没落TS勇者令嬢ウィンター・ツイーンドリルルは、魔を切り裂き、光をもたらすのですわっ!!   作:クルスロット

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第六話 ウィンター・ツイーンドリルルの貞操危機?

 

 

 

 王国――正式名称アンブレラ王国。広大な国土を持ち、大陸で最も魔王領に近い国であり、もっとも精強な国。そのため、人類側の最前線として数々の強者が集う。絢爛たる永久桜の咲き誇る大国である。

 そして、今日、ここに一人の少女が招かれた。人類最大の天敵、魔王への唯一無二の対抗存在である勇者の少女が秘密裏に、足を踏み入れたのだ。 

 

 

 

 +++

 

 

 

 ざぶん……と俺は、ゆっくりと湯船に肩まで浸かった。湯が体を包んで、体の芯まで温かくなっていくのを感じて、自然と体の力が抜けて、吐息を零していた。あ^~~堪りませんわ~~。カチカチに固まったコリとかがふんわり解れていく気がしますわよ~~。

 ――っと、いかんいかん。湯船に浸かったせいで頭まで緩んでしまった。俺の頭の中までは、あの妙な言葉遣いに侵食させねえ……! ここが絶対守護領域だ。俺の最前線だ……!! 

 いや、ともかくと、俺は、現実に目を向ける。高い高い天井だ。実家の浴場も貴族相応だったが、ここはもっとスゴイ。中央にある円形の湯船には、溢れ出るほどの湯が張られている。お陰で、もくもく上がる湯気が浴場を満たしていて、室内灯に反射する様子は、幻想的だ。つるりとした大理石の床に、各所にあしらわれた彫刻や彫像。いい匂いもする。あ、これ王女様の匂いと一緒……これは気持ち悪いな。しかし、金がかかってる。当たり前か。

 

 「流石ですわねえ……」

 

 呟いて、顎が沈むくらいまで俺は、湯船に体を沈めた。あまりにも気持ちよすぎる。頭がふわふわとしてきた。まずいまずい。風呂で溺れて死ぬなんて、冗談にもならない。間抜けすぎる。それもあって、そろそろ上がろうかな。と俺がぼんやり思い始めた時だった。がらがらと背後で引き戸が開く音がした。おかしいな。貸し切りのはずだけど……。怪訝と振り向いて、俺は、ぴしりと音を立てて硬直した。

 

 「御機嫌よう、勇者様。湯加減いかがですか?」

 

 「へ? え? あー……えーっとそ、その……寝ちゃいそうになるくらいには、いい湯加減ですわね! 流石、王城の浴場ですわね。内装も素敵ですわ」

 

 「ふふ、それはよかったです。勇者様もご存知だと思いますが湯船での仮眠は、危ないですよ?」

 

 なんて微笑んで、シャワーを浴び始めたのは、この国の王女様――オフェーリア・メルティ・アンブレラ。複雑にまとめていた銀色の髪も今は、ほどいていて、背中に落ちている。すべすべの肌に、銀髪とシャワーの水滴が張り付いて、扇情的だ。そこから視線を下ろすと大きく綺麗な尻に……うお……! じっと見てしまってたのに気づいて、急いで逸した後も彼女の背中を俺は、チラチラ見てしまう。目、目に毒だ……。いや、毒ではない? いや、毒だ……。心を魅了する毒だ。必死に目を逸らしても吸い寄せられてしまう顔を俺は、どうにか両手で正面に固定した。

 

 そう、俺は今、王国の首都、王都にやってきている。理由は勿論、勇者として王国騎士団に加わるためだ。戦力としての俺は、控えめに考えても特級だろう。数多の騎士に、騎士団をまとめて薙ぎ払ったサラマンドロスに勝ったのは、俺という勇者。だから軍勢の一員や司令官という形にはならないと思うけど、それでも戦力として数えられる以上、加わるのは当然の流れだろう。

 今は、王城に招かれている。一日目だから慣れないところも多いがやはり快適だ。三食あって、この通り風呂も広い。

 

