没落TS勇者令嬢ウィンター・ツイーンドリルルは、魔を切り裂き、光をもたらすのですわっ!!   作:クルスロット

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第十四話 ウィンター・ツイーンドリルルと秘密の作戦会議ですわ!

 

 

 

 「このシチューメチャウマですわねっ!!」

 

 きゃっきゃと年甲斐もなく興奮してしまいましたわ。いやもうそれは、美味かったからそう言わずにはいられませんでしたの。これはもう百万年無税ですわね。作って下さった方に感謝。

 ……でもお母様のものには、劣りますわね。少し届きませんわ。仕方ありません。お母様のシチューは、絶品ですもの。

 

 「ウィンター様、時々言葉遣いが不思議になりますよね。なんですか、それ」

 

 「何にも分かりませんわね……。なんでしょうね、これ」

 

 テーブルの向かい側、同じようにスプーン片手に、シチューに舌鼓を打っていたオフェーリアが苦笑いですの。実際、よくわかりませんから同じように苦笑いを浮かべて、首を傾げます。ホワイトが言うには、不具合ですけれど……まさか趣味とかじゃないですわよね? 

 

 「分からないんですか……」

 

 「分かりませんわね……。何も全く……」

 

 もぐもぐ……パンも美味しいですわね……。あんな惨状なのに、こんな美味しいものが出てくる王都民の食事事情……気になりますわね。

 

 このパンにシチューは、炊き出しで頂いたものです。空から降りた先が丁度、炊き出しの真っ最中でしたので、列んで頂きましたわ。わたくし達もちゃんと働きましたから頂いても問題ありませんわ! とオフェーリアを説得したのは、記憶に新しいですわね。 

 ちなみに、ホワイトは、既に食べてましたわ。おかわりまでしてやがりましたの。図々しいですわね。しかし、しょうがないですわね。美味しいですから……仕方ない。仕方ありません。許しましょう……。わたくし、寛大ですので。

 

 王城の一室で、わたくしとオフィーリアは、テーブルを挟んで向かい合っています。数少ない無事だった部屋を二人で占領するのは、良心が痛むところもありますが致し方ないので、仕方ありません。

 ……ところでホワイトは、どこかしら? まっ、そのうち出てくるでしょう。

 

 「温かいスープに、大ぶりなお野菜、お肉。食べごたえあって、お腹を満たしてくれますわね」

 

 「スープの深みとコク、大人数の為に作った鍋料理ならではですね。城の料理とは、また違う美味しさです」

 

 それから無言で、スプーンを口に運んでいました。今日初の食事ですからしょうがありませんわ。

 

 「さて、オフェーリア」スプーンを置き、「カチコミのお話と行きましょうか」わたくしは、本題を切り出しました。

 

 「カチコミ、なんと力強く、雄々しい響き……。カチコミ、致しましょう……!」

 

 きらきら瞳を輝かせるオフェーリアは、ぐっぐと前のめり。ちょっと駄目な影響与えてませんかしら、わたくし……。

 

 「おほん……先の貴方の口ぶりからして、カチコミ先――つまり魔王城の場所は、検討がついているのですわよね?」

 

 「勿論です。魔王領から戻った精鋭と密偵の情報を統合致しましたところ、魔王城の場所が判明しました」

 

 「なるほど……。優秀ですわね」

 

 「ええ、優秀でした」

 

 「でした、といいますと?」

 

 「戻ってきたのは、一人だけ。半死半生、手足も欠けていて、どうにかこうにか辿り着いたという様子で、情報を伝えた後、彼も……」

 

 「惜しい方々を無くしましたね……。さぞ、優秀でしたでしょうに。これは、無駄にできませんわね」

 

 「はい、勿論です。猿に木登りですがウィンター様は、魔王領についてどの程度御存知です?」

 

 「魔王領についてですか。ええ、ツイーンドリルル家は、代々国境付近の護りを任されていますから魔王領についての知識は、頭に入れてましてよ」

 

 昔から家庭教師に、お父様とその辺りは、色々叩き込まれてますからね。欠片も忘れてなんかいません。

 

 「例えば、気候。魔王領は、人類領と違い魔族が多く、魔素が非常に濃くなっています。なので、天候も不安定で、荒れればそれはもう酷いものです。エンブレース山脈から連なる険しくマグマ煮えたぎる山脈、深く恐ろしい摩訶不思議な植物がはびこる深林。上げれば霧がありませんわね。

 勿論ですが魔族が多い。魔物も多い。生態系が気候と熾烈な生存競争に耐えうるため、非常に強靭な作り、もしくは、対抗措置をとったものが多いです。人類には、非常に危険ですわね。

