没落TS勇者令嬢ウィンター・ツイーンドリルルは、魔を切り裂き、光をもたらすのですわっ!! 作:クルスロット
第一話 ウィンター・ツイーンドリルル、大勝利! 栄光の未来へレディ、ゴー!
ああもういい! やけくそだっ!! 俺は、正直なところ結構ビビっていた。なにせぶっつけ本番だ。殺る気はあるが勝算は、不明瞭。やれる事も理解しているが初めての実践だった。だから、大きく息を吸い込んで、
「そこまででしてよッッ!!」
「あぁん?」
カツッ!! とハイヒールの踵を鳴らし、悲鳴に掻き消されないよう俺は叫んだ。
炎に呑まれた街。火の粉が散り、吹き抜ける熱風は、熱く、息苦しい。そんなところに、俺は居た。人の営みは崩れ、蹂躙された。今もなお、人が目の前で殺されている。
――許しがたい。決して許せるものではない。湧き上がる感情は、燃え盛る炎よりも勢いよく。俺の中には、真っ赤な怒りが迸っていた。一度声を上げれば、怯えもどこかへと消え去っていた。
「ギャハハハハハ! なんだよ、まだ居たのかよ! 居たのならさっさと出でこいよぉ~~」
逆巻く炎を背景に、景気よく笑い声を上げる怪物。魔王の配下、炎の四天王。そして、俺の仇敵であるサラマンドロス。
サラマンドロスは、何気なく足元に転がってる人を片手で持ち上げた。俺は、自分の眉根のシワが倍増するのが分かった。女性の死体は、目も当てられないような惨状だった。瞳に光はなく、死んでいるのも分かった。なにせ腹から下がない。炭化している。ぽろぽろと破片が落ちて、崩れた。
「こいつら皆、さっきまで、ぴーぴー助けて助けてって泣いてたんだぜ? 同胞が助けを求めてたのに、今頃になって出てくるなんてひでえよなあ? な? お前もそう思うだろ? 『はい、そうです。酷いです』だよなぁ? ギャハハハハハハッッ!!」
「貴方……!!」
女性の口を手で動かし、裏声を放つ腹話術めいて挑発をしてから無造作に女性を投げ捨てた。サラマンドロスの行動に、俺は、怒髪天を衝いたのを自覚した。
「ギャハハハ!! 怒ったか? 怒ったよな? 悔しいもんなぁ……何も守れてないもんなぁ……。お前、正々堂々って感じで出てきたし、騎士かなんかだろう? 残念だな? お前達が守りたかったものはもうこんなになっちまった。俺は、楽しかったぜえ。弱いものをぐしゃぐしゃにして、ばらばらにしたりとか嬲って嬲って、最後に殺すのも全部、ぜぇぇぇぇぇええんぶなぁ!! ギャハハハ!!」
「……もう、お黙りになっていただけるかしら」
「嫌だね」心底見下した笑みをサラマンドロスは、浮かべ「人間に従う筋合いはねえ」きっぱりと斬って落とした。
「それなら」俺がやることは一つだ。「嫌でも従ってもらうしかありませんわね」
出来ることは分かってる。やることも分かってる。以前とは違う体。歩幅も体格も全部全部違う。丸っと違う。だけど出来る。俺は、出来るんだ。頭が分かっている。教えてくれる。長年続けたことを意識せずに行えるように、この体も知っている。だから出来る。
「ギャハハ! 巫山戯たことを抜かす人間だな。やってみろよ。ほらほら、ほーらほら。隙だらけだろう? なあ?」
おどけて両手を広げるサラマンドロス。挑発しているらしい。俺は、軽く半身に、右手を前、左手をその少し後ろと構えた。
「では、お言葉に甘えまして……!」
直後、放たれていた炎を俺の拳が霧散させた。更に背後からくる火炎を振り返りざまの蹴りで叩き落とす! 炎の熱はあった。熱があるのは、分かるけど脅威には、感じない。痛くも痒くもない。もちろん、火傷どころか肌が赤くなることすらない。いける、やれる。確信が動きを鋭くさせた。
「っ!!」
不意を打つ一撃必殺を予想していただろうサラマンドロスの――いいや、トカゲモドキだ。こいつに大層な名前なんて必要ない。トカゲモドキは、驚愕で、目を見開いた。予想外だったろう? 俺は、にやりと右の唇を持ち上げてみせた。
「はぁ!」
跳躍だ。瓦礫を蹴り潰し、距離を詰める。遠距離は、あいつの距離だ。ここで俺の距離にして、一気に終わらせてやる!
