あの後、何事もなく学院に戻って来た俺達は、学院長室でオスマン学院長に報告をしていた。
「ふむ………『破壊の杖』を取り戻し、ゴーレムも退けたが、フーケ本人は取り逃がしたととな?」
「はい。何処にいるか分からない相手を探すより、『破壊の杖』の確保を優先しました。力及ばす申し訳ありません」
ルイズがそう答える。
「いや、君達を責めているわけでは無い。むしろ英断だと思っておる。よくぞ『破壊の杖』を取り戻してくれた。心から礼を言う」
そう言ってオスマン学院長は頭を下げた。
「君達の3人の活躍は王宮も高く評価しておる。シュヴァリエや勲章とまでは行かぬが、王室から何らかの褒章があるじゃろう」
「王室からの褒章ですか!? 凄い………!」
オスマン学院長の言葉にキュルケが嬉しそうな声を漏らす。
その時、
「3人………ということは、タイシ達には…………」
ルイズが『3人』という言葉を怪訝に思ったのかそう問い返すと、
「残念ながら、彼らは貴族では無いのでな…………」
オスマン学院長は、残念そうにそう言った。
「そうですか…………」
ルイズもどこか納得いかない声で頷く。
「別にそんなもの要りませんよ。俺達は使い魔(仮)の役目を果たしただけですから」
俺がそう言うと、
「(仮)は余計よ………!」
ルイズはいつもの調子を取り戻したように、不満そうにそう言った。
「ほほほ………じゃが、君達にも感謝しておる。よって、君達も今夜開催される『フリッグの舞踏会』への参加を許可しよう」
「舞踏会…………」
「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました」
「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしてきたまえ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」
オスマン学院長は楽しそうにそう言った。
【Side 三人称】
食堂の上の階が、大きなホールになっている。
舞踏会は、そこで行なわれていた。
既にほぼ全員の生徒達が煌びやかな衣装に身を包み、パーティーを楽しんでいる。
ホールの中では、キュルケがたくさんの男に囲まれて笑い、黒いパーティドレスを着たタバサは、一生懸命にテーブルの上の料理と格闘している。
それぞれが、パーティを満喫しているようだった。
その時、ホールの壮麗な扉が開き、ルイズが姿を現した。
門に控えた呼び出しの衛士が、ルイズの到着を告げる。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~~~~!」
パーティードレスに身を包み、いつもと雰囲気の違うルイズ。
いつも、魔法が使えないとルイズを馬鹿にしていた貴族の男達が、その美貌に気付いて我先にとダンスを申し込んでいた。
だが、ルイズは多くの貴族の男達のダンスの誘いを全て断り、誰かを探すようにキョロキョロとパーティー会場を見回す。
しかし、お目当ての人物が見つからなかったのか、首を傾げた。
その時、キュルケの姿が目に入り、ルイズはキュルケに近付いていくと、
「キュルケ、タイシ達見てない?」
「珍しいわね、あたしに話しかけて来るなんて。それと、タイシ達なら見て無いわよ」
「まだ来てないのかしら? パーティー用の衣装は持ってるって言ってたけど…………」
ルイズが腕を組んでそう呟いた時、ホールの門の方が、ザワッと騒がしくなった。
「何かしら?」
キュルケが視線をそちらに移すと、ルイズもつられてそちらを見る。
すると、正装した大士と、その両腕にそれぞれ自分の腕を組む、パーティードレスを纏った葵と優花の姿があった。
大士の容姿は平凡より若干良い程度なのだが、その両脇を固める2人の女性は超絶美女だ。
葵の黒髪はシャンデリアの光を反射し、キラキラと輝きながら靡き、優花は切れ目と勝気な雰囲気から、格好いい美しさを醸し出す。
パーティー会場の男女問わず視線を釘付けにする美しさに、会場は一瞬静まり返った。
そんな3人は気にせずに歩いていくと、その後ろにはドルモン、リュウダモン、ハックモンが付き従う。
大士達がそのままルイズの元に歩いてくると、
「少し遅れたか?」
そうルイズに話しかける。
「い、いえ、別に………私もさっき来た所だし…………」
ルイズは少ししどろもどろになりながら大士達を…………
正確には葵と優花の2人をガン見していた。
2人が美人だという事は分かっていたが、こうやって身形を整えると、その美しさが更に際立っている。
ついでに言えば、
(……………何なのよあの胸の大きさは………!)