 一応、魔族にも色々あるようで、人類側と好意的で無くとも取引が通じる種族も存在します。が、この情勢下では、期待するだけ無意味ですわね――この辺りでよろしいかしら?」

 

 「はい、流石です」

 

 ふふん、そうでしょう。わたくしは、どやっと髪を払い、ぐぐっと胸を張りましたわ。

 

 「…………」

 

 「? どうか致しましたか?」

 

 「いえ、なんでもありません」

 

 「………今、おっぱい見てましたわよね?」

 

 「では、続きを話しましょう」

 

 「おっぱ「続けましょう」あっはい……」

 

 女性って、おっぱい見られると自然と分かるんですわね。過去を振り返るとあれもこれもバレバレだったのだと思うと身悶えしそうになりますわね。今となっては、見られる側ですけれど……なんだかズルズル後戻りのできないところにまで、来てしまった気がしますわね……。

 

 「ウィンター様のおっしゃる通り、厳しい環境の魔王領を進軍するのは難しい。そこでこちらを御覧ください」

 

 「これは、地図……もしかして、魔王領の?!」

 

 「勿論。有能な測量士も向かってくれましたので、この様な精巧な地図の作成ができました。

 ご存知の通り、四方八方を山脈が取り囲み、深い森に、巨大な湖と広大な領土にあらゆる危険が敷き詰められています。

 しかし、私達は、この危険を乗り越え、ここにある魔王城へとカチコミしなければなりません」

 

 「……罪悪感が凄いですわね」

 

 自分で言いだしたことですけれど、流石に罪の意識を覚えますわね……。そもそもカチコミの意味は知ってますけれど出どころがよく分かりませんわねほんと。

 

 「それで、どのように?」

 

 「これまで様々な議論を交わしてきましたが結局の所、障害物が多すぎて、まともな行軍ができないという結論しか出ていません。どうやら魔王軍側もそれは、同じで、遺された記録には、魔王軍側も環境に苦しめられている様子が確認されています。

 これまで硬直状態の理由の一つですね」

 

 「つまり、この地形を無視する方法があるというわけですわね」

 

 「ええ、はい。そうです」

 

 「その方法とは……!!」

 

 「…………」

 

 「…………おっぱい見てます?」

 

 「見てま……いや、おっぱいだけじゃないです!!」

 

 おっぱいも見ているのですね。時折、ちらちら胸元に行く視線を感じながらわたくしは、咳払い一つ。

 

 「つまり、わたくしこそが突破口だと?」

 

 「はい。風の四天王との戦いで、見せられたあの旋回性能や凄まじい飛行能力、超高高度への対応能力。既存の魔法では、現状、あれだけ安定したものは、不可能だと魔導院と言われているレベルの飛行。勇者様にしかできません」

 

 「なるほど……。確かに、それはそうかもしれませんわね。地図から見るに――」

 

 伸ばした指で、地図の王都から山を超え、魔王城への直線を引き、わたくしは、不敵に笑ってみせますわ。

 

 「わたくしが山を超え、魔王城へカチコミをかけるということでしょうか。シンプル・イズ・ベストですわね! 完全に理解しましたわ!」

 

 「七割当たりです。そこにいくつか付け加えさせていただきます」

 

 チェスの駒をオフィーリアは、いくつか配置致しました。場所は、王国領との境、エンブレース山脈の東と西に二つ、二方向からの攻撃ですわね。と納得していますと港にも配置されました。

 

 「海から……いけますの? わたくしよりも海そのものの横断は、かなり難しいと思われますが……。特に」

 

 地図の一箇所をわたくしは、指差します。これが海が厳しいというわたくしの理由です。丁度三角を描き、魔王領と人類領の間に横たわる海域。通称デルタ域といいます。

 

 「デルタ域は、魔でも人でもない何かが住まうとのお話ですわよ。濃霧に、予測不能の海流も合わさり、逃げように逃げられず、向かった船も迷い込んだ船も一隻たりとも戻っていないとも聞いています。ここ近年の状態は知りませんが……って、なんですの」

 

 「いえ、ふふ……申し訳ありません」

 

 突然、くすくす笑い出したオフェーリアに、わたくしは、思わずジト目を向けました。

 

 「そのデルタ域なんですが……」

 言い難そうにオフェーリアは、言葉を続け、

 「そもそも、向かった全ての船が行方不明になり沈む……帰らずのデルタ域なんて存在しないんです」

 

 「なん……ですって……!?」

 

 愕然とわたくし、目を見開きましたの。脳裏を過ぎったのは、デルタ域のお話を初めて聞いたその日の夜、トイレにいけなくなったあの恐怖とか粗相とかもう思い出すだけで赤面の想い出に、亀裂が入っていきますわ……。なんていうことですの。怖い話のせいにできなくなったじゃありませんか!