 「? 勇者様? どうかされました?」

 

 「あ、ええ、な、なんでもありませんわよ? 王女様」

 

 いつの間にか隣に、王女様がやってきていた。前をタオルで隠してくれているのは、助かった。真正面からあの巨乳を見るなんて出来ない。色々反応してしまう。いや薄い。布が薄くて小さい。濡れた肌に張り付いて、形が見えている。でかい。俺もでかいが。王女様も大概でかい。なんていうかあれだ。ホワイトの他人だから良いっていう気持ちが少し分かってしまいそうで、困る。

 

 「っと、ああ、 そうですわね。申し訳有りません。すぐに上がりますので……」

 

 おっと、いけないいけない。王女様と風呂を一緒だなんて不敬だよな。俺は、腰を上げた。

 

 「え?! そ、そういう事ではありません!」

 

 「えっと……?」

 

 「勿論ですっ! 私、勇者様とお話に参りましたので、居ていただかないと困ります」

 

 「な、なるほど……。それなら……」

 

 ぐっと顔を近づけて、迫真の表情を浮かべた王女に、俺は首を縦に振るしか無かった。それから制されたままで中腰だった腰を元の場所に俺が下ろすと王女様が湯船に浸かった。真隣か……結構近いな……。でも女の子ってこんなもんなのか? 分かんねえ。女の子同士の距離感分からん。まったく何も分かりませんわね……やばいなこれ。俺は、内心げんなりした。

 

 「ええっとお話というのは……?」

 

 こっちから話を切り出し、会話をスムーズに済ませて、話をすぐに終わらせる戦法。ちょっとあのおっぱいは不味い。つんととんがった感じが布越しに見て取れるあのおっぱいは、理性に毒だ。ホワイトのことあんまり言えなくなってきたな……。でも俺は口に出してない。出さない以上、相手には伝わらない。だから俺は、問題ない。QED証明終了。

 

 「まずここまでご足労頂きありがとうございます。ご家族の埋葬などもお立ち会いされたかったでしょうに、国事を優先して頂いたことには感謝が絶えません」

 

 「いえ、当然ですわ。父に兄もこの緊急事態に私事を優先などしたら生き返って、説教してきます。間違いありませんわ」

 

 「ふふっ、それはそれは。良いご家族ですね」

 

 「ええ、とてもとても」

 

 くすくす笑い合って、良い感じの雰囲気を構成。よしよし、この辺でお話を切り上げてしまえば……と口を開こうとした矢先。

 

 「それで、私、勇者様のご家族について聞きたいことがあるんです」

 

 「わたくしこの……家族に?」

 

 「はい」首肯「私、ツイーンドリルル辺境伯とは、少しばかりお話させていただいた事があるのです」

 

 「……あら、それはまた」

 

 あっ、まずい。熱々の体が冷えていくのを感じた。考えてみれば当たり前だ。この王女様は、王国騎士団の騎士団長でもあるんだから辺境伯の父さんと顔見知り、知り合いだっていうのは当然ありえる。

 

 「とても聡明な方でした。数多の戦術に精通し、剣の腕も一流。家族や民、領地への愛に満ちた人でした。惜しい人を失ってしまいました……。非常に残念です」

 

 髪色こそ俺たち二人共、母さん譲りだが兄貴の才能に能力は、父さんの再来と言ってよかった。若い頃の父さんは、随分と剣の腕が立ったらしい。王女様の言う通り、戦術も勿論。だから父さんは、辺境伯なんていう重要な役に着けたんだ。

 

 「ご家族のことも聞いています。確か息子様が二人、いらっしゃるとのことですが……勇者様はどう見ても女性でいらっしゃいますね」

 

 ――想像した通りの探り……いや、もっと突っ込んできたな。正面からぶち当たってくるくらいには、真っ向勝負。さてとどうする。下手な嘘は通らない。しかし、事実を言ってもこの場で斬り殺され……殺されはしないだろうけど二度と会話が出来ない気がする。後が怖い。タイミングが悪すぎる。なんでお風呂? 裸の付き合いか。女の子同士もこういうのあるんだな。

