没落TS勇者令嬢ウィンター・ツイーンドリルルは、魔を切り裂き、光をもたらすのですわっ!! 作:クルスロット
熱い日差し! 真っ青な空! そして――!!
「青くどこまでも広がる海ですわっ!!」
やってきました王国最大の港街サンシェル! 潮の臭いが堪りません! 久々の海で、わたくし、テンションマックスですわ!! なんせかれこれ十年は来てないはずですからこのテンションも致し方無しですわよ! ふぅっっ!!
テンションばかり上げている場合では無いんですけれどね。わたくし、遊びに着たわけではないですから。
このサンシェルから件の秘密基地に向かうそうです。その船の準備の合間、こうしてちょっとしたバカンスというわけです。ちなみに、オフェーリアは、件の準備に追われています。水着見れなくて残念ですわ。
観光客でいっぱいのビーチから少し離れた桟橋の上、わちゃわちゃキラキラ海を覗き込んでいるわたくしの隣のホワイトは、若干グロッキーの様子。暑いの駄目なのかしら。今日、たしかに暑いですしね。ていうか汗ヤバイですわね。
「あ"~~テンション高いね~~。僕は、あ"づい"~~。汗拭って~~」
「はいはい。まあ、確かに暑いですわね。このドレス、ノースリーブにできて助かりましたわ。便利ですわね」
「それくらい手間でもなんでもないしね。僕のこれもそんな感じだよ」
汗を拭き終わると共に、くるっと回るホワイトが身につけているいつものピタッとした服ではなくて、薄手にレースをあしらったワンピースの裾がふわふわと髪がさらさらっと広がりました。愛らしいですわね~~。
「それはそうと泳ぎません?? 海ですから泳ぎましょう! わたくし、泳ぎたいです!」
「……話し飛んでない?」
「え? そうでもないですわよ。だって貴方なら水着も余裕でしょう? そして、目の前に海がある。なら!」
ぴしりと海を指差して、わたくしは、にっと口端を持ち上げます。
「泳ぐしかありませんわっ!」
「ええ~~……やだよ~~……。僕泳げないしーー……」
「あら、そうですの?」
「泳ぐ必要無いし、そもそも僕の世界だとこういうのできなかったしね。海で泳ぐかー。服濡れちゃわない?」
「濡れますけれどそこはほら、脱げばいいですわよ」
「正気か????」
「……ちょっと正気ではありませんでしたね」
今のわたくしが脱ぐとちょっとというかかなりヤバイですわね。元のわたくしなら放っておきませんわ!! 布をかけて、縛って牢屋ですわね。
「というわけで、ほいさ!」
「え!? おおー……流石ですわね。しかし、この水着なんか色々見え過ぎでは?」
肩が大きく出てたり胸の強調がすごくて、ちょっと太ももの露出とかデリケートな辺りの食い込みとかえげつなくないですか? 気の所為? そうですかぁ……。いや、そんなことないですわよ。
「それでも一応競泳水着ってやつなんだよ? 僕の居た世界とこだと名前の通り競技用に使ってたやつらしいんだよね。ま、エッチでいいじゃん。胸元に手を突っ込んで良い?」
「人が言わなかったことを……!! しかもセクハラに遠慮無いですわね」
「『何気なく言って、その場のノリでおっぱい鷲掴み大作戦!』だよ」
「却下ですわ。ネーミングセンスゼロですの? そもそもいつもと変わりませんわ」
「ちぇ~~。ま、いっか。チェーンジ!」
「眩しっ!」
