没落TS勇者令嬢ウィンター・ツイーンドリルルは、魔を切り裂き、光をもたらすのですわっ!!   作:クルスロット

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第二十話 ウィンター・ツイーンドリルルとリベンジマッチですわよ!

 

 

 

 「……酷い有様ですわね」

 

 わたくしは、眼下に広がる光景をそうとしか表現することができませんでした。

 海に水が一滴もない(・・・・・・・・・)。海の底にあるこの星の肌が剥き出しにされていました。ゴツゴツとして、凹凸のある海底がで、普段は塩水に揺れている海藻が外気に晒され萎びた姿と住処を奪われ力無くのたうつ魚たちは、実に痛々しい。

 凄まじい勢いで、海が引いていっていました。わたくしの居る地点は、この通り、もう海があったとは思えない惨状です。前方を見るとまだ海水はありますが、それもわたくしと並走するほどの速さで、どこかに向かっていました。

 

 「何をしようとしているのです……!!」

 

 『メガロシャークは、君と戦った後、その、なんだろう。言葉の表現に困るんだけどさ……』

 

 見ての通りだよ。若干投げやり気味に、ホワイトは、言いました。

 

 『海を引き剥がして、おっきな玉にしてる。見えてるでしょ?」

 

 彼女の言う通り、視界上天、空を埋め尽くすのは、巨大な回転する水の玉。大きすぎてスケールが狂ってますわね。よく見れば海面からそれに向けて、海水が柱や触手のように伸びています。いえ、違いますねあれ。吸い上げているんのですわ。

 シルフィーリベアといいもうちょっと世界のこと考えたらどうですか! 勝った後のこと考えてるんですの!?

 

 『確かに、見えてはいましたが……!! メガロシャークの仕業とは、思っていないというよりもこの現実を受け止めたくないといいますか……!! それで、あれどうすると思います?』

 

 『落としたら大陸の隅々まで水浸しになるのは、保証するよ。ただその後には、人間と他の生物一匹たりとも残らないだろうね』

 

 『まあ、そうでしょうね……。メガロシャークを倒せばどうにかなると思います?』

 

 『質問に質問を返して悪いけど、制御を失った水の玉が落ちたらどうなると思う?』

 

 『あーもうっ!! どっちにしろ同じですわね!」

 

 つまり、わたくしは、水の玉とメガロシャークの両方を対処しなければならないということです。片方だけでも厄介どころではないのに、本当にもう!

 

 『それで、どうします!?』

 

 『君が居ない間に、君の視覚映像から分析を進めてた。あの水の玉と合体ロボは、メガロシャークだけの力じゃない。他の三つの元素の改造コードも組み合わされてる。それがあの合体ロボを作り、メガロシャークを強化して水の玉を作ることを可能にしているんだよ』

 

 『合体ロボ……あの大きい人型ゴーレムですね。ゴーレムを破壊すれば水の玉の制御を失う……しかし、残った水は、元の場所に戻るでしょうけどその衝撃までは、無くなってくれませんわよ?』

 

 『そこなんだよな~~……。どうしたらいいかなぁ……』

 

 『あーもう!! とりあえず考えておいてください!』

 

 メガロシャークがあの人類撃滅スーパーゴーレム〈ビッグフォー〉とやらがわたくしの視界に映っていました。この辺りは、まだ海も健在ですわね。その距離としてもう数キロメルとありません。メガロシャークもまたわたくしを捉えていました。

 

 『わたくしがあのゴーレムを堕とすまでに!! なるはやですわよ!!』

 

 ゴーレムの胸辺りに仁王立ちで、腕を組んだメガロシャークとわたくしの視線がぶつかり、ホワイトの返事を訊くより早く。

 

 「デッドエンドのデリバリーサービスですわ! 謹んで受け取ってくださいまし!!」

 

 「シャーッシャッシャッシャ!! 減らねえ減らず口だなぁ! おい!! お淑やかさって知ってるかぁ!?」

 

 「そちらの笑い声が下品すぎましてよ! 品性壊滅でして?」

 

 空気を砕く殺人的加速を乗せた水平飛び蹴りを顔面に! しかし、ハイヒールの向こうから聞こえる笑い声に、わたくしは、おかわり代わりのつま先を、

 

 「これで!」

 

 左! 右! 左!