ドレスを着ている事で2人の胸の大きさが強調されており、絶壁ともいえる己の胸との戦力差に打ちひしがれていた。
当然ながら、多くの貴族の男達が自分に靡くよう声を掛けて来るが、その全てを2人は一刀両断の如く断っている。
すると、
「……………ねえ、あんた達…………」
ルイズが口を開く。
「何だ?」
「あんた達が異世界から来たって言う話、信じるわ」
突然そんな事を言うルイズ。
「唐突にどうした?」
大士が聞き返すと、
「……………私が魔法を使えない理由を、一緒に考えて欲しいの」
ルイズは真剣な表情でそう言う。
「そうは言っても、私達の魔法はこの世界の魔法とは別物だから、教えられることは殆ど無いと思うんだけど………」
葵がそう答えると、
「それでも………! 別の視点から物事を見れるあんた達なら、私達が見落としていた失敗の理由を突き止められるかもしれないから…………」
「まあ、一理あるかもしれないわね」
優花が相槌を打つ。
「………別に構わないぞ。そういうのも使い魔(仮)の役目の範疇だろ?」
大士が了承の意を伝えると、ルイズはパッと笑みを浮かべ、
「………ありがとう!」
そうお礼を言った。
その時、楽士たちが、小さく、流れるように音楽を奏で始めた。
パーティーの参加者たちが男女でペアを組み、ダンスを始める。
「大士、私達も踊ろう!」
「ああ、いいぞ」
葵の言葉に大士は即座に了承する。
すると、葵はドレスのスカートの裾を持ち、恭しく礼をした。
「私と一曲踊ってくださいますか?
「喜んで」
大士は迷いなく葵の手を取る。
そのままホールへ移動し、自然とステップを踏み出した。
暫くして葵とのダンスを終え、大士が戻ってくると、今度は優花が大士の前で恭しく礼をし、
「私と一曲踊って頂けますか?」
「喜んで」
大士もすぐにその手を取って優花と共にホールへと赴く。
その様子を見て、
「あんた達、割と自然に踊ってたけど、こういう経験あるの?」
ルイズが葵に訊ねた。
「とりあえず1回だけあるね。とある王国の王女と、帝国の皇太子の婚約発表パーティーに参加したことがあるの」
「ぶっ!? な、何でへいみ………じゃなくて、庶民のあんた達がそんな重要なパーティーに参加してるの!?」
葵の答えにルイズは思わず吹き出す。
「まあ…………成り行き?」
「成り行きで参加できるものじゃないと思うんだけど………」
その話を近くで偶然聞いていたキュルケが思わず呟いた。
「同意」
その言葉に頷くタバサ。
「あらタバサ。料理はもういいの?」
「小休止」
「そう…………あなたは誰かと踊らないの?」
「…………あなたも。いつもなら、とっくにタイシを誘いに行ってるはず」
タバサは、親友であるキュルケが恋多き女性であることを知っている。
大士はあのフーケのゴーレムを圧倒する男性だ。
顔は平凡だろうと、いつものキュルケならとっくに言い寄りに行っていてもおかしくは無い。
それなのに、そんな様子を全く見せないキュルケを不思議に思っていた。
「う~ん………何でかしらね? 何故か彼には情熱の炎が燃え上がらないのよね………」
キュルケは自分でも不思議そうに首を傾げながらそう言う。
「それに、例え情熱の炎が燃え上がっていたとしても、私は『誰かの一番』は奪わないって決めてるの。あの2人から、タイシを奪おうだなんて思えないわ。奪えるとも思えないけど」
「………………………」
そう言うキュルケの言葉を聞きながら、タバサは大士をジッと見つめていた。
「どうしたのタバサ? もしかして、タイシが気になったりしてる…………!?」
キュルケが楽しそうな表情をしてそう言う。
「違う」
タバサはそう言うが、キュルケからしてみれば、色恋に全く興味を示さなかった親友が、理由が如何あれ男性に興味を示しているのだ。
気にならない方がおかしい。