「ギャハハハ! 存外にやるじゃねえかよぉ! 啖呵を切るだけあるなぁ!?」
トカゲモドキの姿が消えた。兄貴達を焼き払ったやつがくる。あの時は、追えなかった。何が起こったかも理解できなかった。
だけど今は違う。トカゲモドキの攻撃は、見えている。恐ろしいまでの高速移動。全身から炎を吹き出して加速する。出力が馬鹿みたいに大きいからそれだけで必殺だろう。実際、周りの瓦礫だとか地面とかは粉々で蒸発してる。音も遅れてやってくる。すげえ威力だと思うよ。だけどなぁ!!
「今は、見えてますわよ!」
髪が捩れる。いつもと変わらない金髪、しかし、長く美しくなった髪がぐるんと円錐形の渦を巻いている。ただのツインロールじゃない。このツインロールは、伊達じゃないし、やわでもない。
「ロール、ストライク!!」
ぎゅんと鋭角に、横合いから俺をふっとばそうとしてきたトカゲモドキの鼻っ柱に叩きつけ、逆にふっとばす! はっはぁ! 最高に気持ちいいな! ちなみに技名は、勝手に浮かんできた。魔法の呪文みたいだけど……どうなんだ? ただ、『戦おうとすれば分かるよ』ってのは、事実だったな。
「んだよ、それ……!?」
吹っ飛んだだけでダメージには、なってないらしい。浅かったか。妙なものを見る目のトカゲモドキに、軽く舌打ちが出た。
「ギャハハハ!! ばっかみてえだなぁ、おい!?」
トカゲモドキの両手の間で炎が集まって、圧縮されて、放たれた! 躱せるほど遅くない。なら!
「なんだそりゃ?!」
ツインロールは、伊達じゃない! ツインロールの先端で、圧縮された炎を逸らす! やっぱり距離を詰めないと……!
「ツインッッッッ!!」
駆け出した俺は、背後に向けたツインロールを
「おいおいおいマジかよギャハハハ!!!!」
俺が何しようと楽しそうなトカゲモドキが火炎の玉を幾つも放ってくる。そんな雑な攻撃、当たらない! 当たらない! まあ、一回喰らって死にかけたけどな! 躱してもなお迫る炎の雨あられを左右の移動にし、追いかけてくる火の玉をローリングで振り回したツインロールでガードする。ぎゅんと回転するツインロールが炎を明後日の方へ弾き飛ばした。
「チェリャァっっ!!!!」
俺が超接近したところへカウンター気味の振り下ろし! 恐ろしいまでに練られた魔力の爪! 一瞬で地面深くまで切り込み、数十メートル後ろの家屋をまとめてばらばらに砕いてしまった。なんて威力だ。冷や汗が俺の頬を伝う。けれど、関係ない。だって俺が居るのは、やつの背後……!! 振り向き加減の横目に浮かぶ、驚愕が実に心地良いな! 挑戦的な笑みすら浮かべてしまう。
「ドリルッ!!」
俺の両脇で、強烈な金属音が鳴り響く。俺としては、頼もしいが相手からすれば耳を塞ぎたくなるくらいだろう。だが知ったことか! こいつで土手っ腹に大穴空けてやる! 逃げたって遅い! もう絶対に逃さねえ! ここは、俺の距離だ!
片方のツインロールを回転させ、生まれた推進力が体を前に進ませる。振り向いたトカゲモドキと向かい合う。俺を見て、やつの目が大きく広がった。ははッッ、やぁぁぁってやるよッ――――!!
「ブレイカーァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!」
俺の頭から垂れたツインロールの片方がトカゲモドキを貫き、一瞬で、その体をツインロールが巻き込んでいく。
「ギャハハハハ、ギャ!? ギ、ガガガガガガガガガガガガガガガ!!」
目を白黒させながらもどうにか抵抗しようとツインロールを掴もうとトカゲモドキの伸ばした手も一緒に、粉砕! 俺は、気合を込めて、地を蹴り、トドメの加速をかけ、
「ギャ、ガガ! ギャ! ヤ、ヤ、ヤややめ! やめてく、く! くくくくくくくくくくく――――?!?!?!!!」
やめるかよ。お前がやめなかったことだ――より一層、俺は、瞳を鋭く尖らせて 一気に、トカゲモドキの体を貫いた!!
