デュランに転生したから、本気でマナの樹を守ってみる   作:縁の下

14 / 28
第十四話 嘘つきは泥棒の始まりなので、泥棒を始めてみる

 

 

 

 

 

 

 昼間は街で過ごすのとはまた違う、厳しい暑さだった。

 

 砂漠の照り返しと直射日光で、ガリガリと体力を削られることになる。

 

 レクチャーされて疑問に思いつつも購入した、すっぽりと頭から全身を覆う厚手の外套。何に使うのかと思ったが、日中の日差しと照り返しから身を守るためだったのか。

 

 ホークアイの方針で昼間にはあまり移動しなくて済むよう、岩影や洞穴のある休息地点まで進み、日が落ちて気温が下がってから移動するようにしていた。

 

 このおかげで、体力の消耗はかなり抑えられている。

 水もかなりの量を用意したつもりでいたが、十分とはいえなかった。

 

 水のある休息地点で補給できなかったらと思うと、ぞっとする。砂漠でミイラになっていたことだろう。

 

 やはり、案内なしでは無謀だったわけだ。

 

 何より、方角やら何やらがまったく掴めない。方位磁針は持ち合わせているし、使い方も心得ているが、見渡す限りの砂漠では心許ないことは確実だった。

 

 やはり、今こうして隣を歩くホークアイがいて良かったと感じている。

 

「何じろじろ見てんだよ」

「いえ、あなたがいて良かったと思って」

「気持ち悪りぃこと言ってんな。ビジネスだからだよ。ビ、ジ、ネ、ス」

 

 まぁ、完全な善意ではないだろうが、敵だと思っているという相手の依頼を受けたことも気になってはいる。

 

 話だけ聞いて、半信半疑のままでも立ち去れたはずだ。

 

 それとも、敵だから近くで監視していたいと考えたか。

 

 どんな考えであれ、結局は本人にしかわからないのだけれど。

 

 そんな風に考え事をしながら歩き、何回目か分からない砂丘のてっぺんまで来たときだった。ホークアイから静かに声がかかる。

 

「止まれ」

「……どうかしましたか?」

「あそこだ、見てみろ」

 

 月明かりに照らされた砂漠で目を凝らす。かなり離れた場所で蠢いている何かが見えた。

 

 なんだ?あれは。

 

「ありゃバレッテの群れだな。大人しいモンスターだが、万が一戦闘になったら厄介だ。迂回するぞ」

「倒せないんですか?」

「馬鹿か。あんな硬いモンスター相手にしてオレのダガーをダメにしたくない。お前は腕が立つ剣士だが、ブロンズソードなんて簡単に折れちまうよ」

「……そうですか」

 

 バレッテ。サイのような見た目に、頭部についた二本のツノと、太い尻尾の先端にトゲがついているモンスターだ。

 

 硬いというのには同意だ。見た目通りと言える。

 

 しかし、とても大人しそうな外見には見えないのだが……。

 現地人が言うのだからそうなのだろう。

 

 今のところ、ここまで戦闘もなくモンスターに出会わなかっただけに、間近に脅威があると思うと剣がないことを歯痒く感じる。

 

 迂回してあまり時間は取られたくないところだが、仕方ないか。

 

 バレッテの群れを注視したときに、群れの流れから離れる個体が見えた。

 

「あれは——」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————————————————

 

 

 

 

「ホークアイ、あそこにいるのは?」

 

 迂回するルートを考えていたオレに、不意に声がかかった。

 

 まったく。誰の為に考えてると思ってんだ。

 観光じゃないんだからよ。

 

 顔を上げてもう一度、依頼人の指差す方向を見る。

 

 一匹のバレッテが、向かっていた方向から逸れ始めた。

 

 それを機に、他の数匹も群れから離れ始める。

 

「おかしい。何か獲物がいない限り、そんな行動は——」

 

 そこまで考えて、進行方向に目を凝らすと、三人の人影が見える。

 一人はまだ小さい子どもだ。

 

 近くの岩場に隠れていたようだが、運悪く見つかったのか。

 