 

 「……わたくしは、兄を尊敬していました。兄は、ツイーンドリルル領の騎士団長でした。魔物に一歩も引かず剣を片手に立ち向かう勇敢な人で、家族や民に領地を誰よりもおもんばかるとても誇らしい人でした。

 わたくしは、そんな兄に憧れていました。ですからわたくしも当然剣を取りました。しかし、わたくしは女です……王女様も思い当たるところ、ありませんか?」

 

 「なるほど。理解いたしました。勇者様は、性別を偽っていられたのですね?」

 

 「ええ、父に、縋り付いてどうにかこうにか。まあ、『結婚を前提にやめる』と条件はありました。。今年がその期限だったんですけれど……この有様ですから」

 

 俺はそう言い、困ったような苦笑いを浮かべた――完璧じゃないかこれ? いや、完璧だろ。このムーブ、完璧だ……惚れ惚れする。なんて自画自賛した。ああほら、沈痛な面持ちで王女様も頷いて、にっこり笑った……にっこり?

 

 「嘘、ですわね?」

 

 「……………ひょ?」

 

 固まる俺の目の前で、王女様は胸元から何かを取り出した。よく見れば首元に細い鎖がある。シルバー? プラチナ? わからない。兎も角、胸元から出てきたのは、翼の生えた天秤のネックレス。げっ、あれは……。最初から負けが決まっていたのに俺は、気づいた。

 

 「虚偽看破(センスライ)って、ご存知です?」

 

 「……勿論。嘘を見破る魔法ですわよね。そして、恐らくそれは、虚偽看破(センスライ)を宿した魔具ですわね? 迂闊でしたね」

 

 「ご明察です。流石勇者様ですね」

 

 王女様は、にこにこ微笑んだ。うお、笑顔怖……。引きつりそうになる顔の筋肉をどうにか抑え込んで、爽やかお嬢様スマイルを維持する。

 

 「では、本当のことを話して頂けますか?」

 

 最後の一撃とばかりに繰り出された一言。どうもこうも俺は、もうお手上げだ。本当のことを話すしか無い。しかし、虚偽看破(センスライ)がある限り、嘘は見抜かれる。なら逆に真実には、決して反応しない。信じては貰える。まあ、もう迷っている場合じゃない。話すしか無い。

 

 「お話、致します……。信じてくださいね?」

 

 意を決した俺は、そう切り出し、今まであったことを掻い摘んで話した。ホワイトの事は、天使と誤魔化した。コードとか改造コードの話は、俺もよく分かってない。話しても無駄だし、偽装看破(センスライ)は、話していない事に意味はない。

 

 「――というのが今まであったこと、わたくしが勇者に、そして、女性になった経緯ですわ」

 

 「…………な、なるほど」

 

 話し終わった王女様の顔は――、「むぎゅ」――顔を横に押されて見えなかった。視線が冷たい。いや、こうなるのは分かってたけどさ。実際になると微妙に心にくるものがあるな……。

 

 「……あまりこっちを見ないようにしてもらえますか?」

 

 「あ、そ、そうですわね……」

 

 「色々承知しました。まあ、勝手にお風呂に入ってきたのは、私ですし、何より話せないのは、分かります。普通に考えて、正直に話せませんよね。理解に足る理由があるにしても」

 

 ただ、と一拍置いて、王女様がゆっくり口を開くのが分かった。

 

 「その口調は、ご趣味でしょうか…………?」

 

 「違いますわよ!?」

 

 思いっきり振り返る――のをどうにか止めて俺は、否定した。いや、困る。その勘違いはめちゃくちゃ困る。

 

 「何かこう、手違いらしいですわ。ホワイト――天使様も想定していなかったものらしいです。それに、その、趣味認定は、ちょっと、いえ、かなり、かーなーりっ! 困りますわよっ……!!」

