしながら申し出る。

 でっぷりとした商人の姿に、かなり私腹を肥やしてきただろうことが伺えた。

 

 まぁ成敗してやろうとか、そんな余計なことを考えるまでもない。

 

 ナバール盗賊団に会うためのエサだからな。

 

 暇ができたら、ほんとに悪徳商人か調べてこらしめるのもありかもしれん。

 

「ま、いいだろう。好きにしろ。君が勝ったら用心棒として雇ってもいい。勝てれば、な」

 

 前振りが長いんだよな。こういう連中はさ。

 

 ゆっくりと抜き放ったブロンズソードが煌めく。

 

 指先が延長しているかのように、この重さも、長さも手に馴染んでいる。

 

 今日も手入れは完璧。一日も欠かさないメンテナンスのおかげで新品同様だ。

 

「ぷっ!おいおいおい!マジかよこいつ!」

「ぎゃはは、ブロンズソードとか、どこの骨董品だよ」

 

 は?今なんつった?

 

「そんなひよっこしか使わないような剣で、ここにいる五人を倒せるわけねぇだろ!なに言ってやがんだ!」

 

 こいつら。

 

 マジで許さん。

 

「——そうか、お前らの武器は?」

「はっ、見ろよ!旦那からいただいたバスタードソードだ!てめぇのそのおんぼろの数十倍は値段が張るだろうな!勝ち目なんてねえんだ、よっ!」

 

 不意を打ったつもりか。

 大振りな一撃を一歩下がってかわす。

 

 おっそ。

 

「へっ、運が良かったな。でもまぁ、おれたちの前で二度とその生意気な口をきけないようにしてやるよ!」

 

 いや、運じゃないけど。

 

 もうどうでもいいや。

 

「どうでもいいから、早く来いよ」

 

 口に出てました。

 

「雑魚が調子に乗ってんじゃねえ!」

 

 五人が一斉に得物を構えた瞬間。

 

 風のマナを纏う。

 

 修行の成果か、ジンのおかげか。ほぼ瞬間的にこの力を発揮できる。

 

 男たちの間を縫うように走り、剣の柄を切り払う。

 

「はっ?」

 

 五人の後ろまで駆け抜けたが、その間は瞬きの間に過ぎない。

 

「俺の剣を馬鹿にしたんだ。ただで済むと思うなよ」

 

 バスタードソードの柄から先がゆっくりとずれ落ちていく。

 

 カランカランと金属が床に落ちる音が響いた。

 

 いくらの損害かは分からないが、使い手に選ばれなかった剣には同情の念を禁じ得ない。

 

「さ、採用する!採用だ!こいつらの倍、いや、五倍は支払う!」

 

 にこりと笑顔を向けてやる。

 

「交渉成立だな。さて、敗者は——とりあえず何をすべきか、わかるよな?」

「わ、悪かった!おれたちが調子に乗りすぎた!許してくれ!」

「ん?」

「あんたの剣は最高だ!馬鹿にしてすまなかった!」

「ああ、分かってもらえればいいんだ。俺の方こそ悪かったな。仲良くやろうぜ」

 

 物分かりがいいやつは嫌いじゃないよ、うん。

 

 ちょっと大人気なかったことは反省だ。

 

 それにしても、やっぱり父さんのブロンズソードは最強だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナバール盗賊団。

 

 悪徳商人や、民を虐げる貴族から奪い、困窮した市民にその財を分ける。

 

 それだけ聞くと美談のように思えるが、必ずしもそういう側面だけではないだろう。

 

 だって、結局その奪ったもので生活のやりくりをしているわけだからさ。

 民に配るあたりはまだマシかもしれないが、もともと搾取された人たちが浮かばれないだろう。

 

 とか、勝手に想像したわけだが、世間の反応が全てだ。

 

 彼らはこの砂漠で信頼があついらしい。盗み以外でも、無闇な略奪をする盗賊を退治し、地域の治安維持に貢献しているようだ。

 