それこそピカー!っていう効果音が出てそうなほどに、ホワイトが光ってなんだかよく分からないピンクとホワイトの空間で、ダンス? ウィンクをした後、ワンピースが弾け飛んだぁ!? あ、でもなんか見えませんわね! 影というかシルエットだけが浮かび上がってる感じ。それがくるくる回って、ぱっと光が弾けてから着地。
「え、なんですのそれ……」
「なにってダイナミックお着替えだけど?」
いや、そうですけれど。ホワイトもまた水着を着ている。わたくしの黒と白ラインのとは違って、こう明るくファンシーなピンクと白のボーダーにレースがついたこれまた可愛らしいもの。中と外全部可愛いのは、流石に犯罪ですわね。いえ、ですけどね? 呆れまじりにわたくしは、言います。
「確実に力の無駄遣いですわよ」
「いいのっ! こうすると気分がいいんだよ!」
「まあ、貴方がいいならいいですけれど。折角着替えたのですからとりあえず泳ぎましょう――……? どうかしました?」
「あー、いや、そのね? 言ったじゃん?」
海に飛び込もうとしたわたくしの水着を掴んだホワイトの方へ怪訝な顔を向けるとバツが悪そうに笑っていました。
「僕、泳げないんだよね」
それでさ。とホワイトは、前置きして。
「ちょーっと泳ぎ方教えてもらいたいんだけど……いい?」
上目遣いって、正直ズルイですわよね。水着を掴んだ手を握って。
「構いませんわ。でも海で練習ってのもあれですし、ビーチに降りて遊びましょう! 泳ぎなんてもっと別で教えて差し上げますわっ!」
「ふふ、そっか。ありがと」
「いーえ、どういたしました。って、そうですわ。一つ、聞きたいことがあるんです」
「なぁに?」
桟橋からビーチに向かう途中、隣のホワイトに言葉を作る。手めちゃくちゃ小さいですわね……。わたくしがちょっと力を込めると折れてしまいそうですわ。
「どうして真冬なのに、こんなクソ暑いんですの?」
「この前の風の四天王のせいだよ。天候というか四季が狂っちゃってる。四季の運行に携わってる属性って、メインが風なんだよね。それがこないだ派手に、しかもとっても荒く使われたもんだからこのざまだよ」
「……それ大丈夫ですか?」
「風の四天王倒してからそのうち自然治癒するはずだけどまだ改造コード持ちはいる。だから安心はできないかなー。どこかで致命的にバランスが崩れてしまうかもしれない――」
「……ふと口を開けば空気が重くなるのどうにかしたほうが良いですわね」
軽く乾いた暑い空気の中、わたくし達の周りだけなんだか重々しい。話題振った分、責任感じますわね。どうしましょう。
「……ごめんね」
しょぼつくホワイト。ああもう、そんな顔するんじゃありませんわ。そもそも訊いたわたくしが――と口を開きかけて、足を止めました。あーこれ面倒くさいですわね。
「べーつにっ! 貴方を責めてるんじゃありませんわよー!!」
「へ、え!? あ! びゃあぁぁぁぁぁっっっっ―――――!?」
ホワイトのもう片手を握って、ジャイアントスイング! はーー、吹っ飛びましたわね。お、ぐんぐん伸びて、くるくる回りながら空の彼方に消えて…………。
「あ、やりすぎましたわ」
テヘペロ。可愛くしたら誤魔化せませんかしら? 駄目? デスワヨネー。
この後、空中でキャッチしたホワイトに、こってりしっかり絞られました。トホホですわ~~。あ、ごめんなさい! 反省してますから!! ぶたないで!! 痛い痛い!! 焼きそばにかき氷なんでも好きなもの奢りますから!! 許してくださいまし!! え? おっぱい? え、ええ~~……それはちょっと……。いや、ちょっと待って下さい!! そこはもっと駄目ですわ~~!!