「ですわ!」
その後、何故か爆発四散したトカゲモドキを背景にハイヒールで地面を削って加速を殺し、着地と同時にぐるんと回り、パシッと決めポーズ!! ばっと元の艶々ツインロールに戻った髪を払い、ちょっと見下ろし加減に涼やかな笑み――――これは、決まったな……。美しい……。
「いや、なんでですの!?」
セルフツッコミせざるがえない。ていうかああ! やっぱりこの口調なのか!? 俺こと、ウィンター・ツイーンドリルルは、今日この日、人生最大の危機に陥っていた。
一つ! 故郷が滅びた! 二つ! 家族が死んだ! 三つ! おっぱいが出来た! 四つ! ツインロール! 五つ! ちんちん無くなった~~!!
膝から崩れ落ちそうだ。心がぱっきり折れそうだ。
「見事! 流石、僕が見込んだ女の子だ!」
「男ですわよ!!」
俺は、反射的に叫んでいた。この声、この声こそ諸悪の根源……いや、お陰でなんとかなったんだが。声の方には、美幼女が一人。 実に目立つ子だ。なにせ髪色が桃色と銀色で、とっても長くて腰まである。トカゲモドキの放った炎で、てかてかしてる。顔もまた凄い。ちっちゃくて肌は真っ白。大きな目は、翡翠色で綺麗だ。体に張り付いて、凹凸の全く無いツルペタボディラインを思う存分見せつけている。まあ、年相応というところだろうか。
その少女――ホワイトは、またまた~と手を広げて、いやいや~と首を振ると。
「そのおっぱいでそれは無理でしょw」
「た、単芝が不快でしてよ~~!! 煽ってるんですの?! なんなんですの!?」
「草なんだがw」
「草に草を生やさないで頂けますかしら!? 不敬罪で、しょっぴきますわよ! キィーー!!」
意味がわからない。俺は、俺が何を言ってるのかが全く理解できない。分かることとすれば、あの幼女の言ってる事に苛ついてるってことだ。
「ほら僕、命の恩人だよ? 敬って!! 尊敬して!! そしたら、おっぱい揉ませて~~!! わりと我慢の限界なのー!!」
「高貴なるわたくしのおっぱいは、安くありませんことよ!? さっきからそのおっぱいへの執着なんですの!? 何かお薬でもキメられていて!?」
「この通りだからっっ!!!!」
見事な土下座! なんだこのおっぱいへの情熱は!? この小さなツルペタ幼女ボディのどこから出てくる! 俺は、もうどうしたらいいか分からなかった。なにせ、人生で初めておっぱいを揉ませろとせがまれたのだからこうなって当然じゃないか。ちょっと心が揺らぐ。駄目だ。堪えろ。負けるな俺!
「い、嫌ですわ……!」
それでもなんとか拒否できる俺は、偉い子だ……。胸ごと自分を掻き抱いた俺は、じりじりと後ろに下がった。背中に感じる何とも言えぬ悪寒がそうさせていた。。
「やだー! 揉ませろー! 僕は、大きなおっぱいを揉むのが生きがいなんだー! 揉ませろー! 仇討ちをさせてあげた対価に揉ませろー!」
「はしたないからやめなさい! 後、その生きがい、どうにかならないのかしら!?」
土下座から地面に転がって、じたばた両手を振り始めた。駄々っ子かい! ホワイトが地べたに転がって、そんなはしたない行動はいけない。俺は、紳士的に注意した。……いやもう淑女では? しらねー!! しらねーですわ!
「いやだー!! おっぱい揉ませてくれたらやめるーー!!」
「一応、凄い魔法使いなんでしょう? ご自身の胸大きくして、揉めばいいじゃないですの!」
「自分のおっぱい揉むのは虚無い。他人のだから価値があるんだよ。常識だよ?」
「ええ……」
寝転がったまま平べったい胸を張るホワイトに、俺は、がくんと肩を落とした。
このどう見ても駄々っ子な少女こそ、俺をこんな体にした張本人だ。ありえないことを可能にしたすごい魔法使いなのに、このざまだ。なんなんだ畜生。
事の起こりは、ほんの一時間もしないくらい前の事だ。思い出すのも忌々しいが思い出さなくては、始まらないからな。思い出すことにするよ。