 バレッテは比較的大人しい。それに違いはないはずだ。こちらから手を出さなければ襲って来ることなんてない。

 

 だが、たまに闘争本能の強い個体が現れることがある。

 

 特に、群れのような複数の個体がいるときには混ざっている場合があるのだ。

 

 しかし、数が多い。

 

「三、いや、四匹はいる。そんな話聞いたことないぞ」

「……マナの変動」

 

 ぼそっと、依頼人が呟いた。

 

 今はそんなこと、気にしてる場合じゃない。

 

 親子であろう、追われている人たちとの間にはまだ距離がある。

 

 だが、時間の問題だ。奴らは獲物として目をつけたものを気まぐれで逃すようなことはないだろう。

 

 大人しいとはいえ、奴らはモンスターなのだ。

 

 助けに入って、全員を救えるか?

 

 今まで様々な修羅場をくぐり抜けてきた勘がささやく。

 

 

 答えは、否。

 

 

 子供だけでも助けられるか、と言われれば、できなくはない。

 

 しかし、奴らから逃げるには背中の荷物は重過ぎる。

 

 全て捨てていって、逃げ切れたとしても水がないまま、ディーンに辿り着けるかは賭けだろう。

 

 

 それこそ、女神による奇跡が必要だ。

 

 

 どうする?

 

 ——いや、愚問だったな。

 

 心は決まっている。

 

 せめて、あの子供だけでも。

 

 ゆっくりとバックパックを背中から下ろす。

 

「ホークアイ?」

「悪いな、案内はここまでだ。野暮用ができちまったんでな」

 

 まったく。損な性分だ。

 

 だが、子供を見捨てるなんて、できるわけがない。

 

「ここから東に一時間ほど歩けば、小高い岩山があるはずだ。そこから更に南に歩けばディーンは目と鼻の先だ。報酬は、次に会ったときでいい」

 

 おっと、忘れるところだった。

 

「あんたのことを信用したわけじゃないが、剣は返してやる。ただし、オレとの距離が十分開いたところに置かせてもらうぜ。後ろから斬られたらたまったもんじゃないからな」

「……助けに行くんですか?」

「まさか。あいつらから盗むのさ」

 

 全ては無理でも、あいつらから一人は盗んで見せるさ。

 

 何か言いたそうにして、口をつぐんだ同行人を見つめる。

 

 結局、こいつのことは何もわからなかったな。

 

 デュラン、と言ったか。

 

 草原の国フォルセナといえば、英雄王が治める国だ。あの英雄譚に憧れて、こんな旅をしている馬鹿なのか。

 

 それとも、本当に女神の神託を受けて世界を救う旅をしているのか。

 

 ま、もう関係ないな。

 

「じゃあな、依頼人さんよ!」

 

 一気に駆け出す。砂丘を風の如く滑り降りながら、後ろの気配を確認する。

 

 ついてこない。この辺でいいだろう。

 

 降る勢いのまま剣を砂に突き刺す。思ったより深く刺さってしまったが、あいつなら関係ないだろ。

 

 ぐんぐんと親子に近づいていく。

 

 小さかった人影が、今や普通の大きさになった。

 

「早く走りなさい!行くんだ!」

「もう、だめ。あなた、この子を連れて、逃げて!」

「ママ、がんばって!」

 

 父親と娘だろうか、家族を叱咤する声が聞こえる。

 母親の方は足を痛めたのか、動きが鈍い。

 

 くそっ、最悪な状況だ。

 

「おいっ!こっちだ!」

「アナタは⁉︎助けてください、妻が、足を!」

「そんな余裕はない、娘を連れて逃げろ!ここはなんとかする!」

 

 ああ、馬鹿野郎だ。

 

 なんとかするなんて、わかりやすい嘘をついちまうなんて。

 

「そんな、妻を置いては」

「死にたいのか!ここはオレが食い止めるって言ってんだ、行け!」

「あなた、お願い。行って!」

「——すまないっ」

「ママァー‼︎」

 