+++
「ちょっ、何あれ」
「えーどうかしたん?」
ビーチの片隅。メインのビーチと少し外れたちょっとした穴場。ぱっと開かれたカラフルなパラソルの下、並んで寝そべっていた花柄のビキニ姿の少女がたわわに実った胸を揺らし、間延びした声を上げながら空を指差していた。隣で、同じ柄のビキニで、寝そべっていた褐色の少女は、少女のビキニの下ではち切れそうな胸に、ジト目を向けてから怪訝と指差した方を見上げた。
――なにもない。淡黄色の双眸に映るのは、カンカン照りと青空だけだ。
「なんもいないじゃん」
「おっかしいな~~。さっきなんかすげーお嬢様がツインロール回転させてたんだよ。んで飛んでたの。多分、噂の勇者様だよ。確か今日到着するはずだし」
「は? 昼間っから何クスリやってんのさ。あたしにも分けてよ。ていうかその勇者の噂、絶対嘘でしょ。ツインロールで飛べるわけ無いじゃん。ツインロールをなんだと思ってんのよ。根も葉もない噂でしょそれ」
「あ? あーしクスリなんて決めていないが? 勝手にクスリ漬けにしないでもらえる? ツインロール勇者だから飛べるんでしょ」
「昨日、ガンギメオナニーしてたやつに言われたくないんだが? んでクスリは? 後、その理由適当すぎるわ」
「してないっての! クスリも無いわ!」
顔をしかめさせ、身を乗り出し否定する巨乳の少女に、貧乳の少女は、チェシャ猫みたいな笑顔で言う。
「してたんだよな~~。見てたぞー。ケツにあんな入れてさ、ひっどい喘ぎ声上げてさ。人気がないとはいえ外でよくやるよほんと」
「なんちゅーことこんなとこで言ってんのさ!! 後、外は興奮するの!!」
「どうどう。そんなに怒らないでよーー。どーせあたしら以外居ないんだしさ」
顔を真赤にして声を上げた巨乳の少女に、やってんじゃねえかと思いつつキャハハハと笑い声を上げた後、急に笑うのをやめた貧乳の少女は、海の方を指差した。あまりに突然だから巨乳の少女は、眉を顰めた。
「ねえ、あれってさ」
「ほらー! 勇者様いたっしょ!?」
「いやさ、それじゃなくてさ。あれだよ。あれあれ」
「え? ……あれって」
少女たちの視線の先には、広大な大海原。穏やかな波間に何かがある。巨乳少女が両手で日差しを遮り、貧乳少女が首を傾げ、何が自分たちに迫っているのかを理解した時、大きく目を見開くと
「「あ、あれ…………!」」
一緒に血相を変えて、叫んだ。
「さ、サメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
直後、海面を引き裂き、宙に身を躍らせた
+++
「は!? なにあれ!!」
海上上空。無事ホワイトをキャッチしたわたくしとお姫様抱っこされたままわたくしの頬をつねって引っ張るホワイトの視線の先には、それはもう大きなサメがいました。流石のわたくしもびっくりです。
「ふぁなじでくだざぃまじ! ふぅ……って、なんでこんなところに
「サメぇ!? 嘘でしょ!!?!?! どう見てもサメみたいな化け物でしょ!
「何を言ってるのです! あれはテアシイッパイ・イツツヘッドサメですわよ! あんな大きなものは、わたくしも初めて見ましたけれど……!!」
見た限りでも体長六、七メートルはありますわね。胴体から生えた手足に五つの頭。間違いありません。近海の頂点捕食者の一角ですわ。それがどうしてこんな陸地近くに……? 餌不足? 異常気象のせいでしょうか。
「にしては、やけに詳しくない……?」
「魔物の図鑑があるのです。そこに載っていましたわ。わたくしそういうのも家庭教師に教えられてましたので。騎士としての教養といったところですわね。ああ、あの授業は、結構好きでしたの。今でも鮮明に思い出せますわ……」
「想い出に浸ってる場合じゃないんだけど!?」
「え、ああ! そうですわね。助け――助けなくて良くないです?」
「いや、そんなわけ――あるね」
はっと我に返ったわたくしとホワイトの視線の先では、三枚下ろしにされたサメの姿がありました。ちゃんと内臓が除かれてるし、胴体に生えていた手足もまとめられてる……お見事ですわね。
「ほらーやっぱり勇者様じゃん~~」
「マジか……。本当にツインロールで飛んでるし」
「御機嫌よう。わたくし、ウィンター・ツイーンドリルルと申します」
少女二人のいるビーチに着地したわたくしは、とりあえずご挨拶。どうやらわたくしが誰なのか把握されているようですね。いつの間にか有名になってしまったのかしら?
