デュランに転生したから、本気でマナの樹を守ってみる   作:縁の下

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第七話 天の頂に登ってみる

 

 

 

 

 

 衝撃的な御前試合を終え、一つ目の条件をクリアした。

 だがしかし、二つ目の条件もなかなか俺にとって厳しいものとなった。

 

「二つ目の条件だが、マナストーンの安置されている風の回廊に入れてやることはできん」

「……そうですか」

「まぁ、そう落ち込むでない。今は時ではないということだ。それにいくら友好関係を結ぶとはいえ、まだ時期尚早であるのはお主ならわかっているだろう?」

 

 そう言われると、何も言い返すことはできない。

 

 マナストーンが関わり、かつて世界中で戦争が起きたのだ。

 それを利用しようという者が現れれば、その人間の気質がどうであれ、簡単に一国王がマナストーンに近づけさせるはずもない。

 

 かといって、ここで引き下がるわけにもいかない。書状を届けて役目を終えては、本来の趣旨から外れてしまうからだ。

 

 本来の趣旨。そう、精霊探しだ。

 

 精霊のせの字も出ないくらいだから、忘れそうになるが、ここには登山に来たのでも、リース殿下と決闘まがいのことをしに来たわけでもない。

 

 ジンに会いにきたのだ!

 

 風の回廊に入れないということで、見つけられる可能性がぐっと下がったことは否定できない。

 

 ただ、ジンもマナストーンの近くにはいるだろうが、絶対にそうとは限らない。

 

 それにこうなることもしっかり予測済みだ。

 

 よほどのお人好しか、リチャード様に心酔しているわけでもない限り、これが一国王の判断として妥当なものだと分かっている。

 

 なので、代案もきちんと用意してある。

 

 というか、この考えがあるからこそ、ローラントに来る決め手になったとさえ言える。

 

「では、風の精霊ジンのいる場所に心当たりがあれば、教えていただきたく思うのですが」

「ん?うむ……風の回廊以外でか……あるには、あるが」

 

 口を濁している、ということはあまり知られたくないことだろうか。

 

 だが、たぶん予想通りだろう。

 

「天の頂、ですね」

「——そこまで分かっておるのか!」

「未来を守るためには、風の精霊ジンと、翼あるものの父の力が必要なんです。陛下、どうか私めに天の頂へ行くための許可をお与えください」

「…………」

 

 長い沈黙が場に降りる。

 

 これもダメか?

 

 やはり、原作通りが一番良かったのか?

 

 だが、そうすると多くの命を散らすことになったはずだ。結果的に、ここに来たことによって救われた人がいると信じよう。

 

 ジョスター王は、渋い顔をして黙り込んでしまった。

 

 ……仕方ない。ジンもフラミーも今は諦めるか。

 

 あー、しかし大幅なロスだ。

 

 計画の変更をしなければならないだろうし、ひとまず明日の朝には下山してパロで情報を集めることにするか。

 

 世知辛い。

 

「……この返答は少し考えさせてもらう。明日、また案内役を遣わす。ゆっくり体を休めよ」

「ぎゅ、御意」

 

 な、何!

 やばい、ダメだと思い込んでたからテンパって舌噛んだ。

 

 陛下のその言葉の後、案内役の人に促され素直に退室する。

 

 良かった。可能性が0でないだけマシだ。

 だけどなんか引っかかる感じではあった。何かあるのだろうか。

 

 分からないが、楽観ばかりもしてられない。もしダメだった場合の対策も立てねば。

 

 何せ時間は限られているからな!

 

 

 

 ————————————————

 

 

 

 翼あるものの父。

 まさか、そのことまで知っているとは。一体どこまでの知識を持ち合わせているのか、まるで測りきれん。

 

 ローラント王族とそれに近しい限られた者しか知らぬ話だ。

 

 それをローラントとは何の縁もない国から来た者に知る術などあるだろうか。

 

 いよいよ、本当に神託を受けたという話に信憑性が出てきたか。

 

 それにしては、まるで自分で見て知っていたかのようにも感じられる。

 

 マナの女神様が、事細かに様々な想定や、未来を話した、と言われれば納得せざるを得ないが。

 

 幸い、彼自身は善の者のように感じている。

 私の勘が正しければ、そう悪いことにはならんだろう。

 

「しかし、未来を守る、か」

 

 ローラントの行く末か?

 

 それともフォルセナか?

 

 はたまた彼自身のだろうか?