 父親が幼い娘を抱きかかえる。娘の悲痛な声が届いた。

 よろよろとではあるが、母親も動いてはいる。

 

 切り替えろ。少しでも時間を稼ぐんだ。

 

 父親と娘が助かるまで時間を生み出せば及第点。母親が逃げ切れれば満点か。

 

 オレもこんなところで死にたくはない。しかし、状況が状況だ。

 

 バレッテ一匹ならまだなんとかできる。

 

 しかし、計四匹など相手にしたことなどない。何人がかりで戦うかと言われれば、オレが四人いても足りないだろう。

 

 こりゃ、死ぬかな。

 

 やっぱり未来の神託なんてアテにならない。

 

 ダガーは抜かずに低く構えた。

 

 オレにあいつらを倒すような武器はない。足止めがせいぜいといったところ。

 

 機を見てオレも脱出しなければ、待っているのは死だ。

 

 バレッテの勢いは止まらない。地響きのような足音を立てて迫って来る。

 

 狙うのは頭部。眼球だ。

 

 唯一、そこに体を覆う硬い甲殻がない。

 

 だが、まずは。

 

 懐から取り出したダーツを投擲する。

 

 頭部の角に弾かれたが、視線はオレに向かった。動きを止める気は微塵もないらしい。

 

 十歩ほど離れているこの距離では、狙ったところに当たらないか。

 

「おらおら、こっちだ!このノロマ!」

 

 ギロリと首をこちらに向けて、走る方向を変えてくる。

 

 うまくいった。

 

 先頭のこいつが釣られれば、あとの残りもついて来るはず!

 

 突進してきたバレッテの角を直前で横に転がることで回避する。

 

 砂塗れになるが、そんなことで動きを止めない。すぐに起き上がる。

 今直進してきた奴は急ブレーキをかけてゆっくりと反転しているところだ。

 

「他の奴は⁉︎」

 

 ぐるりと周りを見ると、こちらに向かってきている。

 

 ただ一匹を除いて。

 

「ひいい!」

 

 間近に迫ったバレッテに恐怖したのか、悲鳴があがった。

 

「やめろ!止まれ!」

 

 母親が足をもつれさせて転倒する。そこに追い討ちを掛けるようにバレッテが突進した。

 

「よせっ!」

 

 手を伸ばそうとして、寸前で自分に迫った他の個体の突進を転がって回避するが。

 

 間に合わない——

 

「やめろおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サンダーセイバー‼︎」

 

 

 

 

 雷が閃いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————————————————

 

 

 

 

 

 ホークアイのやつ、結局俺のことなんも信じてなかったな。

 

 素直に剣を返してくれれば一緒に戦うってのに。

 

 というか、一方的に言い捨てて行くか、普通!

 

 しかも、何が厄介ってよお。

 

「あいつ、どんな馬鹿力で剣突き刺しやがったんだよ!」

 

 全然引っこ抜けないくらい深く砂に埋まってやがった!

 

 実際、すぐに追いかけても良かった。しかし、ホークアイがずっと剣を置かないとかいう状況になるとまずい。

 だから剣を置くまで待ったのだ。

 

 おかげで、追いつくのに時間がかかってしまったが——これは、タイミング良すぎるか?

 

 女性のもとに向かって来るバレッテを視認する。

 

 ホークアイは、他の三匹に囲まれているし、距離がある。

 

 間に合わない。それは今のままでは俺も同じ。

 

 ならば。

 

 ——風よ、力を貸してくれ。

 

 体が羽根のように軽くなる。

 

 一歩を力強く踏み出す。

 

 加速。

 

 ぐんっ、と景色が線で流れ行く。

 

 なんとか割り込めそうだが、バレッテを止めるだけの攻撃力が必要だ。

 

 だったら、持てる最大の火力をぶつける!

 

 体に纏うマナを、指先の延長に収束させていく。

 

 今の俺の力量では、両方を同時に行使することができない。

 

 マナの補助によるスピードアップを解く。だが、十分にスピードはついた。

 

 バチバチと音を立てて、紫電が剣に満ちていく。

 

 不思議と、持つ手には何の影響もない。自分の力だからか?