 

 「そ、そうですか……」

 

 俺がかなり語気強めにしたので、王女様もどうにか納得してくれたようだ。よかったよかった。だけど事態は変わっていない。正直、黙っていてもらえると嬉しい。しかし、どうなるか。

 

 「それで、わたくしは、どうなるのですか? 王女様」

 

 「まあ、どうもなりません。私が黙っていればバレませんでしょうし。勇者様の嘘を採用すれば誰も疑わないでしょう。勇者様も悪意あってでは、ありませんし……」

 

 こ、これは、無罪放免か……?! よかった……。俺は、ほっと胸を撫で下ろした。

 

 「うーん、しかし、見事に女性になってますね。どうみても男性ではない……大きくて綺麗。これが私以外に発覚するのは、ちょっと困りますね……」

 

 視線の集中が凄い……。主に胸部に。あっ、女の子ってこういうのほんとに分かるんだな……めっちゃ勉強になった。元に戻ったら俺も気をつけよう。いや、しかし、あれだな。

 

 「王女様……? その、じっと見られるのはちょっと……恥ずかしいと言いますか……」

 

 「ああ、勇者様。オフェーリアでお願いします」

 

 「え? しかし、一国の王女様を名前で呼ぶのは……」

 

 「いえいえ、勇者様と私、仲良くなりたいんです。ですから是非是非、私のことは、オフェーリアと呼んでください」

 

 「お、お友達? ええ、では、オフェーリア。わたくしも勇者などではなく、ウィンターと」

 

 「ふふふ、素敵ですね。 ウィンター様。ウィンターさん? ウィンター……は、最初から気安すぎますね……。ウィンター様。これですね。ウィンター様」

 

 「は、はい」

 

 「ウィンター様……これはとても素敵なことです」

 

 「ううん……?」

 

 何か視線の圧力が増したような? なんだろう。この感覚。前というかつい最近も感じたやつじゃ……?

 

 「ウィンター様。こちらを向いて頂けます?」

 

 「え? いいのですか……?」

 

 「はい。早く」

 

 「あ、はい」

 

 有無を言わせない口調。な、なんだろう……? ぷるぷる震えながら俺は、王女様もとい、オフェーリアの方を向いた。当然そこにはオフェーリアが居るのだが、ちょっと様子がおかしい。頬や体が赤く蒸気しているのは、湯船のせい? 目の色もおかしい。なんていうかなんだろう。不穏だ。湯船の中なのに背筋が寒い。

 

 「ひっ……」

 

 後ろ下がったらオフェーリアに、両肩を掴まれた。え、何? 何? なんで!? なにを!?

 

 「おっぱい、揉んでも構いませんか?」

 

 「な、何故でしょうか……? 理由を聞いても……?」

 

 「揉んでみたくなったんです。不思議ですよね。私もちょっと分からないです。でも女の子同士ですし、構わないと思うんです」

 

 「いえ、わたくしの元々の性別ご存知ですわよね?!」

 

 「ご存知だからですよ?」

 

 この人、嘘でしょ……!? 俺ことウィンター・ツイーンドリルルは、戦慄した。またか。またなのか。

 

 「じゃあ、失礼して……」

 

 「わたくし、許可してませんわ――――ぎゃっ!?!?!?!」

 

 酷い声が出た。ふみふみもみゅもみゅされてる。あ、やばい。この王女様全然遠慮無い。顔も本気だ。やばい。やばいって。え? そこ? そこは、駄目! 無理! 無理! 駄目! 無理! 駄目! 無理! 駄目! 駄目! 無理ぃぃぃぃいいい!!

 

 「オフェーリア様!! わたくしっ!!」

 

 我慢できずに勢いよく立ち上がった俺は、目を丸くして、キョトンとしてるオフェーリアの前で、ざぶざぶっと回れ右したら。

 

 「お、お先に失礼しますわ~~!!!!」

 

 

 

 

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