 

 目的が何なのか、予想がつかんな。

 

 しかし、手段から推測くらいはできる。

 精霊を探しており、さらに聖獣ときた。

 

 ——まさか。

 

 しかしだとすると、やはり。

 

 マナの聖域絡みか?

 

「……この私の判断が世界の分かれ目になるやもしれんとは」

 

 天の頂へ行く許可を出したところで、ジンに会えるとも、翼あるものの父に会えるとも限らない。

 

 何より、彼らに会えたとしても、デュラン殿を悪なるものと判断すれば、協力を拒否するだろう。

 

 それもわかっていながら、許可を出すには、あともう一押し欲しい。

 と、この玉座の間に人の気配が近づいてくるのを察知する。

 

 この気配は、リースか。

 

「お父様」

 

 やはりそうだった。普段よりも声が一段低く聞こえる。

 何か頼み事があるようだな。

 

「おお、リース。体の具合はどうだ?」

「大丈夫です。ご心配をおかけしました」

「そうか、それは何よりだ。して、何用だ?どうやら、何かを頼みに来たように思えるが」

「……お父様には隠し事はできませんね。実は、お願いがあって参りました」

 

 少しだけ躊躇うように間をおいて、愛娘は言った。

 

「——私を天の頂へ登らせてください」

 

 あともう一押しのピースが揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 ————————————————

 

 

 

「もう、エリオット。アルマの言うことを聞いて、良い子にしているのよ。すぐに帰ってくるから、ね?」

「いやだ!僕も一緒に行く!」

「ほらほら、エリオット様。ご無理を言って、リース様を困らせてはいけませんよ」

「やだやだ!姉様、行かないで!」

 

 早朝。門の入り口でかれこれ十分はこの調子だ。

 

 王が結論を保留してから待つこと一日。天の頂に登る許可が下りた。

 どんな心境の変化かは分からないが、俺にとってはありがたい。

 

 しかし、ここで条件の三つ目だ。

 

 リース殿下を同伴させること。彼女の指示には絶対に従うこと、だ。

 

 これは推測だが、所謂お目付役、監視といったことだろう。

 

 ジョスター王は、俺がジンを探していることや、フラミー(まだ名前はないが)と接触したがっていることをわかっている。

 俺が話した目的通りではなかった場合の備えだ。

 つまり、万が一、俺に彼らを害する意志がある場合を想定しての監視役といったところだろう。

 

 だが、分からないのはなぜその役がリース殿下なのか。

 

 いつの間に仲間フラグが立ったんだ?

 

 というか、監視役は予想してたし、来るのはライザという副隊長あたりかと思っていたのだ。

 今はまだ隊長かもしれないけど、まぁいい。

 

 実力はこの間の件で、俺の方がリース殿下よりも上だとジョスター王もわかったはずだ。

 

 なるべく怪我をさせないように気をつけられる程度に実力の差がある。

 

 そうなると力づくで、俺が暴走した場合止めることができないわけで。

 

 それに殿下だぞ。

 

 何かあったときに困ると思わなかったのか?

 

 いや、俺からは何もしないけどさ。

 怪我とか、万一の事故とか、そっちね。

 

 とにかく、ジョスター王の真意が読めない。

 

 それに、天の頂へは特別な許可を得た者しか入れないローラントの聖域らしいのだ。

 

 だから他の監視役はいないようなことも仄かしていた。

 

 それがブラフであることも考えられるか。

 

 そうだよな。

 一国の王女をつい先日、身元が保証されてるとはいえ、会ったばかりの男に何の保険もなく同行させるはずがない。

 

 よし、そこまで分かれば、やることは見えた。

 

 目的のものを探しながら、てっぺんを目指す。それから、国際問題にならないよう、リース殿下に怪我をさせない、無礼を働かない。

 

 うん、これだ。

 

 しかし、あのやりとり長いな。いつまで子どもの駄々に付き合うつもりだ。

 二人揃ってまごまごしおって。

 

 まぁ、ウェンディにもそんな時期があったからよく分かる。

 どこへ行くにも、にいに、にいにと引っ付いてきたからな。

 

 あーあ、ついに泣き出したよ。

 こういうのは言葉じゃないんだよな。もっと物理的にいかないと。

 

 さて、ここは兄歴の長い俺の出番だな。

 

「あの」

「デュラン殿、すみません。もう行きますので」

 