 

 「どう!」 

 

 右! 左! 右!

 

 「でしょうっ!」

 

 下に落として、上に!

 

 「かぁ!!!!」

 

 戻ってきた鼻っ柱へ!! と叩き込んで差し上げます!

 

 「シャーッ! シャッ!シャッ! シャ! ま、だ! まだ!」足首を砕く音「効かねえ!!」苦悶に唇が歪みました。

 

 「――ッ!!」

 

 それでも口を突く絶叫だけは、噛み殺した。ツインロールを振り回し、メガロシャークの凶悪な握力の支配から抜け出そうとしました。けれど幾度叩きつけてもメガロシャークは、不敵に笑うばかりで、その手が緩む事はありません。

 

 「ならっ――」

 

 髪型変更(スタイルチェンジ)――ポニーロール!

 

 「これでも喰らっていきなさい!」

 

 切っ先の狙いを定めて、これまた顔面へ――って! んな!? あんまりのことに、わたくし、目を見開いてしまいました。

 

 「ちょ、ちょっと何してくれてんですの!?」

 

 「ふごふががふごごごががが」

 

 「なーに言ってんのかまーったく、これっぽちも分かりませんわよ!!」

 

 わたくしのポニーロールに、噛み付いている!? 回転しているのですよ! あのシルフィーリベアを完膚無きに粉砕したこの回転を受けて、歯が無事であるはずがありません!

 

 「がががががががががががが」

 

 「っ! まあ構いません!」ぐっとポニーロールに力を込め「喉奥まで咥えて、絶頂しなさい!」

 

 突き入れる!! 顎を外し、口内環境めちゃくちゃにしてやりますわ! 牙を削り、ジリジリとポニーロールが押し勝っていきます。いい感じですわよ。

 

 「ががががッ――流石に、ちょっとそれは不味いぜ。シャッシャッシャ」

 

 「やーっと離しましたわね。この鮫頭! 淑女の足握り潰してなにしてくれてんですのっ……!!」

 

 ポニーロールを両手で掴んだメガロシャークは、いつもの笑い声と共に、口から引きずり出していきます。無論、わたくしも睨みながらそれに抗いますが……。ああ! メシメシいってます! 髪がたてていい音じゃありませんわよ!?

 

 「こんの、馬鹿力っ!」

 

 たまらず髪型変更(スタイルチェンジ)。無理矢理ツインロールにして、メガロシャークの掌を滑らせて、振り払うとわたくし、距離をとりました。

 

 「っ……」

 

 砕けた骨肉、青黒く染まった皮膚が蠢いて、足首が再生されていく激痛に、わたくしは、思わず眉を顰めます。

 眼前、メガロシャークは、未だ不動です。その足をあのゴーレムから離していない。前よりずっと手応えがない。

 

 『ホワイト、どうしましょう。勝算が見えないのですけれど』

 

 『――そうだ。狙うのは、上の水の玉だ』

 

 『水の玉を、どうするんですの?』

 

 『君のツインロール――因果を回して、捻って切る! 改造コードへの特攻であるそのロールなら水の玉を構成する改造コードを捩じ切って、メガロシャークとの接続を切れるはずだ。そうしたらあれを奪い取ることもできるかもしれない。何度もやってるから分かるだろうけど君は、改造コードに対する言わば特効薬だから』

 

 『それで、メガロシャークもどうにかなるんですの?』

 

 『なる……はず』

 

 『まあ、分かりました。――わたくしは、どうすればいいんですの?』

 

 『突き刺して。後は、僕がする』

 