「そんなに気になるなら、ダンスに誘ったらどうかしら? 脈アリなら受けてくれるかもしれないわよ?」
「だから違う…………!」
キュルケの言葉にタバサはそう否定するが、いきなり考え込む様に黙り込んだ。
「どうしたのタバサ?」
キュルケが不思議に思って訊ねると、
「…………………いいかもしれない」
「え…………………?」
タバサが零した言葉に、キュルケが声を漏らす。
その時、優花とのダンスを終えた大士が、優花と手を繋ぎながら戻って来た。
すると、タバサが大士の方へ歩いていく。
そして大士の目の前で立ち止まった。
「ん? 如何したタバサ?」
目の前で立ち止まったタバサに、大士は何か用があるのかと聞き返すと、
「………………私と踊って欲しい」
「はい………?」
大士にとって寝耳に水だったのか、素っ頓狂な声を漏らした。
「まぁっ…………!」
キュルケは意外だと目を見開きながらその様子をガン見している。
大士は一瞬混乱したが、すぐにタバサの真剣な眼に気付く。
タバサはお近付きになりたいとか、そういう理由で大士をダンスに誘っているのではなく、明確な目的を持って、大士に声を掛けているのだ。
ダンスに誘うのは、その手段に過ぎない。
「………………………」
大士は、葵と優花に目配せすると、2人は仕方なさげに頷いた。
大士は気を取り直すと、
「オーケー。喜んで」
タバサに手を差し出した。
タバサを連れてホールに移動すると、2人はステップを踏み出す。
ダンスに興味など無さげなタバサだが、貴族としての教養は備えているようで、問題なく踊れている。
踊り始めてから少しすると、
「………で? 俺をダンスに誘った理由は何だ?」
大士はズバッと切り込んだ。
しかし、タバサはその言葉にさして驚きもせず、
「あなた達にお願いがある」
「お願いね…………」
大士はそう呟くが、おそらく母親の治療についての事だと予測できた。
「あなた達が使った、〝再生魔法〟と〝魂魄魔法〟の力を貸して欲しい」
「何故だ?」
予測は出来ているが、大士はそう問い返す。
「私の母がエルフの薬によって心を壊されている。それを治して欲しい」
大士は軽く驚いた。
そこまで喋るとは思って無かったのだ。
何だかんだではぐらかすと思っていた。
だが、タバサからすればそれだけ真剣で、再生魔法と魂魄魔法なら可能性が高いと思ってるのだろう。
「『薬によって心を壊された』………か、確かに〝再生魔法〟と〝魂魄魔法〟なら、可能性は限りなく高いだろうな」
「ッ…………!」
大士の言葉に、繋いでいたタバサの手にキュッと力が籠る。
だが、
「話は分かったが、何故俺に伝える? 俺達の中でその2つの魔法を使ったのは葵だ。何故葵に直接頼まない?」
大士はそう問いかけた。
「ッ………………理由は2つ」
タバサは一瞬言い淀んだが、すぐに口を開いた。
「1つは、あなたが彼女達の中心だから。あなたが了承すれば、彼女達も反対しないと考えた」
「なるほど、一理ある」
「2つ目は………………私は監視されている可能性が高い」
「監視ねぇ……………」
大士はチラリと優花に目をやる。
優花は感知系の技能に優れている為、怪しい気配や魔力が近付けばすぐに気付く。
今は特に気にしている様子は無いため、今現在は監視は無いのだろう。
「直接彼女達に頼むと、情報が洩れる可能性がある。ダンスなら多少の密談も可能」
「それだけヤバい相手がいるって事じゃないのか?」
「……………対価はいくらでも払う。私自身を捧げてもいい」
タバサは本気の覚悟を持ってそう口にする。
だが、
「ああ、そう言う重い対価は要らないから」
大士は軽い口調で断った。
「…………そうだな。さっきルイズから魔法が使えない理由を一緒に考えて欲しいという相談を受けた。俺達はこっちの魔法についてはよく知らないから、協力してくれると助かる」