 それに、一般市民から盗まない。

 

 当然、市民は自分たちが安全で、しかも恵んでくれたり、驚異から守ってくれたりするナバールを嫌いになるはずがない。

 

 市民を味方にしてうまく立ち回ってるわけだ。

 

 なんか、こう考えると俺って嫌なやつだな。素直に受け入れればいいんだろうが、なんかこう、しっくりこないんだよなあ。

 

 盗むじゃなくて、公的に処罰する道はなかったのか、とかさ。

 

 王に調べ上げた帳簿とかの情報を流して、裁くとかさ。そうすりゃ、財産没収して国が潤うから、市民全員に貢献できるだろうし。

 

 もっとも、そんな風にうまく回らないから、今のやり方で落ち着いたのだろうから、よそ者の俺が口を挟むことじゃないとも思っている。きっと根が深い歴史があるんだろうな。

 

 にしても、警備を始めてもう二日目だぞ。

 

 来る気配が微塵もない。あのマスター、ガセネタ掴ませたのか?

 

 屋敷の出入口は固めている。家主には不自由を強いることになるが、二階からの侵入もバリケードによって塞いだ。

 

 今は正面入り口に俺を含めて三人体制で守っている。

 

 夜の間、交代もあるが、ほとんど夜通しだ。

 

 だからか最近、寝不足気味となっている。早く来てくれないとキツい。

 

 暇な時間にはマナの操作を習熟してるから無駄ではないのだが、そればかりにかまけていられるわけもない。

 

 風のマナを感じ取れるようになったから、他のマナはどうだろうかと試しているのだ。

 

 火のマナを感じるのは難しいが、ローラントとはまた違った感触があるように思う。

 

 でも、自分で操るまでは難しい感じがする。うまく自分の中にマナを溜め込むことができないのだ。

 

 まだ始めて間もないからかもしれんし、続けてはいこうと思う。

 

 ——不意に、外からのわずかな気配を感じとる。

 

 噂をすれば影、ってやつか。いや、話してなかったけど。

 

 来たな。

 

 他の連中は気付いていないらしい。

 

 風のマナのおかげか、空気の流れに敏感なのだ。

 

 玄関の前であくびをしていたスキンヘッドに声をかけてやる。

 

「おい、お客様だぞ」

「へっ?」

 

 扉が思い切り開け放たれたと思えば、三人の影が滑り込んできた。

 

 瞬く間に正面扉の目の前に陣取っていたスキンヘッドが、三人のうちの一人に昏倒させられる。

 

「あ、兄貴!」

 

 動揺したのか、修理した自慢のバスタードソードを抜くのにもたついた。

 分かっていたことだが、これも広がって侵入した一人にあっけなくやられる。

 

 つ、使えねえ。

 

 まぁ元から期待はしていないから別に構わないし、今からのことを考えると、こいつらが倒れてるのは都合がいい。

 

 相手は三人。当然、手の空いているもう一人は俺の頭部を同じように狙ってくるが——

 

 一閃。

 

 斬ってはいない。例によって剣の柄を思い切り腹に叩きつけた。

 

 その一撃だけで軽く数メートルは吹き飛び、意識を失ったらしい。

 

「こんばんは、ナバールの皆さん」

 

 力強く声を発する。

 

 おごりもなければ緊張もない。

 

 自然体で構える。ただ、常人と違うのは、マナを纏っていることか。

 

 殺しに来るかはわからないが、飛び道具にも警戒することを忘れない。

 

「……なるほど、あんたは他の奴らとはモノが違うらしいな」

「それは褒めているんですよね?嬉しい限りです」

 

 丁寧な言葉を意識しているが、逆効果か?