 自信なさげな口調から一転、ホワイトの言葉には、覚悟が見えました。ま、最初から信頼していますけど。

 

 「了かっ――人がお話してるところに殴りかかるとか品性劣悪ですわねっ! お母様に習いませんでしたか!?」

 

 「残念ながら俺の親は、お前たちに、人間に殺されたよ!!」

 

 両手指をまっすぐ揃えた手刀が青いオーラを纏っています。水魔法――今飛んできたのは、圧縮された水を回転させたもの。迎撃はできましたが手が痺れますわね。結構なお点前ですこと。

 

 「あら! それは、ナイーブな話題でしたわね!! 失礼っ!」

 

 「はっ、殺されたほうが悪いさ。それはそれでリベンジだ! 晴らす恨みが多くて忙しいぜ!」

 

 だけどまあ、目を見開き、一欠も無く揃った牙を剥き出しにしたメガロシャークは、叫ぶ。

 

 「ま、これで全部全部終わりだけどよぉ! シャッシャッシャッシャ!!」

 

 「ああ、ちょっと疑問になってたんです、わたくし。今ので理解できましたけど」

 

 「ああん?」

 

 「貴方、あの水の玉、落としたらどうなるか理解できていますわよね? 承知ですわよね?」

 

 「この世全ての陸地が海に流されるだろうなあ」

 

 首を傾げたメガロシャークは、なんてこと無いようにそう言った。

 

 「やっぱり、そうなのですね。貴方、リベンジリベンジうるさいと思っていましたが……これら全て、貴方のリベンジですのね」

 

 「そうかもしれねえなあ。シャッシャッシャ。世の中、弱肉強食だ。誰も彼も食われ、殺される。皆そうして俺の前から居なくなったよ」

 

 少し唇を歪めたメガロシャークは、両腕を大きく広げました。どうやら上空の水の玉が最終段階を迎えつつあるようです。どうやら無駄口もこの辺りのようですわね。下ろした拳を構え直したわたくしは、メガロシャークを睨めつけました。

 

 「シャシャ、やろうか」

 

 わたくしは、応えませんでした。突貫――メガロシャークへ殴りかかります。ツインロールの出力に押された拳をメガロシャークに、

 

 「っ! なるほど、そっちが狙いかぁ!!」

 

 掠らせて、そのまま上に! 目標、水の玉! 直線ならポニーロールです! 今も回転し、海を吸い上げるそれに向けて、更に加速を行いました。

 

 「シャッシャッシャ!! こんな短時間で、忘れちゃったかぁ!? シャークミサイル!」

 

 メガロシャークの声に、わたくしが思わず振り向きました。忘れてませんわよ、鮫頭と一緒にしないで頂けます!? とかなんとか言おうとしたのですが……。

 

 「いえ、何か増えてませんか……!?」

 

 「サメは、毎分毎秒が成長期で、思春期だ!!」

 

 「意味の、分かる言葉をっ! お話くださいましっ!」

 

 猛スピードで追い上げてきたサメの鼻っ柱をつま先で蹴り飛ばし、口を広げてきたサメのそれでもなお追いすがろうと追いかけてくるサメ達を蛇行で、振り落として差し上げ――し、しつこいですわ~~!

 

 「しかし、構いません!」

 

 空中をぐねぐねうろうろしていましたが目標は、もう目と鼻の先! 水の玉まで、数メルトルとありません! このまま突き進んで――キラリと光るもの? あ、そういう? 理解したわたくしの顔面めがけてシャーク! シャーク! シャーク!

 まっ、そんなことだろうと思いました! ツインロールの回転を押し上げればこのくらい!

 

 「ポニーロールの前では、塵芥同然!」

 

 「シャシャ! ああ、そう来ると思ってたよ!!」

 

 「っ!?」

 

 ポニーロールに触れたそばから皮の内側から膨れ上がって。目玉が飛び出たと思うとパンっと弾けました。いえ、触れているものだけではありません! 連鎖して、周囲のサメがもろとも全匹――!