「…………それだけ?」
「十分だ」
「わかった」
大士はそう言うが、ハッキリ言えばそんな対価に意味は無い。
何故ならルイズが魔法を使えない理由は、『虚無の担い手』だと分かっているからだ。
それでも対価という口実を求めたのは、無償で助けられたとタバサが考えれば、彼女の性格を鑑みると、命を懸けて恩を返そうとするだろう。
そんなタバサの気が少しでも和らげばという理由だ。
正直大士にはタバサを助ける理由は無いが、助けない理由もない。
強いて言うなら、『ゼロの使い魔』という物語の中の、『タバサ』という『キャラクター』が、大士にとってお気に入りのキャラクターだったという事が理由かもしれない。
勿論大士にとってこの世界もすでに現実だと認識しているが、それでも『ゼロの使い魔』という物語に影響されているのは否めないだろう。
やがてダンスが終盤に差し掛かると、
「それで? 治療は何時にするんだ?」
「今すぐは無理。お母様が治ったとしても、匿う所が無い。それにあなた達をいきなり連れて行けば、勘ぐられる可能性がある」
「なるほど………それなら、ある程度親睦が深まったと思わせる程度の期間は置いて、長期休暇辺りに友達として招待すればいいんじゃないか? キュルケやルイズも誘えば、丁度いいカモフラージュにはなるだろうし。あとはそれまでにお袋さんを匿う所を見つけておく位だな」
「いい考え」
タバサも大士の案に同意する。
「それじゃあ、これからよろしく頼むな」
「ん……………」
大士の言葉にタバサは頷くのだった。
【Side Out】
翌日の授業が終わった後。
俺達はルイズとの約束通り、ルイズが魔法を使えない理由を探る為、広場の一角に集まっていた。
集まっていたのだが………
「きゅいきゅい! ドルモン様~!」
青髪の少女がドルモンに抱き着いていた。
「シ、シルフィード…………」
「きゅいきゅい! この姿の時は、イルククゥって呼んで欲しいのね!」
抱き着かれて困惑するドルモンの言葉に、その青髪の少女はそう答える。
「『そよ風』って意味だな」
背中に背負ったデルフがそう言った。
この青髪の少女は、韻竜であるシルフィードが先住魔法で人の姿になったものだ。
とりあえずこの場に居ないキュルケを含めた、シルフィードが韻竜であると知っている者達だけの時は人化を許可したらしい。
「………………迷惑をかける」
タバサが無表情ながら、何処か申し訳なさそうに謝罪する。
「いや、それはいいんだが…………」
「随分と好かれたものね」
優花が、ドルモンの首に抱き着くシルフィードもとい、イルククゥを眺めながら呟く。
「まあ、好きになる気持ちはよく分かるけどね」
葵もそう言う。
「…………って言うかあんた達! 何でそんな落ち着いてるのよ? 竜が人の姿になるなんて、私はこれでも驚き過ぎて言葉が無いんだけど………?」
ルイズがいつも通りな俺達を見て、納得いかない様な顔をしている。
「それは竜が人の姿になる事はともかく、人が竜の姿になれる一族を知っているからだな」
「……………人が竜に?」
タバサが興味深そうに聞いてくる。
「ああ。竜人族っていう一族で、一族固有の魔法である〝竜化〟というものが使えるんだ」
「…………興味深い………」
タバサは竜人族に興味がある様だった。
「っていうか、タイシ達の身の上話は後にして!」
ルイズがぴしゃりと言い放つ。
「今は私が魔法を失敗する理由を調べる約束でしょ!?」
脱線していた話をルイズが指摘する。
「すまん…………」
その自覚はあったので、俺は大人しく謝る。
俺達は気を取り直すと、
「さて、ルイズが魔法を失敗する俺達なりの考察だが、一番有力なのが前にも言った通り、ルイズの魔法適性が四大系統のどれにも当てはまらないイレギュラーな属性であるという事だ」
そもそも『虚無』だしな。