 

 まぁいい。

 

 記念すべき実戦による初披露だ。

 

「喰らえ——サンダーセイバー‼︎」

 

 横合から、交差するようにバレッテの甲殻に剣を当てて、刃を痛めないように流し斬る。

 

「ゴアアアア‼︎」

 

 低い雄叫びがあがる。

 

 脇腹から背中にかけて、バチバチと紫電が這い回った。

 

 斬れてはいないが、剣に纏った雷がダメージを与えたようだ。バレッテは体当たりの勢いのまま砂に体を埋もれさせる。

 

 ビクビクと体を痙攣させ、仰向けに倒れこんだ。油断なく近づき、甲殻のない、柔らかそうなその腹にブロンズソードを突き立てる!

 

 刃はすんなりと貫通した。声を上げることなく、絶命したのを確認する。

 

 まずは、一匹。

 

 ハーピーで学んだことをきちんと生かす。

 

 唖然とした表情でこちらを見上げる女性。あと一歩遅ければ、巨体が激突していただろう。

 

 突然の出来事に頭がついていっていないようだ。

 

「大丈夫ですか?」

「え、ええ」

「さぁ、立って。できるだけ遠くへ」

「ありがとうございます、騎士様」

 

 少しずつではあるが、よたよたと父親と娘が走り去った方へと進んでいく。

 

 これでいい。

 

 ホークアイを助けねば。

 

 三匹の間断ない体当たりに晒されながら、未だに回避し続けている。だが、肩で息をしているのを見るに、結構ギリギリの様子だ。

 

 急ごう。

 

 ——風よ。

 

 体に風のマナを纏う。

 

 頭にズキリと痛みが奔る。

 

 実戦での使用だからか、サンダーセイバーで思ったよりも消耗している。

 

 それに、俺のサンダーセイバーは原作と少し違う。原作では時間で効果が切れる仕様だったが、俺のは一撃で効果が切れてしまう。

 

 習熟の問題かもしれないが、長い間維持しておけないのだ。

 

 しかし、威力は保証された。

 

 奴らを倒すにはサンダーセイバーを使うしかない。

 

 だが、体の状態からして、あと一、二発が限度。

 

 砂の上を疾駆する。

 

 ホークアイに突進を仕掛けたがかわされ、反転し始めた二匹目に狙いを定めた。

 

 貴重な一発だが、ためらっている場合ではない。少しでも数を減らす!

 

 バレッテがこちらに気付いたようだが、もう遅い。

 

 ブロンズソードに紫電をたっぷり溜め込む。

 

 

 俺の間合いだ。

 

 

「サンダーセイバー‼︎」

 

 背後から斬りつける形になるが、刃を滑らせて尾から肩までを剣で撫で斬りにする。

 

 刃はやはり通らない。

 

 今の俺の技量では、斬ろうと甲殻に刃を立てた瞬間に、刃こぼれをするか、ブロンズソードが折れてしまう予感がする。

 

 だが、この雷撃は確実にバレッテへと致命的なダメージを与えてくれる。

 

 弱点属性だったか?

 

 記憶は曖昧だ。そんなに細かいことまでは分からない。

 

 一匹目と同様、痙攣して仰向けに倒れたところを、腹に剣を突き刺しトドメをさしておく。

 

 これで二匹目。

 

「ぐっ!ぎぎ——」

 

 体に痛みが奔る。無茶なマナの行使に頭痛だけでなく、体が悲鳴を上げ始めた。

 

 視界が歪むが、倒れるわけにはいかない。

 

 あと二匹。どうあっても、あと二発のサンダーセイバーが必要だ。

 

 しかし、今の現状を鑑みても——

 

「へっ、根性の見せ所ってわけか」

 

 加速に回すマナは無しだ。

 

 純粋な肉体によるスピードでなんとかするしかない。

 

 それもこの消耗し切った体でだ。普段の半分以下の動きになってしまうだろう。

 

「なんで来たんだ⁉︎」

 

 ホークアイがバレッテの突進をかわし、いつの間にかすぐ側に来ていた。

 