 

 「これは――!!」

 

 『毒じゃない! 目眩まし! 来――』

 

 最後まで聞けませんでした――わたくしの体を叩く衝撃が思考を寸断。明滅する視界、ばらばらに飛び散る思考。

 

 『また落ちてるよ! ウィンター!!』

 

 「――分かって、いますわよ!!」

 

 繰り返してたまるものですかっ! 直撃は、防ぎました。ツインロールガードですの。けれど体の芯まで響くこれは、流石に堪えますわね。どうにか切り替えたツインロールで、体勢の制御。わたくしを叩き落としたのは、拳二つ。そういえば腕飛ばしてましたわね……。

 

 「技名をわざわざ叫ぶなんて、馬鹿らしくないか?」

 

 『それを言っちゃあおしまいだろうがぁ!! バカザメ!!』

 

 海面近くまで戻ってきたわたくしを見下ろすメガロシャークの台詞に、ホワイトが頭の中でブチギレかましました。いえ、癪ですがごもっともでは? なんでキレてるんですの、この娘。 

 

 『かー!! 分かってない! これだから異世界人はっ!!』

 

 なんかよく分からない地雷踏んじゃいましたわね。なにやらじたばたじたばた騒ぎ立てるホワイトを遮るためわたくしは、口を開きました。

 

 『で、どうしましょ』

 

 『どうしようねえ』

 

 いやーここまで隙がないと感動しちゃいますわね。涙ちょちょぎれちゃいますわよ。

 

 『リミットどれくらいでしょう』

 

 『10分無いかな』

 

 『無いですかーー……』

 

 ため息出ますわネ。出ましたわ。とっても大きなやつです。嗤うメガロシャークが憎たらしい。あの顔面ぶん殴ってもあんまり意味ないから困りますわね。

 

 「シャシャッ、ネタ切れか?」

 

 「ふん、今に目に物見せて差し上げますから目玉かっぽじって、自害してなさい」

 

 「シャーッシャッシャッシャ! それじゃあ見えないから遠慮しとくぜ!」

 

 ぶっちゃけ時間が敵に回っている以上、こんな下らない応酬やってる場合じゃないんですけれど……いいアイディアも湧いてこないのでどうしようもないですわね。

 負けのイメージが脳裏に張り付いている。瞼を下ろせばきっと蘇る。水の重みと沈む感覚。指先、末端まで届いた無力感。振り払うように、わたくしは、打開策――というかちょっとやけっぱちなアイディアを口にします。

 

 『……ツインロール逆回転させたら時間戻りません?』

 

 『そんなスーパーマンじゃないんだから……――あっ』

 

 『なんです? 何かいい案出ましたか? 実は、時間を戻せます?』

 

 『いや、戻せないって……多分。いや君さ、ツインロールを――――って、できない?』

 

 『え、本気(マジ)で言ってますの?』

 

 『本気(マジ)本気(マジ)。大本気(マジ)。ツインロールで、一応防げてたし、それができたらいけるんじゃないかな?』

 

 耳を疑いました。が、今の所時間もなくて、勝算のある策がわたくしにはない。ならもう信じる他ありませんわね。いやしかし。

 

 『こんな土壇場でそんなこといいます? 普通』

 

 『他に何かあれば言うよ……! ツインロールをポニーしたり自由自在やってるし、僕はもうその辺に賭けるしかできない……!! 弄ってみたらミサイルも出せるようになったし……!!』

 

 ごもっとも。何も思いついてないわたくしが突進するよりもホワイトのアイディアを受け入れるほうが良さげですわね、ええ。ていうかミサイルの件忘れてましたわ。やぶ蛇でしたわね。

 

 「やってやろうじゃありませんか……!」

 

 小さく呟き、乾いた唇を舌で濡らす――打倒、メガロシャーク! それができるなら、この際なんだってやってやりますわ! そう、なんだって!

 

 

 

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