 

 「そんなにびっくりすることでした……?」

 

 「ええ、まあ、色々あるのです……。続きをお願いします」

 

 「実は、ここ王国の秘密基地があるのです」

 

 「秘密基地……!!」

 

 「秘密基地って響き、ワクワクしますよね。わたくしも最初聞かされた時、ドキワクでした」

 

 「理解できましたわ。そこに何か……そう! 秘密兵器があるのですね! 魔王領へのカチコミに役立つ秘密兵器が!」

 

 「まあ、ええ……。秘密と言えば秘密ですね……」

 

 「……不安というか気になる反応しますわね」

 

 「ははは、見れば分かりますよ……」

 

 虚ろな瞳で笑うオフェーリア。一体そこに何があるのでしょう……怖いですわね。

 とまあ、こんな風に、今後の方針をオフェーリアと固め、三日後には、件のデルタ域の秘密基地とやらに向かうことになりました。色々気になるところがありますけれどそこは、いいでしょう。

 とりあえず休養を取らなければとわたくしが部屋に向かって、

 

 「ホワイト、ここに居たのですね」

 

 「ウィンター。少し、話があるんだ」

 

 扉を開いた先、ベッドに腰掛けたホワイトは、とても真剣な顔をしていました……口元に、パン屑がついてなければ完璧でしたわね。ツメが甘いというかなんというか。

 

 「なんのお話でしょう?」

 

 「君を……その……その……」

 

 「……その?」

 

 「そのっ」

 

 意を決したとばかりに息を大きく吸ったホワイトは、

 

 「――――男に戻せないかもしれないんだ!!」

 

 なんて言いました。えっと、そのなんと言いますか……。

 

 「戻す気あったんですね……。びっくりしましたわ」

 

 「なんか信頼低くない!?」

 

 「信頼して無くもないですが、あんまりにもおっぱい推しが強いものですから……」

 

 「それもそうだ!! ごめんなさい……。あまりにもおっぱいの愛が溢れすぎちゃって……。僕の考えた理想のおっぱいがそこで動いているものだから……。ふにふにで……ふわふわの」

 

 「まったく謝られてる気がしませんわね。こんなに謝罪を感じない謝罪、この短い人生でも初めてで、めちゃくちゃ驚きましたわ」

 

 「なんか強火じゃない!? 優しくして!! 女の子だよ!?」

 

 「わたくしも女の子なので」

 

 「戻る必要ないんじゃない?」

 

 「必要ありますわよっ!」と言いたいところですが「……風の四天王との戦いからわたくしも少しばかり自信がありません」

 

 溜息をこぼし、近くの椅子を手繰り寄せてからわたくしは、腰掛けました。……矯正しようにもどうにもならないこの思考、本当にどうにかできませんかしら。どうにかできそうにありませんわねぇ!!

 

 「一応、頭の中では、男の体裁を保っていましたの。この様な口調ではなく男性としての思考、口調で、世界を見ていましたわ」

 

 「その口ぶりからして、だいぶ頭ん中バグってるみたいだね」

 

 「ええ、お陰様です。まあ、責めてはいませんわ。こうしなきゃ今、わたくし生きていませんし、何もできていません。どっちかといえば感謝しているくらいです」

 

 「そっか……」

 

 「で、戻せないってどういうことですの。何かしら察したからじゃないと出てきませんわよ、その言葉」

 

 「あーいや、あまりに君が理想的なおっぱ……女の子だからちょっと良心が痛んで……。この人を無くすのは、世界的損失じゃないかって……」

 

 「めちゃくちゃ個人的な理由ぶちまけましたわね!?」

 

 「本当に、申し訳ない」

 

 「なぜか知りませんけれど誠意が感じられませんわ~~!!」

 

 「テヘペロ☆」

 

 「可愛いですわね、畜生!!」

 

 わたくし、思わず立ち上がって地団駄踏みましたの。あーもう可愛いは正義ですわね! にこにこしないのそこ! 

 なんにも解決しそうにないですわね、これ。内心苦笑しつつしかし、男性に絶対戻りたいという衝動も薄れているのは、事実を自分が突きつけてきます。どうしましょう。なんてまあ思いつつ、そのうち決着つくでしょうとわたくしは、後回しにすることにしました。今、考えるの面倒くさいのです。だって。

 

 「ふて寝しますわ! 場所を開けてくださる?」

 

 「あっ、寝るの? じゃー僕も一緒に寝る」

 

 「破廉恥っっっっ!!!!」

 

 

 

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