 やばい、気付いてなかった。

 

 集中しないと。

 

「……逆に聞きますが、なんで来ないなんて選択肢があるんですか?」

「はっ?」

 

 ズキズキと痛む頭を振って顔を上げる。

 

「助けるに決まってる。襲われた人たちも、あなたも」

 

 なぜ、なんて考えてもなかった。

 

 最初から決めていたから。

 

 ホークアイが行かなければ、自分一人でも行くつもりだった。

 

 剣を返してもらえなくとも、助けるくらいなら何か方法があったろう。楽観的かもしれないけど。

 

 戦いたいわけではない。だけど、必要に駆られれば体を張るものなのだ。

 

 それが騎士だ。

 

「……やっぱり信用ならねえな」

 

 二人で対する二匹のバレッテを睨みながらホークアイが言う。

 

「別にいいですけど、そろそろちょっとくらいは信じてくれてもいいんじゃないですか?」

 

 言葉を吐きながら、息を整える。

 

 ちょっと愚痴っぽいか?頭が働かない。

 

「あんたから欲ってもんが感じられねぇ。そういう奴は、職業柄信用しにくいのさ。泥棒は嘘に敏感だからな」

 

 嘘なんてついたつもりはないが。

 

 バレッテから視線を外さずにホークアイを盗み見る。

 

 その表情に素の疑問がこぼれた。

 

「なんで笑ってんだ?」

「さあ、なんでだろうな?」

 

 ふっ、と肩から力が抜ける。

 

 不器用なやつだな。

 

 俺も、お前も。

 

 少しは通じ合えそうで、安心した。

 

「はっ、本音を言うとな、お前がいないと火炎の谷までの道に困るから仕方なく助けるのさ。分かったか?」

「——そっちの方が盗賊には百倍分かりやすいぜ」

 

 警戒して動きを止めていた二匹が同時に突進してくる。

 砂漠の砂でこれだけの足音が鳴るってことは、かなりの重量なのだろう。

 

 受け止める選択肢はない!

 

 二人で左右に散る。俺は左へ。ホークアイは右だ。

 

 そのまましばらく走ったらまた反転してくる。だから——

 

「ホークアイ、やつらの動きを直前の一瞬でいい。なんとか止めてくれ!あとは俺が迎え撃つ!」

「ちゃんと勝算はあるんだろうな⁉︎ってか一瞬止めろってそんなの」

「盗賊なら一瞬の時間を盗むなんて簡単だろ?」

「だっー!無茶苦茶言いやがる!一瞬だけだぞ‼︎」

 

 正直言って、思った通りにいく保証はどこにもない。

 

 だが。

 

 やるしか、生き残る道はない!

 

「俺の正面に来てくれ!」

「そんなことしたらやつらの的になっちまう!」

「それでいいんだ、早く!」

「ああ⁉︎それはどういう——そうか、オレにも都合がいい」

 

 何かを察したのか、素早く正面へ回ってくれた。

 問答している間にも、奴らが再度突進を仕掛けてくる。もう、考えを話している余裕はない。

 

 ——風よ、もう少しだけ協力してくれ

 

「ギッ——」

 

 情けない声が漏れそうになる。歯を食いしばり正面を見据える。

 

 勝負は一瞬。

 

 文字通りの一発勝負。

 

 剣にありったけの力を込める!

 

 奴らも直線上に並んだ。

 

 単純だな。しかし都合がいい。

 

 怖いくらいの好機だ。

 

 突然だった。ホークアイがバレッテに向かって走り出した。

 

「何を⁉︎」

「盗むなら、確率は高い方がいいだろ?」

 

 動揺するが、すぐに集中し直す。

 

 あいつがやることを信じろ。

 

 信じて、やるべきことを為せ!

