ガープの孫娘   作:猫ニャンニャンニャンニャンニャン…etc

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3話

 

 アイシャ8歳のとある日。

 

 アイシャを妙な胸騒ぎが襲い、彼女は深夜に目を覚ました。

 家の外から喧騒と何かが燃えた臭いがする。

 

 なんだ? なにかがおかしい。

 

 強烈な違和感と嫌な予感。

 

 普段は狭めている見聞色の覇気の範囲を広げると、やはり村の様子は普段と違った。

 

 いつもは寝静まっているこの時間帯に、慌ただしく動く複数の気配。

 中には知っている気配も多かったが、知らない気配が多く混ざっている。

 

 聞こえてくるのは悲鳴と嗤い。

 

 感じるのは恐怖と怒り。そして明確な悪意だ。

 

 初めて触れる強い負の感情に、アイシャは思わず耳を塞いだ。

 

 な、なんだこれ…。

 

 と、同時に村の警鐘がカンカンカン!と鳴り始める。

 

「海賊だー! 海賊が来たぞー!」

 

 隣の両親の寝室からバタバタと言う音と赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。

 両親だ。そして赤ん坊の声は去年生まれたアイシャの妹だった。

 

 バタン!とアイシャの部屋の扉が力強く開く。

 

 お父さんと妹を抱えたお母さんだ。

 

 二人とも人が変わったように血相を変えている。

 

「アイシャ! 逃げるんだ! 早くこっちへ来なさい!」

 

 何が起きているのか理解できない。

 アイシャの頭は噛み合わない歯車のように何も導きだせなかった。

 

 アイシャの見聞色の覇気では、知り合いの女の人が犯され、近所のおじさんが無慈悲に殺されていく様子を感じ取っていた。

 そして、それに伴う恐怖の感情も。

 

「ゔぉえ!」

 

 アイシャは思わず跪き、嘔吐してしまう。

 

「何をしているんだ!」

 

 お父さんは嘔吐し続けるアイシャを構わず抱きかかえると、走り出した。

 

 玄関の扉を開け飛び出すと海とは反対の方向へ走り、それへ妹を抱えたお母さんが追従する。

 

 外は夜だと言うのに真っ赤で、空は黒煙に覆われ月明かりや星は隠れてしまっていた。

 

 そんな中をアイシャは抱きかかえられながら移動するが、見聞色はその先の危険を捉えていた。

 

「だ…だめ…」

 

 嘔吐から立ち直れず上手く声が出ない。

 

 お父さんには聞こえなかった。

 

 しばらく進むと、物陰から4人ほどの武装した男達がフラリと待ち構えていたように出てくる。

 

「おっと…やっぱり逃げるなら海から遠ざかろうとするよな」

 

「くっ…邪魔するな!」

 

 そのまま強行突破しようとする父。

 

 するとアイシャの見聞色が自身が地面へ叩きつけられる未来を見た。

 

 そして数秒後、タックルをしようとしたお父さんが海賊の持つ棍棒に殴り飛ばされると、アイシャは未来予知の通り放り出されて地面へ激突した。

 

「あぐぅっ…」

 

 打ちどころが悪かったらしい。意識がチカチカとする。

 

 痛みに悶絶していると、お母さんの悲鳴が聞こえた。

 

 アイシャが痛みに顔を歪めながら、そちらへ視線を向けると、母親が一人の海賊に組み伏せられている。

 

 母親の視線の先には首根っこを掴むように宙ぶらりんに海賊に持たれた妹がいた。

 

「その子を返してーっ!! やめてぇーっ!」

 

 母親が悲鳴をあげるように叫ぶ。

 

「これがそんなに大事なのか?」

 

 妹を掴む海賊がニヤニヤしながら言った。

 

 まさか…ありえない…。

 

 これは悪夢だ…。

 

 妹の泣き声が遠ざかっていく気がした。

 

 海賊がカトラス刀をシャカッと抜く。

 

 私は現実を受け入れられない。

 

「うおーーーっ!!!」

 

 お父さんが頭から血を流しながら立ち上がり、海賊を止めようとするが、他の海賊に組み伏せられる。

 

「お前は黙って見ていろ」

 

「やめて! お願いだからぁ〜!! お願いします何でもします〜っ!!!」

 

 泣き出すお母さんを見下ろしながら、海賊はニヤつきながら言った。

 

「あぁ、これから何でもしてもらうさ」

 

 シュカッ!

 

 その音はやけにあっさりしていた。

 

 妹の泣き声が聞こえなくなる。

 

「あぁぁあああ〜〜っ!!!! わぁああぁあ!!」

 

 お母さんが狂ったように泣き出すが、海賊に頭を引っ叩かれ猿轡をさせられる。

 

「さて、お楽しみタイムだぜ」

 

「これすると普通より締り良いんだよな」

 

 海賊にお母さんが衣服を脱がされていく様子をアイシャは痛みも忘れ呆然と見ていた。

 

 えっ…なに…?これ…?

 

 夢…? だよね…?

 

 だって昨日まであんなに普通だったのに。

 

「貴様らーっ!!!これが人間のすることかーっ!!」

 

 押さえつけられたお父さんが怒りに吠えるが、顔面を蹴り上げられて黙らされる。

 

「お前は黙ってそこで見とけ」

 

 呆然とその様子を眺めていると、肥満体型の海賊がノッソノッソと近づいてくる。

 

「おではこの娘で楽しむ」

 

「ははっ…相変わらずだな。そんなガキの何が良いんだか」

 

 そこからのアイシャの記憶は断片的だった。

 

 行為の途中で殺された父親。

 

 地面に無造作に捨てられた赤子の死体。

 

 生気を失った母親の瞳。

 

 目を焼き付けるような赤い炎の光。

 

 鼻を刺す黒煙の香り。

 

 アイシャの記憶にあるのはそれだけだった。

 


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