「僕は、ホワイト。よろしくね」
「どもっす~~。あーし、ジュピー・アレキサンドライトね。それで、ぎゃっ! 急に殴らないでよ、メアリ!!」
「勇者様だよ!? 分かってんの?! ほんと申し訳ありません……!! このバカが失礼を……」
「ふふ、いえいえ。わたくし、別に偉くもなんともありませんから」
実際、偉くもなんとも無い。わたくしは、勇者抜きにすれば一介の半人前騎士でしかありませんもの。
「しかし、見事な腕前ですわね。サメはここまで綺麗に、あっという間に捌いてしまうとは、さぞ名のある剣士とお見受けします」
近くで見てさらに分かる剣筋の冴え。一瞬目を離しただけなのに、ここまで完璧に解体してのける技巧。わたくしが騎士だった頃のそれとは格が違う。鮮やか。そうとしか表現できません。
「あ、一応騎士やってますので、コレくらいは余裕っす」
「あら、騎士団の方でしたか。もしかして……」
「はい、お察しの通りです。此度の作戦に参加します王国海上騎士団所属騎士、メアリ・アレキサンドライトです。よろしくお願いします」
ぼんっと胸を張るジェピ―の隣で、メアリが佇まい改めて、左胸に手を当てる騎士団式の敬礼。そんなに畏まらなくてもいいのに……。などとわたくし、ちょっと苦笑い。
「よろしくおなしゃーっぶべら!? 乙女の顔を殴らないでよっっ!! 傷ついたらどうするの!」
「隣のこのバカも同じく参加します。ご迷惑をおかけするかもしれませんがどうぞ大目に見ていただきたく……」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いしますね」
その時でした。ばっと海の方へ向いたのは、わたくしたち同時。そして、“それ”が現れたのもほぼ同時。
「「んなっ……!!」」
隣で、ジュピーとメアリが驚く気配を感じながらわたくしは、地を蹴り、ホワイトを後ろに放り投げました。
「お願いしますっ!」
「なんか言ってから投げてよぉぉ!!」
「きゃーっち!!」
「わあ! おっぱい!!」
背後の悲鳴を無視して、わたくしのツインロールが唸りを上げます。急速接近――標的は、八又に引き裂かれたようにして口を開いたサメ! クチヤッツ・ヒラキサメ! 乱立する牙、生臭い息。悪臭とおぞましさに鳥肌が立ちますけれどそんな場合ではありませんっ!
「チェリャァァァァァァァァァァアアアア!!」
ツインロールの推進力を受けて蹴り上げ、臭い口を上に向け、ぐるんと回し蹴り! 水切りのように海面を跳ねていくのを最後まで見届けず、いえ、その余裕がなかったというところです。
小型のサメが多数迫ってきていました。わたくしの視界を埋め尽くさんばかり――たまらず急制動から上へ――追尾して来ている。つまり、このサメは、
「ランチャーオオサメとホーミングコバンザメですわね……!」
どこかに本体が居るはず……ええい! うっとおしいですわ! 邪魔ですの! ひたすらに追ってくるホーミングコバンザメのしつこさに耐えきれなくなったわたくしは、逃げるのを止め、片手を空に向けました。勿論、サメがわたくしが逃げるのを止めたのに、戸惑う様子もなく一気呵成と襲いかかってきます。ええ、普通ならここで終わりでしょう! しかし! わたくしは、そうなりません!
「チェンジ!」ぴんと天を指で突き「ポニーロォォォォォォォォォル!!」
ツインロールからポニーロールへと
「真正面から打ち砕いて差し上げますわっ!」
空を蹴り、加速。わたくしが大盾のようにかざしたポニーロールが鎧袖一触とばかりに、サメとサメにサメを粉砕します!
サメの群れを突き抜けた先、ランチャーオオサメが沖合に居るのをわたくしは、発見しました。海面に射出機構を晒したあまりに無防備な姿は、失笑を誘います。無論、わたくしは、一直線にランチャーオオサメへと向かいました。逃げる暇など与えません。そう、この一撃で終わりにします。
「ポニードリルロールライナァァァァァァァァァ!!」
数年ぶりの海中ダイブは、実に刺激的となりました。水着に着替えておいてよかったですわね、ほんと――――。
「……え”」
海中にダイブした先で、わたくし、思わず絶句しました。いや、マジですの? 視界を横切っていく、胸びれ背びれに尾びれ。海中を埋め尽くすサメ! サメ! サメ! サメ!! サメぇぇぇぇ!!
「
流石のわたくしも一斉に向けられた視線には、血の気が引きました。