だが、単純に虚無だと言ってもルイズは信じられないだろう。
「イレギュラーな属性…………」
ルイズは呟く。
「俺達はこの世界の魔法について詳しくは無いが、一般的に使われている『火』、『水』、『風』、『土』の4つ意外に属性は無いのか?」
俺がそう聞くと、
「……………1つだけある」
タバサが答えた。
「『虚無』……………失われたと言われる系統…………」
「そんなわけ無いじゃない! 『虚無』は始祖ブリミルが使っていたと言われる伝説の系統よ! 私が『虚無』なわけ……………!」
「最初から可能性を否定するな。まだ『虚無』と決まった訳じゃない。一先ず可能性として考慮はしておけ」
のっけから虚無である事を否定しようとするルイズに、俺はそう言って言葉を止める。
「でだ。ルイズの系統を確認する方法なんだが、無いことも無い」
その言葉に、ルイズがクワッと目を見開いた。
「それを早く言いなさいよ! それでどうするの!?」
物凄い食いつきを見せるルイズ。
「こいつを使う」
俺は〝宝物庫〟から、とある金属板を出現させた。
「何それ………?」
「金属の………板………?」
ルイズとタバサが怪訝そうに呟く。
「勿論唯の金属板じゃない。こいつは『ステータスプレート』って言うアーティファクト…………こっちじゃマジックアイテムと言った方が良いか。で、そう言う名前なんだが、こいつは使用者の血を垂らす事で、使用者の能力を数値や言葉で表してくれるものだ。ま、こいつは俺のダチが作った劣化品だがな」
因みにこのハジメの試作型『ステータスプレート』は、本物が一度登録すれば、その使用者を記録して身分証明の代わりにもなるのだが、こいつはハジメがミスって記憶機能が追加されなかったものだ。
使用毎に血を垂らさなければならないが、その代わりにこの1枚で複数の人間が使用できる。
何かに使えそうな気がしてとっておいたものだが、こういう時に役立つとは思ってなかった。
「そんな便利な物があるなら、何でもっと早く出さないのよ!?」
ルイズが当然ともいえる疑問を投げかける。
「理由の1つは、こいつはこのハルケギニアとは違う場所で発展した別の魔法体系のモノだ。こっちでも正しく動く保証が無い事が1つ。そしてもう1つは……………」
「もう1つは…………?」
「単純に頼まれなかったからだな。今回はちゃんと頼まれたからこうやって出してやったんだ」
「むぐ………………」
ルイズは文句を言いたげだったが、自覚があるのか口を噤んだ。
俺はその試作型ステータスプレートをタバサに差し出す。
「先ずはタバサが使ってくれ。タバサは自分の得意系統が分かっているから、それによってステータスプレートが正しく機能するかを確認したい」
「わかった…………」
タバサはステータスプレートを受け取ると、
「その丸い窪みに血を付けてくれ。そうすればステータスが表示される」
「ん…………」
タバサは風の呪文を唱えると、指先に小さな傷を付けて、その血をステータスプレートに付ける。
すると、そのステータスプレートに文字が浮かび上がり、
「…………………読めない」
タバサが呟く。
そう言えば文字表記は日本語になっていたな。
例えトータスの文字でも読めないだろうが。
俺は〝宝物庫〟から1つのメガネを取り出す。
このメガネには〝言語理解〟が付与されており、トータス出身のハジメハーレムメンバーが日本語を覚える時に役立てていた。
「こいつを使え。このメガネもマジックアイテムだ」
タバサは自分のメガネを外して、アーティファクトのメガネにかけ直す。
それから改めてステータスプレートに目を通した。
すると、
「ッ…………………」
タバサは一瞬驚いたように声を漏らした。
何故なら、ステータスプレートに表示された情報は、
シャルロット・エレーヌ・オルレアン 15歳 女 レベル:45
天職:氷術師
筋力:8
体力:8