 リース殿下が焦ったようにエリオットを引き離しにかかるが、余計に強くしがみついている。

 

 無理に離して怪我をしても困るから、本気の力ではないのだろう。

 

 そんなエリオットに視線を合わせるように中腰になってやる。

 涙で目が真っ赤だ。

 

「エリオット。そんなに姉様と離れるのが嫌か?」

「ぐすっ……うん」

「そうか。まあこれでも食べろ」

 

 用意していたものを無理矢理口の中に押し込む。当然、害はない。

 

「な、何を食べさせたんですか!エリオット、吐き出しなさい!」

「……おいしい。甘くておいしい!」

 

 必殺、泣く子も黙るまんまるドロップ作戦。よく泣き止まないウェンディにも買ってやってたな。

 

 この世界では、傷の回復なんてそんなとんでも効果は見込めないが、旅の非常食として重宝されている。

 

 だから、量もそれなりに持ってきているのだ。

 

 王族でも子どもはやっぱり好きなんだな、飴。

 

 さて、ひとまず泣き止んだな。これなら落ち着いて話ができそうだ。

 ここからはお兄ちゃんモード発動!

 少しテンション高めの声と大袈裟なリアクション、これ大事。

 

「うまいかー!そいつは良かった。エリオット、兄ちゃんな、実はもっっっと甘くて美味いもの持ってんだ」

「えっ、ほんと!」

「ああ、本当さ。食べてみたいか?」

「うん!」

「そうかそうか。ただな、これはすごく貴重でな。なかなか手に入らないんだ」

「そうなの?じゃあ食べれないの?」

 

 すっかり甘いものの魅力にハマってしまったらしい。

 甘いものは大きくなるまでダメです!っていう家庭の方針だったらどうしよう、とか頭をよぎったが、今さらか。

 

「実は姉様には黙ってるように言われたんだが……」

 

 泣き止んだエリオットはリースから手を離している。

 チラッとリースを見て、少し距離を開けてもらい、いかにも内緒話をするように耳元に手を当てて囁く。

 

「この用事が済んだら、そのお菓子を姉様にあげる約束なんだ。姉様が出かけるのはエリオットにおいしいお菓子をあげる為なんだぞ」

「そうだったの!」

 

 パッと顔に明るさが戻る。あともう一息だな。

 俺はバッと両手を広げて大仰に頷いて見せた。

 

「ああ、そうさ!姉様がエリオットをおいていなくなるわけないだろ?それに姉様が強いことは知ってるな。だから、これ以上姉様を困らせないよう、良い子に待ってるんだ。お前は強い子だから、できるよな?」

「うん、できるよ!」

「よしっ、いい子だ」

 

 わしゃわしゃと頭を撫でてやる。

 

「お兄様」

「んっ?」

 

 いつの間にお兄様呼びにクラスチェンジしたんだ。

 

「お兄様の方が強いから、姉様を守ってね!」

 

 幼いながらも、俺の方が強いってことを分かってるんだな。

 騎士として、その願いを断れるはずがない。

 

「おう、任せとけ。姉様は俺が守るさ」

 

 その言葉に満足そうに笑うエリオット。そしてなぜかニヤニヤと笑う乳母のアルマ。

 

「い、行きましょう。デュラン殿」

「はい。案内をお願いいたします、リース殿下」

 

 俯いて表情は見えなかったが、リース殿下が少し笑っているような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————————————————

 

 

 

 パロからローラント城までは、広く踏みならされた道だったが、天の頂は、まさに登山道だ。

 

 時折、広い道に出ることもあるが、基本は人一人分の幅を登っている。万一、魔物と鉢合わせたり、空から襲われたりしたらかなりピンチだ。

 

 ここで戦うなら、斬りつける剣よりも、突きに特化した槍の方が戦いやすそうだ。アマゾネスの武器が槍なのも地形との相性もあるんだろうな。

 

「しかし、思ったほど魔物と遭遇しないものですね」

「ええ。こちらから意図して探さない限りは。定期的にアマゾネス隊が見回りをしていますし。もっとも、天の頂にはほとんど魔物が現れることはありません」

「そうなんですね」

「はい」

「……」

「……」

 

 ……俺、会話下手か。

 

 かれこれ出発してから二時間ほど経つが、交わした会話はほとんどない。

 

 出発したときは少し和んだ空気だったような気がしたんだが。

 

 なんか機嫌を損なうようなことしたかな?