 

 ホークアイとバレッテの距離があと8歩まで迫る。

 

 7歩。

 

 6歩。

 

 残り5歩の距離になった瞬間。

 

「この距離なら——‼︎」

 

 ホークアイが立て続けにダーツを放つ。それぞれの手に2本ずつ、器用に指で挟み持った4本のダーツが腕を開く動作とともに先頭のバレッテに放たれた。

 

 放つとほぼ同時、あいつは思い切り横方向へと跳んでいる。ギリギリのタイミングで突進を回避した。

 

 ほんの一秒にも満たないタイミングを逃せば、命はない動き。

 

 ダーツは甲高い音を立てて角、額、足元に当たり、その硬い甲殻に弾かれる。

 だが、残りの一本が眼に直撃。柔らかい眼球を貫いた。

 

「グオオオオ‼︎」

 

 大地を震わせるような叫びをあげ、バレッテの動きが止まった。連鎖的に後ろに並んでいたもう一頭が追突し、動きを止める。

 

 命を賭けた行動がこの時間を生み出した。

  

 最高のタイミング。

 

「今だ!行けえええ‼︎」

 

 ダーツをホークアイが投げた瞬間、すでに俺は飛び出していた。

 

 両手で握ったブロンズソードが、紫電を纏い、昼と見間違うほどに辺りを照らし出す。

 

 これで打ち止めだ。

 

 体全身から危険信号が出ている。

 

 一人だったらこんな無謀な賭けには出られなかった。

 

 だが、仲間がいる。

 

 後のことは、そいつに任せた。

 

 

 全身から力をありったけ吸い上げた、最後の一撃だ——!

 

 

「サンダーセイバー‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————————————————

 

 

 

 

 

 大したやつだ。

 

 まさか、魔法が使えるなんてな。

 

 おまけに最初の二匹は本気の一撃じゃなかったのだろう。

 

「まさか二匹いっぺんに真っ二つにしやがるとはな……」

 

 改めて、こいつのとんでもなさに度肝を抜かれた。

 

 二匹のバレッテが、胴を上下に分断された死体を晒している。その断面は焼け焦げた様相だ。

 

 あの熱量で振り抜かれたのが人間ならチリも残らなかったかもしれない。

 

「おーい、大将。大丈夫かー?」

 

 そんな有様を作った張本人は、砂漠にぶっ倒れてぴくりとも動かない。

 息はしているが、ペシペシと頬を叩いても何の反応もない。

 

 にしても、こいつはなんで。

 

「なーんでそんな安心した顔をしてんだよ」

 

 周辺にはもうモンスターの気配はない。

 

 戦っている間に、群れはどこかへ移動してしまったらしい。

 

 安全は確保されたわけだが、しかし。

 

 荷物を持っていくか、こいつを運んで行くか。

 

 ……

 

 ——選択肢は一つしかないか。

 

「仕方ねえよな」

 

 そう呟いたときだ。

 

「お二人ともご無事ですかー!」

 

 先ほどの父親が戻ってきたらしい。その隣には妻である女性も見られる。

 ということは、娘も無事かな。

 

 あいつも大概お人好しだ。オレ達がやられてたらまた危険になるだろうに。

 

 それを承知で来たのか、それとも、先程の光を見て安全と思ったのか。

 

 どちらでもいいか。

 

 ここまでやった甘ちゃんには、そんくらいの手助けがあってもいいよな。

 

 人のことは言えないだろうけど。

 

「悪い!手を貸してくれ!」

 

 まったく。泥棒への貸しはでかいぜ?

 

 

 

 

 

 










日常とのバランス取るためにペースダウンしました。

嘘つきは泥棒の始まりなので、泥棒を始めてみる。
すでに神託という大嘘こいてるのにデュラン君って奴は…
タイトルの意味は察してください。。

ホークアイ…泥棒は嘘に敏感。←嘘だとは言ってない
彼は自分が孤児だと思っているので今回みたいな行動をとりました。。

サンダーセイバーLV0→LV1 って感じでしょうか。
原作の効果時間設定って、マナの使い方どうなってんだろ、ってデュラン君は思ってます。これからも研究していきます。


なんやかんや言い訳を挟んでみましたが…最後はほーんですませてくれぇ

読んでいただきありがとうございました。

誤字修正しました。バッテラ→バレッテ 事件や…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。