耐性:5
敏捷:10
魔力:300
魔耐:250
技能:風属性適性[+消費魔力減少][+発動速度上昇][+効果上昇]・水属性適性[+消費魔力減少][+発動速度上昇][+効果上昇]・魔法融合[+2重][+3重]・魔力変換[+精神変換]
バッチリとタバサの本名で表されていたからだ。
「………………見る限り、表示に不備は無いな」
俺はタバサの本名をスルーしてそう言うと、
「ッ………………!」
一瞬声を漏らしそうになったが、すぐに頷く。
「因みに、一般成人男性の平均が10だから、タバサは魔力と魔耐が優れていることになる。適性も風属性と水属性に適性アリとなっているが?」
「間違いない。私の二つ名は『雪風』。『風』と『水』を重ねた氷系の魔法が得意」
俺が確認を取ると、タバサはそれを肯定する。
「よし、どうやらハルケギニアの魔法体系にもステータスプレートは正しく表示される様だ」
俺はタバサからステータスプレートと言語理解のメガネを受け取ると、タバサの血を拭き取った。
すると、ステータスの表示が消える。
「さて、お待ちかねのルイズの番だ」
それからそれをルイズに差し出した。
「……………………!」
ルイズはゴクリと唾を飲み込むと、優花から苦無を借りて指先に傷を付ける。
それからルイズはステータスプレートに血を付け、言語理解のメガネを掛けた。
そして、浮かび上がった内容を確認した時、
「……………………噓でしょ………?」
呆然とそう呟いた。
その内容は、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 16歳 女 レベル:10
天職:虚無の担い手
筋力:5
体力:5
耐性:5
敏捷:5
魔力:159920
魔耐:100
技能:風属性適性[+封印中]・魔法融合[+封印中]・魔力変換[+精神変換]・虚無適性[+魔力上限突破][+魔力変換効率上昇][+他属性使用不可][+休眠中]
「虚無………………本当に私が…………?」
ルイズは呆けた様に呟く。
どうやらまだ現実が受け入れられない様だ。
にしても、
「桁違いの魔力だな」
「魔力だけなら女神化した葵より上ね」
「しかも、私達を召喚した後だから、召喚する前はもっと多かったのかも………」
ルイズの魔力量に俺達は驚きつつ声を漏らした。
にしても、
「気になるのは虚無適性の派生技能にある〝他属性使用不可〟と〝休眠中〟…………後は風属性適性の〝封印中〟って奴だな」
「どういう事よ?」
ルイズの問いかけに、
「あくまで俺の推理だが、おそらくルイズ本来の魔法適性は風属性だ」
「『風』……………確かに母様が風属性だから、私にもその資質が受け継がれてるのは不思議じゃないわね」
俺の言葉にルイズは納得する様にうんうんと頷く。
「だが、何の因果か、そこに虚無適性が組み込まれた。それによってルイズ本来の属性である風が封印され、更には虚無も目覚めていない状態だから、ルイズは魔法が上手く使えなかった。ルイズの起こす爆発は、言うなれば送り込んだ魔力が何物にも変換されず、溜まりに溜まって対象物の許容量を超えて崩壊させた破裂じゃないかと思っている」
「破裂…………」
「ルイズが魔法を使う為には、虚無適性の派生にある休眠中を目覚めさせる。もしくは、虚無適性そのものを消し去る必要があると思う」
「その方法は!?」
「それは分からん。虚無を目覚めさせるにしても条件が分からなけりゃどうにもならん。年齢か魔力か、それとも何らかのアイテムが必要なのか…………」
まあ知っているが。
虚無を使う為には王家に伝わる『始祖のルビー』と『始祖の秘宝』が必要だった筈。
だが、俺がそれを言うのは不自然だろう。
すると、
「『始祖のルビー』と『始祖の秘宝』だな」
俺の背中から声がした。
「デルフ?」