 

 リース殿下とは御前試合くらいしか関わりがなかったけど——

 

 あ。めっちゃしてましたね。

 

 監視役とはいえ、なんかこう、もっとさ。友好的に接したいんだが。

 今から関係悪化させて、仲間になってもらえなくなるのは困る。

 未来の俺からの貴重な伝言を生かすために、ここは俺の全コミュニケーション能力を駆使して好感度を上げていくしかない!

 

 そうと決まれば会話あるのみ!

 

「「あの」」

「「あっ、何ですか?」」

 

 えっ。気が合いますね。

 じゃなくて、なんだこれ。

 

「すみません殿下。何でしょうか?」

「いえ、あなたからどうぞ」

 

 何このやりとり。ぎこちなくて居心地悪い。

 今だけはブルーザーがいてくれたら、と思ったが、あいつがいたらいたでさらにややこしいだろうことに思い至る。

 

「この調子だと、だいたい頂上まではどのくらいの予定ですかね」

 

 ローラント城から天の頂の頂上までは、一日かけて登る道のりだという。行って帰って来るだけなら二日の行程だが、目的が達成できずに留まることも考えて四日と考えている。

 そのための荷物もバッチリ準備してあるわけで——

 分かり切っているが、まずは必要な会話から広げていこう作戦!だ。

 

「そうですね。このペースなら予定通り行けそうです」

「そうですか」

「はい」

 

 はい、の流れはやばい。会話を殺しにきている!

 まだだ、まだ終わらんよ!

 

「……殿下は登頂の経験がお有りなんですか?」

「ええ、昨年の一度きりですが」

 

 おっ、いいぞ。

 

「そのときはどんな用事だったのか尋ねても?」

「……別に大したものではありません。これも神託に関わることですか?」

「えっ、いえ」

「そうですか」

 

 ちーん。ダメだったよ。

 

 神託に関わらないんだったら余計なこと話しかけてくんなよ感が半端ない。

 

 なんでこんなつんけんしてんのー。

 

 確か今時期は俺の一つ下、14歳だよな。あれか?思春期か?

 

 いや、この世界で、しかも王族だぞ。もっと精神的に早熟なはず。

 

 ってことはやはり、俺の不手際による会話ボイコットと考えるのが筋。

 

 不手際=御前試合勝利

 

 ここは謝っておくべきか?

 

 でも待てよ。勝ってごめんなさいとか、傷口に塩塗り込んで唾吐き捨てるようなもんだぞ。

 

 つか、さっき声掛けなきゃリース殿下から会話振ってくれてたのに!

 俺の馬鹿!

 

 うおーん、どうすりゃいいってんだ!

 

 

 

 そこからもんもんとしながら、そろそろ昼かと思った頃だった。会話がない空間に光が差した。

 

「風が変わりました。雨が降ってきます。あと少しで雨をしのげる場所に出るので急ぎましょう」

「あっ、はい」

 

 雨?

 空を見上げたが何の気配もない。真っ青な快晴といえるぞ。

 それに風もだ。

 相変わらず自分勝手にビュービュー吹いてるだけだ。変わった気配など微塵も感じない。

 

 そう思っていたが、余計なことは言わない。

 お口チャックが利口というものだ。

 ペースを上げたリース殿下に置いてかれないようについていく。

 

 ところが、間も無くして急に雲行きが怪しくなってきた。晴天だったのが一転、どこから現れたのか重い灰色の雲がもくもくと増え出した。

 

「もう少しです」

 

 後ろ姿を追いながら、思うことを尋ねた。

 

「殿下、よくこの天気になるとわかりましたね」

「風が教えてくれるので」

「へっ、ええ」

 

 そうだった。原作で風が泣いてるとか言ってたもんな。

 ほーん。とか思ってたけど、実際マジで分かるんだ。

 アマゾネスすげぇ。

 

 歩き続け、あと少しというところで、ついに豪雨が降り出した。

 休憩場所である小さい洞穴に到着したが、あと3分早ければ濡れずにいけたのにな、とか少し思ったが、これは仕方ないことだ。

 むしろ、あの判断がなければもっとひどいことになるとこだった。

 リース殿下に感謝しなければ。

 

「へくちっ。……すみません」

 

 リース殿下が身震いして、自分の肩を抱いた。御前試合のときの姿に上から外套を羽織っていたが、標高が高い上に濡れたこともあり寒そうだ。

 