 

 向こうの警戒の度合いが上がった。

 

「オレたちはあんたとやり合う気はない。目的の物が手に入ればそれでいいんだ」

「それを守るのが私の仕事なんです。どうしても通りたかったら、一対一で勝負しますか?そちらが勝てたらお通ししますよ」

「何?」

「二人がかりでもいいですが、これ以上やられると撤退に影響が出るでしょう?」

「舐めているのか……!いいぜ、やってやる。たかが盗賊と舐めたことを後悔させてやる」

 

 目深に被っていたフードを取った。

 

「おまえっ!」

 

 紫紺の長い髪を後ろに束ねた特徴的な髪型に、その二枚目フェイスは。

 

 原作主人公の一人、ホークアイだ。

 

「まさか手練れの用心棒を雇っていたとはな、ハズレの情報をつかまされたぜ」

「いやいや、逆だよ。大当たりだ」

 

 俺の中ではな。

 

 相手がホークアイと分かったことで、考えていた作戦を変更する。

 

 お互いが無言で向き合った瞬間。

 

 俺が先手をとる。

 

 一気に駆けて、目の前で剣を振るう。手に持ったダガーで防いでくるが、関係ない。

 

 俺にホークアイを倒す意思はないからだ。

 

 とにかく攻撃を繰り出し、ホークアイにだけ聞こえる声でささやく。

 

 敬語は一度捨て去ろう。その方が、話しやすい。

 

「ジェシカは元気か?ホークアイ」

「なに⁉︎」

 

 食いついた。

 

 手は止めずに続ける。

 

「君に忠告がある。明日の昼、酒場に来てくれ。俺の話を聞いた方がいい」

「ジェシカに何をする気だ‼︎」

「俺じゃない。だが、近いうち命の危険がある。知ってて守るのと、敵を知らないまま守るのと、どちらが賢い選択なのかはわかるだろ?」

「お前……オレを脅そうってのか」

 

 裏稼業の自覚はあるのか。心当たりを考えているみたいだが、多すぎるのだろう。

 

 そしてそれが現実にありえることも分かっている。

 

 だから悩む。

 

 だが、これは罠だとも思っている。

 

 何が事実か。ブラフなのか。

 

 って、感じかな。善意だけを持ち出しても、俺だって疑う。

 

 いきなり初対面の敵に、「ウェンディは元気か?デュラン」とか聞かれたら、こいつ何者?なんで知ってんの?ってなるし。

 

 そして、全て嘘と可能性を切り捨てられないことも、わかる。

 

 もう一押しだな。

 

「脅しじゃない。俺が君に依頼したいこともある。これは、そう。取引だ」

「取引だと?」

「ああ。君はジェシカの晒されるであろう脅威について知ることができる。その対価として、俺は俺の依頼を受けてもらえる。詳しい内容は——」

 

「くせものだー‼︎全員アニキに加勢しろー‼︎」

 

 いいところで邪魔しやがって!馴れ馴れしくアニキ呼びすんな!

 

「ちっ、リミットだ。早く行け」

 

 大振りの一撃を盛大に目測をずらして振るう。

 

 ホークアイはその動きを見て、バック宙で華麗に回避した。 

 

 こいつ曲芸師かよ。

 

「今日のところは帰ってやる。だが、あくどい商売を続ける限り、何度でも来るからな。覚悟しておけ!」

 

 悔しげに言い捨てていく感じが、どこかやられ役っぽい。

 

 って、俺のせいなんだよね。すみません。

 

 倒れてる方はもう一人がちゃっかり回収しており、素早く逃げ出した。

 

「待ちやがれ!」

 

 おっと。

 

「ぐっ、いてー!だいぶ食らっちまったか⁉︎」

 

 わざとらしく大声を出して、その場にうずくまる。

 

 これで追おうとしていた用心棒の皆さんの足が止まった。

 

 彼らとしては、自分たちよりも強い俺が怪我をしたという事実に恐怖を感じたようだ。

 

 それでいい。

 