「いやぁ、まさか嬢ちゃんが虚無の担い手だったとはねぇ…………けど、じゃあ何で相棒は『担い手』やその同類じゃないんだ?」
デルフが楽しそうに声を漏らすが、同時に疑問も持った様だ。
「俺達は確かにルイズに召喚されたが、使い魔の契約は行っていない。あくまで迎えが来るまで(仮)として使い魔の真似事をしているだけだ」
「………おでれーた。使い魔の契約を断った使い魔なんて初めて聞いたぜ」
デルフは呆気に取られた声を漏らした。
「って言うかあんた! 虚無の担い手の事を知ってるの!?」
ルイズがハッとなって叫ぶ。
「おう! 何を隠そう俺っちは6000年前にブリミルの使い魔である『ガンダールヴ』が使っていた剣さ!」
「んなっ!?」
その事実にルイズは素っ頓狂な声を漏らした。
「『ガンダールヴ』………始祖ブリミルの使い魔で、あらゆる『武器』を使いこなして敵と対峙したとされる。その力は、1000人の軍隊を1人で壊滅させる力を持ち、並のメイジでは全く歯が立たなかったとされる」
タバサがつらつらと説明する。
すると、
「あ~、伝説っつーのは尾ひれやら何やらが付くものだからなぁ…………1000人の軍隊を壊滅させたことは、確か無かった」
俺達はドルモン達と一緒なら、1000人どころか万でも億でもいけそうだけどな。
やる気は無いが。
「残念…………」
余り残念がって無さそうだな。
「それでボロ剣! 始祖のルビーと秘宝って何よ!?」
ルイズが一番聞きたいだろうことを尋ねる。
「始祖のルビーは『火』、『水』、『風』、『土』の4つの指輪の事だ。秘宝は『本』に『鏡』に『オルゴール』に『香炉』だったか?」
「4つの指輪…………? も、もしかして王家に伝わる『水のルビー』の事!? そんなもの手に入れれる訳無いじゃない!」
安心しろ。
もう程なく手に入るから。
「因みに秘宝に思い当たることは? 代々伝えられてる書物とか」
俺は一応そう聞く。
「そんな事言われても…………『本』…………代々王家に伝えられてる本…………もしかして、『始祖の祈祷書』の事!?」
ルイズがまた声を上げる。
「それも国宝じゃない! 私が手に入れるなんて絶対無理よ!」
ルイズはそう言うが、手に入っちゃうんだなこれが。
「…………ガリアの王家にも『土のルビー』と『始祖の香炉』が伝えられていた筈…………」
「どっちにしろ無理じゃない!」
タバサの言葉にルイズは投げやり気味に答える。
にしてもタバサ、ガリア王家と関りがある事を仄めかしちゃっていいのか?
ルイズは気付いてない様だが。
つか、タバサの青い髪はガリア王家にのみ現れる特徴じゃなかったか?
気付く人は気付いてもおかしくは無さそうなんだがなぁ。
「ああもう! 折角魔法が使えない理由が分かったのに、これじゃあ手詰まりじゃない!」
ぶっちゃけ魂魄魔法で干渉して虚無を消し去れないかとも思ったが、多分ルイズの魂にも多大な影響を与えると思ったので、口には出さないでおいた。
「まあまあ、原因が分かっただけでも一歩前進ってことで」
葵がルイズを宥める。
そんな中、
「きゅいきゅい、ドルモン様~!」
「イルククゥ………いい加減に放して…………」
ずっとイルククゥに抱き着かれ続けていたドルモンがぐったりしていたのだった。
ゼロ魔クロスの第5話です。
舞踏会と大士達なりのルイズの魔法考察でした。
舞踏会ではタバサとも踊りました。
まあ、ダンスはカモフラージュみたいなもんですけど。
そしてご都合主義アイテム登場。
試作型ステータスプレートです。
ぶっちゃけステータスプレートがあれば、大概の事は分かると思ったんで。
タバサとルイズのステータス内容は思い付き。
ルイズの魔力十五万以上はやり過ぎか?
次回はあのお姫様の登場。
お楽しみに。
タバサをヒロインに格上げするか否か?
-
ヒロインにしてしまえ!!
-
しない。初恋とは散るものである