「いえ、体が冷えてしまいます。火を起こしましょう」

 

 旅の経験から慣れたもので、ものの数分で火がついた。途中から、休息を見越して燃えそうな木を集めていたことが功を奏した。

 用意していた昼食を食べ終え、ぼんやりと二人で燃える火を眺めている。

 

 焚き火にくべられた木の爆ぜる音だけが洞穴に反響する。

 

 ここでいい関係なら、少しは雰囲気も出るだろうが、いかんせん気まずい。

 

 何か話題を——

 

「何も文句を言わないんですね」

「えっ?」

 

 焚き火に照らし出されたリース殿下の顔を見た。

 どこか拗ねたような、年相応な表情をしている。

 

 文句って、なんで?

 

「私が案内人では不安だったのでしょう?実際、こうして濡れてしまって、もう少し早く気付いていればこうはならなかったのに、って」

「いえ、そんなことないですよ」

「いいえ。だって、登頂の経験があるか聞いてきたじゃないですか。そう思ってなければ聞かないはずです」

 

 えー!あの会話裏目に出てたんか!

 だから怒ってたのかーい!

 

「いや、それはちが」

「それに自分より弱い者を当てがわれて、不服ですよね。あなたの方がずっと私なんかより強いですし。それにエリオットだって、あんな、あんな簡単に……」

「だーっ!もー、ちっがうわ‼︎」

 

 なんでこんなネガティブな感じになってんだ!

 なんか腹立ってきた!

 

「こっちはむしろ俺の用件に付き合わせて申し訳ないって思ってる!それに山登るのに武の強い弱いとか関係ないし、俺はさっき天気を言い当ててここまでちゃんと案内してくれて、すっげぇなって尊敬してるくらいだ!ほんとに助かってます!登頂の経験の話は、話題がないかなって思っただけで、ただ話がしたかっただけ……です」

 

 ぽかんと口を開けてこちらを見ているリース殿下。

 

 ああ、やってしまった。

 

 せっかくフォルセナの使者としてうまくやってきたってのに。

 

 というか、最近こんなに感情を発散させることなんてなかったのに。

 

 なんでだ?

 

 ま、もう関係ないか。ジョスター王の前だけは気をつけよう。

 

「あなたって、意外と口調が乱暴なんですね」

「はぁー。そうですよ、素の俺はこんな感じ。フォルセナの騎士が全員こんなんじゃないし、陛下に会えばすごさも分かる。だから勘違いしないでくださいよ」

「いえ、私はむしろ今の方が話しやすいです。少しだけ、あなたを身近に感じられるから」

 

 不意打ちのような微笑みに一瞬ドキッとした。

 いやいや。一国の姫だからね。ないない。

 

「それに、私もほんとはもっと話してみたいと——思ってました」

 

 えっ、なんでそんな恥じらう感じで言うの。

 そんなん惚れてま——

 

「私、ずっと同年代の友人が欲しいと思っていたので」

 

 ですよねー。わかってましたよ、もちろんネ‼︎

 何浮かれてんだって話ですよ。

 

 うん。

 

「私は今年14歳になりましたが、デュラン殿、さんは?」

「俺は15歳です」

「だったら、私よりも一つ上、ですね。確かにお兄様ってエリオットが言うのもわかります。お兄様って私も呼んでいいですか?」

「……お兄様は勘弁してください」

「あら?ダメでしたか?」

「ダメです」

 

 いろんな意味でね!

 なんかちょっと、ダメな感じする!

 

 いや、でもありかなしかで言ったら、なしよりのありか?

 

「ふふ、冗談です」

 

 まぁそうだろうな。だが、そんなお上品に言っても許さ……許す!

 

「雨、止んだみたいですね」

「そうみたいだな」

 

 なんか急に振り回されっぱなしだな。

 リース殿下が立ち上がり、入り口へと歩いていく。

 雲間から差した空の光が彼女を照らし出す。

 

「行きましょう、デュランさん」

 

 振り向きざまに笑顔を向けられ、つられて自分の表情もゆるむ。

 さっきまでのぎこちなさが嘘みたいだ。

 

「ああ、行こう」

 

 

 

 

 








お気に入り登録、評価ありがとうございます。
その他原作の週間ランキング6位に入っててびびりました。
感想も嬉しいです、ありがとうございます。

ちょっとストックがないのでチャージまで時間かかりますが、お付き合いください。
今回はリースが可愛く書けてれば○
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