「だ、大丈夫ですかい、アニキ」

「ああ、なかなかの手練れだった。俺よりも他の二人が心配だ、そっちを看てやってくれ」

「そんな……、あんなに失礼な態度をとったおれたちのことを心配してくれるなんて……」

「いいから早くしてやれ」

 

 死んではないだろうが、しばらく痛みは引かないだろう。まぁ、それはナバールの一人も同じか。

 

「——さて、ご主人に報告して、依頼達成としますか」

 

 今日はぐっすり眠れそうだな。

 

 騎士は、どんな悪党とでも裏切られない限りは約束を果たすんで、な。

 

 この一回はな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————————————————

 

 

 

 今回も楽な仕事だと思っていた。

 

 相手は最近増えている貿易商人の類だ。

 

 下調べも十分に済ませたし、用心棒の数も分かっている。

 

 まぁ、仮に戦闘になっても問題ないだろう。

 

 そう思っていたのだが。

 

 ——なんなんだ、あの強さは。

 

 たった一撃であんなに人が吹き飛ぶなんて。どんな手品だ。

 

「こんばんは、ナバールの皆さん」

 

 背筋に嫌な汗が流れる。

 

 たったその一言で、この部屋の空気が鉛のように重くなった。

 

 息苦しい。

 

 ダメだ、呑まれてる。

 

 ここで弱みを見せるな。

 

 なんとか虚勢は張れた。一対一に持ち込むこともできた。あとは不意をついて追撃が入れば——

 

 そう思うが、この剣士にそんな隙などない。

 

 的確な斬撃に防戦一方を強いられる。攻撃する合間などない。

 

 仲間が援護に入ろうとするタイミングで、やつが視線を向ける。

 

 たったそれだけで援護の機会を潰しているのだ。

 

 こんな化け物がサルタンにいたのか⁉︎

 

 そんなはずはない。

 

 つい先日の定期船でやってきたのだろう。まだ肌が焼けていないことからも長く逗留していないことは想像がつく。

 

 くそ、調査不足だったってか。

 

「ジェシカは元気か?ホークアイ」

「なに⁉︎」

 

 動揺が顔に出る。

 

 頭に血が上っていくのがわかった。

 

 こいつなんでオレやジェシカを知っている?

 

 最初からここで雇われてるのはオレが狙いだったのか⁉︎

 

 話をしながらも剣の乱舞は止まらない。こっちから距離を離そうにも、向こうのペースがまったく変わらないのだ。

 

 オレが肩で息をして対応しているというのに、こいつの息にはまったく乱れがない。

 剣技、スピードだけじゃなく、スタミナも並じゃないのか。

 

 今は勝ち目がないことを悟る。幸い、こちらを殺す気がないことはわかった。

 

 

 

 その後、見逃してもらう形で撤退に成功する。

 

 目的を達することができなかったのは悔しいが、今回の場合は命があっただけマシだろう。

 

 それに、あの剣士が話していたことも気になる。胡散臭い話だったが、まったくの嘘、無関係とは思えない。

 

 普通、こんな回りくどいことなんてしないだろう。オレを殺すならさっきいつでもやれたはずだ。

 

 ましてや、無防備なところをジェシカが襲われたなら——

 

 それを自覚し、今更ながら手が震える。

 

 恐ろしいやつだ。

 

 だが、ジェシカの命を守るために、あいつに接触する必要がある。

 

 ——酒場って言ったな。行って確かめてやろうじゃねえか。

 

 ついでに、あいつの本当の目的も見定めて、ナバールにちょっかい出したこと、後悔させてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 












お気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。
それから誤字修正の連絡もありがとうございます。お礼が遅くなりすみません。とても助かります。。


SFC版だと、紅蓮の魔導師に敗れ、ヤケ酒をしていたデュラン。
たぶん聖剣世界はその辺年齢制限とかないんでしょう…たぶん。
皆さんは20歳になってから飲むようにしてくださいね!
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